エミリー・ブロンテ『嵐が丘』の詳しいあらすじ

エミリー・ブロンテ作『嵐が丘』の詳しいあらすじを章ごとに紹介するページです。


Wuthering Heights (Penguin Classics)

※簡単なあらすじ、登場人物、感想はこちら

※詳しい登場人物紹介はこちら

※ネタバレ内容を含みます。

第一章

 一八〇一年、人間嫌いのロックウッドは、社交界から遠ざかるため、ヨークシャーの荒凉たるイングランドの土地「嵐が丘」(ワザリング・ハイツ)にやってきました。彼はここから四マイルの距離にある「スラッシュクロス」にある屋敷を借りるため、その持ち主であるヒースクリフに挨拶をしに来たのでした。

 嵐が丘とスラッシュクロスの屋敷の持ち主、ヒースクリフは、不愛想な態度で、ロックウッドを自分の屋敷の中に入れました。
 ロックウッドは部屋に一人で残されると、甘やかされることに慣れていない犬をからかい、反対にその犬たちに襲われてしまいました。ヒースクリフは、その光景を見ても平然としながら葡萄酒を勧めました。
 ロックウッドは、不愛想に見えるヒースクリフに親しみを感じ、また翌日も伺いたいと申し出ましたが、ヒースクリフはもう来てくれるなという態度を示しました。

第二章

 スラッシュクロスに入居したロックウッドが昼食を済ませて部屋にあがると、女中が石炭入れを落とし、灰塵が舞っていました。部屋に入ることができなくなったロックウッドは、雪の降る中、歩いてヒースクリフのいる嵐が丘の屋敷へと行きました。

 なかなか家に入ることができなかったロックウッドでしたが、熊手をかついだ若者に話しかけられ、やっとのことで屋敷に入ることができました。
 部屋には女主人と思われる婦人がいましたが、ロックウッドが話しかけても返事すらしませんでした。その女主人は、まだ少女の域を出るか出ないかの非常に容姿端麗な娘でした。ロックウッドは、その婦人がヒースクリフの妻であると思い込みました。しかしヒースクリフは妻も息子も失っており、その婦人はヒースクリフの義理の娘でした。

 ロックウッドを屋敷に入れてくれた若者はヘアトン・アーンショウといいました。
 嵐が丘の屋敷には、ヒースクリフ、義理の娘、ヘアトンの他に、召使の老人ジョウゼフと家政婦のズィラが住んでいるようでした。彼らは皆、いがみ合っている様子でした。

 雪が激しく降り、ロックウッドは帰ることができなくなりました。しかし義理の娘に帰り道を聞いても冷たくあしらわれ、ヒースクリフは宿泊を許可してくれませんでした。悪態をつきながらジョウゼフのカンテラを引っ掴んで外へと駆け出したロックウッドでしたが、再び犬たちに襲われてしまいました。ヒースクリフとヘアトンはその様子を見て笑い転げました。目眩がして気が遠くなったロックウッドは、家政婦のズィラの協力により、なんとかヒースクリフの屋敷に泊まることができました。

第三章

 ズィラはここへ来て約一年になる家政婦でした。彼女は、ヒースクリフが誰も泊めようとしない部屋にロックウッドを案内し、部屋に着いたらすぐに蝋燭を消すようにという忠告を与えました。
 ロックウッドがその部屋に入ると、板の塗装を引っ掻いて、「キャサリン・アーンショウ」「キャサリン・ヒースクリフ」、「キャサリン・リントン」なる文字が、至る所に刻まれていました。
 その部屋には多くの蔵書があり、それらの蔵書の余白には、様々なコメントや日記が書かれていました。未だ見知らぬキャサリンという女への興味を掻き立てられたロックウッドは、それらを読み始めました。
 それらの手記によると、幼いキャサリンとヒースクリフは愛し合っており、いつも屋敷の周辺にある荒野を転げまわっていたようでした。しかし、父親がわりとなっていたキャサリンの兄ヒンドリーが、暴君のようにヒースクリフに厳しい仕打ちをしていたため、キャサリンはヒースクリフに深く同情し、悔し涙を流すこともあったようでした。

 キャサリンの手記を読んでいるうちに、ロックウッドはうとうととし始め、氷のように冷たい手につかまれる悪夢に襲われました。その手はこちらの指にしがみつき、すすり泣きながらキャサリン・リントンと名乗り、二十年も家に帰れずに彷徨っていると言いました。

 ロックウッドは叫び声を上げて飛び起きました。ヒースクリフがその声を聞きつけてやってきたため、ロックウッドは、今見た夢がどのようなものであったか、思わずヒースクリフに話しました。キャサリンという女が二十年も彷徨っているというロックウッドの夢の話を聞いたヒースクリフは、部屋の格子窓をこじ開け、号泣しながらキャサリンの名を呼び、帰ってきておくれと懇願し始めました。
 ロックウッドは、ヒースクリフのことが気の毒になってその場を立ち去り、翌日の朝食をとることもなく家へ帰りました。

第四章

 人間嫌いを公言してきたロックウッドでしたが、孤独に耐えきれず、スラッシュクロスの女中のエレン・ディーンに話しかけ、ヒースクリフがなぜスラッシュクロスを貸しにだして、格の下がる嵐が丘に住んでいるのかを聞きました。エレンによると、ヒースクリフは金持ちで、その財産も年々増えているにも関わらず、締まり屋で店子から財産が舞い込んでくる機会を不意にしたくなかったのだと言います。
 ヒースクリフの義理の娘の名前は、キャサリン・リントンといって、エレンの前の主人の娘でした。
 ロックウッドは、ヒースクリフの出生が謎に包まれていること、どうやって金儲けをしたのかもわからないこと、このスラッシュクロスに以前住んでいた家族がリントンという一族であること、ヘアトンは亡くなったリントン夫人の甥であることを知りました。

 エレンは嵐が丘に起きた物語を、ロックウッドに語り始めました。

 もともと嵐が丘に住んでいたのはアーンショウという由緒正しい一家でした。屋敷には父親と母親の他に、長男のヒンドリー・アーンショウ(以下ヒンドリー)と長女のキャサリン・アーンショウ(以下キャサリン)が暮らしていました。ヒンドリーの乳母をしていたのがエレンの母親であったため、エレンはヒンドリーとキャサリンと常日頃一緒に遊んでいました。
 ある日、父親のアーンショウが、リバプールへの片道六十マイルの徒歩の旅へと出かけました。予定よりも遅れて家に帰りついたアーンショウは、汚らしい黒髪の子供を抱えていました。その子供は、リバプールの街中で飢え死にしそうなところを拾われ、どこの子なのか誰もわからなかったため、アーンショウは仕方なく家へと連れ帰ったのでした。
 その男の子はヒースクリフという洗礼名をもらい、一家の中に入りました。キャサリンとヒースクリフはすぐに仲良しになり、アーンショウは、ヒースクリフを可愛がりました。一方、ヒンドリーは父親の愛情を奪われ、ヒースクリフを目の仇にしました。
 ヒースクリフはヒンドリーに様々な酷い仕打ちをされるようになりましたが、不平不満を言うことはありませんでした。

