ルイス・キャロル作『不思議の国のアリス』の詳しいあらすじを章ごとに紹介するページです。
※ネタバレ内容を含みます。
※簡単なあらすじ、登場人物紹介、感想はこちら(『不思議の国のアリス』トップ)
ウサギ穴をおりると
土手の上で姉の隣に座っていたアリスが退屈を感じていると、一匹の白ウサギがすぐそばを通りがかりました。そのウサギはチョッキを着ていて、「たいへんだ、たいへんだ、遅刻しそうだ!」と呟きながら、ポケットから時計を取り出しました。驚いたアリスはそのウサギの後を追って巣穴の中に飛び込みました。
その巣穴の壁は四方を戸棚や本棚に囲まれていました。地球の反対側に着くのではないかと思うほど長い間、その中をぐんぐんと落ちていき、自分がいないと飼い猫のダイナが悲しむだろうなどと考えながらうつらうつらしているうちに、アリスは小枝や枯れ葉の山の上に尻餅をつきました。
目の前には長い通路があり、白ウサギが走っていくのが見えました。アリスはすぐにその後を追いましたが、角を曲がるとウサギはおらず、そこは細長い、天井の低い大広間になっていました。
広間はあちらこちらにドアがあり、アリスはテーブルの上にあった金の鍵をそれらに差し込んでみました。しかしドアは一つも開きませんでした。ふと、カーテンの影に高さ15インチほどの小さなドアがあるのを見つけたアリスは、その鍵穴に鍵を差し込んでみると、そのドアは開きました。
向こう側をのぞいてみると、見たこともない素敵な庭になっていました。しかしアリスはそのドアを通れそうにありませんでした。
テーブルのところに引き返すと、そこには「ワタシヲオノミ」と書かれている壜が置いてありました。アリスは、その壜の中身を思い切って飲み干しました。するとみるみるうちに身体が縮み、10インチほどになってしまいました。
ドアを通って素敵な庭に出られると思ったアリスでしたが、テーブルの上に鍵を置いていたことに気づきました。小さくなったアリスは、テーブルの上の鍵を取ることができず、泣き始めてしまいました。ふと、小さなガラスの箱があることにアリスは気づき、中を開けてみると、干し葡萄で「ワタシヲオタベ」と書かれている小さなケーキが入っていました。
アリスはそのケーキをきれいに平らげました。
涙の池
ケーキを平らげたアリスは、頭が天井に当たるほど大きくなり、テーブルの上にあった鍵に手が届いても、ドアを通ることができなくなっていました。アリスは再び泣き出しました。その涙は滝のように溢れ、4インチほどの水たまりとなりました。
そこへ先ほどのウサギが戻ってきました。すがりたい気持ちでアリスが話しかけると、ウサギは驚いて飛び上がり、扇子と手袋を放り出して暗がりの方へ逃げていきました。
おかしなことを経験し続けたアリスは、ウサギが落としていった扇子で扇ぎながら独り言をつぶやくうちに、自分が誰なのか分からなくなり、再び泣き始めました。すると再び体がどんどんと縮んでいきました。しかし今度も鍵をテーブルの上置きっぱなしにしていたため、アリスは、庭に出ることができませんでした。
アリスは足を滑らせ、自分の涙の水たまりの中に落ちてしまいました。少し離れたところでは、ネズミがその池の中に落ちていました。アリスはそのネズミのいる方に泳ぎ始め、話しかけてみました。アリスがねずみ取りのうまい猫や犬の話をすると、ネズミは怒って遠ざかって行きました。アリスが戻ってきて欲しいと懇願すると、ネズミは、どうして猫と犬が嫌いなのかを岸に上がってから教えてやると言いました。その頃には池の中に沢山の生き物が落ちており、アリスはそれら生き物の先に立って岸へ泳ぎはじめました。
コーカス・レースと長い尾話(おはなし)
岸にたどり着いた動物たちは、どうやって身体を乾かすか相談し始めました。アリスもその中に加わり、まるで昔からの知り合いのようにおしゃべりに溶けこみました。
ネズミは、ウィリアム征服王がイギリスを制圧することになった時のことを語りましたが、それでは服は乾きませんでした。
ドードーは、身体を乾かすためには堂々巡りをするのが一番ではないかと考え、会合の延期を主張しました。そして競走のコースを定め、全員がそのコースのあちこちにちらばり、好きな時に走り出し、好きな時に止まることを提案しました。皆がその提案にしたがって半時間ほど走り回っていると、服は乾きました。しかし、誰が勝ったのかを尋ねられると、ドードーは考え込んでしまいました。しまいにドードーは、皆が勝ったのだからご褒美をもらわなくてはならないと言って、そのご褒美をくばる人としてアリスを指さしました。皆が群がってきたので、アリスはポケットのなかにあったボンボンを配りました。アリスにはご褒美がないのかと誰かが言い出しました。アリスは唯一ポケットに残っていた指抜きを授与されることとなり、それを神妙な顔で受け取っておきました。
