モリエール作『ドン・ジュアン』のあらすじを詳しく紹介するページです。ネタバレ内容を含みます。
※簡単なあらすじ、登場人物紹介、管理人の感想はこちら(『ドン・ジュアン』トップページ)
第一幕
第一景
ある宮殿の庭で、スガナレルとギュスマンという従僕の男が語り合っています。
ギュスマンの主人であるエルヴィールは、スガナレルの主人であるドン・ジュアンのことを忘れられず、あとを追ってきたようでした。
ギュスマンは、ドン・ジュアンが修道院の垣根を越え、涙を流してまで口説き落としたエルヴィールをどうして裏切ることができたのだろうと尋ねました。
自分の主人は、何をも信じない無頼の放蕩者で、お構いなしに結婚に誓いを立てては各地で嫁を作り、嫌のところを見せつけられると、消えて失せていくことを繰り返しているのだとスガナレルは語りました。
そこへ一足遅れて旅に出たドン・ジュアンがやってきたため、スガナレルはギュスマンと別れました。
第二景
ドン・ジュアンは、スガナレルから離れゆくギュスマンの姿に気づきました。
スガナレルは、ギュスマンが自分たちが旅立ったわけを知ろうとしていたことを伝えました。
ドン・ジュアンは、別の女に恋をするようになったのだと告白しました。
スガナレルは、四方八方で情婦をつくるドン・ジュアンのやり方はけしからぬことだと忠告を与えました。
ドン・ジュアンは、恋愛の楽しみは、移り変わるなかにあると考えており、美しい女を見たら、口説の限りを尽くしてその心をなびかせずにはいられなくなるのであり、一人の女を生涯愛し続けると言う芸当は自分にはとてもできるものではないのだと語りました。
毎月のように結婚するという暮らしぶりが、神との取り決めに反することなのではないかとスガナレルが忠告すると、ドン・ジュアンは、自分に口出しをするなと怒りだしました。
スガナレルは、神さまは遅かれ早かれ、不信心者を罰することになるので、悪い暮らしをすればろくな死に方をしないだろうと忠告し、ドン・ジュアンが半年前に決闘で殺めた騎士のことを持ち出しました。
ドン・ジュアンは、その騎士は自分が決闘という正当な手段で殺めたものであり、許しも得ているのだと答えました。
しかしスガナレルは、その騎士の親戚や友人の恨みは消えないだろうと答えました。
ドン・ジュアンは、その話を途中で打ち切り、今回新しく惚れ込むことになった女について語り始めました。
それは、許婚者のいる若い娘でした。これから夫妻になろうとしている男女が仲良くしているのを見て嫉妬心を起こしたドン・ジュアンは、娘を手に入れることに決め、エルヴィールを置いて、二人が結婚式を挙げることになっているこの町へとやって来たのでした。
ドン・ジュアンは、その日許婚者が娘を舟遊びに連れていくことになっているので、ある手筈を整えてあることを語りました。そこへ、彼のあとを追ってやってきたエルヴィールが現れました。
第三景
自分が見限られたのかどうかわからずにやって来たエルヴィールは、ドン・ジュアンの冷たい顔を見て全てを悟ったものの、旅立ちの訳を直接聞かせて欲しいと頼みました。
ドン・ジュアンは、その理由をスガナレルに答えさせようとしました。スガナレルは困り果て、その理由を答えられませんでした。
ドン・ジュアン仕方なく、エルヴィールが修道院との誓いを破り、垣根を超えて来たことに神さまの妬みを感じ、反省したので、彼女を忘れるように逃げ出したのだと弁明しました。
エルヴィールは怒りだし、他人を辱めた不実には、いつか神さまから罰が下るだろうと予告し、女の執念を恐れるがいいと言って、去って行きました。
ドン・ジュアンは、しばらく思案したものの、次の恋をやり遂げる手立てを考え始め、スガナレルを呆れさせました。
第二幕
第一景
海岸に近い田舎で、百姓のピエロが、その婚約者シャルロットに、海で溺れた二人の男を助けたという話をしています。
その時ピエロは、友人のリュカと海岸で悪ふざけをしており、遠くの海に人間がこちらへ向かって泳いでくるのを見つけました。男たち二人が助けを求めて合図をしていたため、ピエロはリュカと二人でその男たちを引き上げたのでした。