第五章

 そのうちに父親のアーンショウは弱っていきました。それとともに、ヒースクリフのことをより贔屓するようになり、家の中の人々もその贔屓に同調しました。その結果、ヒースクリフは思い上がっていきました。

 ヒンドリーは、教区の牧師に勧められた父によって、寄宿制のカレッジに入ることとなりました。

 キャサリンは、軽やかな風貌のおてんば娘に成長しましたが、綺麗な瞳と可愛らしい笑顔を持ち、その美貌にかなう者は教区内にいませんでした。彼女はヒースクリフが好きでしかたなかったようで、悪いことをすると彼と会わせないというお仕置きをうけ、それが一番こたえるようでした。死に瀕した父親のアーンショウは段々と怒りっぽくなり、キャサリンは父親をわざと怒らせるようになりました。そのたびにアーンショウはキャサリンを叱りつけ、神に許しを乞うようにと諭しました。
 十月のある夕べ、父親のアーンショウは椅子に座ったまま、静かに息を引き取りました。キャサリンとヒースクリフは号泣して嘆き、互いを慰め合いました。

第六章

 葬式のために里帰りしたヒンドリーは結婚しており、フランセスという名の妻を連れ帰りました。フランセスは、おそらく名家でもなければ財産もなく、その素性についてヒンドリーは何も教えませんでした。彼女はおどおどしてアーンショウ家の全てに舞い上がり、エレンは頭の弱い娘だと思いました。
 ヒンドリーは三年のあいだで、すっかり血色が悪く貧弱になっていました。
 フランセスはキャサリンが妹になったことを始めは喜んでいましたが、すぐにその愛情は減っていき、ヒンドリーもヒースクリフへの憎しみを思い出したようで、家族から召使の身分に落とし、外で野良仕事をするように命じました。
 ヒースクリフとキャサリンは朝一番で荒野に行き、一日そこで遊ぶことを何よりの楽しみにしていました。キャサリンは、自分が習った勉強をヒースクリフに教え、畑で一緒に働いて遊びました。二人がミサをさぼると、ジョウゼフと副牧師はヒンドリーの放任に苦言を呈し、その度に二人は罰を受けました。しかしそれでも二人はますます悪戯になり、エレンを泣かせました。

 ある日の晩ふたりが居間から追い出され、夜中になってヒースクリフだけが帰ってきました。話を聞くと、キャサリンはスラッシュクロスの屋敷にいるようでした。その晩二人は罰を受けた後で散歩に出かけると、リントン家が住んでいたスラッシュクロスの屋敷の明かりを見つけ、窓の下から部屋の中を覗き込みました。すると十一歳のイザベラと、その兄エドガーが喧嘩をして泣いていました。ヒースクリフとキャサリンがその光景を見て笑っていると、その声を聞きつけた兄妹が両親を呼び、キャサリンはその両親が放った犬に噛まれて怪我をしてしまいました。ヒースクリフは石を犬の口に突っ込んで応戦しましたが、二人は捕まってしまいました。
 一家は、キャサリンが嵐が丘の娘であると気づきました。身分の低いヒースクリフだけは悪態をついたために追い出され、キャサリンだけが屋敷に残されました。
 キャサリンは丁重にもてなされました。彼女が楽しそうにしているのを外から見て、ヒースクリフは一人で帰って来たのでした。
それからキャサリンはしばらくスラッシュクロスに泊まり、フランセスがそこへ通って教育を施しました。ヒースクリフはキャサリンと話をするのを禁じられました。

第七章

 キャサリンは五週間スラッシュクロスに留まり、フランセスが自尊心を尊重しながら教育を行ったのが功を奏し、立派な令嬢になって帰ってきました。
 ヒースクリフは、以前にも増して泥だらけになる生活を送っており、キャサリンの前に姿を現すことがなかなかできませんでした。ヒンドリーに呼ばれてようやく顔を出しても、キャサリンがその様子をからかったため、ヒースクリフは悪態をつきながら飛び出していきました。
 エレンはヒースクリフを気の毒に思い、こざっぱりな格好をさせ、見違えるようにしてやりました。

 嵐が丘でクリスマスを過ごさないかという招待を受け取ったエドガーとイザベラがやってきました。リントンの家からは、兄妹とヒースクリフを近づけないでほしいという要望が届いていました。エドガーは、ヒースクリフの長い髪を小馬のたてがみと言いました。ヒースクリフはそれを恋敵の侮辱に感じ、手に持っていたアップルソースをかけました。エドガーはたちまち泣き出し、ヒンドリーはヒースクリフを部屋に閉じ込めてしまいました。
 いつも通りを装って夕食を取り始めたキャサリンでしたが、そのうちにひっそりと涙を流し始めました。彼女はパーティーを抜け出してヒースクリフに会いに行く機会をうかがい、ダンスが始まると、ヒースクリフを部屋から出してあげてほしいとたのみました。エレンもこっそり食べ物を運んでやろうとしましたが、部屋には鍵がかけられていて入れませんでした。
 キャサリンは、屋根裏の明かりとりから中に潜り込み、ヒースクリフのもとへ行きました。エレンはヒースクリフに同情し、食べ物を勧めてやりました。
 黙って物思いにふけっている様子のヒースクリフは、どれだけ待つことになってもヒンドリーへの仕返しをするつもりだと言い放ちました。

第八章

 ヒンドリーとフランセスの間に男の子が産まれました。もともと肺病のあったフランセスはお産で弱り、医師のケネスは、冬になる前に死ぬだろうと言いました。
 フランセスは最後まで気丈に振る舞いましたが、あっけなく死んでしまいました。
 息子のヘアトンの面倒は、エレンが引き受けることになりました。ヒンドリーは口が悪くなり、放蕩にふけるようになったため、屋敷にいた召使いは次々に出ていき、ジョウゼフとエレンだけが残されました。その様子を見ていたヒースクリフも心が荒み、ヒンドリーが身を持ち崩すのを喜びました。彼は朝から夜まで続く重労働のせいで疲れ果て、勉強をしようとすることもなくなっている様子でした。
 十五歳になったキャサリンは、美しくも傲慢な娘に成長しました。彼女は昔からの愛情だけは変わらず持ち続け、エレンとヒースクリフだけは慕い続けているようでした。エドガーは、誰も訪れなくなった屋敷に一人通い続けましたが、キャサリンの心を掴むことはなかなかできませんでした。
 キャサリンはエドガーの前では行儀良く振る舞い、家に帰るとヒースクリフとともに傲慢ぶりを発揮しました。
 ある午後、ヒンドリーが留守になると、ヒースクリフは畑仕事を半日サボることにしました。その日はエドガーが訪れることになっていて、キャサリンは上品な格好をしていました。エドガーとイザベルが来ることをキャサリンが伝えると、ヒースクリフは不機嫌になって詰め寄り、二人は口喧嘩になりました。
 ヒースクリフが出ていき、物腰の柔らかなエドガーが入ってきました。キャサリンは腹の虫が収まらないらしく、エレンやエドガーに向けて怒りをぶつけました。平手打ちを食らったエドガーは、怒りをあらわにして出ていきましたが、その後すぐに考え直して部屋に戻りました。ヒンドリーが泥酔して家に帰ってくる頃には、キャサリンとエドガーは仲直りを果たし、相思相愛の間柄になっていました。

