チャールズ・ディケンズ作『クリスマス・キャロル』の詳しいあらすじを紹介するページです。
※ネタバレ内容を含みます。
※簡単なあらすじ、登場人物紹介、感想はこちら(『クリスマス・キャロル』トップ)
第一章 マーレイの亡霊
交際を嫌う孤独な男、エブニゼル・スクルージは、唯一の友人で共同経営者であったジェイコブ・マーレイを七年前に亡くしてから、「スクルージ・マーレイ合名会社」を一人で経営し続けていました。
彼は金銭欲が激しく、マーレイの葬式の時ですら商才をふるい、損のないように取引をやり遂げました。安月給で雇っていた書記の仕事を見張れるように事務所の扉はいつでも開けっぱなしにしており、書記は寒さに耐えながら仕事をしなければなりませんでした。誰もがスクルージのことを冷たい人間として嫌っており、近隣の住民はおろか、犬でさえも、彼に近づこうとするものはめったにいませんでした。
クリスマスの前夜、事務所にスクルージの甥がやってきて、翌日に行われる祝いにスクルージを招待しました。しかしクリスマスを馬鹿馬鹿しいことだと考えていたスクルージは、その招待を断りました。クリスマスは人々が人々を赦し、皆が心を打ち解け合う楽しい時期だと甥が説得を試みましたが、スクルージは、彼の言ったことを馬鹿馬鹿しいと感じ、いきり立ってさよならと言い放ちました。甥は文句を言わずに去って行きました。
事務所の書記が客を招き入れました。それは太った紳士で、貧困者や身寄りのない者たちへの寄付金申込書を持っていました。スクルージは、寄附金が必要な者たちは牢屋や救貧院に入れればいいと主張し、死んだとしても余計な人口が減るだけだと言って寄付金を払おうとはしませんでした。
紳士が諦めて帰ると、スクルージは得意になり、上機嫌で仕事に取り掛かりました。
仕事を終えると、書記が年に一度の休みを申し出ました。スクルージは書記に対し、休みを取るならその次の日はいつもより早く出社することを約束させました。
スクルージは、不景気な居酒屋で不景気な食事を済ませ、家に帰りました。そこはマーレイが以前住んでいた古ぼけた建物で、スクルージの他には誰も住んでおらず、他の部屋は貸事務所となっていました。
スクルージが部屋のドアに鍵を差し入れると、ドアの把手がマーレイの顔に見えました。恐れを知らなかったスクルージは、馬鹿馬鹿しいと思いながらも、何も異常がないか部屋の中を見て周り、二重に鍵を閉め、弱い火の前に座って粥を啜りました。
スクルージが寝ようとすると、家中の呼び鈴が一斉に鳴り出しました。そしてそれがぱたりと止むと、重い鎖のようなものを引きずる音が階下から戸口の前までやってきて、部屋に入り、スクルージの前に現れました。それはマーレイの幽霊でした。
彼はマーレイの幽霊を目の前にしても、自分の感覚がおかしくなっただけだと主張し、その存在を信じようとはしませんでした。しかし頭に巻いてあるものを取り除けたマーレイの下顎が胸のあたりまでぶら下がっているのを見て、スクルージは怯え上がり、その存在を信じるので助けてほしいと懇願しました。
マーレイの幽霊は、これまでもスクルージのそばにいたようでした。彼によると、人間であれば誰しも、その霊魂があちこちに赴く旅行をしなければならないことになっており、彼はこれから先も長く苦しい旅を続けなければならないようでした。彼が繋がれている鎖は、生きているときに自ら作った鎖であり、スクルージには自分のような運命から逃せるチャンスがあるということを知らせようと、現れたのでした。
マーレイは、これからスクルージのところに三人の幽霊が来ると言いました。第一の幽霊は、翌日の午前一時に、第二の幽霊は、その翌日の午前一時に、そして最後の幽霊は、さらにその翌日の十二時きっかりと現れるようでした。
それらの幽霊に来てもらわなければ、スクルージの人生は自分と同じようなものとなることを告げると、マーレイの幽霊は、自然と開いた窓から、空中に鎖をつけた幽霊たちが彷徨っている中へと姿を消して行きました。その幽霊たちは、人間に助力したいと願いながら、永久にその力を失ってしまった者たちの霊でした。
幽霊たちが消え失せると、スクルージは休息の必要なことを感じ、ぐっすりと眠り込みました。
第二章 第一の幽霊
スクルージが目を覚ますと、時刻は夜十二時でした。
彼は第一の幽霊が現れるという一時を待ちました。鐘が一時を打つと、白い髪で筋骨たくましく、頭からは煌々とした光を放つ幽霊が現れました。幽霊は、自分は過去のクリスマスの幽霊で、スクルージを改心させるために来たと、静かな優しい声で語りました。