助けた男のうちの一人は、非常に立派な服を着ていて、やって来た村の娘マチュリーヌに色目を使い始めました。
シャルロットは、ピエロの家で服を借りているその男たちを見に行ってみたいと言い始めました。
するとピエロは、行く行くは夫婦になろうと思っているシャルロットの、自分に対するつれない態度を責め、もう少し自分を可愛がって欲しいと頼みました。シャルロットは、精一杯ピエロを可愛がっているつもりだと答え、できるだけのことはやってみることを約束しました。
そのような話をしているうちに、二人はピエロの家までやってきました。
第二景
その家にいたのは、ドン・ジュアンとスガナレルでした。ドン・ジュアンは、女を追って船に乗り、思いもよらぬ突風でスガナレルとともに海に落とされていたのでした。
一命をとりとめたばかりのドン・ジュアンでしたが、早くも先ほど出会った百姓娘マチュリーヌを逃してはなるものかと考え始めていました。
しかしそこへシャルロットがやって来ると、ドン・ジュアンはマチュリーヌに劣らぬ別嬪だと考え、彼女を口説きにかかりました。
結婚をしていないのかと聞かれたシャルロットは、じきに隣家のピエロと一緒になるつもりだと答えました。
ドン・ジュアンは、自分はシャルロットにすっかり恋をしてしまったので、このけちな村から連れ出して、しかるべき場所へ住まわせたいと申し出ました。
シャルロットは、宮仕えをする人はすぐに娘を騙すと聞かされており、自分は操だけは大事にしているので、恥ずかしい目には会いたくないのだと答えました。
ドン・ジュアンは、これほどまでに美しい娘のことを騙そうとするはずがないと答え、結婚の約束を承知してくれるかと尋ねました。
シャルロットは、ドン・ジュアンのことを信じる気になり、叔母が許してくれるなら承諾すると答えました。
ドン・ジュアンは、その言葉の裏付けに接吻をして欲しいと頼みましたが、シャルロットは結婚までは待って欲しいと、その頼みを退けました。
第三景
そこへピエロがやってきて、ドン・ジュアンとシャルロットの間に割って入りました。
ドン・ジュアンは、自分の命を助けたピエロに平手打ちを喰らわせました。
シャルロットは、ドン・ジュアンから結婚を望まれたことを告白し、自分がドン・ジュアンの奥さんになれば、バターやチーズを高値で買ってあげると約束しました。
ドン・ジュアンは怒ったピエロと争いになり、間に入ったスガナレルは、ドン・ジュアンの平手打ちを受けました。
第四景
ピエロは、この顛末をシャルロットの叔母に言いつけに去って行きました。
ドン・ジュアンは、シャルロットを自分のものにした幸福に浸りました。
第五景
そこへマチュリーヌがやってきて、シャルロットを口説いているのかと聞きました。
ドン・ジュアンは、シャルロットが自分の女房になりたがっているので、マチュリーヌと約束済みだと答えているのだと答えました。
シャルロットからは、マチュリーヌに何の用があるのかと聞かれたドン・ジュアンは、マチュリーヌが自分の女房になりたがっているが、自分が欲しいのはシャルロットだけなのだと答えたと小声で言いました。
そのまま彼は、二人が会話をするのを避けさせようと試みましたが、シャルロットとマチュリーヌは、お互いにドン・ジュアンと結婚の約束をしたのは自分であり、手を出さないでほしいと主張し、いさかいになりました。相手の女と結婚の約束をしたのは本当なのかと詰め寄られたドン・ジュアンは、議論などいくらしても物事が片付くはずがないので、自分が結婚する段になれば、自分が二人のうちのどちらが自分の心を掴んでいるか自ずと分かるだろうと答えると、用事があると嘘をつき、その場を離れました。
第六景
ドン・ジュアンが愛しているのは自分だと争うシャルロットとマチュリーヌを憐れんだスガナレルは、先程のようなな話にうつつを抜かすことなく、村にじっとしているがよいと忠告しました。
第七景
スガナレルは、シャルロットとマチュリーヌに、自分の主人は人を騙すことしか考えていないいかさま師だと教え諭そうとしました。しかしそこへドン・ジュアンが戻ってくると、彼は主人の前では、自分の旦那は立派な人間だと請け合いました。
第八景
