ハーマン・メルヴィル『白鯨』の詳しい登場人物紹介

ハーマン・メルヴィル作『白鯨』(Moby-Dick; or, The Whale)の登場人物を詳しく紹介するページです。

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ピークオッド号の船員

イシュメール
憂鬱な気分になると水夫として船に乗り込む生活を送り、ピークオッド号に乗るまでに四回の商船による航海を行っていた。高い賃金と綺麗な空気と巨大な鯨の観念を動機として、捕鯨船に乗り込むことを決める。
マンハッタンから捕鯨発祥の地と言われるナンターケットを目指していたが、途中のニュー・ベッドフォードで足止めに会い、捕鯨船の銛打ちと同じベッドで寝るという条件付きで「潮吹き亭(スパウダー・イン)」に宿泊する。ベッドを共有することになった銛打ちクイークェグが、あまりに異形な人物であったため怖気づいていたが、次第にこの異教徒の高邁な精神に惹かれ、クイークェグの信奉する木像「ヨージョ」に祈ることによって心の友となる。
ナンターケットに着くと、自分が決めた船に乗り込むようにというヨージョからの命令をクイークェグが受けたため、自ら港に向かい、絶滅したインディアンの部族名であるピークオッド号に乗船を交渉する。ピークオッド号の元船長ピーレグとビルダットに乗船の許可をもらい、乗船する。
航海が始まると、檣頭での見張りの仕事を気に入るが、真理を追究する問題が頭の中に渦巻いていたため、あまり良い見張りではなかった。エイハブが白鯨を殺す目的を全員に語ると、ほかの船員と同じように白鯨に復讐を果たすことを盲目的に誓う。
最初の捕鯨で、慎重と言われるスターバックの行動があまりに無謀に見えたために怖気づき、クイークェグに自分の顧問弁護士、遺言執行人、遺言受取人になるように頼み、覚悟を決める。
白鯨との闘いでは、姿を消したフェダラーの代わりにエイハブのボートに乗り込み、最初の一撃で海に投げ出される。本船とともに海に沈もうとしたとき、クイークェグの棺桶であったカヌーから作られた救命ブイを偶然見つけて捕まり、一昼夜海原を漂い、二日目にレイチェル号に助け出される。