アリスは、どうしてネコと犬が嫌いなのか教えて欲しいとネズミに頼みました。しかしネズミがその理由を話し始めると、アリスは他のことを考え込み、アリスが自分の話を聞いていないことに腹を立てたネズミは去っていきました。
鳥を捕まえるのが得意なダイナの話をアリスが始めると、鳥たちは去っていき、後にはアリス一人だけが取り残されました。
アリスは寂しくなって泣き始めました。
ビルのおつかい
そこへ白ウサギが小走りでやって来て、そわそわとあたりを見回しました。白ウサギは手袋と扇子をなくしているようで、それが見つからなければ公爵夫人に首を刎ねられてしまうようでした。
ウサギはアリスをメイドと勘違いして、メアリ・アンと呼びながら、自分の家にある手袋と扇子を持ってくるように言いつけました。
アリスはウサギの指差す方向にある家にたどり着き、手袋と扇子を見つけました。部屋を出ようとすると、小さな瓶が置いてあるのがアリスの目につきました。前と同じような面白いことが起きるのではないかと考えたアリスは、その中身を飲みました。すると体がみるみるうちに膨らんでいき、手足が部屋の窓や煙出しからはみ出るほどになってしまいました。
窓から片腕が出ていることに気づいた白ウサギたちは、トカゲのビルに煙突から家に侵入させ、アリスを追い出そうとしました。アリスはビルが降りてくるのを待ち構え、片足で蹴り上げました。
白ウサギは、手押し車いっぱいの石を持ってきて、窓から投げ入れ始めました。アリスは大声で怒鳴りつけてウサギたちを黙らせました。ふとみると、投げ入れられた小石は、小さなお菓子に変わっていました。そのお菓子を食べると、アリスの身体は再び縮んでいきました。ドアから出られるようになり、家から飛び出すと、動物たちが押し寄せてきたため、アリスは森の中に逃げ込みました。
普段よりも小さくなったアリスに、大きな犬がアじゃれついてきました。アリスはその犬に踏み潰されないように逃げ出し、元の大きさになるための食べ物を探し始めました。ふと、自分と同じくらいの背丈のキノコが生えているのを見つけたアリスは、傘の上に何かあるかもしれないと思い、その上をのぞきこみました。するとそこには、水キセルをくゆらせている一匹の大きな青いイモムシが座り込んでいました。
イモムシの助言
イモムシとアリスはしばらく見つめ合っていました。イモムシが「だれだい、あんたは」と口を開きました。アリスは、いつものように色々なことを思い出せないし、大きさがコロコロと変わるので、自分がだれなのかわからなくなってしまったと答えました。ためしにイモムシから要求された歌を歌っても、きちんと思い出すことができませんでした。
元の大きさに戻る方法を聞くと、イモムシは、キノコのかたっぽは高くなるし、かたっぽは低くなると言いました。
アリスはキノコの両端をつまみ取り、そのうちの片方を食べました。すると体がどんどんと縮み始めたため、アリスは慌ててもう片方のキノコを食べました。すると首がどんどんと長くなり、森の木よりも高くなってしまいました。タマゴを温めるために一番高い木を選んで巣作りをしていたハトは、アリスを蛇だと間違えました。
アリスは両手に持っているキノコを食べながら、自分の大きさを調整して、元の大きさに戻りました。
森を出て、開けたところへやって来ると、4フィートほどの高さの家を見つけました。そこを訪れようと思ったアリスは、家の主が驚かないようにキノコをかじり、9インチほどに縮まって、その家へと向かって行きました。
ブタとコショウ
アリスがその家を眺めていると、サカナのような顔を押した従僕がやってきて、中にいたカエルのような顔をした従僕に、女王様から公爵令嬢宛のクロケー競技の招待状を渡しました。
カエル従僕にどうやったら中に入れてもらえるかを聞きましたが、支離滅裂な答えが返ってくるばかりだったので、アリスは中へと入りました。
台所は、料理女が大鍋をかき回しており、煙が立ち込めていました。公爵夫人は椅子に座って赤ん坊をあやしていました。
