シェイクスピア『ハムレット』の詳しいあらすじ

ウィリアム・シェイクスピアの四代悲劇の一つ『ハムレット』の幕ごと、場ごとの詳しいあらすじを紹介するページです。

※ネタバレ内容を含みます。

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第一幕 第一場

 デンマークのエルシノア城では、二か月前に先王のハムレットが死に、その弟のクローディアスが王座についたばかりでした。
 城の櫓に繋がる歩廊では、見張りのバーナードーがもう一人の見張りフランシスコーとの交代を行いました。そこへ同じく見張りの従臣マーセラスと、ハムレット先王の息子の友人ホレイショーとが現れ、この城に現れる亡霊について話しました。バーナードーとマーセラスは、二晩続けてこの場所で亡霊に出会い、その亡霊は亡き先王ハムレットにそっくりであったと言います。
 三人の前にその亡霊が現れました。亡霊は甲冑に身を包み、悲しげな表情を浮かべていました。ホレイショーがその正体を突き止めようとすると、亡霊は姿を消してしまいました。
 彼らは先王ハムレットについて語りました。先王ハムレットは、ノルウェーの王を一騎打ちで打ちのめし、領地を奪った過去がありました。しかし、今ノルウェー王の甥にあたるフォーティンブラスは、無法者たちを集めてその領地を取り返そうと目論んでいるようでした。
 三人はこのことを、先王の息子である王子ハムレットに伝えようと話し合いました。

第一幕 第二場

 城内では、現王のクローディアスが、自国を攻めようとしているフォーティンブラスを制するよう、その叔父にあたるノルウェー王に手紙を送りました。
 侍従長ポローニアスの息子レイアーティーズは、戴冠式に参加するためにデンマークを訪れていましたが、クローディアスの許しを得て、居住地のフランスへ帰っていきました。
 王子ハムレットは父の死を悼み、喪服をつけ続けていました。クローディアスは、父の死から二ヶ月が経過しても悲しみに沈むハムレットを愚かしいと非難し、自分を実の父親だと思い、大学へ戻らずに城内で重臣として働くようにと勧めました。ハムレットは、父親の死だけでなく、悲しみに沈んだはずの母親が、ひと月でクローディアスの妻になったことも嘆いていました。

 ホレイショー、マーセラス、バーナードーが、ハムレットを訪れました。マーセラスとバーナードは、先王の亡霊を見たことをハムレットに伝えました。その話を聞いたハムレットは、自分も父親の亡霊に会いに胸壁へと行くことを約束しました。

第一幕 第三場

 ポローニアス邸の一室で、レイアーティーズが、その妹のオフィーリアに別れを告げていました。ハムレットはオフィーリアのことを愛しているようでしたが、選ばれる妃も国民全体の意見に左右されてしまうため、情に負けないよう慎ましく暮らすようにと、レイアーティーズは妹を諭しました。
 父親のポローニアスが部屋を訪れると、レイアーティーズは二人に別れを告げ、フランスへと旅立ちました。
 ポローニアスもまた、若いハムレットが娘に誓いの言葉を並べ立てたのを信用できず、ハムレットと話すことを娘に禁じました。

第一幕 第四場

 胸壁の上の歩廊では、ハムレット、ホレイショー、マーセラスが先王の亡霊を待ち構えていました。城内からは王が催す乱痴気騒ぎの音が聞こえます。亡霊が現れ、ハムレットを手招きしました。ホレイショーとマーセラスの制止を聞かず、ハムレットは亡霊の方へとついて行きました。

第一幕 第五場

 父親の亡霊はハムレットに語り始めました。
 父は昼寝の最中に毒蛇に噛まれて死んだことになっていました。しかし実際には、権力と父の妻ガートルードを手に入れたいと思ったクローディアスが、昼寝をしている父の耳の中に毒液を垂らしたのでした。
 これらの真実を告げると、亡霊は姿を消しました。
 ハムレットは、父の仇を討つことを決心し、クローディアスが奸計を図ったことをホレイショーとマーセラスには伝えずに、亡霊が現れたことを他言しないよう、二人に誓わせました。