エイハブ
ピークオッド号の船長。気がふれた片親の母親により、悪辣なイスラエルの王の名である「エイハブ」と名付けられた(母親は生まれて一年にもならない時に死んだ)。妻子持ち。大学にいたこともあるし、人食い人種の中にいたこともある。鉛色の瘢痕が頭の天辺から足先までを貫いている。
かつてモービィ・ディックによって三艘のボートに穴を開けられ、短刀を突き刺そうと襲いかかったところで脚をもぎ取られる。その帰途、せん妄状態の中凶暴化したため、ハンモックに縛られながら運ばれる。それ以来すべての不運の元凶をモービィ・ディックのせいにして過ごすようになり、復讐のためにピークオッド号に乗り込む。モービィ・ディックを捕らえるためだけに自分のボートを一艘所有し、その目的のための人員のフェダラーらを出航直前になって乗船させる。
その本性は普段は隠蔽されており、船員に対しては浅薄な忠誠を求めず、即座に命令に従うことだけを求める。
出航前のナンターケットでは、足につけていた鯨骨が外れて腿に突き刺さり、気を失って倒れているところを発見され、その後船大工に新しい鯨骨で義足を作らせている。
出航後は大小の潮の流れを熟知し、毎日海図を広げては白鯨の居場所を考えて過ごす。
長いこと甲板に姿を見せなかったが、ピークオッド号が温暖な海域に入ると、鯨骨でできた片足で音を立てながら甲板を歩くようになる。乗り組み全員を集め、モービィ・ディックを見つけたものには一オンス金貨を与えると宣言し、ほとんどの船員を掌握して自分への忠誠を誓わせるが、自分が復讐のみを目的にしていることが間違っていることを自覚しており、本来の業務にも関心を寄せているように見せかける。
主檣に釘づけにされた金貨を眺めるのを習慣とし、その金貨に描かれた三つの峰の唯我独尊的な様子を自分に例えている。
船艙から大量の油が漏れ出していることが判明すると、スターバックに樽の蔵出しを勧められるが、モービィ・ディックのいる海域へと急ぐため、これを拒否する。引き下がらないスターバックに銃口を向けて威嚇するが、最終的にはスターバックの要求を呑む。
太平洋に到達すると、髭を剃るのをやめ、鍛冶屋に命じて剃刀でモービィ・ディックを殺すための銛を作らせ、クイークェグ、タシュテーゴ、ダグーの血で鉄を冷やし、銛を完成させる。また、方角を知るための四分儀を、太陽を侮辱する馬鹿馬鹿しいおもちゃだと言って壊し、モービィ・ディックのいる海域を目指すために台風の中を航海させ、避雷針を不要だと言って下ろさせる。これらの狂気じみた行動によって、スターバックに殺害を企てられる。
その一方で、白痴となったピップに対しては慈悲の心を見せるが、やがて狂気に囚われている自分の傍に置いておくことはできないと突き放す。
他船と出会っても、白鯨を見たかと聞くだけで、有益な情報が得られなければそれ以上の無益な交渉を持つことを拒否する。同じナンターケット籍のレイチェル号の既知の船長が息子を見失っているのを知っても、その捜索に協力せず、モービィ・ディックを追いかける。
モービィ・ディックの海域に入ると、四十年に渡って海の恐怖と戦い続け、五十過ぎで得た若い妻を未亡人同然にして海に出かけたにも関わらず、白鯨に片脚を奪われる自分の運命を嘆き、涙しているところをスターバックに見られ、共にナンターケットへ帰るように促されるが、自分でもわからない不思議なものによって常に脅迫され続けているために、白鯨を追わなければならない運命にあることを語る。
鯨が発する独特な匂いを感じ、自ら檣頭に昇り、モービィ・ディックを見つけ出すと、即座ににボートを下ろす。しかし白鯨によってボートを真っ二つにされ、海に落ちる。本船によって助け出されても極度の疲労を感じるが、すぐに再追跡を図る。その翌日の戦いではボートを下から突き上げられ空中へと持ち上げられる。
追跡の三日目、ボートを下ろすときに自分の死を予感し、スターバックに握手を求める。鮫のいる海をモービィ・ディックに向かって漕ぎ出すが、怒り狂ったモービィ・ディックに本船が転覆させられることを悟り、銛を投げ込む。しかしモービィ・ディックが自分に向って急発進したため、綱が首に巻き付き、そのまま海中に姿を消す。

スターバック
ピークオッド号の一等航海士。ナンターケット生まれのクエイカー教徒。健康と活力を感じる引き締まった体つきをしている。父と兄は捕鯨業で犠牲になり、コッド岬に妻子を置いているため、捕鯨の際も慎重な判断をくだす。
モービィ・ディックを捕らえようとするエイハブに反対し、商売の道理にかなわない復讐は、神を冒瀆する行為だと主張するが、エイハブの威厳に圧倒され、従わなければならない運命を知る。
主檣に釘づけにされた金貨に描かれた三つの峰を三位一体に重ね合わせ、その谷間に住む人間を輝かせる太陽も沈んでしまえば無益な慰めにしかならないと考える。
船艙から大量の油が漏れ出していることが判明すると、エイハブに樽の蔵だしを勧める。エイハブがこれを拒否し、銃口を向けて威嚇してくると、「自分自身に気を付けるように」という忠告を残す。
ピークオッド号が太平洋に入り、エイハブが方角を知るための四分儀を壊したり、台風の中で避雷針を下ろさせたりといった狂気じみた行動をとるようになると、居眠りしているところを見計らって殺害しようと銃口を向けるが、果たすことができずに引き返す。
モービィ・ディック発見を間近に控え、自分の運命を嘆き涙するエイハブに、共にナンターケットへ帰るよう説得するが、その狂気を変えることはできずに絶望する。
白鯨との戦いの初日は本船に居残り、真っ二つにされたエイハブのボートを見て不吉な徴候だと考える。追跡の三日目、自分の死を予感したエイハブに握手を求められると、涙を流してそれに応じ、本船に残るが、怒り狂ったモービィ・ディックによって転覆させられる。

