ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』の詳しいあらすじ

ウィリアム・シェイクスピアの四代悲劇のうちの一つ『マクベス』の幕ごと、場ごとの詳しいあらすじを紹介するページです。

※ネタバレ内容を含みます。

第一幕

第一場

 三人の魔女が、つぎに三人一緒になるのはいつ、どこにしようかを話し合っています。彼女たちは、日没前の荒れ地で落ち合い、マクベスに会いに行こうと約束すると、「きれいは穢い、穢いはきれい。」と言いながら霧の中に消えて行きます。

第二場

 王軍の陣営には王ダンカンが、王子のマルコムとドヌルベイン、そして貴族のレノクスらに囲まれています。そこに、一人の傷を負った隊長がやってきました。王ダンカンはその男に反乱軍の動静がわかるかもしれないと期待し、情報を聞き出そうとします。
 その隊長によると、勇猛果敢な武将マクベスが、マクドンウォルドという謀反人の首を取り、さらにもう一人の武将バンクォーと共に、不意打ちを仕掛けてきたノルウェイ軍に太刀打ちしているようでした。

 貴族のロスとアンガスがやってきて、裏切り者のコーダ(スコットランド北部ハイランド州の村)の領主の援助を頼みに攻撃を開始したノルウェイの大軍とマクベスは相対し、激戦ののちに、大勝をもたらしたと伝えました。
 ノルウェイの王は和を求め、スコットランドは一万ドルの献納を命じました。
 マクベスへの信頼を厚くしたダンカンは、コーダの領主の処刑を命じ、その位を彼に譲るよう命令を与えました。

第三場

 荒れ地で落ち合った魔女たちは、マクベスがやってくるのを待ち構えて輪舞を踊り、まじないをかけました。霧がその姿を覆い隠したところへ、武将マクベスとバンクォーが現れました。
 霧が徐々に薄れ、二人の前に魔女たちが姿を現しました。三人の魔女はそれぞれ、グラミスの領主、コーダの領主、そしていずれは王になる者とマクベスを呼びました。バンクォーが、自分にも何か予言しろと言うと、魔女たちは、その子孫が王になると予言しました。
 父親が死んでから、グラミスの領主に既になっていたマクベスでしたが、自分が、まだ生きているコーダの領主になり、さらに王にまで上り詰めるという魔女たちの言葉を信じられず、彼女たちに真相を問い詰めようとしました。しかし魔女たちは、その問いに答えることなく、霧の中に姿を消してしまいました。
 マクベスがバンクォーとともに魔女たちの言葉の意味を解釈していると、ロスとアンガスが現れました。彼らは、戦況を聞いて満足した王ダンカンが、謀反者のコーダの領主の処刑を命じ、その地位をマクベスに与えようとしていることを伝えました。
 マクベスは、魔女に言われた予言のうちの一つが当たったことで、自分が王になるというのも本当なのではないかと考え始めました。
 バンクォーは、魔女たちがマクベスを破滅させようとしているのではないかと考えました。マクベスは、この日にあった魔女たちからの預言をいずれ十分に吟味して語り合おうとバンクォーに言い、フォレス(スコットランドの町)の宮中に入りました。

第四場

 フォレスの城内の一室で、ダンカン、マルコム、ドヌルベイン、レノクスらが話しています。マルコムは、コーダの領主が深く悔いながら立派な死に様を見せたことを、父ダンカンに話しました。
 マクベス、バンクォー、ロス、アンガスが入ってきました。ダンカンはマクベスとバンクォーに感謝の言葉を述べ、マクベスのインヴァネスの居城へ行こうと言いました。
 ダンカンは、長男のマルコムを世継ぎに定めることを宣言しました。マクベスは、自分が王になるためには、このマルコムが自分の行く手に立ちはだかっているのだと考えました。

