フョードル・ドストエフスキー『罪と罰』の詳しい登場人物紹介

ドストエフスキー作『罪と罰』の登場人物を詳しく紹介するページです。

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※『罪と罰』の詳しいあらすじはこちら

※ネタバレ内容を含みます。

ロジオン・ロマーノヴィチ・ラスコーリニコフ
栗色の髪をした美青年。世間から隠れて仕事を辞め、学費が払えず大学を除籍され、ペテルブルクで貧乏な生活を送っている。全体の幸福のためには犯罪が許されるという考えから、強欲な金貸しの老婆アリョーナ・イワーノヴナを斧で殺すが、その義理の妹であり、偶然現場を見てしまったリザヴェータも殺してしまう。
居酒屋で知り合った貧乏な酒飲みマルメラードフが馬車に轢かれて死去すると、残された不幸な家族である妻のカテリーナ・イワーノヴナと娘のソーニャに、母親から送られた金を渡す。
妹のドゥーニャが自分を犠牲にして裕福な男ルージンと結婚することを知ると、その結婚に反対し、訪れてきたルージンを侮辱し、更にドゥーニャと母親を説き伏せて結婚を破談へと導く。
卑しい職に就きながらも神に祈り続けるソーニャに心を打たれ、彼女に殺人を犯したことを打ち明け、十字架の前に跪いて自分がやったとことを告白すべきだという忠告を受ける。
その後自分を疑って自供を引き出そうとする予審判事のポルフィーリイと駆け引きを繰り広げ、犯人であることを見抜かれて自首を勧められる。
やがて自分が母親やドゥーニャを不幸にしていることを悟るようになり、更には自分に向けられた嫌疑に堪えることができないほどに小心であることを理解し、恥辱を受けるためと言って自首する。
その後八年の刑を言い渡されてシベリアに送られるが、長い間自分の罪に悔恨せず、判決に身を屈しなければならないということに自尊心を砕かれる。しかし、収容先までついてきたソーニャの愛により、彼女の信念が自分の信念へと変化したことに気づき、真の悔恨を行い、彼女に与えた苦しみを償うために更生を誓う。

プリヘーリヤ・ラスコーリニコフ・アレクサンドロヴナ
ラスコーリニコフとドゥーニャの母。長らくペテルブルクにいるラスコーリニコフと離れて生活をしていた。ラスコーリニコフに不自由のない生活をさせるため、ドゥーニャと裕福な男ルージンとの結婚を決め、ペテルブルクへとやってくる。三年ぶりに再会したラスコーリニコフにその結婚を反対されるものの、ルージンの卑劣な性格を知るにつれ、その結婚が破談になったことに納得する。
その後、これが最後になるかもしれないと言って自分たちのもとを去ったラスコーリニコフを心から心配するが、彼の論文を読み、自分たちがその思想の邪魔をしてはならないと思い始める。遠い所へ行くと言って最後に訪問してきたラスコーリニコフに、たまに来てくれるだけで充分だと言い、不安にかられながらも見送る。その後は息子が殺人を犯して自首したことを知らされないまま日々を過ごすが、病気で頭がおかしくなり、彼のおそろしい未来を予感したまま死去する。

