井伏鱒二『ジョン万次郎漂流記』作品紹介

 一九三七年発表の、井伏鱒二の中編『ジョン万次郎漂流記』を紹介します。ジョン万次郎は、土佐国で漁を手伝う仕事をしていましたが、遭難してアメリカ船に助けられ、太平洋中を旅して日本に戻り、その後通訳として活躍しました。「事実は小説よりも奇なり」を地でいったジョン万次郎の人生が、とても読みやすい文章で書かれています。ちなみに、現在よく知られている「ジョン万次郎」という名前は、当時から呼ばれていたものではなく、この小説が元になって呼ばれるようになったそうです。直木賞受賞作品です。

さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記 (新潮文庫)

『ジョン万次郎漂流記』の登場人物

万次郎
土佐の漁村で生まれ、十五歳で遭難して、アメリカの捕鯨船に助けられ、ホノルルへと行く。その後太平洋中を旅して日本に帰り、通訳、教育者として活躍する。

悦介
万次郎の父。

シヲ
万次郎の母。

伝蔵
万次郎が遭難した時の船頭。万次郎とともに無人島で生活し、ホノルルまで行動をともにする。後に万次郎とともに日本へ帰る。

重助
伝蔵の弟。縄上げ。万次郎らと共に遭難し、ホノルルへ行き、現地で死去する。

五右衛門
伝蔵の子。縄上げ。万次郎らとともにホノルルへ行く。現地で妻を持つが、後に万次郎とともに日本へ帰る。

寅右衛門
櫓押し(船の推進器を操作する人)。万次郎らと共にホノルルへ行く。現地で帰依し、妻を持ったため、ホノルルに残った。

ホイットフィールド
万次郎たちを助けたジョン・ホーランド号の船長。万次郎を故郷に連れて行き、教育を授ける。

ドクトル・ジョージ
ホノルルの奉行。

ジェームス・アレン
ハアヘイブンで万次郎が寄寓した桶屋の家の主。

ジェーン
アレンの娘。私立学校を経営している。

ハアズレ
ハアヘイブンで万次郎が師事した数学者。

アレンテベシ
万次郎たちを無人島から助け出した船の元乗組員。フランクリン号という船の船長になり、万次郎を捕鯨船に雇い入れる。マニラで発狂する。

メエラ
士官。アレンテベシ発狂後のフランクリン号の船長。

ツワナ
伝蔵親子にハワイでの耕作用の土地を与える。

コーカン
伝蔵親子が日本に帰るために乗り込んだ船の船長。帰国は失敗に終わる。

フィツモア
万次郎たちが日本に帰るために乗り込んだサラーボイド号の船長。

木村摂津守、勝麟太郎、福沢諭吉、中浜万次郎ら
万次郎が同行した咸臨丸の乗組員。

『ジョン万次郎漂流記』のあらすじ

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 土佐の国に住む万次郎は、漁船に乗って生計を立てていましたが、十五歳のときに仲間とともに遭難しました。絶海の孤島にたどり着くと、アホウドリを食べながら六ヶ月間生活し、近くを通りかかったアメリカの捕鯨船に助け出されました。

 彼らは捕鯨を手伝いながらホノルルに着いて居を据えます。彼らを助けた船長ホイットフィールドは、万次郎のことを気に入り、ジョン万という愛称をつけ、自分の故郷へ連れて行って教育を授けました。

 その後万次郎は再び捕鯨船に雇い入れられたり、カリフォルニアにわたって金を採って、日本へ帰るための資金を稼ぎました。そして上海に寄港する船に乗りこみ、沖縄、長崎を経由して土佐に帰ります。

 英語を堪能に話せた万次郎は、幕府に通訳として重用され、咸臨丸に乗り込んで日米条約の成立に一役買いました。その後も通訳や教育者として活躍しましたが、常に捕鯨を行いたいという願望を持ち続けたまま、七十二歳でこの世を去りました。