第五場

 インヴァネスの居城の前で、マクベス夫人が夫からの手紙を読んでいます。その手紙の中には、三人の魔女が現れ、自分がコーダの領主になり、いずれ王になると予言したことが書かれていました。
 マクベス夫人は、夫には野心があるものの、王になるために必要であると思われるごまかしをひどく嫌う性格であることを懸念しました。
 そこへ、侍者が現れ、ダンカンがこれから夫と一緒に来ることになっていると伝えました。
 マクベス夫人は、自分を残忍な心で満たして欲しいと望み、夫が帰ってくると、ダンカンがいつ発つのかを聞き、それまでに殺さなければならないと言いました。

第六場

 マクベスの居城に、ダンカン、マルコム、ドヌルベイン、バンクォー、レノクス、マクダフ、アンガスらが現れました。
 マクベス夫人は彼らを出迎えました。ダンカンは夫人の手を取り、マクベスのところへ案内させるために場内に入りました。

第七場

 自分の居城の中庭で、マクベスは葛藤しながらも、ダンカンの暗殺をやめようと考えました。しかしその意思を聞いたマクベス夫人は、夫のことを臆病者であると評し、この企みを打ち明けた時こそが真の男であり、もしそれを実行に移せば、より男らしくなるだろうと言いました。彼女は、ダンカンに酒を飲ませ、酔い潰れたところで殺すのであれば簡単であろうと夫をそそのかしました。妻に言いくるめられたマクベスは、王の暗殺を実行に移すことを決めました。

第二幕

第一場

 その一、二時間後、バンクォーとその息子フリーアンスがマクベスの居城の中庭に入りました。フリーアンスは松明を持って父親を導いています。バンクォーは、何か不吉なことが起きるのではないかという胸騒ぎを感じています。
 そこへマクベスがやってきました。
 バンクォーは、ダンカンがマクベスのもてなしに喜んで眠りについたと伝えました。マクベスは、王の暗殺の協力をバンクォーに求めるため、相談を始めようとしました。しかしバンクォーが、臣下の道に外れないことであればいつでも相談に乗ろうと言ったので、マクベスはバンクォーに協力を求めるのを諦めました。
 一人になったマクベスは、テーブルの上に血のついた短剣の幻影を見て、自分の血なまぐさい企みによってこのような幻影が現れたのだと考えました。寝酒の用意ができたことを知らせる鐘が鳴ると、彼は正面の戸口から中に入り、階段を登って行きました。

第二場

 ダンカンとその息子たちに酒を飲ませて眠らせたマクベス夫人が中庭に出てきました。二人の護衛も、薬の入った酒を飲ませられ眠らされました。
「誰だそこにいるのは、動くな!」というマクベスの声が聞こえ、夫人は失敗したのではないかと恐れました。
 両手に血のついたマクベスが、よろめくようにして城から出てきました。彼は、二本の短剣を左手に掴み、自分の叫んだことを覚えていませんでした。
 マクベスが王の部屋に入ったときの話を始めました。彼が入ってくると、王の隣に寝ていた二人の王子のうち、一人が「人殺し!」と叫び、もう一人も目を覚ましました。じっと様子を窺っていると、二人とも祈祷を始め、一人が「神のお慈悲を!」と叫び、もう一人は「アーメン」と言いました。しかしマクベスはどうしても「アーメン」という言葉を口に出せなかったようでした。二人はそのうちに再び眠りに落ちていきました。
 錯乱したマクベスは、「マクベスはもう眠れない」という声が屋敷中に鳴り響くのを聞きました。
 マクベス夫人は、二人の護衛の犯行に見せかけるため、マクベスが持ってきてしまった短剣を部屋の中に戻すように言いました。マクベスは、自分のやったことに恐れ、その光景をもう一度見るのを拒否しました。夫人は夫を不甲斐なく思いながらも、その短剣を持って部屋へと上がって行きました。
 部屋に短剣を置き、血糊を護衛たちに塗りつけて戻ってきたマクベス夫人は、マクベスに夜着を着せ、何も気づかずに寝ていたふりをするようにと言いました。