ドゥーニャ(アヴドーチャ・ロマーノヴナ)
ラスコーリニコフの妹。亜麻色の髪の美しい娘。家庭教師に入っていたスヴィドリガイロフから歪んだ好意を持たれて口説かれているところを、その妻のマルファ・ペトローヴナに見られ、反対に夫に言い寄っていると勘違いされて家を追い出される。そのため村中から酷い扱いを受けるが、誤解していたことを知ったマルファ・ペトローヴナに名誉を回復され、彼女の遠縁にあたるルージンから結婚を申し込まれる。意に則さない結婚であったが、ラスコーリニコフと母の生活を立て直すために、それを承諾する。
ペテルブルクに来ると、ルージンが借りた些末な部屋で、母親と暮らし始め、その美しさでラズミーヒンを魅了する。
ラスコーリニコフから侮辱を受けたルージンから、もし自分が訪れた時にラスコーリニコフがいたら今後のことは関知しないという手紙を受け取るが、敢えて兄に同席を求める。その席で、ルージンが自分たちの貧しさに恩を売り、家庭を支配するために結婚を申し込んできたことを悟って怒りをあらわにし、結婚を破談にする。
その後、もう会うことはないと話すラスコーリニコフを心配し、彼のもとを何度か訪れる。ラスコーリニコフの秘密を知っているというスヴィドリガイロフからの手紙を読み、怯えながらも家に行き、兄が殺人を犯したことを知らされる。しかし自分のものになるという条件で兄を助けてやるということをスヴィドリガイロフが言いだし、さらに部屋に鍵をかけられたため、用意してあった拳銃を彼に向けて発砲する。それが命中することはなかったが、スヴィドリガイロフに愛さないという意思を伝え、解放される。
ラスコーリニコフが刑期を全うするためにシベリアに送られると、ラズミーヒンと結婚し、自分たちもシベリアへと行く計画を立てる。

アファナーシイ・イワーノヴィチ・ワフルーシン
ラスコーリニコフに送るための金をプリヘーリヤ・アレクサンドロヴナに貸していた商人。ラスコーリニコフの亡き父親の友達。

アリョーナ・イワーノヴナ
六十前後の金貸しの老婆。十四等官未亡人。義理の妹であるリザヴェータに昼も夜も働かせ、自分の死後もリザヴェータに金を渡さずに修道院に寄付を行い、供養してもらう腹づもりでいる。ラスコーリニコフがスチール製の銀時計を差し出されても、納得できる金額を渡さなかった。その後再び訪れてきたラスコーリニコフに斧で殺される。

リザヴェータ・イワーノヴナ
商人の生まれ。背が高くて足の曲がった女。アリョーナ・イワーノヴナの義理の妹。三十五歳くらいの敬虔なキリスト教の信者。姉のいいなりになって昼も夜も働いている。アリョーナ・イワーノヴナの殺害された現場を見つけ、その場にとどまっていたラスコーリニコフに殺される。ソーニャと知り合いで、聖書を渡していた。

コッホ
アリョーナ・イワーノヴナから質流れ品の買占めをやっていた。ラスコーリニコフがアリョーナ・イワーノヴナを殺害したときに訪れてきた大柄な男。一度は嫌疑をかけられて拘留される。

ペスチャコフ
ラスコーリニコフがアリョーナ・イワーノヴナを殺害したときに訪れてきた男。一度は嫌疑をかけられて拘留される。ラズミーヒンの引っ越し祝いに呼ばれる。

ミコライ・デメンチェフ
アリョーナ・イワーノヴナの建物の二階で作業をしていたペンキ屋。二十二歳。アリョーナ・イワーノヴナが殺された時、ミトレイとともにペンキ屋の作業を終え、ふざけ合って建物から出た後、作業場に戻る。ラスコーリニコフが身を潜めていたときに落とした耳飾りを発見し、それをドゥシキンのところへ持ち込んで金に換えたことで、容疑者として疑われる。ドゥシキンから渡された金で酒を飲み、一晩遊んで帰るが、疑われて逃げ出し、旅籠屋で見つかって首を括ろうとしたが逮捕され、第一容疑者として拘留される。当初は耳飾りを道で拾ったと言っていたが、その後正直な供述を行う。それにより一度は釈放されたが、自分が本当はアリョーナ・イワーノヴナを殺したのではないかという思いに取りつかれ、警察署を訪れ、自分が殺したと言う供述を行う。

ミトレイ
ミコライと同じ村の男。ミコライとともにアリョーナ・イワーノヴナの建物の二階でペンキ塗りをしていた。

ドゥシキン
アリョーナ・イワーノヴナの建物の向かいに居酒屋をやっている男。金貸しもやっており、ミコライが持ってきた(ラズミーヒンによるとだまし取った)品を警察へ届ける。

