シェイクスピア『オセロー』の詳しいあらすじ

ウィリアム・シェイクスピア作『オセロー』の詳しいあらすじを紹介するページです。ネタバレ内容を含みます。

第一幕 第一場

 キプロスとの戦争を控えたヴェニスの町なかで、数多くの軍功を立てた男イアーゴーと、自堕落な男ロダリーゴーが語り合っています。
 イアーゴーは、今度のキプロス戦争で指揮をとることになっているムーア人オセローの副官に推されていたものの、その座を戦闘に出たことのないフローレンス人のマイケル・キャシオーに奪われ、オセローの旗持ちに成り下がっていました。彼はこのことに腹を立て、オセローに忠義があるように見せかけておき、搾れるだけ搾り取ろうと考えていました。
 イアーゴーは、オセローの恋人であるデズデモーナをつけ狙っているロダリーゴーに、デズデモーナの父で議官のブランバショーを叩き起こすことを持ちかけました。
 彼らはデズデモーナの家の前に着くと、「泥棒だ」と叫びました。ブランバショーが怒りながら二階の窓から顔を出すと、ロダリーゴーは、デズデモーナが小僧一人をお供に連れて、オセローのもとへ真夜中に駆けつけたと伝えました。
 それを聞いたブランバショーは、娘がいなくなっていることを確かめるため、家中を探しまわるよう命じました。
 ブランバショーが退くと、イアーゴーは、この件で政府はキプロス戦争を指揮するオセローを首にすることはできないので、自分は旗を持って忠誠を誓うふりをしなければならないのだと語り、オセローのいる本陣に追手の連中を引っ張っていくようロダリーゴーに命じました。
 ブランバショーが松明を持った召使いと共に出てきて、娘が自分を欺いてオセローと一緒にいることを嘆きました。ロダリーゴーは、おそらく二人が結婚してしまったことを伝え、デズデモーナの居場所を突き止めてみせると約束しました。

第一幕 第二場

 イアーゴーは、自分の指揮官になったオセローに落ち合うと、ロダリーゴーがオセローを中傷していると語り、その中傷のためにヴェニス公に匹敵するほどの議事決定権を持っているブランバショーが結婚の取り消しもしかねないと忠告を与えました。
 オセローは、自分は王族の出で、この国の政府に尽くした実績もあるので、やましいことは何もなく、愛するデズデモーナとの結婚を要求するための権利があるだろうと語り、ロダリーゴーのことは放っておくようにと命じました。
 オセローの副官となったキャシオーが役人とともにやって来て、キプロス島から緊急の情報が入ったので、すぐに出頭するようにというヴェニス公からの命令を伝えました。そこへブランバショーがロダリーゴーとともにやってきて、出発しようとしているオセローを捕らえ、娘を妖術でたぶらかしたとして、牢獄へ行くように命じました。
 しかしオセローがヴェニス公からの命令を伝えると、ブランバショーは、この真夜中に会議を招集する政治に苦言を呈しながら、仕方なくそちらへ向かいました。