かまどの上には、耳元まで口がさけるほどの笑い顔をした猫が座っていました。公爵夫人は、その猫がチェシャ猫であると言いました。
料理女は、そこら辺にあるものを公爵夫人に投げつけ始めました。公爵夫人は知らんぷりで、ぶつかっても平気でいるし、赤ん坊は泣きっぱなしでした。
公爵夫人は歌を歌って赤ん坊をあやし始めましたが、歌が二節目に差し掛かると、今度は赤ん坊を手荒く放り投げ始めました。赤ん坊は泣きわめきました。
公爵夫人は赤ん坊をアリスに預け、女王様とのクロケー試合のための準備を始めようとして部屋を出て行きました。料理女はその背中に向けてフライパンを投げましたが、当たりませんでした、
アリスは赤ん坊を連れて外に出ました。何度も鼻をならす赤ん坊の顔をアリスが覗き込むと、その顔は本物のブタに変わっていました。アリスがそのブタを地面に置くと、森へ駆け込んで行きました。
気づくと、少し離れた木の枝の上に、チェシャ猫がうずくまっていました。アリスは、自分がどこに行けば良いか聞きました。
チェシャ猫によると、右には帽子屋が住んでいて、左には三月ウサギが住んでいますが、どちらも狂っているそうでした。
その猫は、何度も消えたり現れたりするので、そんなに急に出たり引っ込んだりしないでほしいとアリスは頼みました。するとチェシャ猫は、尻尾の方からゆっくり消え、最後にはそのにんまりとした笑いだけがしばらく残っていました。
アリスは三月ウサギの家の方へ歩いて行きました。
狂ったお茶会
三月ウサギの家では、三月ウサギと帽子屋が、間にいるネムリネズミをクッションにして、お茶を飲んでいました。
アリスが席につくと、三月ウサギはワインを勧めましたが、ワインはどこにもありませんでした。
帽子屋は、アリスに今日は何日かと聞いて、ポケットから時計を取り出しました。
アリスが日付を答えると、その時計は二日違っていました。彼らが答えのないなぞなぞをしているのを見て、アリスは時間を大事にすればいいのにと言いました。
帽子屋は、以前は「時間」と友人で、好きな時に好きな時間にしてもらっていたようでしたが、ある日コンサートで唄を歌わされ、女王さまに「時間つぶし」と評され、それ以来、「時間」は、いくら頼んでも、六時のままだと言います。
そのため、帽子屋はいつでもお茶の時間で、お茶が済むたびに席をずらし、新たなお茶を入れているのでした。
三月ウサギと帽子屋は、ネムリネズミを起こして話をさせました。ネムリネズミは、糖蜜の井戸の底で暮らし、糖蜜ばかり食べているせいで病気になり、糖蜜画を習っている三人姉妹の話を始めました。
その話に質問をするたびに、帽子屋と三月ウサギは失礼なケチをつけたため、アリスは怒り出してその場を立ち去りました。するとネムリネズミは途端に眠りだし、三月ウサギと帽子屋はアリスが立ち去るのにも知らんぷりでした。振り向くと、帽子屋と三月ウサギは、ネムリネズミをお茶のポットに押し込めようとしていました。
金輪際三人のところへ行くまいと思いながら歩いていたアリスは、ある木の幹に戸口がついているのに気がつき、中へ入ってみました。そこはアリスが最初に落ちた大広間でした。アリスは今度こそ庭に出ようと、金の鍵を使って小さなドアを開け、キノコを少しずつかじって小さくなり、ドアを通り抜け、綺麗な庭に出ることができました。
女王さまのクロケー場
庭の入り口では、白いバラの花を庭師たちが三人がかりで赤く染めているところでした。
三人の庭師は、アリスに気づき、白バラを植えたことが女王さまに知られたら、首が飛んでしまうのだと言いました。そこへハートの女王さまが通りがかり、三人の庭師は地面にひれ伏しました。
王さまと女王さまは、ジャックを始め、多くのお付きの者たちを従えており、その中には白ウサギも混ざっていました。
ただ一人ひれ伏さなかったアリスは、女王さまに命令されて名を名乗りました。女王さまは、三人の庭師を指差して、そのこにいるのはだれなのかと聞きました。アリスが知ったこっちゃないと答えると、女王さまは、カンカンになって怒り出し、アリスの首を切るように命令しました。しかしアリスが「ばかみたい!」とやり返すと、女王さまはしゅんとしてしまいました。
女王さまは、三人の庭師をひっくり返すようジャックに命じ、庭師たちがバラを赤く染めていたことを知ると処刑を命じました。アリスは庭師たちに助けを求められ、大きな植木鉢の中に彼らを隠してやりました。兵士たちは、しばらく庭師たちをさがしていましたが、見つからないと思うと行列に引き返し、庭師たちの首をはねたと女王さまに嘘をつきました。