ラズミーヒン(ドミートリイ・ブロコーフィチ)
ラスコーリニコフの大学の友人。陽気でお人好しで誰からも好かれる青年。
貧しいが、独力で金を稼ぎながら生活し、一時期辞めていた大学への再入学を試み、ヘルヴィーモフの出版の仕事を助け、翻訳を行う。殺人を犯した後のラスコーリニコフの異変に気付く。
引っ越しをして叔父と住み始めると、警察署に行って、ラスコーリニコフの住居を探し当てる。ラスコーリニコフに家賃の支払い要求をしたおかみのパーシェンカと、それをそそのかしたチェバーロフに掛け合い、訴えを取り下げさせ、意識を失っていたラスコーリニコフの面倒を見て衣類などを揃えてやる。アリョーナ・イワーノヴナ殺害について、当日の犯人の動向を正しく推測する。
病み上がりで飲み屋に入ったラスコーリニコフを心配してい怒りを覚えながらも、自分の家の引っ越し祝いに呼び、訪れてきたラスコーリニコフを家まで送り、そこで出会ったドゥーニャに惹かれる。
アリョーナ・イワーノヴナに質入れしていた品物を取り戻したいというラスコーリニコフの頼みを受け、ポルフィーリイを紹介する。
長らくラスコーリニコフがアリョーナ・イワーノヴナ殺しの犯人ではないと信じ、彼のことを疑うポルフィーリイやザミョートフに怒りを覚えていた。
ラスコーリニコフの一家がルージンを追い出したところに居合わせ、叔父からもらった千ルーブリと、ドゥーニャがマルファ・ペトローヴナからもらった千ルーブリを合わせて、出版の仕事を始めることを提案する。ラスコーリニコフが二度と会えないかもしれないと言って去ったため、プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナとドゥーニャの面倒を見るようになる。
不可解な言動を繰り返し、母と妹を不幸にしているラスコーリニコフに怒り、政治的な秘密結社に属しているのではないかと疑うが、ラスコーリニコフが逮捕されてシベリアに送られると、ドゥーニャと結婚し、自分たちもシベリアへ行くための準備を始める。

ヘルヴィーモフ
自然科学などの怪しい出版で儲けている男。ラズミーヒンに翻訳の仕事を任せる。

ラズミーヒンの叔父
六十五歳。田舎の郵便局長をしていた。恩給をもらっている。

ゾシーモフ
医者。二十七、八歳の薄亜麻色の髪の大きな太った男。眼鏡をかけている。尊大な態度だが仕事はできる。殺人を犯して衰弱して意識を失っていたラスコーリニコフを診る。ラスコーリニコフが、アリョーナ・イワーノヴナ殺しの話になると過剰に反応することを見抜く。

プラスコーヴィヤ・パーヴロヴナ・ザルニーツィナ(パーシェンカ)
ラスコーリニコフの家のおかみ。四十三歳。八等官未亡人。一人娘を亡くし、その婚約者であったラスコーリニコフの面倒を見る必要がなくなると、チェバーロフにそそのかされて、家賃を払わないラスコーリニコフを警察に訴える。しかしその後ラスコーリニコフの友人であったラズミーヒンといい関係になり、彼に説得され、その訴えを取り下げる。

ナターリヤ・エゴーロヴナ
プラスコーヴィヤ・パーヴロヴナの娘。故人。ラスコーリニコフと婚約していたが持参金はなかった。不器量で病身で偏屈な女で、修道院に憧れていた。

チェバーロフ
七等官。プラスコーヴィヤ・パーヴロヴナをそそのかして、家賃を払わないラスコーリニコフを訴えさせ、支払われた手形を換金しようと企むが、ラズミーヒンによって阻止される。

ナスターシャ・ペトローワ
ラスコーリニコフの家の女中。料理女もかねている。夜になると近所に外出する。
ラスコーリニコフがアリョーナ・イワーノヴナを殺そうとした日に、寝転がっている彼を見て心配する。ラスコーリニコフが殺人を犯して意識を失っているときも、面倒を見る。その時に訪ねてきたラズミーヒンに惹かれる。