幽霊に手を握られ、壁を抜けたスクルージは、少年の頃に過ごした田舎道にいることに気づきました。幽霊に連れられ、その街を歩くうちに、スクルージはかつての知人がクリスマスを祝っているのを見て、喜びで満たされました。幽霊は、友達に仲間外れにされて、一人ぼっちで学校にいる男の子がいると言いました。スクルージは、その子が自分であることを思い出しました。
スクルージと幽霊は、大家が没落した古ぼけた家に入りました。その中の瑣末で殺風景な部屋に、しょんぼりとたった一人で本を読んでいる少年時代の自分の姿を見て、スクルージは涙を流しました。
幽霊はスクルージに別のクリスマスを見せました。その頃にはスクルージは大きくなっていて、休暇中に皆が帰省し、やはり一人ぼっちでした。家の中に、スクルージの妹であるファンがやってきてキスをし、父親が優しくなったため、スクルージが帰ることを許されたと言いました。二人は校長先生に挨拶をして馬車に乗り込み、帰っていきました。
ファンは、その後結婚し、昨日スクルージの家に来た甥を産んで死んだようでした。
次に幽霊は、スクルージをある商店に連れて行きました。その中には、スクルージが以前奉公していた老人フェジウィグがいました。
フェジウィグ老人は、もうすっかり大人になっていたスクルージと、小僧仲間のディックを呼び、クリスマス・イブのために仕事をおしまいにして、二人に片付けを命じました。
きれいになった部屋に、オーケストラがやってきました。招待客が続々と集まり、二十組が一度に踊り出しました。フェジウィグ夫妻は見事なダンスを見せました。
十一時になると皆が去り、スクルージとディックだけが残りました。彼らは、心の底からフェジウィグのことを尊敬していました。それは、フェジウィグが自分たちを幸せにしようと苦労してくれたためでした。スクルージは、現在、自分が書記を大事に扱っていないことを思いだしました。
幽霊は次の過去へとスクルージを連れて行きました。スクルージは大人になっており、その頃にはあくせくと利益を求める男になっていました。
スクルージの前には、若い娘が座っていました。娘とスクルージは、以前、貧乏でもそれに満足し、将来を約束した仲でした。しかしスクルージが利益を求めるだけの男に変わってしまったため、娘は彼のことを愛しながら、去って行こうとしているのでした。
スクルージは苦しみ始め、もう幻影を見せるのをやめてくれと幽霊に懇願しました。しかし幽霊は、スクルージを羽交い締めにして、次の過去へと連れて行きました。
次の場面では、昔の彼女は母親になっており、たくさんの子供を抱えていました。賑やかな家に父親がプレゼントを持って帰ってきました。
父親は、妻に優しく微笑みながら、妻の昔の友達スクルージにあったことを伝えました。それはマーレイが死にかけていたクリスマスの日で、スクルージは部屋に一人で座っていたようでした。
この場面を見たスクルージは、これ以上自分に過去を見せないで欲しいと幽霊に懇願し、消灯用の帽子を掴んで頭にかぶせました。すると幽霊はつぶれていきました。
スクルージは疲れ切っており、寝床に入るや否や、深い眠りに落ち込みました、
第三章 第二の幽霊
スクルージが目を覚ますと、翌日の夜一時になっていました。
怯えながら幽霊が出てくるのを待っていると、どこからか赤い光が差し込んできました。スクルージはその光の源が隣の部屋にあることがわかりました。中から「お入り」という声が聞こえ、スクルージはその声に従いました。
隣の部屋は、森のように緑の葉が壁や天井に生い茂っていて、床にはさまざまなご馳走が並べられていました。そして長椅子の上には松明を持った陽気な巨人である第二の幽霊が座っていて、スクルージを出迎えました。
その幽霊は、現在のクリスマスの幽霊であると自己紹介しました。
幽霊に言われた通り、スクルージが着物に手を触れると、二人はクリスマスの朝の街道に立っていました。
雪落としをしている人々は陽気にはしゃぎ回り、店はこの日のために品を揃え、客たちは上機嫌で店内を駆け回っていました。
幽霊が持っている松明は、振りかざすだけで料理が美味しくなり、喧嘩している人々は元の上機嫌にもどりました。特に貧弱な食卓にはその香味が合うようでした。
幽霊は書記ボブ・クラチットの家にスクルージを連れて行きました。