第一幕 第三場

 ヴェニス政庁会議室で、ヴェニス公らが卓を囲んでいます。
 ロードス島に向かって航行していたトルコ艦隊が、後続艦隊とともにキプロス島に向かい始めたという情報がもたらされており、キプロス島の総督モンターノーは、救援を求めているようでした。
 ヴェニス公は、トルコの撃退をオセローに命じました。
 ブランバショーは、妖術と魔薬の力で、オセローに娘を奪われたのだとヴェニス公に嘆き訴えました。
 オセローは、自分がブランバショーの娘を連れ去り妻としたのは紛れもない事実だと語り、戦の鍛錬ばかりで世間のことはわからないため、自分の立場を弁明することはできないが、どのようにしてデズデモーナを手に入れたのかを、彼女の口から説明してもらおうと言いました。
 ヴェニス公は、デズデモーナを呼ぶように命じ、それまでの数々の戦歴で経験したことを話してほしいとオセローにたのみました。オセローは、これまでのデズデモーナとのいきさつを語り始めました。
 それはオセローがブランバショーに気に入られて邸に出入りするようになった頃からの話でした。デズデモーナは、オセローの話を熱心に聞きたがるうちに、やがて切れ切れの戦歴の物語ではなく、彼の放浪の一生の話を聞きたがりました。オセローは、幼い頃に受けた激しい心の打撃などを語り、デズデモーナは涙し、彼の身の上を憐れみました。デズデモーナは、そのような過去を持つ男に自分の心は思うがままになるであろうと打ち明け、オセローはその言葉に勇気を得て、自分の意中を打ち明けました。
 オセローがここまでを話し終えた時、デズデモーナがイアーゴーに連れられて入ってきて、父への負い目を感じながらも、妻としてオセローに仕えることを誓いました。
 ブランバショーは怒りに駆られながら、その結婚を認める代わりに、娘を見捨てることを宣言し、ヴェニス公の用件を聞きにかかりました。
 ヴェニス公は、強大な力でキプロス島に向かっているトルコ軍に、その地について誰よりも詳しいオセローに、防備を任せようとしていました。
 オセローは、トルコ討伐を即座に引き受け、留守の間のデズデモーナの世話を頼みました。
 ヴェニス公は、父親の邸にデズデモーナを居留させることを提案しましたが、ブランバショーはそれを断り、デズデモーナ本人も、自分はオセローの名誉と雄々しい働きに身も心も捧げたので、一人で残されて無為に過ごすことには耐えられないと、ともに戦場へ行くことを望みました。
 オセローが、デズデモーナへの想いは一時の逸楽のためでなく、妻のために国事を疎かにすることはないと誓うと、ヴェニス公は、彼の判断に任せることを許し、一人をここへ残し、あとで辞令や必要な事項を届けさせる士官を残しておくようオセローに命じました。
 オセローはイアーゴーを残し、彼にデズデモーナの護衛も任せることを頼むと、残された一時間を語り合うため、デズデモーナと共に出て行きました。
 デズデモーナとオセローの深い結びつきを目の当たりにしたロダリーゴーは、イアーゴーに身投げがしたいと言い始め、これから自分はどうすればよいのかと聞きました。
 ロダリーゴーと手を組んで、オセローに復讐することを考えついたイアーゴーは、身投げを思いとどまるよう説得し、「財布に金を入れておけ」と忠告を与えました。ロダリーゴーは土地を売り飛ばすことを決めました。
ロダリーゴーが去っていくと、イアーゴーは、まずはキャシオーの地位を奪うため、彼がデズデモーナに馴れ馴れしくするとオセローに触れ込もうと独り言を言いました。

第二幕 第一場

 キプロス島の港、波止場に近い空き地に、総督モンターノーと島の有力者が出てきます。彼らのところに、海上に散乱する敵艦隊の残骸を見て上陸を果たしたキャシオーがやってきて、トルコ軍が大波に撃退させられたという知らせを届けました。
 キャシオーは、凄まじい嵐で離れ離れにしまったオセローの身を案じていました。
 オセローの下で働いたことがあり、彼の将軍としての働きを非の打ちどころのないものであったと感じていたモンターノーは浜へ出て、オセローの姿を見つけようと皆を促しました。

 そこへ見方の到来を告げる号砲の音が鳴り響き、キャシオーは、町の有力者に見に行ってほしいと頼みました。
 モンターノーは、オセローに妻ができたことについてキャシオーに尋ねました。キャシオーは、デズデモーナが非常に素晴らしい美質を持つ女だと伝えました。
 島の有力者の一人が、オセローの旗手であるイアーゴーが入港したことをキャシオーに知らせました。
 キャシオーは、デズデモーナの護衛を任されたのがイアーゴーであるということをモンターノーに教えました。

 デズデモーナ、エミリア、イアーゴー、ロダリーゴーらが到着し、続いてトランペットの音がし、無事にキプロスにたどり着いたオセローがやって来ました。
 オセローは、デズデモーナに再会できたことを喜びながら接吻し、城へと向かいました。

 イアーゴーは、オセローが自分の妻と関係を持ったことがあるのではないかという疑いを抱いており、オセローを激しく嫉妬させ、地獄の苦しみを味わせようとしていました。彼はロダーリーゴーに向け、デズデモーナがオセローに惚れたのは口先に騙されたからであり、いずれ彼女がムーア人の外見に愛想を尽かし、若くて男ぶりの良いキャシオーに惚れるだろうと語りました。そして、ロダリーゴーに今夜の夜警に出て、何かのきっかけを作りキャシオーを怒らせるのだとけしかけました。

第二幕 第二場

 キプロスの町なかで、布告係が触れ書きを持ち、トルコ艦隊壊滅を成し遂げたオセローの結婚により、砦内での飲食をすべて解放するという報が伝えられました。

第二幕 第三場

 砦の広間で、オセローは今夜の警備をキャシオーに頼み、デズデモーナとともに出て行きます。そこへキャシオーと同じ警備につくことになっているイアーゴーが登場します。キャシオーは、オセローがデズデモーナと引き上げていったことを伝えました。二人はデズデモーナの非の打ちどころのない美しさについて語り合いました。