ドン・ジュアンの護衛の剣客ラ・ラメーは、十二人の騎馬隊がドン・ジュアンを追ってこの村へやって来ていると伝えました。その理由は分かりませんでしたが、この場所をすぐに引き上げるよう、ラ・ラメーはドン・ジュアンに勧めました。
第九景
ドン・ジュアンは、シャルロットとマチュリーヌに、急な用事ができたと別れを告げました。
第十景
ドン・ジュアンは、スガナレルに自分の衣装を着せ、自分の身代わりとなるように命じました。
第三幕
第一景
ドン・ジュアンは田舎者の格好を、スガナレルは医者の格好をして森の中を歩いています。スガナレルは会う人ごとに病気のことで意見を聞かれるようになっており、体面を保つために診察を行い、あてずっぽうに処方箋を書いてやっていました。
ドン・ジュアンは医術も全く信じておらず、医者もまたスガナレルと同様、病人を治す力などないのだと語りました。
医者の着物を着て知恵が湧いて来た気分になったスガナレルは、ドン・ジュアンと議論をしてみたいと言い始め、ほんとうに神や地獄、悪魔、あの世の存在を信じないのかと聞きました。
ドン・ジュアンがそれらの質問を笑い飛ばすと、スガナレルは、それでは何を信じるのかと聞きました。
ドン・ジュアンは、「二に二を足せば四になる、四に四を足せば八になる」を信じるのだと答えました。
スガナレルは、自分にはドン・ジュアンのような学問はないものの、人間の体という創造物がひとりでにできたことは、学者が議論しても説明のつかないことであり、到底考えられないのだと語りました。
ドン・ジュアンは、スガナレルの言葉を「ごたく」だとあしらいました。スガナレルは、今に地獄に落ちるだろうとドン・ジュアンに忠告を与えました。
このような議論を行う間に道に迷った二人は、通りがかりの男を呼んで道を聞きました。
第二景
貧者フランシスクは、この道をまっすぐ行けば町に着くが、森の外れには追い剥ぎが出ると伝えました。
十年もひとりで森に生活しているフランシスクは、自分に施し物をくれる慈悲深い人々の繁栄を祈りながら暮らしており、ドン・ジュアンに神のお加護があるよう祈る代わりの施しを求めました。
ドン・ジュアンは、神を呪うなら金貨を与えようと言いました。
フランシスクは、神を呪うくらいなら死んだ方がましだと、その金貨を受け取りませんでした。
結局ドン・ジュアンは、金貨をフランシスクにやりました。
一行は、三人がかりでひとりの男を襲っている現場に出くわしました。
第三景
ドン・ジュアンは、争いの中に飛び込み、襲われている男に助太刀して三人を追い払いました。
第四景
助け出された男ドン・カルロスは礼を言い、弟や共の者を見失い、探し求めているうちに追い剥ぎに遭っていたことを語りました。彼は、一家の名誉を守るために弟と共に敵を追う身の上でした。
ドン・ジュアンは、どのような事情なのかと聞きました。
するとドン・カルロスは、誘惑されて修道院から飛び出した妹を侮辱したドン・ジュアンに仇をとるために数日前から行方を尋ねていると答えました。
するとドン・ジュアンは、本人の友達だと名乗り、償いをさせるために望みの時間に望みの場所に連れて行くことを約束しました。
第五景
ドン・カルロスの弟ドン・アロンスがやって来て、兄と歩いているのがドン・ジュアン本人であると気づきました。スガナレルは逃げ出して行きました。
ドン・ジュアンは、自分の名を白状し、刀の柄に手をかけました。
ドン・カルロスは、ドン・ジュアンが自分の恩人であると言って、弟が戦おうとするのを制止しました。
すぐに敵討をしなければならないと主張するドン・アロンスと、猶予を与えようとするドン・カルロスの間で諍いが起こり、ドン・カルロスは、敵に恩を受けたままでは気持ちがすまされぬと、ドン・ジュアンに情けをかけ、敵討をさせませんでした。
ドン・ジュアンは、自分の償いは必ず果たすことを約束して、二人と別れました。
第六景
ドン・ジュアンは、逃げ出したスガナレルを叱りつけると、自分が命を助けたのがエルヴィールの兄であったことを伝え、りっぱな男を敵に回したことを残念だと語りました。
二人は立派な建物の前へと出て来ました。