ボブは、クラチット夫人、二番目の娘のベリンダ、長男のピーター、双子の男の子と女の子、そして足の不自由な小さなティムを養っていました。帽子屋に働きに出ていた長女のマーサは、このクリスマスのために久々に家に戻ってきており、教会へ行っていたボブとティムを待ち受けました。
ボブの家族は貧乏でしたが、この日のために鵞鳥の詰め物を注文し、子供たちは祝いの準備をしました。クラチット夫人が鵞鳥にナイフを突き刺すと、食卓は感嘆の声で溢れかえり、ボブはこれほどまでに良い鵞鳥を食べたことがないと思いました。クラチット夫人は最高のプディングをこしらえ、ボブは結婚以来の最大の成功だと褒めそやしました。
スクルージは、足の不自由なティムが長生きできるかと幽霊に聞きました。幽霊は、空っぽの席と使い手のない松葉杖が見えるので、その幻影が将来も変わらないのであればティムは死ぬだろうと言いました。スクルージはそれを聞いてひどく気を落としました。
ボブは、この日のご馳走のために寄付をくれたスクルージの健康を祝しました。クラチットの一家は皆、スクルージのことを嫌っていましたが、クリスマスに免じて、父親と共にスクルージの健康を祝しました。
この家族は、貧しくても幸福で感謝し、互いに愛し合っていました。スクルージは彼らから目を離せませんでした。
スクルージは幽霊と一緒に街の光景を眺めていましたが、唐突に、荒涼とした沼地に立っていることに気づきました。それは坑夫の住んでいるところでした。一軒の小屋に入ると、そこにはおじいさんとおばあさん、その子供たち、孫たち、曽孫たちがクリスマスを祝っていました。
次に幽霊はスクルージを荒天続きの暗礁に立つ一本の灯台に連れて行きました。こんなところでさえ、灯台を守る二人の男が祝杯をあげながらクリスマスを祝っていました。
陸地から離れた船の上でも、船員たちが家を恋しがりながら、クリスマスの歌を歌い、昔のクリスマスについて仲間と話していました。
幽霊はスクルージを甥の家へ連れてきました。甥は妻と暮らしており、友人を呼んで談笑していました。話題は、クリスマスのことをくだらないと言うスクルージについてでした。甥の妻は、その姉妹と共に、自分の財産を自分の役にも他人の役にも立てようとしないスクルージのような人には我慢ができないと言いました。しかし甥は、スクルージについて、そのむら気で迷惑を被っているのはスクルージ自身であるため、気の毒に思っていて、毎年上機嫌でスクルージの家にクリスマスの祝いの誘いを行なうつもりでいるようでした。
一同はゲームを始めました。スクルージは、自分が人から見えないということを忘れて、そのゲームに夢中になって参加しました。
甥の頭の中に浮かんだものを当てるゲームが始まりました。いくつかの質問がなされ、その答えがスクルージであることがわかると、皆は自分たちに楽しみを与えてくれたスクルージの健康を祝しました。
スクルージは陽気になりました。
二人は多くの家庭を訪れました。幽霊はその全ての家庭に幸福をもたらし、それにともなってだんだんと歳をとっていくように見えました。幽霊の寿命はこのクリスマスの夜の十二時で終わるようでした。
最後に、幽霊は、着物の中から二人の男の子と女の子を取り出しました。その子たちは、ひどい身なりで痩せこけており、見るからに恐ろしい形相でこちらを睨みつけました。スクルージはその子たちを見てぞっとしました。
それらは、『無知』と『欠乏』にとりつかれ、自分の父親を訴えてその幽霊にしがみついているのでした。
スクルージはその子たちを心配し、彼らに逃れ場所や資力がないのかと聞きました。すると幽霊は「監獄はないのかね」と、スクルージが寄付金を集めていた男に言い放った言葉を繰り返し、スクルージのことを嘲りました。
時計が十二時を打つと第二の幽霊は消え、第三の幽霊が現れました。
第四章 最後の幽霊
マーレイが未来の幽霊だと言っていた第三の幽霊は、真っ黒な衣に包まれ、外から見ることができるのは、差し伸べられている手だけでした。それは背が高くて威厳に満ち、口もきかなければ、身動きもしませんでした。
スクルージは、その幽霊の恐ろしさに震え上がりましたが、心を入れ替えたいので、連れて行って欲しいと頼みました。
二人は市の中心部にある商人たちのあつまる取引所に入り、実業家たちの会話を聞きました。その実業家たちは、昨夜死んだ男についての話をしていました。その男の葬儀には、参列するような者は誰もいないようでした。実業家たちは、弁当が出るならその葬儀に行ってもいいと、笑いながら語り合いました。