 イアーゴーは、酒の用意をしてきたと言いました。下戸のキャシオーは、もう既に一杯やってしまっており、これ以上飲むことは控えようとしていました。するとイアーゴーは、戸口で待っている男たちを入れてやってほしいと彼に頼みました。キャシオーが、その男たちを迎えに行きました。
 ロダリーゴーは既に酒瓶をかかえて浴びるほど飲んでおり、キプロス島の夜警二人にも、イアーゴーがたっぷりと飲ませていました。
 キャシオーがモンターノーや島の有力者たちを部屋に入れると、イアーゴーは宴を始めました。
 再び酒を飲まされたキャシオーは、酔いながらも任務につくようにと皆に命じながら出て行きました。
 イアーゴーは、キャシオーが軍人としては優秀であるものの、下戸ですぐに眠ってしまうという欠点があるためにこの島に迷惑がかかるのではないかとモンターノーに訴えました。
 モンターノーは、キャシオーのその欠点をオセローの耳に入れておくべきだと語りましたが、イアーゴーは、キャシオーのことが好きなので、自分から訴え出ることなどできないと嘘をつきました。
 モンターノーは、オセローの副官の位置にそのような欠点のある人物がいることを懸念しました。
すると奥から「助けてくれ!」という声と共に、キャシオーがロダリーゴーを追ってやって来て、自分に指図したことを咎めながら暴力を働きました。モンターノーは、その仲裁に入ろうとして、キャシオーといさかいになりました。
 イアーゴーは、大事件が起きたことをオセローに知らせるようにロダリーゴーに命じ、自分はモンターノーとキャシオーの仲裁に入りました。
 その騒ぎを聞いてやって来たオセローの目の前で、キャシオーとモンターノーは戦いました。オセローは二人の喧嘩を止めようとしながら、イアーゴーに事情を聞きました。しかしイアーゴーは、何が原因でこのような斬り合いとなったのかは分からないと答えました。
 戦闘の末、モンターノーは重傷を負いながら、自分にはまったく非がなかったと主張しました。キャシオーは弁明をせず許しを乞いました。

 戦争が起きようとしていた街中で、夜警の詰所でこのようないさかいが起きたことをオセローから責められ、説明を求められたイアーゴーは、ロダリーゴーがキャシオーを怒らせたことを巧みに隠しながら、自分は「叫び声を上げた男」を追ったものの逃げられてしまったので戻って来たところ、キャシオーとモンターノーがいさかいになっていたと語り、キャシオーをかばうふりをして、彼が逃げていった男からひどい侮辱を受けたに違いないと言いました。
 しかしオセローは、キャシオーをこれ以上自分の手元に置くことはできないと決め、モンターノーの傷の手当てを行わせるために侍者に運ばせ、イアーゴーに島民を鎮めるための町の見張りを頼みました。
 皆が去った後、体面を失くしたと嘆くキャシオーを、イアーゴーは慰めました。イアーゴーは、ロダリーゴーとのいきさつを聞きましたが、キャシオーはしっかりと覚えていませんでした。
 キャシオーは素面に戻り、酒という悪魔に負けた自分を責めながら、オセローに復職を頼んでみることを決めました。
 イアーゴーは、オセローが現在打ち込んでいるデズデモーナに力添えを頼んでみるのが良いと、キャシオーに勧めました。
 キャシオーは、イアーゴーの助言に感謝し、夜が明けたらデズデモーナを訪れ、力を貸してくれるように頼んでみようと考えました。
 キャシオーが去った後、イアーゴーは、これからデズデモーナがキャシオーに惹かれているとオセローに吹き込む腹づもりであることを独言しました。
 そこへロダリーゴーがやってきて、金も使い果たしてしまった自分はデズデモーナを取り戻す柄ではないので、ヴェニスに帰ろうと考えていることを語りました。イアーゴーは、忍耐を知らないロダリーゴーに呆れながら、もう少し辛抱するようにと命じ、所属の部署に帰っているようにと指示すると、自分の妻エミリアを取り持ち役にしてキャシオーとデズデモーナを会わせ、そこへ連れ出していたオセローを乗り込ませてやろうと画策を始めました。

第三幕 第一場

 砦のオセロー宿所前にキャシオーがやってきて、楽隊に演奏させようとしています。そこへオセローの従者である道化がやってきます。
 道化は、楽士たちに、楽器に穴は空いていないかと聞き、音を出す穴のそばには、始終問題を起こすものが必ずついているものだと語りました。
 道化は楽隊に金を払い、将軍がこれ以上の音を立てないでほしがっている伝え、楽士たちを退散させました。
キャシオーは、道化に話しかけ、デズデモーナを世話している女を呼んでほしいと頼みました。道化はその頼みを承知して去って行きました。