それは、ドン・ジュアンの手にかかった騎士が建てさせた墓でした。自分で手にかけた人の墓を見に行くのは礼儀知らずだというスガナレルの忠告を聞かず、ドン・ジュアンは、その墓へと入りました。中には堂々とした廟と、騎士の像が建ててありました。
スガナレルは、その像の堂々としたたたずまいを恐れました。しかしドン・ジュアンは、せっかく訪ねたのだから、一緒に晩飯をやらないかと聞くようにスガナレルに聞きました。
石像に話しかけるという命令を馬鹿馬鹿しいと思いながら、スガナレルは、自分の主人と晩餐をとる気があるかと聞きました。
するとその石像がうなずき、恐れおののいたスガナレルは、これをドン・ジュアンに伝えました。
ドン・ジュアンは、改めて自ら自分の家に晩餐に来てくれないかと聞くと、再び像は頷きました。
ドン・ジュアンは、恐れることもなく、その場を後にしました。
第四幕
第一景
居間に帰ると、スガナレルは、神さまがドン・ジュアンの暮らしぶりに腹を立て、像を動かしたに違いないと恐れました。
しかし、ドン・ジュアンは、スガナレルの説教に腹を立て、これ以上ひとことでも話したら叩きのめすと脅し、夜食の準備をさせるようにと言いつけました。
第二景
使用人ラ・ヴィオレットは、出入り商人のディマンシュが借金返済の催促のためにやって来て、小一時間も座り込んでいることを伝えました。
ドン・ジュアンは、借金取りに居留守を使うことをよしとせず、ディマンシュを通すように伝えました。
第三景
ドン・ジュアンに出迎えられたディマンシュは、用件を語ろうとしましたが、ドン・ジュアンは、次々と話しかけて話を逸らせ、用件を話す機会を与えませんでした。
とうとう用件を言い出せなかったディマンシュが立ち上がると、ドン・ジュアンは、自ら見送りを行おうと申し出ました。
第四景
スガナレルと二人になったディマンシュは、ドン・ジュアンに対して金の話を持ち出せないでいることを訴えました。
スガナレルは、いつかドン・ジュアンは借金を払うだろうと請け合いました。
しかし自分にも借金がありることを指摘されたスガナレルは、ディマンシュを舞台の外へと押し出し、「おととい来い」と言いました。
第五景
ラ・ヴィオレットが、父親が来たことをドン・ジュアンに伝えました。
第六景
ドン・ジュアンの放埒に愛想が尽きていた父ドン・ルイは、人間のすることなど頼むに足りぬと、神さまにすべてをお任せするようにと忠告しました。
ドン・ジュアンは、子供が欲しいと熱心に祈った結果授かった子供であったものの、父親にとっては常に心配の種でした。世間体をつくろえない非行の数々に、ドン・ルイ自身の信頼も失われました。
ドン・ルイは、ドン・ジュアンの行いを祖先に顔向けできないとし、素行を改め、徳行を積むことが、貴族としての第一の称号であると説きました。
しかしどれだけ言っても効かないドン・ジュアンには、ドン・ルイ自らの手で懲らしめなければならないと考えており、早く死んでしまうことが一番利口なやり方だと言い放ちました。
第七景
父親の言葉にうんざりとしたドン・ジュアンに対し、スガナレルは、ドン・ジュアンの生き方に追従し、父親の言葉を聞き流すのではなく、肩を掴んで追い出してやればよかったのだと答えました。
第八景
ラゴタンは、ベールをかぶった婦人が会いに来たことを伝えました。
第九景
その婦人はエルヴィールでした。復讐の念に燃えていたものの、神のおかげで狂ったような恋情を追い払ったエルヴィールは、今ではドン・ジュアンに清らかな情けをかけ、身の上を心配してやって来たのでした。
エルヴィールは、神さまの情けも尽き果て、恐ろしい怒りが頭上に落ちてくるに違いないので、今すぐこれまでの行いを悔い改めるよう、涙ながらに訴えました。
ドン・ジュアンは泊まっていくようエルヴィールに勧めましたが、エルヴィールは、これだけのことを言うと去って行きました。
第十景
ドン・ジュアンは、去っていったエルヴィールに未練が生まれたことを、スガナレルに語りました。
彼女の忠告が効かなかったことを見て取ったスガナレルは、主人に呆れました。
ドン・ジュアンは、大急ぎで晩飯の支度をするようにスガナレルに命じました。