第三場

 マクベス夫妻が城の中に戻ると、マグダフとレノクスが中庭の扉を叩き、門番が中へと入れました。
 そこへ夜着を羽織ったマクベスが中庭に出てきて、王のいる部屋に二人を案内しました。
 マクダフは部屋の中に入り、ダンカンの遺体を目撃し、慌てて部屋を飛び出しました。マクベスと夫人は、王の死を初めて知ったように振る舞いました。
 バンクォー、マルコム、ドヌルベインが出てきて、ダンカンの死を知りました。レノクスは、血糊のついた護衛が犯人に違いないと言いました。
 マルコムとドヌルベインは小声で、何かを相談し、ひとまず引き上げることにしました
 一同は、広場に集まり、皆の証言を集めることにしました。

 一同が去った後、ダンカンの息子たちは相談し、身に迫る危険を回避するために、マルコムはイングランドに、ドヌルベインはアイルランドに逃げることを決めました。

第四場

 その翌日、ひどく曇った日、ロスと老人が昨夜の事件の凄惨さについて語り合いました。そこへマクダフが城の前に出て来たため、二人は、事件がその後どうなったのかを聞きました。マクダフによると、ダンカン殺しの実行犯だと思われた護衛の二人がマクベスに殺され、姿を消したマルコムとドヌルベインに、その護衛を買収した嫌疑がかかっているようでした。その結果マクベスが王位につき、戴冠式のためにスコーン(スコットランドで古くから戴冠が行われていた町)へ発ったようでした。
 ロスはそのスコーンへと向かい、マクダフは、その戴冠式に出るのを控え、自分の城のあるファイフへ戻ると言いました。

第三幕

第一場

 フォレスの宮廷についたバンクォーは、マクベスがダンカンを殺したことのではないかという疑いを抱いていました。彼は、魔女たちの予言が当たり、マクベスの歓迎すべき結果になったことに対し、自分の子孫が王座につくだろうという予言の方はどうなるのだろうと考えました。
 トランペットの吹奏とともに、マクベスは夫人を伴って宮中に現れました。レノクスやロスらがその後に続きました。マクベスは、その夜に行われる正式な晩餐にバンクォーを誘いました。バンクォーは、これから馬に乗り、晩餐には参加するつもりだと言って、フリーアンスをともない出かけました。
 マクベスは、バンクォーの勇気と、その勇気の使い所を分かっている分別を恐れ、彼の子孫が王になるという魔女たちの予言が本当なのだろうかと考えました。
 マクベスは、悲惨な境遇にいる二人の刺客を呼び出し、その刺客たちの生活を苦しめているのはバンクォーなのだと思い込ませました。バンクォーとフリーアンスの暗殺を命じられた二人の刺客は、マクベスの命じる通りに実行することを誓いました。

第二場

 フォレスの宮中で、マクベスと妻が話しています。マクベスは、ダンカンを殺したことで、気狂いじみた不安におののかねばならないことを嘆き、生きる不安から解放されたダンカンを羨みました。
 彼はバンクォーを殺す計画を立てていることを妻には言いませんでしたが、「ひとたび悪事に手をつけたら、最後の仕上げも悪の手にゆだねることだ」と言って、祝宴の場へと向かいました。

第三場

 宮殿の外で、二人の刺客のところへ、マクベスの命令によって彼らと落ち合うように命じられた、もう一人の刺客が訪れました。
 松明を持ったバンクォーとフリーアンスが坂道を登ってきました。刺客たちはバンクォーを襲撃して殺しましたが、フリーアンスは取り逃がしてしまいました。彼らは結果を伝えるため、引き上げて行きました。