スタッブ
ピークオッド号の二等航海士。コッド岬の生まれ。精油かまどを監督者。楽天的な呑気者で、臆病でも勇敢でもないが、どんな危険にも無造作に立ち向かい、命がけの鯨との戦いでも常に鷹揚に構え、エイハブが鯨骨で音を立てて甲板を散歩することにも苦言を呈す(一喝されて引き下がり、自分がなぜやり返さなかったのかを疑問に思う)。常にパイプをふかしている。
エイハブの狂気に気づいても、笑うことが理解不能なことに対するもっとも賢明で簡単な対策であると考え、この問題を笑い飛ばす。
フェダラーに対しては、エイハブをそそのかす悪魔ではないかと考え、怪しい動きがないか監視する。
頭の回転が速く、ジェロボーム号の小柄な漕ぎ手がいかさま師であることに気づいたり、バラのつぼみ号の船員を言葉巧みに味方につけ、船長を騙して鯨を手に入れ、悪臭を放つ体内から高級な香料の竜涎香を手に入れる。
主檣に釘づけにされた金貨の周りに描かれる赤道十二球を、人間の一生を表したものだと解釈し、金貨がマストに釘づけにされていることから、エイハブが白鯨に釘づけにされる不吉な未来を予見する。
モービィ・ディックとの戦いの初日は、真っ二つにされたエイハブのボートを見ても笑い飛ばすが、追跡の二日目は海に投げ出され、その翌日に本船と運命を共にする。

フラスク
ピークオッド号の三等航海士。マーサズ・ヴィニャード島のティズベリーの生まれ。ずんぐりした赤ら顔の小柄な若者で、鯨に対しては非常に戦闘的。体型が短い角材に似ているため、キング・ポストというあだ名で呼ばれている。ダグーの肩に乗って鯨を見張る。エイハブと目上の航海士と共に囲む食卓では小さくなっていて、食事を誰よりもあとにとり、誰よりも先に引き揚げる。
主檣に釘づけにされた金貨の模様を見ても、金でできた丸いものとしか思わず、その金銭的な価値しか見出そうとはしない。
モービィ・ディック追跡の二日目は、スタッブとともに海に投げ出される。

クイークェグ
紫色の頭と市松模様で覆われた異教徒の銛打ち。地図に載っていない島ココヴォコ島の大首長の息子。幼い頃に捕鯨船を見かけるうちに、キリスト教世界をもっと知りたくなり、捕鯨船に乗り込んで居座り船員となった。しかし鯨捕りたちの蛮行を見るにつれて幻滅し、異教徒としてキリスト教世界に乗り込むことを決心した。キリスト教の汚れが取れるまでは、故郷に戻らないと考えている。ブーツを履く姿を人に見られないようにしている。自分の銛を常に持ち歩き、銛で髭を剃り、食事もその銛を使って取る。小さな木像「ヨージョ」を信奉し、そこから得た命令に従って生活している。ラマダーンの日はヨージョを頭に乗せ、一日中同じ姿勢のまま鎮座する。船底に油を塗ることが航行に効果的になると信じている。潮吹き亭で自分のベッドに潜り込んでいたイシュメールに驚き、殺そうとするが、やがて心の友となり、ベッドを共有し、共に捕鯨船に乗り込むことを決める。
ナンターケットに着くと、イシュメールが決めた船に乗り込めというヨージョからの命令により、ピークオッド号に乗り込む。異教徒であったためピーレグに乗船を拒否されるが、海に浮かぶ油の雫を打ち抜いたことでその腕を買われ、乗船を許可される。スターバックのボートの銛打ちとして勇敢に業務をこなし、鮫が泳ぐ海に浮かんだ鯨の背中に乗り、解体のためのかぎを差し込んだり、脳油袋の中に落ちて海に沈んでいくタシュテーゴを救出したりする。
油が漏れだしている樽を探すため、裸同然で船艙での作業を行っているうちに重い熱病にかかり、自分の遺体を乗せるためのカヌーを作らせる。すぐに死ぬことが傍目にも明らかなほど弱っていたが、陸にやり残したことを思いだして「死ぬのをやめ」、棺桶として使われるはずであったカヌーを衣類箱として使い始める。