 イアーゴーがやって来ると、キャシオーは、デズデモーナに近づけるようにエミリアに取り計らってもらいたいと頼みました。イアーゴーは妻をすぐに呼び、その間に自分はオセローを呼び出して、落ち着いた用談ができるようにすると申し出ました。キャシオーはイアーゴーに感謝しました。
 エミリアがやってきて、キャシオーをひとまず退職させる他に手立てがないものの、適当な時期に自分から頼んで復職をさせようというデズデモーナの考えを伝えました。

 キャシオーは、直接デズデモーナに話をさせてほしいとエミリアに頼みました。

第三幕 第二場

 砦の一室で、オセローは、議官へ送るための書面を船長に渡してほし、その後砲台のあたりまで来てほしいとイアーゴーに頼みました。そしてその命令を聞き入れたイアーゴーが去って行くと、オセローは島の有力者たちを誘って要塞を見て回りました。

第三幕 第三場

 砦の前に、デズデモーナ、キャシオー、エミリアが出てきました。
 不安そうな様子のキャシオーから、復職の願いをオセローに届けてくれるよう頼まれたデズデモーナは、その願いを取り計らうことを約束し、こちらの思いが届くまでは根負けしないと誓いました。そこへオセローとイアーゴーの姿が見えると、私事を頼み込む気持ちにならないとキャシオーは去って行きました。
 去っていくキャシオーを見たイアーゴーは、オセローに対してまずいところを見せてしまったというふりをしました。
 デズデモーナは、キャシオーへの怒りを解いて彼を呼び戻してやってほしいとオセローに頼みました。
 オセローは、今はできないが、近いうちに許すことを約束しました。
 デズデモーナは、些細な行き違いで今回のことが起きたに過ぎないとキャシオーのことを擁護し、せめてこの三日の間にその決心をつけて欲しいと頼みました。オセローは、その頼みを断れず、いつでもよいのでキャシオーを呼び戻すようにと命じると、しばらく一人にして欲しいと言いました。
 デズデモーナはその願いを聞き入れ、エミリアと共に去って行きました。
 二人が去った後、イアーゴーは、オセローが結婚を申し込んだときに、キャシオーがオセローの彼女への想いを知っていたのかと聞きました。
 オセローは、キャシオーが始めから何もかもを知っていたと答えました。
 するとイアーゴーは、キャシオーが以前からデズデモーナを知っていたことを知らなかったと言いました。
 イアーゴーの思わせぶりなそぶりに翻弄されたオセローは、胸中にあることを話して欲しいと頼みました。するとイアーゴーは、オセローのために自分の想像を話すのだと前置きした上で、名誉を盗まれることは大変なことであるということ、嫉妬というものがどれほど恐ろしいものであるかを語り、デズデモーナとキャシオーとの関係を匂わせました。そのイアーゴーに騙され、二人の関係を誤解したオセローは、妻の浮気の証拠を掴むことを決意しました。二人が一緒にいるときに注意するようにというイアーゴーからの忠告を受けると、オセローは、自分が何故結婚したのだろうと考え込みながら、イアーゴーに感謝し、エミリアを目付け役に頼みました。

 イアーゴーは、これ以上の穿鑿はしない方が良いだろうと進言し、キャシオーの復職を性急にしないこと、デズデモーナから復職の願いが繰り返されるかどうかを見逃さないことを勧めました。オセローは、自分が黒人で年も若くないために、デズデモーナの心が自分に向けられなくなったのだと信じ込み、嘆きました。