マルメラードフ(セミョーン・ザハールイチ)
がっしりした体格の酒でむくんだ顔をしている五十前後の九等官。ソーニャの父親で、カテリーナ・イワーノヴナの夫。ソーニャの他に三人の幼い子供を持つが、妻のものを売り払って酒代に変えている。官職についても、最初の俸給をもらった翌日にその金を持って失踪して酒を飲み、干し草の中で過ごす。金が尽きるとソーニャにせびり、その金で再び居酒屋に入って酒を飲んでいる。ある居酒屋でラスコーリニコフに出会い、これまでの自分のいきさつを話し、家まで送ってもらうと、カテリーナ・イワーノヴナに折檻を受け、このようにされないと気持ちのやり場がないと言って喜ぶ。
その後酔って馬車に惹かれ、ラスコーリニコフに発見されて家に運ばれるが、カテリーナ・イワーノヴナとソーニャに許しを請いながら死去する。

カテリーナ・イワーノヴナ
マルメラードフの妻。佐官の家に生まれ、由緒ある県立の貴族学校をでた教養ある女。公爵から求婚されたが、マルメラードフと結婚した。肺病を病んで恐ろしいほどに痩せ、貧乏生活に耐えながら三人の子供を養っている。きつくあたっていたソーニャが売春宿に行くことになり、帰って金を差し出すと、一晩中彼女を抱いて眠る。マルメラードフが官職につくと、喜んで仕事用の服を仕立ててやるが、すぐに失踪され、五日後になって戻ってくると激しく怒って折檻する。
マルメラードフが事故死すると、その場に居合わせたラスコーリニコフに二十五ルーブリをもらい、盛大な葬儀を挙げる。しかしその葬儀の日に、宿主のアマリヤ・イワーノヴナと喧嘩して発狂し、「身持ちのきちんとした人間が落ちぶれた様」を大衆に見せつけると言って、三人の子供を路上に立たせ躍らせようとするが、血を吐いて死ぬ。

ソーニャ(ソーフィヤ・セミョーノブナ・マルメラードワ)
マルメラードフの先妻の子。十七、八歳の青い目の女。リザヴェータの友人。マルメラードフと一緒に暮らしていたが、売春宿で働くと、貸家の主であるアマリヤ・フョードロヴナに家を追い出され、カペルナウモフというびっこでどもりの一家の家に入る。売春宿の鑑札で働きながら、カテリーナ・イワーノヴナに送金し、夜はこっそりと家を訪れる。
マルメラードフが馬車に轢かれて死亡した際、家に大金を施したラスコーリニコフを訪れ、礼を述べる。
長い間、自分のことを罪深い女であると思い、母か自分にもしものことがあれば、幼い兄弟たちが悲惨な運命をたどることを知りながらも卑しい生活から抜け出せずにいたが、神に身を捧げる事でなんとか自分を保っていた。自宅を訪問したラスコーリニコフに聖書を読むように言われ、「ラザロの復活」を読み聞かせる。
カテリーナ・イワーノヴナと同じ建物に住むレベジャードニコフの同居人のルージンに、百ルーブリをポケットの中に忍び込まされ、それを盗んだと陥れられそうになるが、レベジャードニコフが真実を話し、助けられる。ラスコーリニコフが二人の殺人を犯し、さらにそのうちの一人が自分の友達であったリザヴェータであったことを知りながらも、彼の不幸に同情し、深い愛情を捧げる。そして自分がどのようにすればよいのかと聞くラスコーリニコフに、今すぐ十字架の前に跪いて、自分がやったことを皆の前で告白すべきだと言う。
カテリーナ・イワーノヴナが死ぬと、スヴィドリガイロフが援助を申し出たので、その金でシベリアへとおくられたラスコーリニコフについて行く。シベリアでは仕立ての仕事をして生計をたて、他の囚人たちから好かれ、気難しい態度をとられながらもラスコーリニコフのもとに通う。ある日、ラスコーリニコフが自分の手を振りほどかずに泣いて抱きしめてきたことで、彼が自分のことを限りなく愛していることに気づき、計り知れない幸福に包まれる。

