シェイクスピア『ハムレット』ってどんな話?作品の内容を詳しく解説

ウィリアム・シェイクスピアの四代悲劇の一つ『ハムレット』のあらすじ、登場人物を紹介するページです。作品の概要や管理人の感想も。


ハムレット (新潮文庫)

『ハムレット』の登場人物

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ハムレット
デンマーク王国の王子。以前の王であった父親が、現在の王クローディアスに殺されたことを知り、狂気を装いながら復讐の機会をうかがう。

クローディアス
現在のデンマーク王国の王。権力と妃を手に入れるため、先王をひそかに殺して王座に就いた。

ガートルード
ハムレットの母。先王ハムレットの元妻で、現在はクローディアスの妻。

ポローニアス
クローディアスの家臣。

オフィーリア
ポローニアスの娘。ハムレットの恋人。

レイアーティーズ
ポローニアスの息子。オフィーリアの兄。

ギルデンスターンローゼンクランツ
ハムレットのかつての学友。

ホレイショー
ハムレットの友人。

フォーティンブラス
ノルウェー王国の王子。

『ハムレット』のあらすじ

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 デンマーク王国のエルシノア城では、二ヶ月前に先王のハムレットが急死し、その弟であるクローディアスが王座に就いたばかりでした。先王の子ハムレット王子は、父の死によって悲しみに沈み、また父の死から間もなく、母がクローディアスの妻になったことを嘆いていました。
 城内では先王の亡霊が出没するという噂が広まり、その噂を友人のホレイショーから聞いたハムレットは、亡霊が夜な夜な出没する胸壁へと向かいました。間もなく先王の亡霊が現れ、自分の地位と妃のガートルードを妬ましく思っていたクローディアスに、毒液を耳に注がれて殺されたことを語りました。父親の死の真相を知ったハムレットは復讐を心に決め、狂気を装いました。
 クローディアスは、悲しみに沈むハムレットに、城内の重臣として働くように勧めていましたが、ハムレットが狂気を装うようになると、妻のガートルード、侍従長のポローニアス、その娘でハムレットの恋人であるオフィーリア、ハムレットの学友のローゼンクランツとギルデンスターンらに、その原因を探るように命令します。自分の娘への恋心が狂気の原因ではないかと考えたポローニアスは、ガートルードをハムレットと差し向かいで話しあわせ、その会話を壁掛けの後ろに隠れて聞こうとしました。しかし、その存在に気づいたハムレットは、クローディアスと間違えてポローニアスを刺し殺してしまいます。
 さらには、恋人のハムレットの急な変貌や、父ポローニアスの死によってオフィーリアは発狂し、小川に身を投げて死んでしまいます。これらのことが原因で、クローディアスはハムレットを危険な人物とみなし、ローゼンクランツとギルデンスターンにお供をさせ、ハムレットをイギリスへと送りました。
 ポローニアスの息子であるレイアーティーズが、父の死の報せを聞き、滞在先のフランスから戻りました。レイアーティーズは、父を殺したのがハムレットであるとクローディアスから聞き、仇を取ることを決心します。
 ハムレットは、航海の途中、王がイギリスへ宛てた国書の中に、自分を殺すようにという命令が書かれていることを知り、王に加担するローゼンクランツとギルデンスターンを殺すようにという内容にそれを書き替えました。その後、船は海賊船と邂逅し、ハムレットだけが囚われてデンマークへと返されました。
 クローディアスは、復讐に燃えるレイアーティーズと結託し、剣術の試合でハムレットを殺させようと試みました。確実にハムレットを殺すため、レイアーティーズは剣に毒を塗り込み、クローディアスは試合後に飲む酒に毒を入れました。
 ハムレットは試合の申し込みを受け入れ、レイアーティーズと対峙しましたが、もみ合いの末に二人とも傷を負ってしまいました。ガートルードが毒入りの酒を誤って飲んで倒れると、ハムレットのことを既に許していたレイアーティーズは、クローディアスが奸計を施したことを話し、自ら塗り込んだ毒によって息絶えました。ハムレットはクローディアスを刺し殺して復讐を果たしますが、自身にも毒が廻り、これらのことを後世に伝えるようホレイショーに伝え、息絶えました。

