ギ・ド・モーパッサン『テリエ館』の詳しいあらすじ

ギ・ド・モーパッサン作『テリエ館』の章ごとの詳しいあらすじを紹介するページです。


脂肪の塊・テリエ館 (講談社文庫)

※ネタバレ内容を含みます。

※簡単なあらすじ、登場人物、感想はこちら

目次

1

 フェカンの街にあるテリエ館は、もともと宿屋を経営していた夫婦が、叔父から遺産として譲られて開いた娼家でした。夫の方は二年後に卒中で死に、寡婦となった妻のマダムは、常連客に何度も言い寄られましたが、何一つ浮ついた噂が立つことはありませんでした。

 テリエ館には入り口が二つあり、そのうちの一つの入り口は、土地の旦那たちが集まるジュピターの間につながっていて、三人の女が専属として収まっていました。もう一つの入り口では、夜間下層民や水夫を相手にしており、二人の女が専属になっていました。

 ジュピターの間に収まる三人の女は、田舎出の金髪娘のフェルナンド、黒髪のユダヤ美人ラファエル、「あばずれ」と呼ばれる、丸々と太った陽気なローザでした。三人はそれぞれに違う魅力があり、客たちの好みは、三人のうちのどれかに当てはまりました。

 下の階を受け持つのは、すれっからしのルイズ、足を引きずるためブランコと呼ばれるフロラの二人でした。二人は酒を飲むので、二台のポンプと呼ばれていました。
 マダムの人柄のおかげで、五人の女がはお互いに嫉妬はしていても、感情を表に出すことなく、うまくやっていました。
 テリエ館は、この小さな町の溜まり場になっていて、いつも賑わっていました。

 五月の終わりのこと、材木商で、前町長のプーランがテリエ館を訪れたところ、扉が閉まっていました。船問屋のデュヴール、干魚屋のトゥールヌヴォー、銀行家の息子フィリップ、収税吏のパンペス、保険代理店のデュピュイ、商事裁判所判事のヴァースらは店が閉まっていることに狼狽し、混乱し、険悪な雰囲気になりました。彼らは繰り返しテリエ館に足を運びましたが、その度に店は閉まっていました。皆が諦めて帰ってしまった後、家族に嘘をついてまで毎週土曜日に店に来るのを楽しみにしているトゥールヌヴォーは、諦めきれずに店の周りを歩きました。すると、戸口の庇のところに、聖体拝受のために休むと書かれた紙を見つけたため、彼はとうとう諦めて立ち去りました。

2

 マダムは、ジョセフ・リヴェという指物師の弟の娘の名付け親になり、コンスタンス・リヴェと命名したことがありました。姉弟は遠く離れて住んでいましたが、コンスタンスが十二歳になり、聖体拝受を受けることになったため、ジョセフは手紙を書いて来てもらうことにしたのでした。

 マダムは、遠出をする間に、店を誰かに任せる気にはなれず、フレデリックにだけは二日間の休みを与え、他の女を連れて急行列車に乗り込みました。
 ブーズヴィルで、三羽のアヒルが入ったバスケットを持つ、年取った農夫の夫婦が乗り込んできました。彼らは上流社会の一行の派手な服装を見て、すっかり怯えてしまいました。
 指輪をいくつもはめ、金鎖をぶら下げた紳士が列車に乗り込みました。紳士は、女たちにちょっかいを出し、マダムの反感を買いました。しかしその後、彼は農夫婦のアヒルをからかい、それが一斉に鳴きだしたので、女たちは笑い転げました。
 調子に乗ったローザが、このアヒルの鼻先にキスをし始めたので、他の女たちも我先にとアヒルにキスをしようと争いました。紳士は女たちを膝に乗せて、談笑を始めました。
 農家の夫婦はこの騒動に驚き、ぴくりとも動こうともしませんでした。
 紳士は行商人で、色とりどりの靴下留めを広げて見せました。女たちはそれを品定めしました。紳士は、その靴下留めを試すように促し、女たちはふざけて、紳士の頭にスカートを被せながら、靴下留めをつけてもらいました。
 老夫婦は、一行が淫売女だと噂しながら、列車を降りて行きました。
 行商人はルーアンで列車を降りると、マダムはふざけ過ぎた女たちに釘を刺しました。