ポーレチカ
カテリーナ・イワーノヴナとマルメラードフの娘。十歳。マルメラードフの死後、ソーニャの使いで、家族のために金を置いて行ったラスコーリニコフに名前と住所を聞く。発狂したカテリーナ・イワーノヴナによって往来で踊りをさせられる。両親が死ぬと、スヴィドリガイロフが世話した金で孤児院へと入れられる。

コーリャリードチカ
カテリーナ・イワーノヴナとマフメラードフの子。発狂したカテリーナ・イワーノヴナによって往来で踊りをさせられる。両親が死ぬと、スヴィドリガイロフが世話した金で孤児院へと入れられる。

カペルナウモフ
アマリヤの家を追い出されたソーニャに家を提供した洋裁店の主人。もともと屋敷奉公を行っていた農奴で、びっこでどもりの男。七人の子供を抱えている。

アマリヤ・フョードロヴナ・リッペヴェフゼル(アマリヤ・リュドヴィーゴヴナ)
カテリーナ・イワーノヴナが間借りしている家の婦人。自分の借りた住居を細かく仕切って又貸ししている。
マルメラードフの法事の世話をし、料理を引き受けるが、それを得意にしている様子がカテリーナ・イワーノヴナの反感を買い、大喧嘩になる。

ニコージム・フォミッチ
区警察署長。薄亜麻色の頬ひげを生やした堂々とした男。家賃滞納で訴えられて警察に出頭してきたラスコーリニコフに、ザミョートフに口述させたお決まりの文書を書かせ、警察署から出してやる。

イリヤ・ペトローヴィチ
区警察副所長。人参色の八字髭をはね、卑しい顔をした短気な男。借金で訴えられたラスコーリニコフを怒鳴りつける。
その後ラスコーリニコフが青年文学者であることを知り、怒鳴りつけてしまったことを詫びるが、その場でラスコーリニコフの自首を受けることとなる。

ルイザ・イワーノヴナ
飲食店を経営する、赤黒い顔にぶちのある派手な女。店で騒ぎを起こすことが多く、何度も警察に出頭している。

アレクサンドル・グリゴーリエヴィチ・ザミョートフ
ラスコーリニコフに借金の支払い命令がくだったときに、釈放のための文書の内容を口述で教えた警察署の事務官。二十二、三。ポマードをつけて櫛を入れた髪にしっかりと分け目をつけている。フランス語を流暢に話す。
ラスコーリニコフがアリョーナ・イワーノヴナ殺しの犯人ではないかと疑っていたが、病み上がりのラスコーリニコフに飲み屋でばったりと出会い、「自分が犯人だったらどうだろう」という彼の発言を聞いて恐れ、今までの疑いを撤回する。
ポルフィーリイと事件について話し合っているところに、ラスコーリニコフの訪問を受け、挑戦的な態度をとる。
その後、飲み屋で醜態を演じて転任したことがイリヤ・ペトローヴィチによって語られる。

アンドレイ・セミョーヌイチ・レベジャートニコフ
役人。かつて田舎でルージンの世話になっていた。小さくて痩せた男で、髪は白っぽく、頬ひげを生やしている。お人よしだが、頭はあまり良くない。同じ建物に住むカテリーナ・イワーノヴナと大喧嘩をしたことがある。ペテルブルクに来たルージンと一時同居する。前衛的な青年進歩主義者の一人で、あるサークルで指導的な役割を演じ、有力者の暴露を多く行なっている。男女が平等に生活するコンミューンの建設を目指している。同じ建物内に住んでいたソーニャに好意を抱いており、自分が指導しているサークルに誘おうとしている。
マルメラードフの法事の際、ルージンがソーニャを陥れようとして、自分の百ルーブリを彼女のポケットに忍ばせるのを目撃しており、ソーニャがそれを盗んだと皆の前で主張するルージンに対し、真実を突き付けてソーニャを擁護する。