第九章

 泥酔したヒンドリーは、階段の手摺り越しにヘアトンを掲げました。そこへヒースクリフがやってくる音がすると、ヒンドリーは誤ってヘアトンを落としてしまいました。ヒースクリフはその真下におり、落ちてきたヘアトンを受け止め、一命を取り止めました。ヒースクリフは、長年望んでいた復讐を自分の手で止めてしまったことを後悔しました。
 キャサリンは泣きながら、エドガーからのプロポーズを受け入れたれたことをエレンに伝えました。しかし、エドガーを愛しているのかと聞いても、ハンサムで若くて金持ちで自分を愛しているところが気に入っているだけという印象を、エレンは受けました。
 キャサリンは、ヒースクリフと自分の魂は同じもので、リントンとはかけ離れていることを感じていたので、心の中では、このプロポーズを受けたことを絶対に良くないことだと思っているようでした。しかしヒンドリーに格下に下げられたせいで、もしヒースクリフと結婚したら、二人で物乞いになるしかないため、どれほど自分がヒースクリフを愛しているのか打ち明けずにエドガーと結婚するつもりでした。エレンは、友人であり恋人であるキャサリンと別れたヒースクリフがどのような気持ちになるか考えてみるようにと言うと、キャサリンにはヒースクリフと別れる気など毛頭なく、自分がヒンドリーの言いなりにならなくて済むような立場になってから、ヒースクリフの後ろ盾になるのだと言いました。
 二人が腰掛けている椅子の後ろで、途中まで話を聞いていたヒースクリフが部屋から出ていくのに、エレンは気づきました。その夜ヒースクリフは屋敷に帰りませんでした。自分の話が聞かれていたことを知ったキャサリンは、泣きわめき、雷雨に打たれながら門と玄関の間を何度も往復しました。
 夜中になると、キャサリンはエレンに促されてもベッドに行かず、びしょ濡れのまま夜通し外の椅子でヒースクリフを待ち続けました。

 翌日からキャサリンは精神錯乱の症状を現し始め一時重体となりましたが、エレンの看病によって徐々に回復すると、リントン家の希望でスラッシュクロスに移りました。エドガーの両親は二人ともキャサリンの熱病をもらい、数日のうちに死んでしまいました。
 キャサリンは以前にも増して、生意気で高慢で気性が激しくなりましたが、エドガーは恋にのぼせ上がっていたため、その三年後にキャサリンと結婚しました。
 エレンは言いくるめられ、キャサリンのお供としてスラッシュクロスに移ることになりました。五歳になるヘアトンとは涙の別れとなりました。

第十章

 ロックウッドは、その後の四週間風邪を引き、ケネス先生に春まで外に出ないようにと言われました。
 体が弱り切っていたものの、娯楽を欲していたロックウッドは、エレンを呼び、話の続きを聞きました。

 キャサリンがスラッシュクロスに入ると、エドガーとイザベルが気を使ったこともあり、心配したよりもお行儀がよく、ときたま沈み込むことはあっても、エドガーを愛しているように見えました。そのまま半年ほどは静かで幸福な日々が続きました。
 九月のある日暮、エレンが庭から戻ると、三年ぶりに現れたヒースクリフに話しかけられました。目が落ち窪み、異様な雰囲気になったヒースクリフは、キャサリンと話したいと言って、エレンに取り次ぎを頼みました。
 エレンは気が進まないながらも、キャサリンを呼びました。ヒースクリフに会ったキャサリンは、喜びのあまりエドガーに飛びつき、ヒースクリフのために居間に席をこしらえました。エドガーはキャサリンの態度に腹を立てましたが、ヒースクリフを追い払うことはできませんでした。
 ヒースクリフは体つきもがっちりとして、瞳にも知性が宿っているように見えました。彼はスラッシュクロスに来る前に、エレンがいると思い込んで嵐が丘に寄り、ヒンドリーに会っていました。カード遊びで借金をこしらえていたヒンドリーは、ヒースクリフに資金があることを知ると、夜にまた来てくれと頼みこみ、ヒースクリフは気前の良い家賃を払って嵐が丘に落ち着くことになったようでした。
 エドガーは不機嫌になり、夫婦間で一悶着が起きましたが、キャサリンは、ヒースクリフがいない寂しさに耐えてきた自分の喜びに、エドガーが水をさすことがあってはならないと考えました。結局、エドガーはキャサリンを許し、嵐が丘へ行くことを認めました。
 ヒースクリフは始めのうち、たまにしかスラッシュクロスを訪れませんでしたが、そのうちに当たり前のように居座るようになりました。
 そのうちに十八歳になるイザベラがヒースクリフに熱を上げ始めました。もし二人が結婚すれば、イザベラにとっては格落ちになり、財産がヒースクリフのもとに渡ると考えたエドガーは、肝を冷やしました。恋に囚われたイザベラは、だんだんと怒りっぽくなり、キャサリンに噛み付くようになり、その度に喧嘩になりました。
 ある日ヒースクリフがやってくると、キャサリンは、うろたえるイザベラを捕まえて、彼女の想いをヒースクリフに洗いざらい話してしまいました。ヒースクリフは、イザベラ本人に興味を持つことはなかったものの、彼女が兄の遺産相続人であることを思い出し、その権利を横取りすることを考え始めました。