第二幕 第一場

 数週間後、ポローニアスは、息子レイアーティーズの行状を探るため、従僕のレナルドーをパリへと送りました。
 オフィーリアが父親のポローニアスの部屋に入り、ハムレットについて語り始めました。ハムレットは青ざめた顔をしてオフィーリアの部屋を訪れ、彼女の手を取って見つめ、悲しげな溜息を吐いて部屋から出て行ったようです。
 この話を聞いたポローニアスはハムレットが恋に狂ったと思い込み、これをクローディアスに報告することに決めました。

第二幕 第二場

 ハムレットのかつての学友であるローゼンクランツとギルデンスターンをクローディアスが呼び出しました。
 クローディアスは、ハムレットの態度が変わったことを二人に伝え、その原因を探るように頼みました。二人はその言いつけに従うことを誓いました。
 ポローニアスが、ノルウェーに行っていた使節のヴォールティマンドとコーニーリアスを連れて、クローディアスのもとを訪れました。二人によると、ノルウェーの王は、デンマークから領地を取り戻そうとして募兵を行っていたフォーティンブラスの目的が、ポーランド攻略のためだと思い込んでいたようでした。二人は王に働きかけ、募兵を中止させ、デンマークを攻めないことを誓わせることに成功していました。ただし、刈り集めた兵をポーランド攻略に使うこととなったため、ノルウェー軍はデンマークの領内を通るための承認を希望しているようでした。

 ハムレットのもとをローゼンクランツとギルデンスターンが訪れました。二人はハムレットがひいきにしていた都の悲劇役者たちが、ここに向かっていると伝えました。
 ハムレットは、訪れてきた役者たちに芝居の一場面を演じさせました。その芝居に心を動かされたハムレットは、クローディアスの目の前で父親の死を当てつけにした芝居を演じてもらおうとして、自分が台詞を付け足した劇を演じてほしいと役者たちに頼みました。

第三幕 第一場

 翌日、ローゼンクランツとギルデンスターンは、ハムレットの狂気の原因がわからないとクローディアスとガートルードに報告しました。
 クローディアス、ガートルード、ポローニアスは、オフィーリアとハムレットの会話を盗み聞き、ハムレットの狂気の原因を探ろうとしました。
 オフィーリアのもとをハムレットが訪れました。ハムレットは狂気を装い、オフィーリアに尼寺へ行けと言いました。オフィーリアは、ハムレットの態度を嘆き、元の姿に戻るように祈りました。
 この会話を盗み聞いていたクローディアスは、ハムレットが狂気の裏に何か企んでおり、将来危険な存在になると考えました。ポローニアスは、ハムレットとガートルードが差し向かいで話す機会を作ってみてはどうかと提案しました。

第三幕 第二場

 城内の大広間では、劇が演じられようとしていました。ハムレットが役者に、芝居にさりげなく付け足す台詞を伝えました。
 ハムレットは、父の最期の場面を芝居に盛り込んだことをホレイショーに伝え、その場面でクローディアスがどのような反応をするか観察してほしいと頼みました。
 劇が始まりました。それは、「ゴンザーゴ殺し」という実話を元にした演劇で、王が居眠りをしている間に耳に毒液を流し込まれ、殺した男が妃を口説き、しばらくこれを拒んでいた妃がついにその男の愛を受け入れるというものでした。
 その劇を見たクローディアスは、うろたえながら立ち去って行きました。
ガートルードが呼んでいるとポローニアスに言われたため、ハムレットは母のところへ向かいました。

第三幕 第三場

 クローディアスは、ハムレットを恐れ、イギリスに送る手筈を整えようとしました。ギルデンスターンとローゼンクランツは、王の命に従い、旅の支度をはじめました。
 クローディアスは自分の犯した罪に苦しみ、救いを求めて祈りました。その様子を見たハムレットは、父の仇を取るチャンスだと考え、剣を手に取りましたが、思いとどまりました。