作品の概要と管理人の感想

 シェイクスピア四大悲劇のうちの一つ『ハムレット』は、1601年か1602年に初演を迎えたと推定されています。もともと父親の復讐劇として書かれていた複数の物語を下敷きにして書かれた作品です。
 現在に至るまで、「定番」として数多くの舞台で演じ続けられ、各国で漫画化や映像化がなされており、世界で最も有名な戯曲と言っても過言ではないかもしれません。ハムレットの発言をめぐっては、様々な解釈がなされ、日本でも、太宰治の『新ハムレット』や、志賀直哉の『クローディアスの日記』などで面白い考察がされています。『To be, or not to be, that is the question.(生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ。)』といった有名な台詞は、英語教育でも取り上げられます。

 この作品の主人公ハムレットは、父親の亡霊の話を聞き、父が現在の王クローディアスに殺されたという真実を知り、復讐を誓います。
 復讐を心に決めてからのハムレットは、自ら孤独の道へと突きすすむかのような印象を与えます。
 彼は誰にも協力を求めることなく、狂気を装うという方法を選択します。信頼に足ると思われるホレイショーにすら真実を伝えません。復讐を果たす相手クローディアスが一国の王であることを考えれば、自分の計画に協力してくれる人を探すのは困難なことかもしれません。しかし、以前の彼が国民からの人気も高く、オフィーリアには愛の言葉を囁き、様々な友人がいたことを思えば、誰かに協力を仰ぐこともできたのではないかと思ってしまいます。
 結局ハムレットは、誰にも本心をさらけ出すことなく、恋人のオフィーリアを死に追い込むほど傷つけ、自らも破滅へと向かっていきます。ハムレットがなぜ孤独を選んだのかは、「お家騒動」に他人を巻き込みたくないと思ったからかもしれませんし、狂気を装うことに徹したためかもしれませんし、疑心暗鬼に陥ったせいかもしれません。そこには様々な解釈ができることでしょう。もちろんすべての悪の元凶はクローディアスにあることも確かです。しかしこれほどの悲劇を招いたのは、ハムレットが孤独に陥り、自分自身の首を絞めていたというのも一因としてあげられるのではないかと思ってしまいます。

 そのように考えると、この『ハムレット』という作品は、それぞれの人物がそれぞれの「非」を抱えていたと言う事もできるかもしれません。先にも述べたように、クローディアスは嫉妬による殺人という大きな罪を犯しています。ハムレットも自分で自分の首を絞める行動をとっています。しかし、それと同時に、ガートルードのたしなみのなさ、オフィーリアの弱さ、ポローニアス、ローゼンクランツ、ギルデンスターンの過剰な王への追従も、この悲劇の一因です。一時的な気の迷いのようにも見えますが、剣先に毒を塗るレイアーティーズも卑怯な手を使ったと言わざるを得ません。更には、自分の息子に仇を取らせようとする先王ハムレットからも(当時とは感覚が違うのでしょうが)、恨みに囚われた人間の残酷さのようなものを感じないでしょうか。

 各々の人物の「非」が少しずつ影響し合い、悲劇の連鎖が招かれるという物語の構成は、非常に完成度が高く、面白いものとなっています。その一方で、登場人物の台詞はギチギチに型にはまっておらず、様々な解釈を生み出す面白さも併せ持っています。

 五百年近くも前の作品が、現代においても様々な手法で表現され続け、これほどまで私たちを楽しませてくれるのは、奇跡といってもいいかもしれません。この時代を超えた極上のエンターテイメントは、深読みすればするほどに楽しめる作品だと思います。