サン=テグジュペリ『星の王子さま』の登場人物、あらすじ、感想

 『星の王子さま』は、1943年に発表された、パイロットとしても知られるフランス人作家アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの小説です。
 第二次世界大戦中、偵察隊として軍隊に召集されていたサン=テグジュペリは、ナチス・ドイツによる侵略でフランスが降伏したため、アメリカへ亡命しました。『夜間飛行』や『人間の土地』などの作品により、すでに作家としてのキャリアを積み上げていたサン=テグジュペリは、亡命先であるニューヨークの出版社から小説を書くことを提案され、サハラ砂漠に不時着した時の経験をもとに、この『星の王子さま』を書き上げました。
 アメリカでの出版後、この作品は200以上の言語に訳され、現在まで約1億4000万部を売り上げ、作品中に散りばめられている数々の名言や、作者自身が描いた愛らしい挿絵、そして切なくも温かいストーリーにより、世界中で愛されています。
 日本においてもファンは多く、現在まで600万部以上を売り上げ、箱根の「星の王子さまミュージアム」や、寄居の「星の王子さまパーキングエリア」などのテーマパークも作られています。(ちなみに、原題の『Le Petit Prince』は、直訳すると『小さな王子さま』となりますが、1943年の初版で『星の王子さま』という題がつけられ、現在ではこちらの方が一般に知られるようになっています。)

 このページでは、『星の王子さま』の登場人物、あらすじ、感想を紹介します。


星の王子さま (集英社文庫)

※ネタバレ内容を含みます。

『星の王子さま』の登場人物

ぼく
六歳の頃に描いた「象を飲み込んだボア」の絵が悪評を受けて画家になる夢を諦め、本当に心を通じ合わせる人を見つけられないままパイロットになる。六年前に人が住む場所から千マイル離れたサハラ砂漠に不時着し、王子さまに出会う。

王子さま
小惑星に一人で住んでいた少年。毎朝バオバブの若木を抜くことを日課にし、夕日を見ることだけを心の慰めにして生活していた。自分の星に咲いた花と喧嘩して逃げ出し、地球へとやってくる。


王子さまの惑星に芽を出し、何日も準備をかけて自分が美しくなるための色や衣装を選んで咲く。四本の棘がある。王子さまを愛していたが、猜疑心と虚栄心が強く、王子さまを困らせる。

王様
王子さまが最初に立ち寄った惑星の住人。何を統治しているのかと聞かれると「すべてだ」と答える。自分の権威のために、王子さまにさまざまな命令を下そうとするが、根が優しいため、王子さまがやりたいことだけを命じる。

自惚れ屋
王子さまが二番目に立ち寄った惑星の住人。王子さまに拍手を求め、拍手をすると帽子を持ち上げて応える。崇拝を求めている。

酒飲み
王子さまが三番目に立ち寄った惑星の住人。酒を飲むことを忘れるために酒を飲んでいる。

ビジネスマン
王子さまが四番目に立ち寄った惑星の住人。他の星を所有し、その数を数えた紙を銀行に預けて運用しようとしている。

点灯夫
王子さまが五番目に立ち寄った惑星の住人。規則通りに昼間に街灯を消し、夜につける作業をしている。以前よりも惑星が早く回るようになったため、一分ごとにその作業をしなければならなくなっている。

地理学者
王子さまが六番目に立ち寄った惑星の住人。探検家の言うことを聞き、証拠の品を提出させて、それをノートに書くという仕事をするが、探検家がいないため、その星のことを何も知らない。王子さまに地球を訪れることを勧める。

ヘビ
王子さまが地球に降り立って初めて話しかけた動物。もとの場所に人を送り返す能力を持っている。

地味な花
地球の砂漠に咲いている。王子さまに人間がどこにいるのかを聞かれ、六人か七人はいるはずだと答える。人間には根がないため、生きるのが大変だと思っている。

キツネ
飼いならされることに憧れを持っており、王子さまに自分を飼いならしてほしいと頼む。自分の惑星にあった花から逃げ出してきた王子さまに、その花に対して責任があるということを教える。

転轍手
線路の切り替えを行い、やってきた汽車を右と左に振り分ける。旅行者が何を探しているのかと王子さまに聞かれ、子供だけが窓に顔を押しつけて何かを探していると答える。

商人
週一回の服用で、水を飲まなくて済むようになる薬を売っている。

『星の王子さま』の簡単なあらすじ

※詳しいあらすじはこちら

 六年前、人が住む場所からかけ離れたサハラ砂漠に不時着したパイロットの「ぼく」は、ある一人の少年に話しかけられました。その少年は、ほかの小さな惑星に一人で住んでいた王子さまでした。