ルージン(ピョートル・ペトローヴィチ)
七等文官。マルファ・ペトローヴナの遠縁の男。貧困から身一つで成りあがった。貧しくて美しくて教養のある女性を娶って、生涯自分への恩を感じさせながら、家庭を支配することを夢見ており、その条件に当てはまるドゥーニャに結婚を申し込む。ペテルブルクに着くと、ドゥーニャと母親のために住居を用意し、自分は友人のレベジャードニコフの家に一時滞在する。
病床に伏すラスコーリニコフを訪れるが、侮辱されて怒り、部屋から出ていく。その後、ドゥーニャからラスコーリニコフと仲直りするように頼まれるが、それを断る。しかし貧しいドゥーニャを娶って恩を着せ、支配しようとしていたことをラスコーリニコフに見破られ、ドゥーニャの怒りを買って家を追い出される。
マルメラードフの法事にラスコーリニコフが来ることを知ると、ソーニャのポケットに百ルーブリをそっと忍ばせ、それを彼女が盗んだという話をでっちあげて、彼女と近しい関係にあるラスコーリニコフを侮辱しようとするが、レベジャードニコフに真実を突き付けられて退散する。

スヴィドリガイロフ(アルカージイ・イワーノヴィチ)
貴族の元軍人。がっしりして、ほとんど真っ白の明るい色のあご髭をふさふさと生やした男。騎兵連隊に勤めたこともあるが、放蕩を繰り返し、いかさま師を行っていた過去ももつ。八年前に借金のために監獄に入っている時に、マルファ・ペトローヴナに身請けされて結婚する。家庭教師に雇ったドゥーニャに惚れ込みながら、憎悪も感じ、乱暴する。妻のマルファ・ペトローヴナに、ドゥーニャを口説いているところを見られ、妻がドゥーニャが持ちかけた恋愛だと思い込んで家を追い出したため、それを見かねて妻に真実を話す。
マルファ・ペトローヴナが死ぬ(殺したとも言われている)と、ラスコーリニコフを訪れ、ドゥーニャに一万ルーブリを渡したいと提案する。
ソーニャの家の隣に住み、ラスコーリニコフが自分の殺人についてソーニャに話しているのを聞きつけて興味を持つ。カテリーナ・イワーノヴナが死去すると、その三人の幼い子供たちを孤児院に入れてやる。
やがて自分が間借りしている家の十六歳になる娘と婚約するが、ドゥーニャのことを忘れられず、手紙を出して家に呼び、ラスコーリニコフが殺人犯であることを明かし、自分のものになるという条件で彼を助けようという提案をする。これを恐れたドゥーニャが自らに拳銃を向けると、撃たれるのを待つ様子を見せる。ドゥーニャが撃ち損じてピストルを投げ出すも、自分のことを愛してくれないとわかると、そのピストルを持ち出して、ソーニャと婚約者の娘に金を渡して自殺する。

マルファ・ペトローヴナ
スヴィドリガイロフの妻。ドゥーニャに優しく接していたが、スヴィドリガイロフがドゥーニャを口説いているのを見て、反対にドゥーニャの方が夫に言い寄っていると勘違いし、家から追い出し、町中にそれを言いふらす。その後スヴィドリガイロフから真実を聞かされ、自分が誤解していたことをドゥーニャに詫び、彼女の名誉を回復するために町中を奔走する。
その後、スヴィドリガイロフに叩かれたことがきっかけになったのか、浴室で倒れ、死去する。死ぬ前に遺言状でドゥーニャに三千ルーブリを残す。

ポルフィーリイ・ペトローヴィチ
予審判事、法律家。ラズミーヒンの遠い親戚。三十五、六歳の太った獅子鼻の男。髭を綺麗にそり、髪を短く刈り上げている。人を小バカにしているところがある。ラズミーヒンの引っ越し祝いに呼ばれる。
アリョーナ・イワーノヴナ殺しの事件を担当し、質入れしていた品物を取り戻したいというラスコーリニコフに、警察へ届け出るよう助言する。
やがてラスコーリニコフが事件に関与していることを見抜き、自供を引き出すための駆け引きを繰り広げる。
最後のラスコーリニコフとのやり取りでは、ミコライが逮捕されたことで疑っていたことを詫びたが、その直後ラスコーリニコフが犯人であると本人の前で断言した。ラスコーリニコフのことを犯人として考えていたものの、気に入ってもおり、本人のために自首を勧める。