 そこへ、食事の時間へ現れないオセローを心配したデズデモーナがエミリアと共にやってきました。額が痛いと言うオセローのために、デズデモーナは、結婚後の最初の記念品であるハンカチーフで彼の頭を縛ってやりました。
 オセローは、そのハンカチーフを外し、デズデモーナを連れて、島の客との食事会へと向かいました。
エミリアはそのハンカチーフを拾いました。それはイアーゴーがしきりに盗んで来いと言っていたものでした。イアーゴーの気まぐれを満たすことだけを考えていたエミリアは、そのハンカチーフの模写を写し取り、夫に差し出そうと考えました。
 そこへやってきたイアーゴーは、ハンカチーフがあると知ると、それをエミリアから奪い取りました。彼はキャシオーの部屋にそのハンカチーフを落としておき、拾わせようと考えていたのでした。
 再びオセローがやってきて、妻のことを疑いもしなかった頃の心の平穏は、今後一切訪れないことを嘆きながら、それを自分に知らせたことイアーゴーを責め、デズデモーナが淫蕩であるという証拠を見せなければ命はないと、彼の喉を掴みました。イアーゴーは、誠実さが仇となって悪党の汚名を着せられたと嘆き、今日限りで職を免じてもらいたいと申し出ました。オセローは我に帰り、イアーゴーを呼び止め、デズデモーナの不義の証拠を見せてくれと懇願しました。
 イアーゴーは、キャシオーと同じ床に寝た時、眠りながら、自分をデズデモーナと思い込んで手を握り、激しい接吻をしてきたと嘘をつき、またキャシオーがデズデモーナのハンカチーフで髭を吹いているのを見たと証言しました。
 二人の関係が事実なのだと思い込んだオセローは、自分の怨恨で満たされたこの心は、二度と再び鎮まることはないだろうと語りました。
 イアーゴーは、裏切られたオセローの命令がいかなるものであろうと忠誠を誓うことを約束すると、オセローは、彼を副官に任じるので、すぐにキャシオーを殺して欲しいと頼みました。イアーゴーは、その命令を守ることを約束する代わりに、デズデモーナの命を奪わないよう頼みました。オセローは、自らの手でデズデモーナを葬る手立てを考え始めました。

第三幕 第四場

 二人が去ったあと、デズデモーナとエミリアと道化が同じ場所に現れました。
 デズデモーナは、夫の気持ちは納めたので、やがて何もかも上手くいくだろうとキャシオーに伝えて欲しいと道化に頼みました。道化はその伝言を届けることを約束しました。
 道化が去った後、デズデモーナは、自分のハンカチーフがどこにいったのだろうと尋ねましたが、エミリアは、知らないとしらを切りました。
 そこへオセローがやってきました。心のうちの苦しみを隠したまま接するオセローに、デズデモーナは、キャシオーを呼びに遣ったので、彼の話を聞いてやってほしいと頼みました。
 オセローは、デズデモーナを試すため、風邪を引いたらしいのでハンカチーフを貸して欲しいと頼み、そのハンカチーフは自分の母があるエジプトの魔法使いから貰ったもので、魔法が織り込んであり、失くすと禍いが起こるだろうというものであると語りました。
 デズデモーナは、ハンカチーフを失くしてしまったことを言えず、今は見せられないと言いました。彼女がキャシオーのことをなおも頼み込むと、オセローは嫉妬に狂いながら去って行きました。
 ハンカチーフを失くしたことを悔やむデズデモーナのところへ、キャシオーとイアーゴーが現れました。
 キャシオーはデズデモーナに力添えしてもらうことをイアーゴーから勧められており、オセローの信頼を取り戻したいとデズデモーナに頼みました。デズデモーナは、オセローが以前とは変わってしまったため、もう少し辛抱してほしいと答えました。
 イアーゴーは、オセローが怒っている原因を探ろうと言いながら、彼に会いに行きました。
 デズデモーナは、オセローの腹立ちの原因がわからず、ヴェニスからの悪い情報が入ったか、キプロスで陰謀が発覚したかだと思い込み、自分は夫を責めてはならないと考えました。
 エミリアは、オセローが何かに嫉妬しているのではないかと語りました。何も身に覚えのないデズデモーナは、嫉妬という魔物が夫の心に忍び込まないようにと祈りました。
 デズデモーナとエミリアがそこを立ち去ると、キャシオーの情婦ビアンカがやってきました。キャシオーは、デズデモーナのハンカチーフの写しをとってほしいとビアンカに頼みました。それはイアーゴーの手によってキャシオーの部屋に落とされていたハンカチーフで、キャシオーはその模様が気に入ったので、持ち主に返してくれと言われる前に写しをとっておきたいと考えたのでした。
 ビアンカは、一週間も自分のことを放っておいたキャシオーのことを責めながらも、それを了承しました。
キャシオーは、今夜行くと約束し、ビアンカと別れました。

第四幕 第一場

 同じ場所に、オセローとイアーゴーが連れ立ってやってきました。
 オセローは、キャシオーがハンカチーフを持っていたのを見たということ、そしてキャシオー自身の口からデズデモーナを慰みものにしたと聞いたという嘘の証言を行いました。
 それを信じたオセローは、キャシオーにハンカチーフのことを自白させ、絞首刑にしなければならないと考え、あまりの動揺に卒倒しました。
 イアーゴーは、自分の奸計がもっと回るようにと考えながら、オセローを起こしにかかりました。