次に幽霊は、スクルージが商売上大切にしていた二人の有力な実業家のところへ連れていきました。その実業家は、その死んだ男のことを悪魔呼ばわりしました。
幽霊は、街の場末のような場所へ、スクルージを連れていきました。そこの一角にある、鉄屑などが積み重なっている店に七十歳ほどの老人が座り込んでいました。そこの店に二人の荷物を抱えた女が入りました。二人の女のうちの一人は、先程の死んだ男が身につけていたものや、寝台のカーテンをくすねてきて、それを老人の店で金に換えようとしていました。その死んだ男には寄り添う者が誰もいなかったため、身ぐるみ剥がすことができたようでした。
スクルージは、自分もこの死んだ男のようになるかもしれなかったのだということを幽霊が悟らせようとしているのだと思いました。
気づくとスクルージは、一つの寝台の横に立っていました。その寝台には、何もかも見ぐるみ剥がされ、そばに寄り添うもののない男の遺体でした。幽霊は覆いのかぶさった男の頭を指差しましたが、スクルージはその覆いを撮る勇気が持てませんでした。
スクルージは、その男の死に心を動かされる者があるなら、その人を自分に見せて欲しいと頼みました。
するとスクルージは、母親と子供たちがいる、ある部屋にやってきました。その家に父親が帰ってきました。母親は、自分たちが破産したのかと聞きました。すると父親は、無情な債権者であるその男が死んだのだと伝えました。母親は、その男の死を心からありがたいと思いました。
スクルージはもう少し優しい気持ちが死んだ人に注がれているのを見せてほしいと頼みました。すると幽霊は、クラチットの家へスクルージを連れていきました。
そこでは、クラチット夫人とピーターがボブの帰りを待っていました。ボブは帰ってくると、死んだティムのことを思い、泣き始めました。一家は火の回りに集まって話し合い、これからはティムのことを忘れずに、仲良く暮らすことを誓い合いました。
スクルージは、自分の未来の姿を見せてほしいと幽霊に頼みました。幽霊は墓地へとスクルージを連れて行きました。幽霊は一つの墓を指差しました。その墓に自分の名前が書かれているのを見たスクルージは、先ほど見た遺体が自分のものであることに気づきました。彼は幽霊の前にひれ伏しながら、三人の幽霊の教えの中で生き、心からクリスマスを尊び、一年中その気持ちで過ごすようにすることを誓いました。スクルージは、未来は変えられると言って欲しいと懇願しましたが、幽霊はそれに応えることなく姿を消してしまいました。
第五章 事の終り
スクルージは、三人の幽霊が教えてくれた過去と現在と未来の中に生きることを誓い、マーレイに感謝しました。
クリスマスを祝う気持ちに興奮したスクルージは、晴れやかに笑い、窓から顔を出して外にいる少年に話しかけ、その少年に七面鳥を買ってきて欲しいと頼みました。そして届いた七面鳥を、匿名でボブ・クラチットのところへ送ってやりました。彼はクリスマスの前の晩、マーレイの顔に見えた把手を見て、それを生涯大事にすることを決めました。
やってきた七面鳥はあまりに大きく、スクルージは笑いながら代金と少年への駄賃を払い、息も切れ切れに笑い出し、笑っているうちに泣き出してしまいました。
スクルージはにこやかに微笑しながら街頭へと出て行きました。彼があまりに愉快そうなので、人々はクリスマスおめでとうと声をかけました。
彼は寄付金申込書を持ってきた紳士に出会うと、声をかけ、多額の寄付を申し出ました。
それから彼は思い切って甥の家に入り、ご馳走になりに来たので入れて欲しいと頼み、真心こもった歓迎を受けました。和気あいあいとした空気を満喫し、彼はその宴会に幸福を感じました。
翌日、スクルージは事務所へ出かけ、遅れてくるボブ・クラチットを待ちました。そしてボブがやってくると、いつもの厳めしい調子でボブに話しかけるふりをした後で、給料を上げてやると宣言し、誠意のこもった声でクリスマスおめでとうと言いました。
その後スクルージは、ボブの家族に惜しみない援助を与え、実際には死んでいなかったティムの第二の父親となりました。
すっかり変わってしまったスクルージを見て、人々は笑いました。しかし彼は一向に気にかけず、善い人間になりました。
その後スクルージは禁酒主義を貫き、クリスマスの祝い方を知っている人があるとすれば、彼こそがその人だと言われるようになりました。