第四場

 宮中の大広間で、酒宴が開かれようとしており、ロス、レノクスらの貴族が集まっています。マクベスは、テーブルを回りながら、戸口のところにやってきた刺客のところへ行きました。彼はバンクォーを殺したという知らせを聞いて喜びましたが、フリーアンスを取り逃したということを聞くと、再び不安の発作に襲われました。
 バンクォーの亡霊が現れ、マクベスが座ろうとしていた椅子に腰を下ろしました。
 レノクスは、マクベスを席まで案内しました。バンクォーの亡霊がそこに座っているのを見たマクベスは取り乱しました。他の人々には、その亡霊が見えていませんでした。
 夫人は、その場を取り繕い、マクベスのことを気にせずに食事をとるよう皆に勧め、バンクォーの亡霊を見て取り乱すマクベスを制しました。
 マクベスは酒をなみなみと注がせ、なんとか乾杯をしますが、うしろに座っていたバンクォーの亡霊を再び見て、杯を落としました。
 マクベスが錯乱しながら消えろと命じると、亡霊は姿を消しました。
 彼は一度落ち着きを取り戻し、皆を席に座らせましたが、自分だけが亡霊を見ていたことに思い当たり、再び恐ろしくなりました。
 この場を抑えきれなくなると思った夫人は、皆を家に帰しました。
 恐怖に駆られたマクベスは、魔女たちのところへ行き、未来の運命を聞き出すことを決心しました。

第五場

 雷鳴が轟く荒れ地で、魔女がヘカティー(魔術の女神。作中では三人の魔女の支配者として描かれています。)に会いました。ヘカティーは、この世に起こる禍いを一手に操る自分をすっぽかし、魔女たちがマクベス相手に勝手な取引をしたことに怒っていました。彼女は、マクベスがやってきたら、まじないの道具を用意して迎えるよう魔女たちに命じ、自分の「どす黒い血みどろの」仕事を行うために去って行きました。

第六場

 スコットランド内のある城で、レノクスが他の貴族と話しています。
 レノクスは、バンクォーを殺したのはその息子のフリーアンスで、ダンカンを殺したのもマルコムとドヌルベインであるという説があることを述べ、マクベスが「うまくやったのだ」と揶揄します。彼は、ダンカンの息子たちやフリーアンスが、マクベスに捕まれば、父親殺しの罪として処刑されてしまうだろうと言いました。

 貴族によると、マルコムはイングランドに行き、その地の王室のエドワード王の庇護を受けているようでした。同じように国を離れたマクダフもその地に向かい、王に援助を頼み、将軍たちに決起を促そうとしているようでした。
 その知らせを聞き、マクベスは立腹し、戦いの準備を始めているようでした。
 レノクスと貴族は、呪われたこの国に、幸が戻ってくることを祈りました。

第四幕

第一場

 洞窟の中に、煮えたぎる大釜を乗せた穴があり、その穴から立ち登る火炎の中から三人の魔女が現れます。
 魔女たちは、おぞましいものを入れた大釜を掻き回しながら、呪いを唱え、恐ろしい禍を起こそうとしています。
 そこへヘカティーが他の三人の魔女を連れて現れます。彼女たちは、禍が起きた後の儲けをあとで山分けにしようと言い、釜の周りを回って歌うよう、魔女たちに命じました。

 マクベスが現れ、自分の問いに応えてくれと言いました。魔女たちは、釜の中から第一の幻影を呼び出しました。第一の幻影は、ファイフの領主マクダフに気を付けろと言いました。
 血みどろの子供の姿をした第二の幻影は、「女の産み落とした者」の中には、マクベスを倒すものはいないので、どんな酷いことでも臆せずやるがいいと言いました。王冠を被り、手に木の枝を持った子供の姿をした第三の幻影は、「バーナムの大森林がダンシネインの丘に攻め上って来ない限り」マクベスは滅ばないので、獅子のように勇敢になれと言いました。
 これらの言葉を聞いたマクベスは、幸先が良いと思い、自分は王座についたまま、余生を気楽に生きられるだろうと安心しました。

 マクベスは最後に、バンクォーの子孫がこの国わ統べることになるのかと聞きましたが、魔女たちはそれには答えず、八人の王の影と、バンクォーの亡霊が洞窟の奥を通り過ぎるのを見せました。
 それら八人の王は、バンクォーにそっくりでした。彼らがバンクォーの子孫であるということを悟ったマクベスは、本当にこの通りになるのかと聞くと、魔女たちはそのとおりだと答え、魔女の踊りを舞い、忽然と消えました。