 その王子さまが自分の星にいた時、すぐに星全体に広がってしまうバオバブの若木を抜くことを毎朝の日課にし、夕日を見ることだけを心の慰めにして生活していました。ある時、その惑星に花が咲き、王子さまはその花の美しさに感動して涙を流しました。その花は王子さまを愛していましたが、猜疑心と好奇心が強かったため、王子さまは扱いに困り、惑星を逃げ出しました。

 いくつかの惑星に立ち寄った後、地球に降り立った王子さまは、薔薇の庭園を見つけ、宇宙に一つしかないと思っていた花が五千本もあるのを見て悲しい気持ちになりました。しかし、話しかけてきたキツネと友達になったことによって、庭園に咲いていた五千本の花よりも、自分とっては惑星に咲いた一輪の花が大切であり、自分がその花に対して責任があったことに彼は気づきました。

 その後、「ぼく」と出会った王子さまは、一緒に砂漠を歩いて、一年前に地球に降り立った場所に辿り着き、井戸を見つけて喉を潤しました。そして星へ帰るため、噛んだものを元いた場所に送り返すことのできる毒ヘビに自分の身体を噛んでもらいました。王子さまは、自分たちが友達になったことで、「ぼく」は夜空を見上げるだけで、その中にいる自分を思って笑うことができるだろうと言いました。「ぼく」は、以前せがまれて描いたヒツジが、彼の花を食べないように、口輪も描いてやりました。
 ヘビの毒が回った王子さまはその場に倒れ、自分の星へと帰って行きました。 「ぼく」は悲しみを感じながら、修理した飛行機を使って帰還しました。

 それから六年の時が経ち、「ぼく」は、王子さまに描いてやったヒツジの口輪に革紐をつけるのを忘れてしまったことが気にかかっています。果たしてヒツジは王子さまの花を食べてしまったのか、その答えがどれほど大事なことなのか、大人たちは理解できないでしょう。

管理人の感想

 世界中でベストセラーになっている『星の王子さま』は、数多くの大切なことを教えてくれる作品です。作品中のいたるところに散りばめられている素敵な名言は、心の中に大事にしまっておきたくなるようなものばかりです。

「大切なものは、目に見えない」

「大人というのは何もわかっていないから、子供の方はいつも説明しなければならなくてうんざりしてしまう」

「もしも誰かが、何百万もの星の中のたった1つの星に咲く花を愛していたら、その人は星空を見るだけで幸せになれる。」

「砂漠がきれいなのは」と王子さまは言った、「どこかに井戸を1つ隠しているからだよ」

                『星の王子さま』(集英社文庫)より引用

 これらの名言は、深く心に残るものですが、教訓めいてはいません。結果として読者である私たちが教訓として受け止めることはあっても、それを押し付けられているという感覚に陥ることは全くありません。それは、王子さまが他人の言葉を借りているのではなく、様々な人々との関わりによって自ら学びとったことが、そのまま言葉になって現れているからだと思います。

 王子さまは、たった一人で自分の惑星に住んでいた少年です。彼はその星に咲いた美しい花と別れ、長い旅をして地球へとやってきます。「僕」をはじめとする様々な人や動物との出会いによって、彼は少しずつ成長し、ついに自分が星に残してきた花に対して責任があったことに気づきます。幼い少年が経験するには、あまりに過酷な状況のような気がしますが、彼はその状況を耐えうるだけの強さと、そこから何かを学び取ることのできる利発さを持ち合わせています。

 一方、王子さまが地球に来るまでに出会った大人たちは、皆何かに囚われています。それは誰かの尊敬や服従を得たいという欲望だったり、自分を満たすための金銭や酒だったり、他のすべてのことを犠牲にして励まなければならない仕事だったりするのですが、彼らはその囚われているもののために、無意味な行動や、本末転倒なことを繰り返します。
 少年である王子さまは、その大人たちのように、何かに囚われているということがありません。そのため、大人が物を見るときに使う数々のフィルターを通すことなく物事の本質を見ることができ、その本質をそのまま言葉に出すことができるのです。

 何ものにも囚われない幼い心を持ちながら、孤独や別れを経験してきた王子さまが口にする言葉は、重みがあるとともに、物事の核心をついたものばかりです。彼の言葉が素直に心に響いてくるのは、このような理由によるのかもしれません。

 少年であり大人である王子さまのこのような言葉が、自然な形で作品中に散りばめられた『星の王子さま』は、読者に感動を与える奇跡のような作品です。この作品を当時40代だったサン=テグジュペリが書き上げたことは、驚くべきことだと思います。パイロットとして、いつも地球を高みから眺めていたサン=テグジュペリは、人間のことも一段と高いところから眺める能力を持っていたのかもしれません。