サン=テグジュペリ『星の王子さま』の詳しいあらすじ

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ作『星の王子さま』の詳しいあらすじを紹介するページです。

※簡単なあらすじ、登場人物、管理人の感想はこちら

※ネタバレ内容を含みます。

「ぼく」が描いたボアの絵

 画家になる夢を抱いていた六歳のぼくは、象を飲み込んだボアの絵を描きました。しかし、その絵は、誰に見せても帽子にしか見られませんでした。そのためぼくは、今度は象を飲み込んだボアの内側の絵を描きました。その絵は大人から悪評を受けたため、ぼくは画家になる夢を諦め、パイロットになりました。

 それ以来、ぼくは最初に描いたボアの絵を、出会う人すべてに見せるようになりました。しかし誰もが口を揃えて、これは帽子ですね、と答えました。そのため、ぼくは本当に思いの通じる人に会うことができませんでした。

王子さまとの出会い

 六年前、ぼくは人が住む場所から千マイルも離れたサハラ砂漠に不時着しました。砂の上に横たわって過ごした最初の夜が明けるころ「ヒツジの絵を描いて」と話しかけられて、ぼくは目覚めました。絵の描き方を知らなかったぼくは、象を飲み込んだボアの絵を描いて見せました。するとその少年は、それが象を飲み込んだボアであることをすぐに理解し、自分が描いて欲しいのはボアではなくてヒツジの絵だと主張しました。

 ぼくはヒツジの絵を描いて見せましたが、それらは病気みたいだったり、雄ヒツジだったり、年寄りだったりで、少年の気に召さないものでした。ぼくは忍耐に限界を感じ、箱の絵を描いて、その中にヒツジがいると言いました。するとその絵は少年の気に入り、ぼくはその少年と仲良くなりました。

 その少年は、とても小さな惑星の王子さまでした。その惑星に住んでいた頃、王子さまは、放っておくとすぐに星全体に広がってしまうバオバブの若木を抜くことを毎朝の日課にし、少し椅子を運ぶだけで現れる夕日を一日に何度も眺めることを心の慰めにして生活していました。

 王子さまは唐突に、ヒツジは花も食べるのかと聞きました。ぼくは、ヒツジは何でも食べると答えました。するも王子さまは、ヒツジがトゲのある花も食べるなら、トゲは何のためにあるのかと聞きました。

 ぼくは飛行機を直すことに焦っていたため、花はただ意地悪をしたいために、何の役にも立たないトゲを持っているのだと適当に返事をしました。

 王子さまは怒りだし、自分の星には他の場所には生えていない一輪の花があって、もしヒツジがそれを食べてしまったら、その花は無くなってしまうのだと言いました。そして、もしも何百万もの星の中にたった一輪ある花を愛していたら、その人は星空を見上げるだけで幸せになれるのに、ヒツジが花を食べてしまったら、その人にとっては全ての星の光が消えてしまうのと同じことなのだと言いました。

 王子さまが泣き始めたため、ぼくは両腕で彼を抱いて慰めてやり、ヒツジの口輪と、花を囲むための柵を描いてあげると約束しました。

王子さまの地球にたどり着くまでの軌跡

 王子さまがまだ自分の惑星にいた頃、その星の花は、何日も準備をかけて自分が美しくなるための色や衣装を選びました。その花が咲いた時、王子さまはその美しさに感動を抑えることができませんでした。

 しかし、その花は猜疑心と虚栄心が強く、扱いに困った王子さまは、その花から逃げ出すことを決めました。

 出発の日、王子さまは、自分の惑星を片付け、ご飯を温めるために使っている火山を掃除し、バオバブの芽を抜きました。別れを告げると、花は涙を見せるのを我慢しながら、王子さまを愛していたことを告げました。

 自分の惑星を立ち去った王子さまは、見聞を広めるために他の惑星に立ち寄ることにしました。

 最初の星には一人の王様が住んでいました。王様は、王子さまを臣民と呼び、自分の権威が尊重されるために、王子さまにさまざまな命令を下しました。しかし根がいい人だったので、王子さまがやりたいと思ったことばかり命じました。

