アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海』の登場人物、あらすじ、感想

アーネスト・ヘミングウェイ作『老人と海』の登場人物、あらすじ、感想を紹介するページです。ネタバレ内容を含みます。

『老人と海』の登場人物

老人(サンチャゴ)
 ハバナ近郊の町に住む漁師。痩せて深い皺が刻まれ、頬にはしみができ、過去に網を操ってつけた深い傷跡を持つが、眼だけは不屈な正気がある。妻は故人。アフリカに通う船の水夫だったことがある。八十四日も一匹も魚を釣っていなかった。

少年
 五歳の頃から老人の船に乗り込んでいたが、四十日間魚が取れない日が続き、両親によって別の船に乗せられていた。老人を慕っている。

『老人と海』のあらすじ

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 老人と少年は一緒に魚をとっていました。少年は五歳の頃から老人の船に乗り、老人のことを心から慕っていました。しかし一匹も釣れない日が四十日続くと、少年は両親によって他の船へと乗り込むことになりました。その後も老人は一人で漁に出ましたが、釣れない日数は八十四日になっていました。
 少年は新しく乗り込んだ船で魚を何匹か釣り上げていましたが、再び老人と二人で船に乗りたいと思っていました。老人が一匹も魚を取らずに帰ってくると少年は心を痛め、道具を片付ける手伝いをして、夕飯を運んでやり、魚の餌をあげました。

 老人は日が昇る前に目を覚ますと、少年を起こしに行き、二人で道具を船まで運びました。小舟を水の中に押し出すと、二人はお互いの漁がうまく行くようにと声をかけあい、別れました。

 老人は暗がりの中を大海へ漕ぎ始めました。遠出をするつもりでした。明るくなる前に、老人は四つの餌を海底に下ろしました。
 しばらくして老人がひと眠りしようか考えていると、綱の下にある餌魚に、大きなまかじきが食らいついたようでした。その巨大な魚は、鉤にかかった獲物をくわえたまま、悠々と船を引っ張って行きました。
 魚は進路を変えずに泳ぎ続けました。老人は少年のことを考えて、「あの子がいたらなあ」と何度も言いました。水面に上がってきた魚に何度も倒されて流血し、左手をつらせながらも、三日の間綱を離さず、ついに力尽きて浮かんできた魚に銛を突き立てて仕留めました。

 魚は信じられないような大きさで、船に乗せることができなかったので、老人は魚を船に横付けになるようにくくりつけて帰路につきました。しかし間もなく鮫の襲撃を受け、翌日町に着いた頃には、魚の胴体はすべてなくなり、大きな尾から伸びた背骨と、くちばしを持った頭部の一部が残されているだけでした。老人は打ちのめされて自宅に帰り、眠りに落ちました。

 朝になり、老人が小屋で寝ているのを見つけた少年は、声を立てて泣きました。老人が船に残した魚の大きさを測ると、それは十八フィートもありました。
 老人が目を覚ますと、少年はコーヒーを注いでやり、魚のくちばしをもらう約束をしました。老人は話し相手がいるということがどれだけ楽しいことかを初めて知りました。少年は、教えてもらうことがたくさんあるので、また一緒に漁に行こうと言いました。

作品の概要と管理人の感想

 『老人と海』(The Old Man and The Sea)は、1952年に発表されたアーネスト・ヘミングウェイの生前に発表された最後の作品です。ハバナ近郊の街に住む年老いた漁師のサンチャゴを主人公に、彼を慕う少年との心温まるやり取りと、巨大な魚との壮絶な格闘が描かれた名作です。

 ヘミングウェイは1934年に自ら購入した船に乗り込み、カリブ海の旅に出ます。彼は1935年に始めてキューバのビミニ島を訪れ、フィッシングを楽しむと、その後の人生の多くの時間をキューバにて過ごしました。その経験をもとに書かれたこの作品は、「自分の人生を通じて最良の作品」とヘミングウェイ自身も言ったそうです。そしてこの作品が発売されると、ヘミングウェイは世界的な作家となり、ピューリッツァ賞やノーベル賞を獲得するに至りました。
 

 「老人が巨大な魚と格闘し、それを釣り上げる」というかなりシンプルな構成ながら、感動を禁じ得ない作品です。
 八十四日間魚を捕ることができなかった老人は、これまでに見たことのないほど大きな魚が自分の綱に食いつくと、それを必ず仕留めることを決心します。三日間曳かれ続け、ようやく魚を殺しますが、その帰り道に鮫の襲撃に遭って、魚の大半を失ってしまいます。
 苦労して手に入れたものを失ってしまうという哀しさを感じるこの作品ですが、海のことを知り尽くした老人が、魚を仕留めた後に船に乗せることができないことや、その後の鮫の襲撃を予想することができなかったとは思えません。おそらく老人は、魚を町まで持って帰ることができないとほとんど最初から気づきながらも、魚と運命を共にする選択をしたのではないでしょうか。そのように考えると、老人が魚に抱いた敬意というものが、より引き立つように感じられます。

 また、海上での過酷な環境とは対照的に、老人と少年の会話は、とても心が温まります。

「毛布にくるまっていたほうがいいよ」少年はいった、「ぼくの生きているあいだ、食べずに漁はさせないぜ」
「それじゃ、せいぜい長生きしてもらわなくちゃ、体に気をつけてな」老人はそう答えた。

『老人と海』ヘミングウェイ 福田恆存訳

 アメリカ文学らしい気の利いたセリフ回しで、少年と老人のお互いをいたわる心が現れています。
 老人が釣り上げた魚を持ち帰った後、少年は「これからは二人一緒に行こうね。ぼく、いろんなこと教わりたいんだもの」と言います。これは釣りの技術というよりは、老人の生きざまを学びたいということでしょうか。少年からの尊敬を今まで以上に勝ち取ったということを考えれば、老人が魚を仕留めたことは、徒労ではなかったのかもしれません。