第十一章

 ヒースクリフは、キャサリンにされた酷いことのしっぺ返しをするために、イザベラをたぶらかし、結婚することを決めました。
 エレンからこの話を聞いたエドガーは、ヒースクリフが家に出入りすることを禁じ、キャサリンの部屋の鍵を取り上げようとしました。キャサリンが鍵をとられまいとして、火の中へ投げ込むと、エドガーは震え上がり、動揺して両手で顔を覆いました。キャサリンは、エドガーが自らヒースクリフに手を下そうとするのではなく、下男に追い出させようとしたのを腑抜けのような性格だと評し、ヒースクリフもエドガーをからかいました。するとエドガーは立ち上がり、ヒースクリフの喉元を殴りつけ、そのまま屋敷を出て行ってしまいました。ヒースクリフはやり返そうとしましたが、御者と庭師がエドガーとともに外に控えているのを見ると、立ち去って行きました。
 エドガーが戻ってきて、自分と別れるか、ヒースクリフとの付き合いを辞めるか選ぶことをキャサリンに要求しました。キャサリンは憤然と言い返し、怒り狂って頭をソファの腕に打ち付けました。水を持ってきても飲もうとしないので、エレンはキャサリンの顔に水を浴びせかけました。するとキャサリンは気絶し、気がつくと部屋を飛び出して寝室に閉じこもってしまいました。
 エドガーは、もしイザベラがヒースクリフと結婚するようなことになれば、兄妹としての縁を切るとイザベラに伝えました。

第十二章

 イザベラは鬱々と過ごし、エドガーも人を寄せ付けずに過ごしました。
 三日目になり、キャサリンはようやくドアを開けて水を要求しました。彼女は死にそうだと訴えましたが、エレンはその言葉を本気にすることはありませんでした。しかし段々と譫言や子供じみたことをキャサリンが言うようになると、エレンはまずいことになったと気づきました。
 キャサリンは、父親が死んだ十二歳の頃に、ヒースクリフから引き離されてスラッシュクロスに放り出され、エドガーの妻として生きなければならなかった人生を悔やみました。彼女は窓を開け、灯りがもう消されている嵐が丘を眺めながら、ヒースクリフとの思い出を懐古しました。
 エドガーが部屋に入ってきて、キャサリンの変わりように驚いて抱きしめましたが、キャサリンはもはや夫に愛を感じることはなく、自分の魂は嵐が丘へと飛んでいくと言い放ちました。
 ケネス先生の見立てによると、キャサリンがこの発作を生き延びるのは難しいようでした。先生は、ヒースクリフがイザベラに駆け落ちを持ちかけていたことを村の確かな筋から聞いたようで、この家でキャサリンの身に何があったのかを問いました。その話を聞いたエレンが慌ててヒースクリフとイザベラを探しましたが、二人はもうすでに駆け落ちをしてしまった後でした。
 エドガーは、もはやイザベラを妹として見ることはないと宣言し、新しい住居を知らせる手紙が届いたら、イザベラの物をそちらに送るようにという言いつけを残すのみでした。

 その後、キャサリンは脳炎を患いながらも、エドガーの献身的な看護によって一命を取り止めました。

第十三章

 イザベラが家を出てから六週間ほどして、結婚したという素っ気ない手紙がエドガー宛に届きました。その二週間後には、イザベラの本音が書かれたと見られる手紙がエレン宛てに届きました。そこには、駆け落ちしたその日から、イザベラの気持ちはスラッシュクロスに舞い戻っていたことが書かれていました。
 その手紙によると、駆け落ちの後、酷い有り様の嵐が丘の屋敷に入ったイザベラは、ジョウゼフからはぞんざいな扱いを受け、ヘアトンからは悪態をつかれました。
 ヒンドリーは痩せ衰えて、だらしないなりをしてイザベラを迎えました。彼はヒースクリフを殺したいという衝動に駆られるので、部屋の鍵を閉めておくようにと命じました。
 ヒースクリフの寝室にすら入ることのできなかったイザベラは、ヒンドリーが寝室に上がった後で居間で眠りました。ヒースクリフは、エドガーへの恨みを晴らすまでは、イザベラを苦しめてやると宣言しました。
 イザベラは、ヒースクリフに恋したことを悔い、エレンが来てくれるのを待っているようでした。

第十四章

 その手紙を読んだエレンは、イザベラに赦しを与えるようエドガーに頼みました。しかしエドガーがその頼みに取り合うことはありませんでした。
 しかたなくエレンは一人で嵐が丘に向かい、エドガーの意向とキャサリンの病気のことを伝え、キャサリンの容態に障らないようにするため、スラッシュクロスを訪れることのないようにとヒースクリフを諭しました。
 ヒースクリフのことを完全に憎むようになったイザベラは、兄とキャサリンが愛し合っていると主張しました。するとヒースクリフはイザベラの腕を掴んで部屋から追い出し、エレンを脅してでもキャサリンと会える手筈を整えてもらうと言いました。
 エレンは始めヒースクリフに対して首を縦に振りませんでしたが、さまざまな方法で説き伏せられ、キャサリンに手紙を渡すことに同意してしまいました。

第十五章

 エレンはヒースクリフからの手紙を受け取り、その四日後、家族が教会に行っている隙に渡しました。回復の兆候を見せていたキャサリンは、その手紙を読んで狼狽した様子を見せました。その返事をエレンが伝える前に、焦らされたヒースクリフは屋敷へと忍び込んでくると、キャサリンを抱きしめ、全快の見込みがないことを察して嘆きました。

 キャサリンは、はじめのうちは自分だけが苦しんでいると言ってヒースクリフを責めましたが、ヒースクリフがこの上もなく苦しんでいることを知ると、そばに来て欲しいと頼みました。二人はしばらく睨み合った後、固い抱擁を交わしました。ヒースクリフは、キャサリンが自分を傷つけたことを責めながらも、キスを懇願し、二人は泣きながら顔を相手の顔に埋めるようにしました。エドガーが戻ってきてヒースクリフはその場を立ち去ろうとしましたが、キャサリンに引き留められて覚悟を決め、撃ち殺されることになってもどこにも行かないと言いました。
 再び抱き合っている間にキャサリンは気絶し、そこへエドガーが入ってきてヒースクリフに飛びかかりました。ヒースクリフは気絶したキャサリンをエドガーの腕に託し、しっかりと看病するようにと命じました。エドガーとエレンはなんとかキャサリンを正気づかせましたが、キャサリンは、前後不覚に陥っていました。
 エレンは、キャサリンの様子を明日知らせると言い含め、ヒースクリフを家から追い出しました。ヒースクリフは、その約束をしっかり守るようにと言いつけ、去って行きました。

第十六章

 その夜、キャサリンは女の子を月足らずで産み落とし、命を落としました。先代のリントンが、息子の子供が女の子の場合には相続権を与えていなかったため、歓迎されない子供でした。エドガーは悲嘆に暮れました。
 エレンは日が昇るとすぐに家を出てヒースクリフに会い、キャサリンが死んだことを伝えました。
 ヒースクリフは、キャサリンが安らかに眠ることを望まず、自分に取り憑いてでもいいからそばにいてほしいと叫び、いっそ狂わせてくれと頼みました。エレンはその様子に同情を禁じ得ませんでしたが、失せろと言われたため、すぐに退散しました。
 葬儀では、エドガーが寝ずの番につきましたが、ヒースクリフは隙あれば屋敷に入ってこようと試みました。同情したエレンは、エドガーが眠っている間に窓を開けてやりました。ヒースクリフは誰にも気づかれないように部屋に入り、キャサリンの胸元にあるロケットを開けて、自分の髪とキャサリンの髪を交換して去って行きました。
 ヒンドリーは葬儀に姿を現さず、イザベラは招かれることすらありませんでした。
 キャサリンは、丘の斜面にある教会墓地に葬られました。