 王子さまは、王様が何を統治しているのかを聞きました。すると王様は、すべてだと答えました。

 王子さまはその言葉を信じて驚き、もし王様がすべてを統治しているのなら、夕日を何度も眺められるだろうと思いました。王子さまが夕日を見たいとねだると、夕方の七時四十分頃まで待つようにと王様は命じました。

 王子さまは退屈になり、出発することを告げました。臣民ができたことを得意にしていた王様は、王子さまを出発させないために法務大臣に任じ、自分自身や星にいるネズミを裁くようにと言いました。

 王子さまは大人というのは変なものだと考えながら旅路へとつきました。

 二番目の星には自惚れ屋が住んでいました。自惚れやは王子さまに拍手を求め、王子さまが拍手をすると帽子を持ち上げました。自惚れやは、この星で最も優れている自分を崇拝しているかと聞きました。王子さまがこの星には一人しかいないと言うと、自惚れ屋は、それでも崇拝してほしいと言いました。

 三番目の星には酒飲みがいました。酒飲みは酒を飲むことを忘れるために酒を飲んでいました。王子さまは、その酒飲みを見て悲しい気持ちになりました。

 四番目の星にはビジネスマンがいました。ビジネスマンは、他の星を所有することを最初に思いついたため、それらを所有できると思っていました。さらに彼はそれらの星の数を数えて紙に書き、その紙を銀行に預けて運用しようとしていました。それらの行動が星の役に立っているとは思えないと王子さまが言うと、ビジネスマンは何も答えられませんでした。
 王子さまは再び、大人は奇妙だと思いました。

 五番目の星には、一本の街灯と、一人の点灯夫がいるだけの小さな星でした。その点灯夫は、規則どおりに昼間に街灯を消し、夜につける作業を繰り返していました。最近は星が前よりも早く回るようになったため、彼は一分ごとに街灯をつけたり消したりしなければなりませんでした。王子さまは、その点灯夫がほかの星の大人よりも好きでした。それは彼が何かの世話をしているからでした。しかしその星は狭すぎたので、王子さまはその星にとどまることを諦めました。

 六番目の大きな星は、地理学者が住んでいました。地理学者は、探検家の言うことを聞き、証拠の品を提出させて、それをノートに書くという仕事をするようでした。しかしその星には探検家がいなかったため、その地理学者は自分の星のことを何も知りませんでした。

 地理学者は、山のことは書いても、花のような儚いものは書かないと言いました。王子さまは、自分が儚い花を自分の星に置き去りにしてしまったことを初めて後悔しました。

 地理学者は地球に来ることを王子さまに勧めました。

地球に降り立った王子さま

 七番目の星は地球でした。王子さまは砂漠の真ん中に降り立ち、そこにいたヘビに話しかけました。そのヘビは、触ったものをもとのところに送り返すことのできる能力を持っていました。あまりにも純粋で弱く見える王子さまのことを心配したヘビは、自分の星への想いが募ったら送り返すことができると言いました。

 王子さまは地味な花に話しかけ、人間がどこにいるかを聞きました。その花によると、人間はこの星に六人か七人はいるようでした。その花は、人間は根がなくて風に飛ばされるので、生きるのが大変だと言いました。

 王子さまは高い山に登り、頂上からおはようと声をかけましたが、帰ってくるのはおはようというこだまだけでした。地球に住む人間が言われたことを返すばかりだと思った王子さまは、いつも話しかけてくれていた自分の星の花のことを想い出しました。

 王子さまは薔薇の庭園を見つけました。彼は宇宙に一つしかないと思っていた花が五千本もあるのをみて、悲しい気持ちになりました。地球とは反対に、自分の星には膝くらいの火山が三つあるだけであることを思い出した彼は、自分が立派な王子とは言えないと思って泣きました。