 そこへキャシオーがやってきたため、イアーゴーは、オセローは癲癇の発作で倒れたのだと説明し、あとで相談したいことがあると言いました。
 キャシオーが去って行き、オセローが起きると、イアーゴーは、まもなくキャシオーが来るので、ものかげから自分たちの会話を盗み聞くようにと勧めました。
 再びキャシオーがやってくると、イアーゴーは、ビアンカのことを尋ね、世間で噂になっている彼女との結婚はあるのかと聞きました。
 するとキャシオーは、ビアンカはたしかに自分に惚れ、自分との結婚を吹聴しているようではあるものの、自分がそのような淫売と結婚するはずはなかろうと、世間での噂を一笑に伏しました。
 オセローは物陰から、その話をデズデモーナのことであると勘違いしながら聞き、嫉妬に身を狂わせながらキャシオーを殺したいという誘惑に駆られました。
 そこへビアンカがやってきました。彼女はハンカチーフが部屋に落ちていたという話を信じておらず、他の女にもらったのだろうと怒りながらそれをキャシオーに返しました。
 オセローは物陰で、そのハンカチーフが自分のものであることを認めました。
 ビアンカが去っていくと、キャシオーは、彼女の夕飯に行くつもりだとイアーゴーに語り、去って行きました。
 キャシオーが去った後、オセローが出てきて、妻のハンカチーフを馴染みの女にやってしまったキャシオーをどのように殺すべきかと語りました。
 イアーゴーは、デズデモーナは絞め殺すことをすすめ、キャシオーの方は自分にまかせてほしいと申し出ました。
 そこへブランバショーの親戚であるヴェニスの使者ロードヴィーコーがデズデモーナとともにやってきて、ヴェニス公らの議官からの手紙をオセローに渡しました。
 ロードヴィーコーにキャシオーのことを尋ねられ、デズデモーナは、夫と彼の間に溝ができたことを伝え、キャシオーに同情を示しました。オセローは嫉妬に苦しみました。
 ヴェニスからの手紙にはキャシオーを後任にして帰国せよとの命令が書かれていました。デズデモーナは、その手紙によってキャシオーが救われると喜びました。
 オセローは嫉妬に苦しみ、「悪魔」と叫びながらデズデモーナを打ち、立ち去るよう命じました。身に覚えのないデズデモーナは泣きながら出て行きました。
 ロードヴィーコーは、完全無欠の人物と称されていたオセローの取り乱した様子に驚き、これまでも彼はあのようだったのかとイアーゴーに尋ねました。
 イアーゴーは、オセローの後をつけてその挙手をみてみるが良いとロードヴィーコーにすすめました。

第四幕 第二場

 砦の一室で、デズデモーナとキャシオーの間に怪しいそぶりがあったかどうかをオセローから聞かれたエミリアは、二人の間に不正の影は見当たらなかったと断言しました。
 オセローは、デズデモーナを連れてきてほしいとエミリアに頼みました。
 デズデモーナがやってくると、オセローはエミリアに誰かがきたら咳払いで知らせてほしいと頼んで、その部屋を退出させました。
 オセローは涙を流しながら、不義を働いたとデズデモーナを責めました。
 デズデモーナは、帰国の命令がくだったことをオセローが気に病み、それが父の企みだと思い込んでいるのではないかと考え、それならば自分も父と縁を切ることを宣言し、自分の身にやましいことは何一つないことを信じてほしいと懇願しました。
 オセローはデズデモーナの懸命な訴えに目を覚まし、彼女に許しを乞いました。
 オセローはエミリアを呼び、今聞いたことを秘密にしておいてほしいと頼みました。
 オセローが去った後、デズデモーナは、自分がどのような罪を犯したのだろうと考え込み、エミリアに頼んでイアーゴーを呼んでもらい、これまでの夫との出来事を話しました。売春婦呼ばわりされたことを嘆くデズデモーナに対し、イアーゴーは、その原因について何も知らないふりをしながら、オセローのことを非難しました。
エミリアは、影で誰かが手を引いているのではないかと考え、そのような企みを起こす悪党を呪いました。
デズデモーナは、もう一度オセローに会って、話を聞いてほしいとイアーゴーに頼みました。イアーゴーは、ただオセローの虫の居所が悪いだけだと、デズデモーナをなだめました。
 デズデモーナが去っていくと、そこへロダリーゴーがやって来ました。財産をすっかりなくしていたロダリーゴーは、イアーゴーの言うことと成すことが全くつながっていないことに気づいており、デズデモーナに渡すためにイアーゴーに託していた宝石が返ってこなかった場合、納得のいく説明を求めると要求しました。
 イアーゴーは、勇気を見せてくれれば、明日の晩デズデモーナとの逢瀬を実現させてみせると請け合い、もしも叶わなければまた寝首をかいてもよいと言いました。彼は、ヴェニスからの特使が来て、キャシオーにオセローの代わりをさせるという命令がくだったこと、オセローはモーリタニアに行くことを伝え、キャシオーを殺してしまえば、代理がいなくなったオセローとデズデモーナはモーリタニアまで行くことはないだろうとロダリーゴーをそそのかしました。そしてもしもキャシオーを殺す勇気があるのならば、十二時から一時の間に、ビアンカのところから帰るキャシオーに、街なかの道に通らせるようにすると約束しました。