第十七章

 数日後、傷だらけで雨に濡れたイザベラが、スラッシュクロスへとやってきて、町まで逃げるための馬車を手配してほしいと頼みました。エレンはイザベラの服を着替えさせ、話を聞きました。
 イザベラによると、キャサリンの死の直前、一週間ほどヒースクリフは家を留守がちにしており、たまに帰ってきても一人で部屋に閉じこもり、一心に祈りを捧げていたようでした。ふさぎがちになっていたヒンドリーは、キャサリンの葬儀には来るつもりでしたが、酒に溺れていた上に、落ち込みが激しく、参加することができなかったようでした。
 ヒースクリフが久しぶりに嵐が丘に戻ってきた音が聞こえると、ヒンドリーは積年の恨みを晴らそうと、鍵を閉めて銃を手に取りました。すでに夫への愛を失っていたイザベラは、家から締め出すことには賛成したものの、殺人の幇助をするのは御免だと思い、家には入らない方が良いとヒースクリフに忠告しました。
 ヒースクリフはその忠告に怯えず、開き窓を壊して顔を覗かせました。ヒンドリーが撃とうとして近づくと、ヒースクリフは窓から掴みかかりました。ヒンドリーは銃を暴発させ、その拍子に持っていたナイフを自分に刺してしまいました。ヒースクリフは石で窓の仕切りを叩き壊し、気絶したヒンドリーの体を足蹴にし、頭を床に叩きつけました。
 イザベラはジョウゼフを呼びました。ジョウゼフは血の海を見て祈りを唱え、治安判事のエドガーにこの件を調べてもらうと宣言し、ヒンドリーに気つけの酒を飲ませ、正気づかせました。
 翌朝はヒンドリーもヒースクリフもぐったりとして身動きをしませんでした。イザベラは一人で三人分の朝食をとり、悲しみに浸るヒースクリフを見てせいせいした気持ちになり、彼が最も傷つくような言葉を吐きました。するとヒースクリフが投げたナイフが耳の下に刺さったため、そのナイフを引っこ抜き、スラッシュクロスへと逃げてきたのでした。
 彼女は一時間も腰を据えず、やってきた馬車に乗り込みました。そしてロンドンの近くに居を構え、その数ヶ月後に息子を産み、ほとぼりが覚めた頃にはエドガーと手紙のやり取りも行うようになりました。
 子供はリントンと名づけられました。リントンは病気がちで気難しい子に育ちました。自分の息子にスラッシュクロス由来のリントンという名がつけられたことを知ったヒースクリフは、嘲るような態度を見せましたが、今はこれ以上イザベラを追い回すようなことはせず、手に入れたい時が来たらその子供も手に入れると言いました。
 エドガーは、イザベラがヒースクリフの元を去ったことを喜びました。彼は、ヒースクリフの姿を見かけそうな場所に出かけたがらず、治安判事の仕事も辞め、世捨て人のようになりました。子供は母親と同じキャサリンと名づけられ、エドガーはキャシーと呼びました(以下娘のキャサリンをキャシーと表記します)。
 キャサリンの死から半年も経たない頃、ケネス先生によってヒンドリーの訃報がもたらされました。エレンは、古くからの友の死を嘆き、嵐が丘に行って葬式の手配をすることにしました。弁護士によると、ヒンドリーは借金まみれで死んだようでした。これによりヒースクリフは、嵐が丘の主人となり、所有権を握りました。順調であればこの界隈一の紳士になっていたはずのヘアトンは、それを自覚することもなく、ヒースクリフの召使いのような立場になりました。

第十八章

 キャシーは、我を通すところが玉に瑕でしたが、優しく美しい娘に育ちました。彼女はペニストン岩と言われる、荒野の頂にある剥き出しの岩に興味を抱き、行ってみたいと言うようになりました。そこへいくまでには嵐が丘の近くを通らなければならないため、エドガーは、その岩は取るに足りないものだと説明し、連れて行くことは決してありませんでした。
 キャシーが十三歳になったころ、死を間近に控えたイザベラから、今後の取り決めを行うために兄に会いたいという手紙が届きました。エドガーはその願いを受け入れました。イザベラには息子のリントンをエドガーに引き取って欲しいと言う思惑がありました。
 エドガーは、三週間家を開けました。その間、エレンはキャシーのお守りをしていました。キャシーは敷地から出ることを禁じられていましたが、ある日、一人で出掛けたまま帰ってこなくなりました。エレンが心配して捜索に行くと、キャシーはペニストン岩への探検に出かけていたようで、途中にある嵐が丘で保護されていました。幸運なことにヒースクリフとジョウゼフは留守にしており、十八歳になったヘアトンが相手をしていました。ヘアトンはヒースクリフに暴力を振るわれることはなかったようで、伸び伸びと育ったようでしたが、教育を受けることはなく、文字すら読めませんでした。
 エレンは、ヘアトンがキャシーの従兄に当たることを教えました。キャシーは、自分の従兄は父親が今ロンドンに迎えに行っているのであり、ヘアトンのような粗野な男が自分の従兄であるわけはないと言って泣き始めました。

 キャシーは、エレンがエドガーに解雇されないよう、このことを父親に内緒にすることを誓いました。

第十九章

 イザベラが亡くなり、エドガーがその息子リントンを連れて帰宅することになりました。キャシーよりも半年年下のリントンは、肌が青白く、繊細で女々しく、気難しい印象の男の子で、まだ母親を亡くした悲しみから抜けきっていませんでした。
 エレンの心配通り、すぐにジョウゼフが訪ねてきて、リントンを連れ帰れというヒースクリフからの命令を伝えました。
 エドガーは、リントンを不憫に思いましたが、実の父親であるヒースクリフにリントンを譲る以外の道は残されていませんでした。

第二十章

 リントンは、自分に父親がいるという話を聞いたことすらありませんでした。エレンは嫌がるリントンを説き伏せ、ヒースクリフのもとへ連れて行きました。
ヒースクリフは、イザベルの面影が残るリントンのことを憎らしく思っているようでしたが、自分の息子であるリントンが、将来スラッシュクロスの所有者になるため、その財産を相続する権利が確定するまでは、丁重に扱うつもりのようでした。
 エレンが嵐が丘を出ようとすると、リントンは置いていかないで欲しいと叫びましたが、彼がエレンについて帰ることは許されませんでした。