 王子さまにキツネが話しかけました。そのキツネは、もともと数ある中の一人と一匹であった人間とキツネが、お互いに唯一の関係になることに憧れを持っていて、自分を飼い慣らして欲しいと王子さまに頼みました。王子さまはキツネを飼い慣らしました。

 出発の日が近づくと、キツネは、別れを悲しみながら、もう一度庭園に行ってバラを見てみるように言いました。

 キツネと唯一の関係を築いていた王子さまは、自分の星にある自分の花が、庭園にある五千本のバラ全てを集めたよりも大事だということに気づきました。

 別れを告げに行くと、キツネは、王子様がバラのために費やした時間だけ、バラは王子様にとって大事な存在になり、王子さまはそのバラに対して責任があることを教えました。

 王子さまは、線路の切り替えを行なう転轍手に挨拶し、旅行者が何かを探しているのかと聞きました。すると、転轍手は、子供だけが窓に顔を押し付けて何かを探していると答えました。王子さまは、子供たちは、自分が何を探しているのか知っているのだと語りました。

 王子さまは商人に出会いました。商人は、週一回飲めば水を飲まなくて済む薬を売っていました。その薬を飲むと週に五十三分の時間を節約できるようです。しかし王子さまは、自分ならその時間を、泉のほうにぶらぶらと歩いて行くのに使うと思いました。

井戸を探す「ぼく」と王子さま

 ぼくは、王子さまにこれらの話を聞きながら、井戸を探すために何時間も黙ったままで歩き続けました。持っていた水はすべて飲み干しました。王子さまは、砂漠が綺麗なのは、どこかに井戸を一つ隠しているからだと語りました。

 王子さまが眠ると、ぼくは彼を腕に抱いて歩き続けました。眠る王子さまを見ると心を揺すぶられ、彼を守らなければならないと思いました。

 明け方になってぼくは井戸を見つけました。ぼくは王子さまのために桶をひきあげ、水を飲ませてやりました。ぼくはその水の美味しさが、王子さまの心に響いたのを感じました。それはぼくが自分で探し当てて、滑車で引き上げて得た水であったためでした。

 ヒツジの口輪を描くという約束を忘れないでほしいと頼まれたぼくは、口輪を描き、その絵を王子さまに手渡しました。明日は、王子さまが地球に落ちてきた記念日のようでした。王子さまはその記念日のために、自分が落ちてきたところへ向かって砂漠の中を歩き続けていたことを、ぼくは知りました。

 王子さまは、翌日の朝、飛行機を直した後でここに戻ってきて欲しいとぼくに頼みました。

王子さまとの別れ

 翌日の夕方、ぼくが戻ると、王子さまは毒ヘビに自分を噛ませていました。彼はぼくが飛行機の修理に成功したことをなぜか知っていて、それを喜びました。今晩、ちょうど地球に落ちてきてから一年後、王子さまの星がぼくたちの真上を通るようでした。

 王子さまは、自分たちが友達になったことで、ぼくは夜空の星のうちのどれかに王子さまがいると思うことができ、星空を見上げるだけで笑うことができるようになるだろうと言いました。

 その夜、王子さまがひっそりと去っていったのに気づいたぼくは、王子さまのことを追いかけました。

 王子さまは、遠い星に身体を持っていくことができないため、毒ヘビに自分の身体を噛んでもらい、古い殻を脱ぎ捨てて自分の星へと帰るようでした。星にいる花に対する責任があるために帰らなければならないのだと言い残した彼は、静かに倒れました。

 その次の明け方、王子さまの身体はその場から消えてなくなったので、ぼくは彼が自分の星に帰ったということを理解しました。

その後

 ぼくは悲しみを感じながら生還しました。

 今ではその悲しみも少し消えましたが、ぼくは口輪の絵に革紐をつけるのを忘れたことが気にかかっています。ヒツジはその花を食べてしまったのか、それとも王子様が花にガラスの鉢をかぶせ、羊を見張っているから、花は食べられていないのか、その答えがどれほど大事なことなのか、大人たちは理解できないでしょう。