 目的の駅に着き、ジョセフ・リヴェ氏の出迎えを受けた女たちは馬車に乗り込みました。
 一行はジョセフ・リヴェの家に到着すると、食事に取り掛かりました。そして食事が終わると、一行は散歩を始め、そのきらびやかな衣装で、村人の視線を釘付けにしました。
 翌日聖体を受けることになっているコンスタンスが帰ってくると、女たちは次々に抱きしめたり、接吻を浴びせました。

 女たちは、田舎の寂寥に戦慄を覚えながら、一部屋に二人ずつ寝床に入ると、抱き合いながら眠りにつきました。
 太っていたローザだけは、一人で小部屋にあてがわれたので、眠れない夜を過ごしました。ローザは、その隣の部屋から、コンスタンスのすすり泣きが聞こえてきました。彼女はいつも母親と寝ているのに、その日だけは狭い屋根裏部屋に追いやられ、怖くなって泣いていたのでした。ローザはうれしくなってコンスタンスを自分の寝床に入れ、胸にぴったりと引き寄せて眠りにつけました。コンスタンスは、聖体を受ける前日の夜に、娼婦の胸に顔を当てながら休みました。

 翌朝、女たちは、コンスタンスの着付けや髪結いをしてやり、今度は自分たちの化粧に取り掛かりました。
 聖体を受ける子供たちは、村の建物に向かって歩いて行きました。ジョセフの一家は、多くの女たちを従え、コンスタンスの後ろに続きました。一行が教会に入ると、その煌びやかさで村民たちを熱狂させました。
 祭式が始まると、ローザは生まれた村の教会と、最初の聖体拝受のことを思い出し、泣き出してしまいました。すると隣に座っていたルイズとフロラも、自分の幼かった頃のことを思い出し、同じように泣き始めました。その涙は次々と伝染し、老若男女全てのものが、すすり泣きを始めました。
 聖体拝受が始まると、教会の中は一種の狂乱に包まれ、祭司は神が降りてきたような感覚に陥りました。祭司は、遠くから来た女たちから始まった感動が、自分たちに伝播し、それが秘蹟をもたらしてくれたことに感謝の念を伝えました。
祭式が閉じられると、コンスタンスは皆から接吻の嵐を受けました。
 村中の至るところで宴会が始まりました。ジョセフは羽目を外して飲み、女たちをひきとめたがりましたが、マダムは二日続けて休業しないために、帰りの電車の時刻に間に合うための馬車を用意させました。
 しかし一向に馬車は見えず、女たちも二階から降りて来ようとはしませんでした。見に行くと、半裸体のジョセフが酔っ払ってローザを手込めにしようとしていました。ラファエルとフェルナンドは面白がってジョセフをけしかけ、ローザは気絶するかのように笑っていました。マダムはジョセフの肩を掴んで部屋から放り出しました。
 一行はジョセフの二輪馬車に乗って出発しました。ローザはフェルナンドにせがまれて歌を歌い始めました。ジョセフは、女たちの歌を絶賛し、手綱で拍子を取りました。
 一同は駅前で馬車を降りました。ジョセフは翌月テリエ館に遊びに行くことを約束し、ローザの唇に接吻しようとして避けられました。
 女たちは列車に乗り込みました。

3

 女たちはテリエ館に戻り、なじみ客を待ちました。
 トゥールヌヴォーは、日曜日の晩餐に親戚を招いている最中でしたが、銀行家のフィリップから取り決めておいた文句の書かれた手紙を受け取り、妻を欺いて出かけました。
 テリエ館はお祭り騒ぎとなりました。

 前町長のプーランはローザに、パンペスとフィリップはフェルナンドに、保険代理店のデュピュイはラファエルに交渉を持ちかけました。
 そこへトゥールヌヴォーが現れ、皆からの喝采を浴びながらラファエルを抱えて消えていきました。ローザもまたプーランとともに寝室の階段に消えました。フェルナンドはフィリップと、マダムはヴァースと接吻を交わしながら踊りました。
 ローザと寝室に入ったプーランは眠りについたようでした。
 男女たちは夜中になっても踊り続けました。パンペスがフェルナンドと一緒に戻ってきて、「プーランの寝顔を見に行った」と冗談を言うと、その冗談を気に入った男たちは、「プーランの寝顔を見るために」女たちと寝室に消えました。女たちはいつもよりも素直に男に従いました。
 女房持ちのトゥールヌヴォーとパンペスが勘定を頼むと、マダムは気前よく勘定を割引きし、晴れ晴れと、「毎日お祭りというわけにはいきませんよ」と答えました。