第二十一章

 リントンが旅立ったことをキャシーは嘆きましたが、そのうちにその記憶は薄れて行きました。
 嵐が丘の家政婦に聞くところによると、ヒースクリフはか弱いリントンのことをますます憎らしく思うようになったらしく、二人はほとんど口を聞いていないようでした。エレンはリントンの運命を気の毒に思いながらも、次第に関心を失っていきました。しかしエドガーは、リントンのことが気にかかるらしく、様子を探るようにエレンに頼みました。

 キャシーが十六歳になったある日、エレンと二人で出かける許可をもらい、赤ライチョウの巣を見に行きました。しかし、嵐が丘の領地に入ったキャシーは、赤ライチョウの卵を盗みにきたのだと勘違いされ、ヒースクリフに捕らえられてしまいました。
 ヒースクリフは、リントンとキャシーの結婚を企んでいました。スラッシュクロスの遺産の相続権は、キャシーにはなくリントンが受け継ぐ予定でしたが、病弱な質で長く持ちそうになかったため、リントンが受け継いだ財産は、将来ヒースクリフのところへ来る予定でした。もしキャシーとリントンを結婚させれば、エドガーに口出しをさせないようにすることができ、積年の恨みも晴らすことができるとヒースクリフは考えていたのでした。

 キャシーは、自分の叔父にあたるヒースクリフに興味を持ち、招待されるがままについて行き、リントンとの再開を果たしました。リントンは物憂げな風貌の細身の青年に成長しており、エレンの見立てでは性格が歪んでいるようでした。リントンとキャシーは、上品なものを軽蔑するようにと教育されてきたヘアトンが文字も読めないことを笑い、キャシーはリントンの毒舌を面白がりました。二人は翌日も会う約束をして別れました。

 翌日、キャシーは嵐が丘に行ったことを父親に話しました。父親はヒースクリフが極悪非道な男だと言って、これまでヒースクリフが行ってきた酷いことを手短に話しました。キャシーは理解した様子で、普段通りに勉強を始めましたが、夜になると、自分とすぐに会えると思っているリントンが気の毒になり、泣き始めました。
 キャシーは、エレンや父親に隠れて手紙を書き、それは牛乳をとりに来る男の子によってリントンに渡されました。
 それ以来、二人は文通をする仲となり、それは徐々に恋文へと変わっていきました。ある日、その手紙を発見したエレンは、それらを全て取り上げ、これ以上リントンとやり取りをしないように約束させ、手紙を全て火にくべてしまいました。キャシーは意気消沈して、目を真っ赤にして泣きました。エレンは次の日の手紙に、もうキャシーに手紙を書かないようにという文をもたせて牛乳運びの少年に渡しました。

第二十二章

 数ヶ月後、エドガーが体調を崩すと、キャシーはエレンを連れて散歩し、父親とエレンの死後に自分が一人になることを考えて泣き始めました。エレンは、父親に心配をかけないよう、いつも朗らかに過ごすことが大切なのだと説き、キャシーもそれに頷きました。
 表の道路に通じる塀によじ登ったキャシーは、反対側に帽子を落とし、取りに行きました。内側から開ける鍵をエレンが探しているうちに、キャシーは偶然通りがかったヒースクリフに話しかけられました。ヒースクリフは、リントンが手紙を貰えなくなったことに絶望して死にかけており、キャシーからの優しい言葉こそが彼の一番の薬になることを伝え、自分は一週間ほどいないので行って確かめてみるといいと言いました。エレンは、ヒースクリフの言うことに耳を貸さないよう忠告しましたが、その夜、キャシーは泣きながら、自分でリントンの様子を確かめるまでは安心できないと言い始めました。結局、その翌日、エレンはキャシーの悲しみを見ることに耐えられなくなり、彼女の嵐が丘行きに同行することになりました。

第二十三章

 キャシーはリントンの部屋に入ると、彼のことを抱きしめました。
 リントンは、ジョウゼフと新しい家政婦ズィラに世話されており、ヒースクリフは宣言通り留守にしていました。
 二人は再会を喜び、リントンはヒースクリフのいない間にたまに会いにきて欲しいと頼みました。しかしそのうちに、お互いの父親についての会話となると、キャシーの母親がどちらの父親を愛していたのかという会話で喧嘩になり、リントンは発作を起こして、わざと苦しそうに見せながらキャシーをなじりました。キャシーはその嘘を見抜けず、リントンのことを本気で心配しました。リントンもキャシーに慰められて気分を持ち直し、翌日も来て欲しいとせがみました。
 それ以来エレンが風邪をひいたのをいいことに、キャシーは夕食の後にリントンのもとを訪れる生活を送るようになりました。

第二十四章

 三週間が過ぎ、体調が良くなったエレンが本を読んでもらおうとしても、キャシーは早く寝室に切り上げたいような態度を見せるようになりました。このようなことが三日ほど続いた後、様子がおかしいと気づいたエレンは、寝室に引き上げたはずのキャシーを探しまわりました。キャシーはなかなか見つからず、そのうちに馬番に率いられて家に帰ってくるのが見えました。
 キャシーは泣きながら、リントンのところへ行っていたことを白状し、これまで嵐が丘で経験したことを語り始めました。キャシーは馬番のマイケルに本をやって買収し、夕食の後から八時半くらいまで、毎日のようにリントンの家で過ごしていたようでした。ある日、いつものようにリントンのいる部屋に行くと、キャシーにぞんざいに扱われたヘアトンが怒りながらやってきて、二人を締め出しました。リントンは震えながら怒り、血を吐いて倒れてしまいました。キャシーはこれ以上リントンに会うことを許されず、家へと帰りました。
 その三日後、キャシーは勇気を出して嵐が丘へ行きました。リントンがつむじを曲げていたので再び二人は喧嘩になりましたが、その数日後には泣きながら仲直りをし、絆を深めて行きました。
 二人の結婚を企むヒースクリフは、リントンのキャシーに対する態度が悪いと、裏で叱り付けているようでした。
 キャシーはここまでの話を父親に言わないようにとエレンに頼みました。しかしエレンはすぐにエドガーにこれを報告し、キャシーは嵐が丘に行くことを禁じられてしまいました。エドガーは二人に情けをかけ、リントンがスラッシュクロスへ来ることは許可することにしました。