第十一景
ドン・ジュアンは、あと二、三十年ほど今の暮らしを楽しんでから、改心しようと語り、スガナレルを呆れさせました。
料理が運ばれてくると、スガナレルは一片の肉を頬張り、ドン・ジュアンに気づかれると、塩や胡椒の塩梅をみたのだと言い訳しました。
スガナレルは料理を勧め、皿に盛り始めました。脇見をしているうちに、ラゴタンがその皿を奪い去りました。
やがて戸を叩く音がして、スガナレルが様子を見に行き、仰天しながら帰って来て、騎士の像がやって来たことを伝えました。
第十二景
ドン・ジュアンは、騎士の像を迎え入れ、乾杯を行い、スガナレルに歌でもてなすように命じました。
しかし騎士の像は、それらのもてなしを受けようとせず、明日の晩自分の家へ招きたいが、来る勇気があるかと聞きました。
ドン・ジュアンは、スガナレルをお供にして、その招待を受けることを約束しました。
スガナレルは、翌日は自分の精進日だと嘘をつき、騎士の像の家へ行くことを拒否しました。
第五幕
第一景
ドン・ジュアンは、改心したと装い、長らく犯して来た罪を償い、神さまからのお許しを授かるよう努力したいとドン・ルイに申し出、自分が師と仰ぐべき人を選んで欲しいと頼みました。
ドン・ルイは息子の言葉に喜び、その足で死んだ妻にこれを報告しに行き、神さまにお礼の言葉を言上しようと言いました。
第二景
スガナレルも、ドン・ジュアンの改心に喜びました。
するとドン・ジュアンは、改心したなどというのは嘘で、父親を丸め込み、他の男から吹きかけられそうな面倒ごとから身を引こうという魂胆であることを明かしました。彼は、これからは偽善の皮をかぶって、信心深いようなふりをして、誰からも文句はつけられないように、こっそりと遊ぼうと考えており、さらには不信心な敵対者の非を責め立て、天に変わって裁きを下そうとしているのでした。
スガナレルは、ドン・ジュアンの悪党ぶりが頂点に達したと嘆き、このままだと地獄に落ちるだろうと必死に訴えましたが、ドン・ジュアンは、その忠告を気にもとめませんでした。
第三景
ドン・カルロスは、ドン・ジュアンに出会い、自分にとって腹蔵はないので、穏便に済ますために、自分の妹を妻として認めてくれるのかと聞きました。
ドン・ジュアンは、偽善を装いながら、これまでの非道な行いを悔い改めるために神の道に入るので、結婚することはできないのだと答えました。
ドン・カルロスは、正しい妻を得ることは神のお告げに従ったという考えに一致するのではないかと説得しました。
しかしドン・ジュアンは、エルヴィールもまた世を捨てる覚悟をしたので、自分たちは、同時に霊感を授かったのだと答えました。
ドン・カルロスは、一家の名誉のために妹と結婚してくれるよう望みました。
しかしドン・ジュアンは、その結婚では救いを得ることはできないだろうという神のお告げを得たのだと、その頼みを断りました。
ドン・カルロスは、納得することができず、いずれ果たし合いをするためにお目にかかるだろうと言いました。
ドン・ジュアンは、自分には果し合いをする気はないものの、どうしても向かってくるのであれば、受けて立つことを宣言しました。
第四景
スガナレルは、偽善者となったドン・ジュアンに愛想が尽きたと言いました。
そこへ亡霊が現れました。スガナレルは、ドン・ジュアンに諭しにやってきたのだと語りました。
第五景
ヴェールをかぶった女の姿の亡霊は、悔悟しないのであれば、破滅するだろうとドン・ジュアンに伝えました。
ドン・ジュアンが正体を見届けようとすると、亡霊は、鎌を手にした「時」の姿になりました。
ドン・ジュアンは、その亡霊に斬りかかりました。すると亡霊は、飛び去っていきました。
第六景
騎士の像に会ったドン・ジュアンは、像の家へと自分を案内させました。
騎士の像は、自分に手を貸してほしいと頼みました。
ドン・ジュアンが手を差し伸べると、騎士の像は彼の上に雷を落としました。ドン・ジュアンは、燃え盛る烈火に体じゅうを焼かれ、絶命しました。
第七景
スガナレルは、騙された人々は、ドン・ジュアンが死んで満足であろうが、給料が入らなくなった自分一人だけは可哀そうだと嘆きました。