第四幕 第三場

 砦の他の一室に、ロードウィーコーを送り出すために、オセロー、デズデモーナ、エミリアらが出てきました。
 その間オセローに退がらされたデズデモーナは、エミリア相手に、不義という罪を犯すことは自分では到底できるものではないと語りました。エミリアは、男は自分達の財産を他の女に使ってしまうと思えば、急に嫉妬して自分たちを家に閉じ込めようとするものであり、自分たち女はそのような男を見て不義に走るものだと語りました。
 デズデモーナは、悪意から悪を学ばず、自分の悪を正すことができるようにと、神に頼みました。

第五幕 第一場

 キプロスの町なかに、イアーゴーとロダリーゴーが出てきました。イアーゴーは、キャシオーが間もなく来ることを告げ、彼を殺す覚悟を持つようにロダリーゴーに促しました。
 キャシオーが通りがかると、ロダリーゴーは突きかかりました。しかしキャシオーは特別仕立ての上着を来ており、剣を抜いてロダリーゴーを刺しました。そこでイアーゴーは後ろからキャシオーの脚を刺して逃げ去りました。
 キャシオーは、人を呼びながら倒れました。倒れているキャシオーを見つけたオセローは、イアーゴーがやったことだと気づき、自分の受けた辱めを見返してくれた彼の誠実を喜び、これを教訓として自分もデズデモーナを殺してしまおうと、彼女の寝床へと向かいました。
 そこへロードヴィーコーとグラシャーノーがやってきて、「人殺しだ」と叫ぶキャシオーと、悪いことをしたと嘆くロダリーゴーに気づきました。
 イアーゴーは、この叫びを初めて聞いたかのように下着姿で飛び出してきて、キャシオーに相手は誰かと問いかけました。キャシオーは、犯人がこの辺りにいるはずだと言うと、イアーゴーは、倒れているロダリーゴーを人殺しだと吹聴しながら、彼を刺しました。
 ロダリーゴーは、イアーゴーに人でなしと言いながら気を失いました。
 イアーゴーは、ロードヴィーコーとグラシャーノーを呼び止め、キャシオーがやられたと訴え、彼の傷を縛って救命しようとするふりをしました。
 そこへビアンカがやってきて、倒れるキャシオーに泣きつきました。キャシオーは、誰が自分を刺したのか分からないまま気を失いました。
 イアーゴーは、自分が刺したのがロダリーゴーであったことに初めて気づいたふりをしながら、キャシオーを担架で運ばせ、ロダリーゴーといざこざがあったのかと聞きました。キャシオーは、ロダリーゴーのことを知りもしないと答えました。
 イアーゴーは、キャシオーとロダリーゴーを家の中に運ばせると、ビアンカに罪を着せるために、彼女が何か企んでいたのではないかと人々に向けて語り始め、キャシオーが今夜どこで飯を食べたか聞きました。ビアンカが自分のところで食べたと言うと、イアーゴーは彼女を引き立てました。ビアンカに罪があると考えたエミリアは、彼女を強い言葉で罵りました。

第五幕 第二場

 砦の一室で、デズデモーナが寝台に眠っているところにオセローが明かりを手にして現れ、内側から錠をおろしました。彼はデズデモーナの男を陥れる罪を消すために、彼女のことを殺す覚悟でした。オセローは、デズデモーナに口づけをすると、彼女は目を覚ましました。
 オセローは、罪を犯して神の許しを乞うていないものを殺すことはできないと、夜の祈りを済ますようにデズデモーナに伝えました。
 自分が殺されようとしていることを知ったデズデモーナは、この身を守ってほしいと神に祈りました。
 オセローは、犯した罪のことを考えよと、デズデモーナに語りました。
 デズデモーナは、自分の罪はオセローを愛したことだけだと答え、愛したためになぜ殺されなければならないのかと尋ねました。
 オセローがハンカチーフをキャシオーに与えたことを責めると、デズデモーナは、友人のために当たり前の好意を示したまでで、自分の心がキャシオーに吸い寄せられたことなど一度もないと誓い、キャシオーがそのハンカチーフを拾ったのだと答え、命乞いをしました。
 しかしオセローは、自分は直にキャシオーの口から、デズデモーナを思い通りにしたと聞いたのだと語り、彼女を絞め殺しました。