タシュテーゴ
スタッブのボートに乗り込む銛打ち。マーサズ・ヴィニャード島のゲイ・ヘッド生まれのインディアンで、かつて北米大陸を駆け巡った猟師の血が流れている。タウン・ホー号の白鯨にまつわる不吉な話を聞き、それを固く口留めされるが、寝言で話してしまう。
しばしばマッコウ鯨の群れを発見し、白鯨もエイハブとほぼ同時に発見する。
モービィ・ディックによって転覆させられる本船の檣頭にしがみついていたが、急降下してきたトウゾクカモメを道連れにして海中に没す。

ダグー
フラスクのボートに乗り込む銛打ち。小食だが巨漢の黒人。若い頃に故郷に停泊中の捕鯨船に乗り込み、長らく豪放な捕鯨生活を送ってきた。捕鯨の時は自分の肩にフラスクを立たせ、鯨を見張る。

フェダラー
他の四人の水夫とともに、白鯨を捕らえるためにエイハブがピークオッド号に乗せた拝火教徒。長い髪をターバンにし、蛇の頭のように歯を削っている。どのような経緯でエイハブに雇われたかは誰も知らない。後部船艙に潜んでおり、最初の捕鯨シーンまでは姿を現さなかった。皆の中に溶け込もうとせず、エイハブの運命の先を行くと予言めいた言葉を吐く。夜中に鯨を発見してもこれを追跡しようと試みる。
ピークオッド号が太平洋に差し掛かると、休むことなく白鯨を探し、生身の人間ではないのではないかと噂される。
白鯨との戦いの初日は、真っ二つになったボートに立ち、悠々と一部始終を見ていたが、二日目に姿を消し、その翌日白鯨に巻き付いた綱に巻き込まれた遺体が発見される。

ピップ
船番(ボートが鯨を追跡している間に船の運行をつかさどる任務)の華奢な黒人。アラバマ州(またはコネティカット州トーランド郡)出身の陽気な少年であったが、手に怪我をした男の代わりにスタッブのボートに乗り込むこととなり、鯨の一撃に怖気づいて海に飛び込み叱責を受ける。再び鯨に驚いて海に飛び込むと、スタッブに見捨てられ、本船によって奇跡的に救出されるが、白痴になって甲板上をうろつきまわり、「臆病者で海に落ちたピップがアンティル諸島にいるので探してほしい」と、他の船員たちに触れ回る。
同情してきたエイハブと強い絆で結ばれるが、狂っている自分の傍に置くことはできないと突き放される。しばらくはエイハブに追いすがるが、やがてもとの白痴のように戻り、自分自身を探し始める。

バルキルトン
潮吹き亭を訪れてきた水夫。四年にわたる航海を終え、陸に辿り着くとすぐにピークオッド号に乗り込む。

給仕
破産したパン屋と看護婦の子で、神経質な臆病者

フリース
黒人の老コック。鯨の焼き加減を厳しく注意したスタッブを、サメよりもサメのようだと評する。

パース
鍛冶屋。もともと妻と三人の子供に囲まれ幸福な人生を送っていたが、強盗が家に侵入し、一切合切を奪い去られ、それをきっかけに家族を失い、絶望にくれて捕鯨に参加した。田舎道を歩いている時に睡魔に襲われ、そこにあった納屋で眠ったために凍傷で全ての指を切断してしまい、うまく歩くことができない。髭を剃るのを辞めたエイハブに命じられ、剃刀を集めて銛を作る。

出港前の登場人物

潮吹き亭(スパウダー・イン)の亭主
宿泊を頼んできたイシュメールに、クイークェグと同じベッドでなら寝てもよいという許可を与える。クイークェグが自分のベッドに潜り込んでいるイシュメールに驚いて殺そうとすると、これをなだめ、イシュメールとクイークェグが心の友となると、それに驚いた様子を見せる。

マップル牧師
ニュー・ベッドフォードの捕鯨者教会堂の牧師。元銛打ち。海を犯して海に沈められ、鯨に飲まれて陸に吐き出されたヨナについて語り、罪を犯した者は、ヨナのように悔い改めることを説く。