第三幕 第四場

 ハムレットがガートルードの元を訪れると、ポローニアスは二人の会話を聞くために、壁掛の後ろに隠れました。
 焦点の定まらない話をするハムレットに、ガートルードは話のできるものを呼ぼうとして、その場を去ろうとしました。その腕をハムレットがつかむと、ガートルードはこれを恐れ、必死になって人を呼びました。その様子を聞いたポローニアスが壁掛の後ろで慌てると、その存在に気づいたハムレットは、クローディアスが潜んでいるのだと思い込み、壁掛の上から剣を突き刺してポローニアスを殺してしまいました。
 ハムレットは、父親との誓いをいい加減なものにして、クローディアスの元に納まった母の、わきまえや羞恥心のなさを責めました。ガートルードはハムレットに許しを乞いました。すると父親の亡霊が現れ、心を悶えさせているガートルードに話しかけてやるようにハムレットに伝えました。ガートルードは亡霊の姿が見えず、宙に向かって話しかけるハムレットが狂気に囚われていると思いました。落ち着きを取り戻したハムレットは、懺悔をして清く生きるよう、母親に忠告を与えました。
 ハムレットはポローニアスの死骸を引きずり去って行きました。

第四幕 第一場

 そこへクローディアスが入ってきました。ガートルードは、ハムレットがポローニアスを殺したことを伝えました。クローディアスは、ハムレットを危険視し、ポローニアスの死骸を見つけ出して礼拝堂に納めるよう、ローゼンクランツとギルデンスターンに命令を下しました。

第四幕 第二場

 ハムレットがポローニアスの死骸を片付け、城内の一室入ると、そこへローゼンクランツとギルデンスターンが訪れました。二人はポローニアスの死骸の場所を聞きましたが、ハムレットは答えようとせず、部屋から駆け出して行きました。

第四幕 第三場

 ローゼンクランツとギルデンスターンは、ハムレットを衛兵に護衛させ、王の元へ連れて行きました。クローディアスは、イギリス行きをハムレットに伝えました。
 ハムレットはイギリスへ向かう決心をして去って行きました。王はローゼンクランツとギルデンスターンに、ハムレットの後を追わせ、イギリス行きの船に乗せるよう命令しました。

第四幕 第四場

 港近くの荒野で、ハムレット、ローゼンクランツ、ギルデンスターンは、デンマーク領を通過しようとするフォーティンブラスの軍隊と出会いました。フォーティンブラスの軍隊は、利益も上がらないポーランドの土地を征服するために、多大なる血を流そうとしていました。その勇敢な様を見て、ハムレットは心を打たれ、父親を殺されてイギリスに送られようとする自分を恥じ、クローディアスへの復讐を心に誓いました。

第四幕 第五場

 父親を亡くしたオフィーリアは、狂乱のていでガートルードとクローディアスの元へ通されました。
 レイアーティーズが武装して暴徒を引き連れてフランスから戻り、父ポローニアスが死んだ原因を、クローディアスに問いただしました。
 気が違ったオフィーリアは、歌を歌いながら皆に別れを告げ、去って行きました。
 クローディアスは、ポローニアスの死に関して、もし自分に非がなければ言うことを聞くという条件をレイアーティーズに呑ませ、ハムレットがポローニアスを殺したことを伝えました。

第四幕 第六場

 ホレイショーのもとへ船乗りが訪れ、ハムレットから預かった手紙を渡しました。その手紙によると、ハムレットはイギリスへ渡る途中で海賊船に囚われ、丁重に扱われているようでした。ローゼンクランツとギルデンスターンはイギリスへ向かっているようです。その手紙の中で、ハムレットはクローディアスに別の手紙を取り次ぐことと、すぐに来て欲しいということをホレイショーに頼みました。