 レノクスが現れ、マクダフがイングランドに落ち延びたことを知らせました。それを聞いたマクベスは怒り狂い、ファイフのマクダフの城に不意打ちをかけ、妻子を殺してしまおうと考えました。

第二場

 ファイフにあるマクダフの城では、マクダフの妻子がロスと話しています。マクダフ夫人は、夫が自分たちをおいて逃げたことにうろたえています。事情を知っているロスは、全てを話すことはできませんでしたが、マクダフが聡明な男で、潮時を心得ているのだと答えました。
 ロスが去っていくと、使者が現れ、危険が迫っていると伝えました。すぐに刺客が現れ、マクダフ夫人とその子は殺されてしまいました。

第三場

 イングランド、エドワード懺悔王の宮殿前にマルコムとマクダフが出てきます。
 マルコムは、なぜマクダフが妻子を置いて自分のところへ来たのかを知りたがりました。
 マクダフは、たとえマクベスの手中にある領土をもらっても、悪党になりたくないがため、マルコムの元を訪れたのだと答えました。
 マルコムは、自分の国が苦しい境涯に陥っていることを知らながらも、自分のように淫蕩で、欲の激しく、美徳のない人間が王になれば、国の悪徳はますます蔓延って行くばかりであろうと言いました。マルコムに国を治める資格がないと思ったマクダフは、祖国に残された国民を憐れみました。
 祖国を思いやって嘆き悲しむマクダフの姿を見たマルコムは、先ほど述べた自分の悪口は、全て軽々しく人を信用しないよう用心していたためについた嘘であったことを明かし、イングランドの武将シュアードがスコットランドに向けて出征したので、自分たちも後を追おうとマクダフを誘いました。
 マルコムによると、イングランドの王は、医者も匙を投げた病人の首に金貨を乗せただけで、病気を治してしまうという、天から授かった力を持っていました。マルコムは、それこそが王が徳にあふれた人間である良い証拠だろうと言いました。

 国を逃れてやってきたロスが、二人の前に現れました。
 国の実情を聞かれたロスは、まるで墓地のようになったスコットランドを、もはや母国とは言えないと嘆き、今こそ援軍を送るべきだとマルコムに忠言しました。
 マルコムは、百戦錬磨の名将シュアードを頭とする一万の兵を貸してくれたことを伝えました。ロスはその知らせに喜びました。ロスによって一家皆殺しにあったことを知ったマクダフは、酷い悲しみに陥り、自分を責めましたが、その悲しみを怒りに変え、マクベスに仇を取ることをマルコムに誓いました。マルコムとマクダフは出陣を決め、イングランド王に別れを告げに城へと入りました。

第五幕

第一場

 ダンシネインの場内の一室へ、マクベス夫人の侍医と侍女が入りました。
 侍女によると、マクベス夫人は、毎夜眠りながら起き上がり、行動をするようでした。侍医は、それは精神錯乱の兆候で、その間マクベス夫人が何か口に出すことはあるかと聞きました。侍女は、それには答えられないと言いました。
 そこへマクベス夫人が眠ったまま現れ、手を洗うような仕草を見せ、まだ血の臭いがすると言って溜息をつき、さらに夫に話しかけるように、墓の中にいるバンクォーを怖がる必要はないと言いました。侍医は、マクベス夫妻が凶行に手を染めたことを悟り、夫人の病には医者よりも僧侶が必要なのだと言いました。

第二場

 ダンシネイン付近で、レノクス、メンティース、ケイスネス、アンガスらの貴族が、兵士たちを連れて現れました。彼らは、復讐に燃えるマクダフとイングランドの武将シュアードを連れ、マルコムが間もなく到着するだろうと話しています。
 マクベスは、気が狂ったようになってダンシネイン城に強固な防備を敷いているという噂でした。
 彼らは、自分たちの忠誠を正当な主人に捧げようと話し合い、バーナムの森でマルコムらと落ち合うために進軍を始めました。