第二十五章

 リントンについてエドガーに聞かれたエレンは、長く生きられそうにないものの、ヒースクリフのように手に負えない質ではないことを伝えました。エドガーは、娘の幸せになるなら、リントンと結婚させてもいいが、ヒースクリフの思惑に従うだけの男であれば、娘をやるわけにはいかないと言いました。
 春になり、エドガーの体調は少しずつ良くなりました。キャシーは十七歳になり、エドガーはリントンに手紙を送り、会って話を聞きたいと伝えました。リントンは、父親がスラッシュクロスを訪れるのに反対しているという、おそらく父親の指示通りに書かされた手紙を返しました。
 手紙の後半は、自分の文章で書いたらしく、キャシーに合わせて欲しいという懇願の内容が書かれていました。エドガーはリントンを不憫に思いましたが、自分がキャシーを伴って嵐が丘へ行くことはできないので、夏になれば会う機会もあるだろうから、それまで便りをよこすようにという返事を出しました。
 しかし、キャシーとリントンは双方からエドガーを説き伏せ、エレンが傍に控えるという条件つきで、週に一度ほど、屋敷の近くの荒野を散歩しても良いという許可をもらいました。
 エドガーは日に日に弱っており、自分の相続をキャシーに継がせたいと思うようになり、そのためには現実の遺産相続人となるリントンと結婚させるしか方法はなさそうでした。折りしもそれは、リントンが死ぬ前に、キャシーとの結婚を現実にさせたいというヒースクリフの企みと一致していました。

第二十六章

 夏が過ぎた頃、リントンとキャシーは半年ぶりの再会を果たしました。しかしリントンは以前にも増して青白い顔をしており、キャシーと会ってもすぐに眠り込んでしまいました。ヒースクリフは、リントンを甘やかすことに飽き、ひどく怒ることが多くなったようでした。キャシーに気に入られるため、溌剌として過ごすように命令されていたリントンは、ヒースクリフの言いつけの通りにできなかったことで仕打ちを受けることに酷く脅えました。
 キャシーは、リントンの態度を責め、すぐにデートを終わりにしました。しかし帰るころには憐みの感情が芽生え、複雑な表情を浮かべました。

第二十七章

 七日後、リントンの容態は更に悪くなっていました。彼は不安に駆られてキャシーを責め、二人の間に再び争いが起きました。リントンは何かを隠している様子でしたが、ヒースクリフが怖くてそれを言い出せない様子でした。そこへヒースクリフがやってきて、動けないリントンを無理やり立たせ、家に連れ帰ろうとしました。キャシーは憐みの感情を催し、父親に行くことを禁じられていた嵐が丘までリントンに付き添いました。
 エレンとキャシーが屋敷に入ると、ヒースクリフは鍵を閉めて二人を監禁しました。怒ったキャシーが食ってかかると、ヒースクリフは平手打ちを喰らわせ、自分がキャシーとリントンの父親になると宣言してどこかへ出かけてしまいました。監禁されたエレンとキャシーは、ヒースクリフが何を企んでいるのか、リントンに聞きました。リントンは、家の中に二人をおびき寄せるように言われており、明日の朝、二人は結婚させられることになっているようでした。ヒースクリフを恐れるリントンは、キャシーに結婚をせがみました。
 戻ってきたヒースクリフは、エドガーが心配するのであれば、なおのことキャシーを返すわけにはいかないと言って、結婚か監禁かを迫りました。キャシーは父親を心配させないために、リントンと結婚することを誓いました。
 エレンとキャシーは別々の部屋に監禁されました。

第二十八章

 その五日後、村からズィラが帰ってきたことによって、エレンは解放されました。村では、エレンとキャシーが沼にはまったという噂になっているようでした。長椅子に横たわっていたリントンにキャシーの行方を聞くと、まだ上の階に監禁され、一日中泣いていると言います。父親の言いなりになってキャシーを放っておくリントンの薄情さをエレンは責めました。
 エレンはスラッシュクロスに帰り、エドガーに監禁されていたことを伝えました。病気で死にかけていたエドガーは一度気絶し、ヒースクリフに財産が渡ることを阻止するため、スラッシュクロスの財産を管理人の手に委ね、キャサリンに子供が生まれた場合に、その子供にも財産がいくようにという遺言を書こうとしました。
 キャシーの悲しみに打ちひしがれる姿を見かねたリントンが、ヒースクリフに見つかる危険を冒して部屋の鍵を開けてくれたおかげで、キャシーは窓から屋敷を逃げ出し、スラッシュクロスへと戻りました。エドガーは戻ってきた娘にキスをすると、うっとりと娘の姿を見つめながら臨終を迎えました。キャシーは涙も枯れはてた様子で夜を明かしました。翌日やってきたグリーン弁護士は、ヒースクリフに買収されており、スラッシュクロスの財産を全て取り仕切り、家政婦たちを解雇し始めました。

第二十九章

 エドガーの葬儀が終わると、ヒースクリフがノックもせずにやってきました。リントンはキャシーを逃がしたことで酷いお仕置きを受け、ヒースクリフを恐れるあまり発狂したようになっているようです。そのリントンを沈めるため、キャシーは嵐が丘へと行かなければならないと命じられました。エレンはリントンとキャシーがなぜスラッシュクロスで暮らしてはいけないのかと反抗しましたが、ヒースクリフは、自分の子供を手元に置いておき、スラッシュクロスには間借り人を募るつもりだと言って譲りませんでした。
 ヒースクリフは、キャサリンが死んでから、苦しいほどに思い焦がれ、常にキャサリンが側にいるのではないかという感覚になりながらも、現実に会うことのできない責め苦に十八年間も苦しめ続けたことを語りました。彼はエドガーの墓を掘っている寺男に金を握らせ、キャサリンの墓をあばいて骸を眺め、エドガーが眠る側ではない方の横板のネジをゆるませ、自分が死んだら緩めた方の側に遺体を置き、その横板を外して欲しいと頼んだようでした。
 結局キャシーはヒースクリフによって連れ帰られてしまいました。

第三十章

 それ以来、エレンはズィラから話を聞くだけで、キャシーに会うことはできませんでした。
 ズィラによると、キャシーは、リントンのために医者を呼んで欲しいと懇願したようですが、その願いが聞き入れられることはなく、リントンは衰弱して息絶えました。キャシーは二週間の間、一度も部屋から出ることはありませんでしたが、寒さに耐えかねて下に降りてくると、リントンの遺書を読みました。強制されて書いたその遺書には、自分の持っている動産と、キャシーの持っている動産を全て父親に譲るという内容が遺されていました。
 今後キャシーの相手をすることが増えるだろうと言われたヘアトンは、真っ赤になりながら身じまいを整え、キャシーが本を取り出すのを手伝い、本を読むのを見つめました。しかし思わずその綺麗な巻き毛に手に触れると、キャシーは彼のことを叱りつけました。

 ヘアトンはキャシーが本を読むのを聞きたいと言って、その頼みを伝えて欲しいとズィラに頼みました。しかし、キャシーはその願いを受け入れず、二週間誰も自分のことを相手にしてくれなかったことに文句を言い、今後嵐が丘の屋敷の者たちの相手をする気など毛頭ないと宣言しました。結局ヘアトンはいつものような悪態をついて、銃の手入れを始めました。
 キャシーは近頃では、ますます手に負えない生意気な態度を見せ、ヒースクリフにすら噛みつくようになったようでした。