アリスは白ウサギに、クロケーに参加すると言っていた公爵夫人の行方を聞きました。白ウサギによると、公爵夫人はだいぶ遅刻し、女王さまの耳を殴って死刑を宣告されたようでした。
女王さまは、アリスをクロケー競技に誘いました。それは、でこぼこだらけの場所で行われ、ボールはハリネズミ、バットはフラミンゴ、アーチは弓形になって地面に手をついた兵士たちというものでした。
ゲームは難解極まり、フラミンゴはこっちの顔をまじまじと見てくるため、吹き出さずにはいられなくなるし、ハリネズミは逃げ出し、兵士たちはしょっちゅう起き上がって他のところへ動き出しました。プレイヤーたちは順番を待たずにやりだすので、ハリネズミの取り合いっことなり、女王さまはそのたびに誰かに死刑を宣告していきました。
アリスはこの試合から逃げ出そうとして辺りを見渡すと、空中にチェシャ猫のにんまりとした笑い顔が浮かんでいるのが見えました。
頭まで姿を現したチェシャ猫に、アリスは、このゲームがまったくフェアプレーでないことや、ルールなどなさそうなことを話しました。
王さまがやってきたため、アリスはチェシャ猫を紹介しました。王さまが手にキスすることを許すと、チェシャ猫は断りました。この無礼な態度に怒った王さまは、女王さまにチェシャ猫の処刑を命じさせました。王さまは首切り役を探しに出ていってしまいました。
アリスのハリネズミは、他のハリネズミと喧嘩中で、その間にアリスはフラミンゴを取りに行き、戻ってみるとハリネズミはいなくなっていました。
チェシャ猫のところまで引き返すと、女王さまと王さまと首切り役人が言い合いをしていました。
首切り役人は、胴体のないものをどのように切ればいいのかと聞き、王さまは、首があるのだから首を切ることはできるはずだと主張し、女王さまは、何らかの手を打たなければここにいるもの全員の首を切ると言いました。
仲裁を頼まれたアリスは、この猫の飼い主である公爵夫人に聞いてみてはどうかと提案しました。首切り役人は、女王さまの命令で公爵夫人を牢屋から連れてきましたが、その頃にはチェシャ猫の首は姿を消していました。
ニセウミガメの物語
公爵夫人は、アリスとの再会を喜び、そのとがったあごをアリスの肩に乗せ、思いついた格言を次々と口に出しました。
そこへ女王さまがやってきて、アリスとゲームの続きをするために、公爵夫人に消えよと命じました。
アリスはクロケーのゲームに戻されました。ゲームのあいだじゅう、女王さまは、誰かと喧嘩し続け、首切りを宣告し続けました。息を切らした女王さまは、ニセウミガメを見たことがあるか聞きました。アリスはニセウミガメなどという名前を聞いたことがありませんでした。
女王さまは、伝説の怪物グリフォンのところへアリスを連れて行き、ニセウミガメのところへ案内するように命じました。
ニセウミガメは、岩棚の上に一人で悲しそうにしていました。身の上話を聞きたいと言うと、長い沈黙の後で、ニセウミガメは話し始めました。ニセウミガメは、むかしは本当のカメで、海の中の学校に通っており、ウミガメにとっての最高の教育を受けていたようでした。
その学校は、初日の授業が十時間で、二日目以降は一時間ずつ減っていくようでした。アリスが授業の時間がゼロになる十二日目をどうするかと聞くと、グリフォンは勉強の話をやめてゲームの話をしようと言いました。
イセエビのダンス
ニセウミガメは、しんみりとため息をつき、すすり泣きしながら、イセエビのダンスについて話しました。
それは、アザラシやウミガメやサケたちが、一列に並んでイセエビと向き合い、そのイセエビを取り替えて遠くに放り投げ、それからまたそのイセエビを取りに行って元に戻るという奇妙なダンスでした。
ニセウミガメとグリフォンは、イセエビなしでそのダンスをしてみようとして、ニセウミガメは悲しげに「イセエビのカドリール」の歌を歌いました。
グリフォンにせがまれ、アリスはこれまでの冒険を語りました。イモムシに歌を暗誦させられ、歌詞がごちゃごちゃになった話をすると、グリフォンとニセウミガメは、アリスに他の歌を暗誦させたがりました。アリスは「イセエビのカドリール」で頭がいっぱいだったので、今回もうまく暗誦できませんでした。
ニセウミガメ歌う番になると、「裁判開始!」の声が聞こえ、グリフォンはアリスの手をとり、そちらの方向に駆け出しました。
誰がパイをとった?