ホジア・ハッシー
潮吹き亭の主人のいとこ。ナンターケットで「煮込み亭」を開いている。

ミセス・ハッシー
「煮込み亭」のおかみ。逸品のハマグリかタラのチャウダーを提供する。

ピーレグ
ピークオッド号の所有者、代理人。ナンターケット島民。長年ピークオッド号の船長をビルダットとともに務め、今は大株主になっている。自分の船に乗りたいと言ってやってきたイシュメールに乗船の許可を与える。異教徒であるクイークェグが船に乗り込むのを始めは拒否したが、クイークェグが海に浮いているタールの雫を宣言通りに銛で撃ち抜いたのを見て、即座に採用を決める。ピークオッド号の水先案内を務め、これまで共に旅をしてきた船と野別れを惜しみ、並走してきた船に乗って帰る。

ビルダット
ピークオッド号の所有者、代理人。ナンターケット島民。長年ピークオッド号の船長をピーレグとともに務め、今は大株主になっている。敬虔なクエイカー教徒で、自分の元船員に対しては、怠惰を許さなかった。クイークェグが異教徒であったために、改宗させようと試みる。ピークオッド号の水先案内を務め、これまで共に旅をしてきた船と野別れを惜しみ、並走してきた船に乗って帰る。

チャリティ
ビルダッドの姉。スタッブの義理の姉。やせた老婦人。不撓不屈の精神と、優しい心根を持つ。ピークオッド号の品物の調達や搬入を手がける。

エライジャ
天然痘の痕が残る男。ピークオッド剛に乗船しようとするイシュメールとクイークェグに話しかけ、不吉な予言のようなものを残して立ち去る。

他船の乗組員

スティールキルト
タウン・ホー号の船員。エリー湖東岸のバッファロー生まれの湖男(レイクマン)。腕っぷしが強く血気盛んで、航海業務以外の仕事を免除されていたが、甲板の掃除を命じられるという侮辱をラドニーに与えられたことがきっかけで、船長たちと戦闘になる。しばらくは船主楼に籠城していたが、仲間の裏切りをきっかけに捕らえられ、ラドニーに殴られる。復讐を誓ったラドニーが白鯨によって殺されると、着いた岸で仲間と共にヤシ林のなかに姿をくらまし、タヒチへ渡ってフランス船に助け出される。

ラドニー
ナンターケット生まれの航海士。スティールキルトのことを気に入らず、甲板の掃除を命令するという侮辱を与え、殴られて怪我をする。その後白鯨との戦闘で殺される。

いかさま師
ジェロボーム号の小柄な漕ぎ手。シェイカー教徒の共同体で育ち、イカサマの奇跡を人々に見せて、その預言者に上り詰めた。ジェロボーム号に乗ると大天使ガブリエルを自称して船員たちを掌握する。船の中に疫病が流行ると、それをペストだと言い、その病を支配できるのは自分だけだと言い始める。白鯨を神の化身と考え、戦うことを船員に禁じている。

メイヒュー
ジェロボーム号の船長。自船で伝染病が蔓延したため、ピークオッド号との面会を断る。一等航海士メイシーを白鯨によって失っており、エイハブの狂気を諌めようとする。

デリック
ユングフラウ号の船長。鯨の収穫にありつくことができずに、ピークオッド号に油を頼みに来る。鯨を発見すると、ピークオッド号への恩を忘れ、それを捕らえようとするが、結局その争いに敗れる。

バラのつぼみ号の船長
悪臭を放つ鯨の解体を船員に命じて不信感を抱かれていた。スタッブと協力したガーンジー島の水夫により、鯨の死骸が原因で疫病が起こると吹き込まれ、高級香料の竜涎香を持つ鯨を手放す。

ガーンジー島の水夫
フランス船「バラのつぼみ号」の英語が話せる水夫。スタッブと協力して自船の船長を騙し、腐った鯨の解体作業から逃れる。

ブーマー
サミュエル・エンダビー号の船長。六十歳ほどの気品のある顔つきをしている。白鯨によって片腕を奪われているが、二度と白鯨に関わりたくないと思っており、復讐に燃えるエイハブを正気ではないと考える。

バンカー
サミュエル・エンダビー号の船医。

レイチェル号の船長
それぞれに自分の息子を乗せた二つのボートを見失い、どちらかのボートの捜索をエイハブに頼むが、断られる。