第三場

 ダンシネインの城内の中庭で、マクベスが侍医と侍者とともに現れます。
 マクベスは、自国の貴族たちが裏切ったことを知りましたが、魔女たちの言っていた「女の産み落とした人間で自分を倒すものはいない」という予言にすがり、恐れることはないと信じ込もうとしています。
 そこへ召使いがやってきて、イングランド軍がやってきたことを伝えました。
 マクベスは、鎧持ちのシートンに鎧を持ってくるように命じ、侍医に妻の病気がどうなったのかを聞きました。侍医は、マクベス夫人がひどい妄想に取り憑かれて、少しも気の休まることがなく、これを治すには夫人自らが良い心がけをするしかないのだと伝えました。マクベスは、「そのような医術など犬にやってしまえ」と言うと、自分を裏切った者たちと戦うため、出て行きました。
 マクベスが出ていった後、侍医は、ダンシネインから離れることができるなら、どんな報酬をもらっても、二度と来ることはないだろうと独り言を言いました。

第四場

 マルコム、シュアード、マクダフ、シュアードの息子、メンティーズ、ケイネス、アンガス、レノクス、ロスらが進軍し、バーナムの森へとやってきました。
 マルコムは、こちらの兵力を隠すため、木の枝を頭上にかざして進軍するように全軍に命じました。

第五場

 ダンシネインの城内で、マクベスは、日常茶飯事となった人殺しにより、恐怖というものをほとんど感じなくなったと語ります。
 病気になっていたマクベス夫人は、自らの手で命を断ちました。シートンからその死の知らせを聞いたマクベスは、「人の生涯は動き回る影にすぎぬ」と言って、その死を受け入れます。
 そこへ使者が登場し、バーナムの方から森が動き出したと報告しました。マクベスは魔女たちの予言を思い出して自分の運命が終わることを悟り、武将として鎧を着たまま死ぬために最後の一戦に打って出ました。

第六場

 ダンシネインの城門の前へ、マルコム、シュアード、マクダフらが枝をかざしながらやってきました。
 マルコムは、「後の手筈はマクダフと一緒に進める」と言ってシュアードらと別れました。
 マクダフは、全軍にラッパを吹き鳴らすよう命じ、軍を進めさせました。

第七場

 城内から出てきたマクベスは、そこへ現れたシュアードの息子と戦い、殺しました。
 マクベスが城内に消えると、そこへマクダフが現れ、妻子の仇を取るべくマクベスを探し回りました。
 マルコムとシュアードも、城が難なく明け渡されたと語り合いながら、城内へと入って行きました。

第八場

 マクダフはマクベスを見つけてその後を追い、二人は激しく戦いました。マクベスは、魔女たちの予言通り、女から生まれた人間に自分を傷をつけることはできないだろうと言いました。マクダフは、自分は、月足らずで母親の胎内から引きずり出されたのだと言いました。
 マクベスは、マクダフが「女の産み落とした者」ではないことを悟り、彼を相手にすることを躊躇しました。
 マクダフは、自分と戦わないのであれば剣を捨て、世間の見世物になれと言いました。するとマクベスは群衆に愚弄されるよりも戦うことを決心し、盾を捨ててマクダフに挑みかかりました。激しい斬り合いの末、マクダフはマクベスを殺しました。

第九場

 ダンシネインの城内に戦闘中止のトランペットが鳴り響き、マルコム、シュアード、ロスらが現れます。
 ロスは、小シュアードが額に傷を負って死んだことをシュアードに伝えました。シュアードは、息子がこれからは神の手兵として使ってもらえるだろうと語りました。
 そこへ、マクベスの首をくくりつけた旗竿を持ってマクダフが現れ、この世のいましめが解き放たれたことを宣言しました。一同は、新しいスコットランド王になったマスコムを祝しました。
 マルコムは、一同の忠節に報いることを誓い、海外に難を逃れた者たちを呼び戻し、マクベス夫妻の手先となった人々を裁くことを宣言しました。彼は一同に礼を言い、スコーンの戴冠式に漏れなく参列するようにと命じました。