 そこへ、エミリアが戸の外から呼びかけました。
 オセローは重い悲しみを感じながら彼女を中に入れました。
 エミリアは、キャシオーがロダリーゴーを殺し、キャシオーはまだ生きていると伝えました。かすかに息の残っていたデズデモーナは、垂れ幕の後ろから、自分の手で死ぬと言いながら、息絶えました。
 オセローは、キャシオーとデズデモーナとの関係をイアーゴーがすべて教えてくれたのだと語りました。
エミリアは、イアーゴーが嘘をついてオセローを騙したことを悟り、愚かなことをしたオセローを責め、「人殺し!」と叫びました。
 そこへモンターノー、グラシャーノー、イアーゴーがやって来ました。
 デズデモーナが不義を犯したのだとイアーゴーが主張すると、エミリアは、誰よりも心の綺麗が彼女が不義を犯すはずはなく、夫の言ったことは嘘であると訴えました。

 グラシャーノーは、デズデモーナの結婚が打撃になり、彼女の父が死んだということを伝えました。

 オセローは、キャシオーがハンカチーフを持っていたことを語り、妻の不義を皆の前で証拠立てようとしました。
 すると、それを聞いたエミリアは、そのハンカチーフは、自分が夫から何度も盗んでこいと言われていたもので、偶然拾ったのをイアーゴーにやったものなのだと告白しました。
 オセローはイアーゴーの奸計を悟り、彼を殺そうとして襲い掛かり、モンターノーに遮られました。その隙にイアーゴーは、エミリアを刺して逃げました。
 モンターノーらはイアーゴーを追うために、オセローとエミリアの二人を残して部屋から出て行きました。
エミリアは、デズデモーナが心の綺麗なまま死んでいったことを訴え、息絶えました。
 オセローは、叔父にもらったスペインの名刀を出しました。
 外で見張っていたグラシャーノーは、オセローが外へ出ようとしているのだと思い、出ようとするのならば手合わせすると語りました。
 オセローは話を聞いてもらおうと、彼を部屋に引き入れました。
 オセローは、かつて自分の名声を打ち立てた名刀を見せ、今となっては自分の命の果てがすぐそこに迫っていることを嘆きながら語りました。そして青ざめたデズデモーナの顔を見て、自分をこの清らかな姿が見えない地の果てまで追い出してくれと、地獄の悪魔に頼みました。
 ロードヴィーコー、モンターノー、担架に乗せられたキャシオー、役人に引き立てられたイアーゴーが出てきました。
 ロードヴィーコーは、みずから破滅を急ぎ、取り返しのつかない不幸を招いた男はどこにいるかと訊ねました。
 オセローは、イアーゴーに突きかかったものの、ロードヴィーコーが剣を取り上げるよう命じたため、イアーゴーの命を奪うことはできませんでした。
 オセローは、キャシオーに許しを乞い、なぜ自分を罠にかけようとしたのかとイアーゴーに尋ねました。
 イアーゴーは、これ以上は一言も口を聞かないと宣言し、その理由について語ることを拒否しました。
 ロードヴィーコーは、刺されたロダリーゴーの隠しから、イアーゴーがキャシオーの殺害を支持したという証拠となる手紙が見つかったことを伝えました。
 キャシオーは、自分の部屋に落ちていたハンカチーフがイアーゴーがわざと落としておいたものであったということ、夜警のときにロダリーゴーをけしかけて自分を襲わせたこと、そして、一命をとりとめたロダリーゴーが、自分を刺したのもイアーゴーであったと証言したことを伝えました。
 ロードヴィーコーは、オセローから官職と指揮権を剥奪し、以降はキャシオーがキプロスを統治することを宣言しました。
 オセローは、自らの浅はかさを嘆き、悪巧みにあって猜疑に身を委ねた自らの悲劇を記録に残してほしいと頼むと、自分の喉元を刺し、デズデモーナの寝台の上に倒れて死に絶えました。
 ロードヴィーコーは、この悲劇の全容をイアーゴーに見せ、グラシャーノーにこの館の始末と、オセローの財産の管理を頼み、キャシオーにはイアーゴーの処刑を任せ、自分はヴェニスに帰り、この悲劇を本国に伝えることを決意しました。