第四幕 第七場

 ハムレットが父を殺したと知ったレイアーティーズは、仇を取る約束をクローディアスと交わしました。
 クローディアスのもとへ、ハムレットからの手紙が届きました。その手紙によると、ハムレットは翌日デンマークへと帰ってくるようでした。
 急にハムレットが引き返してくることに疑問を感じたクローディアスでしたが、このデンマークでハムレットを殺すことを決心し、レイアーティーズに奸計を持ちかけました。それは、レイアーティーズがハムレットを殺してしまうと罪に問われるので、レイアーティーズの剣術の評判を持ち上げ、ハムレットの嫉妬を煽り、二人の勝負をさせようというものでした。一突きでハムレットを殺せるように、先どめのない剣を使うことをクローディアスが提案すると、レイアーティーズは、その剣の先に毒を塗ることにしました。
 クローディアスは、剣で勝負がつかなかった場合に備え、ハムレットが剣術の後に飲む物にも毒を入れることにしました。
 二人がハムレットを殺す相談をしていると、ガートルードが泣きながら入ってきて、オフィーリアが狂気のまま小川に入り、溺死したことを伝えました。
 レイアーティーズは、妹の死を憐れみました。

第五幕 第一場

 二人の道化が墓を掘っているところに、ハムレットとホレイショーが訪れました。二人は、道化が掘り起こす頭蓋骨を見て、生きているものは誰でも、死んでしまえば塵と化すものだということを語り合いました。
 そこへクローディアス、ガートルード、レイアーティーズらの行列がやってきたため、ハムレットとホレイショーは木の下にかがみました。
 一向の話を盗み聞きし、オフィーリアが死んだことを知ったハムレットは、墓穴の中に飛び込みました。レイアーティーズは、ハムレットに掴みかかり、廷臣たちはあわてて二人を引き離しました。ハムレットは、怒りの発作に襲われながら去って行きました。

第五幕 第二場

 城内に戻ったハムレットは、イギリスへ向かう船旅の中で起きたことをホレイショーに話しました。ハムレットは、船旅の間、船乗りの服を着込んでローゼンクランツとギルデンスターンの持っていた包みを探し当て、その中にあった国書の封を切りました。その国書には、自分の首を跳ねるようにというイギリスへの指令が書かれていました。ハムレットはその国書を隠しもち、その代わりに、この書を持参したローゼンクランツとギルデンスターンを死刑にするようにという国書を偽造して持たせました。その翌日、ハムレットは海賊船に囚われました。

 廷臣のオズリックがハムレットを訪れ、レイアーティーズがハムレットとの剣での手合わせを希望していると伝えました。ハムレットはその挑戦を受けることにしました。
 従者により、すぐに試合の準備が整えられました。試合前、ハムレットはレイアーティーズにこれまでのことを詫びました。レイアーティーズは、その言葉で復讐の心が静まりましたが、引き下がるわけにはいかず、試合は始まりました。レイアーティーズは毒を塗った、先どめのない剣を持ちました。クローディアスはハムレットが勝つ方に賭け、試合を見守りました。
 ガートルードは試合で汗を掻くハムレットに杯を差し出しました。その杯にはクローディアスが仕込んだ毒が入っていました。そうとは知らないガートルードは、その杯の水を飲んでしまいました。ハムレットは、まだ水を飲むには至らないと答え、試合を続けました。
 試合が中断している時に、レイアーティーズがハムレットに後ろから斬りかかり、傷を負わせました。ハムレットは逆上し、つかみ合いの末にレイアーティーズも傷を負いました。
 試合を続けようとすると、毒を飲んだガートルードと傷を負ったレイアーティーズが倒れました。息絶える前、レイアーティーズは、クローディアスがこの奸計を巡らせたことを伝え、それを聞いたハムレットはクローディアスを刺し殺しました。
 ハムレットにも毒が回りました。彼は事の顛末を後世に伝え、ポーランド征服から戻ったフォーティンブラスを新しい国王に選ぶようにとホレイショーに頼み、息耐えました。
 イギリス使節とともにやってきたフォーティンブラスがこの惨状を目の当たりにしました。
 ホレイショーは、何もかもをありのままに伝えると、フォーティンブラスに約束しました。フォーティンブラスは、ハムレットの遺体を壇上に上げ、礼砲を撃って世に逝去を知らしめることにしました。