エドガー・アラン・ポー『赤き死の仮面』の登場人物、あらすじ、感想

 1842年発表の『赤き死の仮面』(The Masque of the Red Death)は、エドガー・アラン・ポー(1809年~1849年)の短編小説です。この作品は、「赤き死」という疫病が蔓延している国が舞台になっています。感染すると、身体中から血が吹き出し、三十分以内には死に至るという恐ろしい病気でした。国王のプロスペローは疫病を放置し、健康で高貴なものだけを集め、安全な城の中で仮面舞踏会を開きます。しかしそのうちに「赤き死」の仮装をほどこしたものが現れ…………。
 エドガー・アラン・ポーの卓越したセンスが光る、ぞっとするような恐怖を与えてくれる作品です。

黒猫・アッシャー家の崩壊 ポー短編集Ⅰ ゴシック編 (新潮文庫)

『赤き死の仮面』登場人物

プロスペロー
国王。「赤き死」という疫病が流行ると、健康なものを集めて城の奥に引きこもり、仮面舞踏会を催す。

『赤き死の仮面』あらすじ

※ネタバレです。

 全身に真紅の斑点ができ、毛穴中から血が溢れ出す「赤き死」なる疫病が国中に流行ったころ、国王のプロスペローは自身の宮廷に仕える騎士や貴婦人のなかから、まだ元気なものを招き寄せ、城郭の奥へ引きこもりました。外では疫病が猛威を振るう中、プロスペローは豪華な仮面舞踏会を催します。舞踏会場となった部屋は全部で七つあり、全てが続きの間でしたが、不規則に配列されていたため、一度に一部屋しか目に届きませんでした。それぞれの部屋はステンドグラスと装飾によって、青、紫、緑、橙、白、菫で統一されていました。第七の部屋のタペストリーは黒でしたが、窓の色だけは血の色でした。

 この黒の部屋には巨大な黒檀の時計があり、一時間ごとに美しく大きく深い音が響きわたります。鐘の音が聞こえると、陽気に騒いでいた皆が動きを止め、恐れおののき狼狽しました。皆この部屋に行くのを恐れ、近寄ろうとはしませんでした。

 十二時の鐘が聞こえると、皆はある仮面の人物の存在を意識しだします。その人物の衣装は血にまみれ、仮面は死後硬直そっくりの顔に、鮮血が斑点をなしている、いわゆる「赤き死」の化身でした。プロスペローはこの人物を見て激怒し、仮面をはがすよう部下に命じます。この人物は青の間から、紫、緑、橙、白、菫と進んで逃げていきます。誰もが恐れをなしていた中、王がこの人物の後を追い、漆黒の部屋で追い詰め、この人物を殺すも、王も生き絶えました。勇気を奮い起こした群衆がこの人物の仮面をはぐと、そこには何の実体もありませんでした。

 それから宮廷内に「赤き死」が入り込んでいるのが確認され、そこにいる皆が最期を迎えました。黒檀の時計も止まり、後には暗闇と荒廃と「赤き死」が蔓延するばかりでした。

管理人の感想

 ポーの美意識が爆発したような作品です。ステンドグラスと装飾によって青、紫、緑、橙、白、菫に色分けされた部屋があり、その最も奥の部屋の黒の間ではステンドグラスだけが血の色をしている、という設定は、ポーの天才的な発想力が遺憾なく発揮されています。

 照明と装飾が統一された部屋というのは現代ではよくありそうですが、LEDはもちろん、白熱電球すら発明されていない時代に、ポーは教会のステンドグラスから漏れる光だけをヒントにこれらの設定を考えだしたのでしょうか?この幻想世界は、まるで現代のテーマパークやホラーアニメを見ているような気分にさせられます。

 この作品が収録されている新潮文庫版の短編集では、この作品の一つ前に『黒猫』という短編が収録されています。二作品ともホラーとなっていますが、これらの作品から感じる恐怖の種類は異なっています。『黒猫』では妻を殺したことを隠蔽するために死体を壁に塗りこめたのが露見し、掘り出されたのが腐乱した遺体のうえに乗った黒猫であったという内容で、とてもインパクトのある映像を思い浮かべさせてくれる作品となっています。それに対してこちらの『赤死病の仮面』では、仮装した人物の仮面をはいでも何の実体もありません。ある意味、こちらの方がぞっとするような恐怖を感じた方も多いのではないでしょうか?恐怖の印象を作品によって使い分けるというのも、ポーが天才と呼ばれる所以でしょう。

 ちなみにポーの作品は、その他にも考え得るありとあらゆる恐怖が表現されていますので、是非読んでみてください。