 ズィラからこの話を聞いたエレンは、一軒家を借りてキャシーと住もうかとも考えましたが、そのようなことが許されるはずもなく、キャシーが救われる道は再婚くらいしか残っていないように思われました。

 このようにしてエレンの話は全て終わりました。風邪から回復したロックウッドは、この次の冬もここで過ごす気にはなれなくなり、次の半年はロンドンで暮らすことを決めました。

第三十一章

 ロックウッドは嵐が丘に出向き、エレンから託された手紙をキャシーに渡しました。キャシーは以前と変わらずふてくされた様子でしたが、喜びながらその手紙を読みました。ヒースクリフがほとんど処分してしまったため、本を読むこともできないキャシーは、嵐が丘での退屈な生活を嘆きました。
 ヘアトンは、捨てられずにいた本を何冊か持っていました。それらは全て、キャシーが家に住み着くようになってから、彼女に認められるために、同じ教養を手に入れようとして読み始めたものでした。しかしキャシーはヘアトンのことを相手にしないばかりか、それらの本を不器用に読む様子を馬鹿にしたため、自尊心を傷つけられたヘアトンは、キャシーを平手で打ち、持っていた本を全て火にくべて外へ出て行ってしまいました。
 ヘアトンとは入れ違いでヒースクリフが部屋へ入って来ました。ロックウッドは、契約通り十二ヶ月の家賃を払うことを約束した上で、来週ロンドンへ経つことを伝えました。
 キャシーはジョウゼフと食事をとるように命じられ、下心のあったロックウッドはキャシーと近づきになることはできませんでした。帰途につきながら、ロックウッドは華やかな都にキャシーを連れ出すことを夢想しました。

第三十二章

 一八〇二年の九月、ロックウッドは北イングランドに住む友人に、領地内の荒野での狩りに誘われました。そこはスラッシュクロスのすぐ近くだったため、ロックウッドは、久々に自宅を訪れてみようと思い立ちました。
 スラッシュクロスでは、見たことのない老婦人が九、十歳の女の子と共に屋敷に住み込んでいました。その老婦人によると、エレンは嵐が丘に移ったようでした。ロックウッドは、その晩の寝室の準備を老婦人に頼み、嵐が丘へと向かい、エレンと再会しました。
 ロックウッドがスラッシュクロスを離れてすぐにズィラが暇をとったため、エレンはヒースクリフに呼ばれ、キャシーのために喜んで嵐が丘に入ったようでした。キャシーはエレンとの再会を喜びましたが、すぐに退屈さにうんざりするようになり、時たまヒースクリフに追い出されて台所へやってくるヘアトンにちょっかいを出すことくらいしかやることがありませんでした。
 ヘアトンはしばらく一言も発することなく、キャシーに腹を立てている様子でした。キャシーは、ヘアトンがいるときに本の朗読を始め、わざと彼が本に興味を持つように仕向けました。
 ある日、ヘアトンが持っていた銃が暴発して怪我を負い、台所に長居することとなると、キャシーは、本気で軽蔑しているわけではなく、従兄妹であることを喜ばしく感じていると伝えました。ヘアトンはしばらく意固地にしていましたが、やがて二人は和解し、キャシーは正しい読み方を教え始め、まもなく二人は愛し合うようになりました。

第三十三章

 その翌日、キャシーはヘアトンにせがみ、ジョウゼフの大切な庭木を切り払い、スラッシュクロスの草木に植え替えてしまいました。庭を荒らされたジョウゼフは、怒りに震えながらやってきて、六十年間勤め上げたこの屋敷から暇を欲しいと言いました。
 ヒースクリフは、ヘアトンを手ごめにしたキャシーを追い出そうと掴みかかりました。しかし、その手をつかんで相手の顔を見たヒースクリフは、そのまま立ち尽くし、なんとか落ち着こうとして、自分をあまり怒らせないでくれと言いました。
 ヘアトンがヒースクリフを庇ったので、キャシーは始め不機嫌になりましたが、ヒースクリフといえどもヘアトンの育ての親であると思いなおし、嫌悪を表すことを控えるようになりました。
 ヒースクリフは二人を引き離す気力も失せたようで、これまで二つの家を壊すために自分に鞭打ってきた関わらず、どちらも手中に収めたときには破壊を楽しむ気持ちが失せてしまったことを嘆きました。ヘアトンもキャシーも、キャサリンの面影を受け継いでおり、ヒースクリフはその二人を見るだけで苦しみを感じるばかりか、今では家の中にある何を見ても、キャサリンを思い出さずにはいられないようでした。
 その一方で、ヒースクリフは、長年追い求めていたものがもう少しで手に入る予感がすると言いました。エレンは、ヒースクリフの運命がどのような終わりを迎えるのかと、不安に駆られました。

第三十四章

 それからしばらくはヒースクリフは、キャシーやヘアトンのことを避けているようでした。ある夜、ヒースクリフは家を出ていくとそのまま帰りませんでした。翌朝、帰ってきたヒースクリフは、顔色が悪く、体を壊しているようにも見えましたが、ひどく上機嫌でした。
 それ以来、ヒースクリフは常に不気味な落ち着かない表情を浮かべ、何も口にせず、眠ることもせずに孤独に過ごしました。
 エレンは気味が悪くなり、ヒースクリフを観察し続けました。ヒースクリフは、自分から数メートルの空間を見つめ、苦しげでありながら恍惚とした表情を浮かべていました。どうやら彼は、キャサリンの幽霊が見えるようになったようでした。
 自分の死を予感したヒースクリフは、骸を教会墓地に運び、寺男に指示を出している通りに運んでほしいとエレンに頼みました。
 夜になると、彼は部屋に閉じこもり、医者を入れることも拒否して、呻き声や独り言を呟くような声を上げました。心配したエレンが合鍵を使って部屋に入ると、ヒースクリフは窓を開け、大雨に打たれながら歓喜の表情を浮かべて死んでいました。
 エレンは、ヒースクリフの望んだとおり、キャサリンの棺の横に遺体を埋葬しました。

 それ以来、嵐が丘の周辺の荒野では、ヒースクリフやキャサリンの幽霊を見たという人が現れるようになりました。

 キャシーとヘアトンは、婚礼が整い次第、エレンを連れてスラッシュクロスに移る予定になっていました。嵐が丘はジョウゼフに任せることになるようでした。
 ロックウッドは、散策から戻ってきたキャシーとヘアトンを見て、ふたりなら恐れるものはないだろうと呟き、下心を抱いていたキャシーから逃げるように姿を消しました。
 帰途、ヒースクリフ、キャサリン、エドガーの墓を見に教会へと寄ったロックウッドは、こんな静かな大地で、人々が静かに眠れぬわけがあるだろうか、と感じました。