アリスは法廷に連れて行かれました。そこではハートの女王さまと王さまとが王座につき、ジャックが鎖につながれていました。
伝令の白ウサギが起訴状を読み上げるところによると、ハートの女王さまが作ったパイを、ジャックがくすねたようでした。
第一の証人は、帽子屋でした。終わらないお茶の時間に呼び出された帽子屋は、茶碗とバター付きパンを持って現れました。彼は被っていた売り物の帽子を盗品だと勘違いされ、自分が帽子屋であることの証拠をあげるよう言われました。女王さまに睨まれ、びくびくしてしまった帽子屋は、バター付きのパンの代わりに茶碗をかじりとってしまいました。
その時、アリスは自分が大きくなっていることに気付きました。隣に座っていたネムリネズミは、大きくなったアリスに文句を言いながら法廷の向こう側に行ってしまいました。
帽子屋はようやく王さまから解放されると、一目散に逃げて行きました。
次の証人は、公爵夫人のところにいた料理女でした。料理女は、パイは何で作るかを聞かれ、コショウだと答えました。ネムリネズミが、パイの材料は糖蜜ではないかと茶々を入れると、女王さまはネムリネズミの首を切るようにと命じました。法廷中大騒ぎとなり、ネムリネズミは追い出され、気付くと料理女はどこにも見当たらなくなっていました。
王さまは、次の証人の反対尋問を女王さまに頼みました。
次の証人が誰なのか考え、わくわくしながら待っていたアリスは、白ウサギが自分の名前を読み上げるのを聞き、驚きながら立ち上がりました。
アリスの証言
とっさに立ち上がったアリスは、自分が大きくなったことを忘れており、スカートの裾で陪審席をひっくり返してしまいました。彼女は陪審員たちを拾い、席に戻しました。
王さまは、何か知っていることがあるかと証言を求め、アリスはなにも知らないと答えました。王さまはその証言を重大だと勘違いし、白ウサギにその誤りを指摘されました。
王さまは、身長1マイル以上のものは退去させるべしという文章をノートに書き込み、自らそれを読み上げ、アリスを退去させようと試みました。アリスは1マイルもあるわけないと主張し、出て行くことはしないと宣言しました。
白ウサギは誰が書いたのかわからない詩の書いてある紙を取り出し、それがジャックが誰かに宛てて書いたものだろうと言いました。ジャックは、自分がその紙を書いたのではないと弁明しましたが、王さまは、その詩にジャックのサインがないということは、悪巧みをするためだろうと主張しました。
白ウサギは王に命令され、詩の朗読を始めました、その詩には何の意味もありませんでした。
王さまは陪審員に評決を頼もうとすると、即刻ジャックの首を刎ねようと考えていた女王さまは、評決よりも判決が先だと言い張りました。アリスがそれを馬鹿げた意見だと言うと、女王さまは、アリスの首を斬れと命令しました。しかし大きくなったアリスに刃向かうものは誰もいませんでした。
しかしアリスの大きさがいつの間にか元に戻り、「あんたたちなんて、ただのトランプじゃない」と言った途端、トランプ一箱すべてが空中に舞い、それらがアリスに降りかかりました。
必死にそれらのトランプを払い除けようとしていると、アリスは土手の上で姉の膝を枕に寝そべっていて、姉が自分の顔に降りかかった木の葉を振り払おうとしていることに気づきました。
アリスは夢の中で起きたことを全て姉に語り、話が済むとお茶の時間のために家に帰って行きました。
アリスの姉は、アリスが経験した冒険のことを考えているうちに、自分も夢心地になって行きました。その夢の中では、アリスの話の中に出てきた白ウサギや、ネズミ、三月ウサギ、女王さま、グリフォン、ブタの赤ちゃん、ニセウミガメらがそこらじゅうで動いていました。彼女はそのようにして目を閉じたまま、夢見心地で不思議の国にいるような感覚に浸りました。
アリスの姉は、アリスが大人になっても、子供の頃の素直で優しい心を持ち続け、幼い子供たちを集めては、面白い話を言い聞かせているだろう、そしてその話の中には今の不思議の国の話も混ざっていて、アリス自身も子供たちに混ざりながら、自分自身の子供の頃や、楽しかった夏の日々を思い出すだろうと考えました。