ドストエフスキー『罪と罰』の詳しいあらすじ

ドストエフスキー作『罪と罰』の章ごとの詳しいあらすじを紹介するページです。ネタバレ内容を含みます。


罪と罰 上 (岩波文庫)

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※『罪と罰』の登場人物はこちら

第一部

 貧困のために大学を除籍されたラスコーリニコフは、自分の殻に閉じこもり、ペテルブルクの貧しい借家で世間から隠れる生活を営んでいました。 彼は金貸しの強欲な老婆、アリョーナ・イワーノヴナを殺害して金を奪う計画を立てており、下見のために質草を預けに訪れましたが、その計画の恐ろしさに気づいて身を震わせました。

 居酒屋に入ったラスコーリニコフは、酒飲みの男マルメラードフと出会い、話を聞きました。マルメラードフは職がなく、妻のカテリーナ・イワーノヴナは肺病を患っていました。娘のソーニャは売春宿で働いていたため、自分の住む貸家から追い出され、夜にこっそりと金を持ってくる生活を送っています。マルメラードフは働いても、その俸給を盗み出して全て飲み代に使い、家にも帰らずにソーニャに金をせびっているようでした。
 ラスコーリニコフがマルメラードフを家まで送ると、妻のカテリーナ・イワーノヴナは、マルメラードフの髪の毛を掴んで部屋の中に引きずり込み、激しく折檻しました。

 その翌朝、ラスコーリニコフに、母親のプリヘーリヤ・アレクサンドロヴナから手紙が届きました。その手紙には妹のドゥーニャのことが書いてありました。ドゥーニャは、家庭教師をしていた家の主人のスヴィドリガイロフから歪んだ好意を寄せられていました。ある日、スヴィドリガイロフがドゥーニャを口説いていることが妻のマルファ・ペトローヴナに知られ、反対にドゥーニャが持ちかけたものだと思い込まれ、家から追い出されました。マルファ・ペトローヴナは村中にドゥーニャの悪い噂を流してしまいましたが、それを見かねたスヴィドリガイロフが真実を話して誤解を解くと、マルファ・ペトローヴナはドゥーニャに詫び、遠縁の財産家であるルージンという男を結婚相手として紹介しました。ルージンはラスコーリニコフの一家を経済的に助ける能力を持っているようでした。
 この手紙を読んだラスコーリニコフは、ドゥーニャが自分の身を犠牲にして望まない結婚をするのだと思い、その結婚を阻止することを心に決めました。
 ラスコーリニコフは、自分が一家の財産を食いつぶしていることを気に病み、アリョーナ・イワーノヴナを殺して金を奪うという恐ろしい計画のことを再び考え始めました。

 恐ろしい夢を見て、自分が殺人を犯すことなどできないと一度は考えたラスコーリニコフでしたが、アリョーナ・イワーノヴナのただ一人の同居人である妹リザヴェータが翌日の七時に家にいないことを偶然耳にしたことで奇妙な符号のようなものを感じ、殺人を犯す決意をします。 彼は斧を持ち、アリョーナ・イワーノヴナの家を訪れ、質草を預けるふりをして、それに気を取られたアリョーナ・イワーノヴナの頭に斧を振り下ろして殺し、トランクを見つけると、中にあった金時計や指輪などの品々を外套のポケットに押し込み始めました。

 そこへリザヴェータが帰ってきて、アリョーナ・イワーノヴナの死体を発見しました。現場を見られたラスコーリニコフは彼女に飛びかかり、斧を振り下ろして殺しました。

 二人を殺したラスコーリニコフが逃げようとすると、男が二人が訪ねてきたため、内側から掛金を穴に差し込みました。その男たちは、鍵が内側から掛けられているのに気づくと、庭番を呼ぶために階下へ降りていきました。ラスコーリニコフは部屋を出て、階段を降り、二階にドアが開けたままの空室を見つけて入り、戻ってくる男たちが通り過ぎるのを待って、家に帰りました。

第二部

 ラスコーリニコフが熱を出して寝ていると、警察から出頭命令が来ました。警察署に行き、事務官のザミョートフの話を聞くと、彼は家賃滞納で訴えられていました。ザミョートフに言われるままに返済命令への返答を書き、解放されましたが、警察署の署長であるニコージム・フォミッチとイリヤ・ペトローヴィチが自分が犯した殺人について話しているのを聞き、ラスコーリニコフは倒れてしまいます。

 警察署を出たラスコーリニコフは証拠を隠すため、建築資材で囲まれた場所にある大きな石の下に盗品を捨てました。

 その後、ラスコーリニコフは、大学時代の友人であるラズミーヒンの家を訪れましたが、まともな会話ができず、家に帰って気を失い、その後の四日間を眠り続けました。その間、ラズミーヒンが訪れてきて、医者のゾシーモフを呼んで看病を行い、さらにラスコーリニコフを訴えた家主に掛け合い、訴えを取り下げさせていました。また、プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナは金を借りてラスコーリニコフに送金していました。

 病床につくラスコーリニコフのかたわらで、ゾシーモフとラズミーヒンは、アリョーナ・イワーノヴナが殺された事件について語り始めました。ラズミーヒンによると、二階で作業をしていたペンキ屋のミコライが、ラスコーリニコフが二階に潜んでいた時に落としたと思われる金の耳飾りの入ったケースを拾い、それを預けて金を借りていたことがわかったため、逮捕されたそうです。

 そこへ、ドゥーニャの婚約者であるルージンが、ラスコーリニコフに挨拶をするため、入ってきました。彼はペテルブルク内のアパートに、ドゥーニャとプリヘーリヤ・アレクサンドロヴナの居場所を手配しているようでした。二人の結婚に反対していたラスコーリニコフがルージンを侮辱すると、その発言に怒りをこらえきれなくなったルージンは、部屋から出ていきました。

 一人になったラスコーリニコフが外出して飲食店に入ると、ザミョートフと会いました。ザミョートフが以前から自分を犯人ではないかと疑っている様子であったため、ラスコーリニコフは敢えて老婆殺しの件を自分から話し、ザミョートフを嘲笑します。店を出たラスコーリニコフは、気づくと彼は殺人現場の建物の前にいました。彼は、この場所で老婆が殺されたことを、そこにいた二人の職人と庭番に話し、ここに部屋を借りたいと言い出し、頭のおかしい人間に思われ、通りへ突き飛ばされました。

 ラスコーリニコフが往来へ出ると、酩酊して馬車に踏まれ大怪我を負ったマルメラードフを見つけました。彼はマルメラードフを家に運び入れ、その妻であるカテリーナ・イワーノヴナと娘のソーニャに知らせました。マルメラードフは妻のカテリーナ・イワーノヴナと娘のソーニャに許しを請いながら死んでいきました。夫を失ったカテリーナ・イワーノヴナに同情したラスコーリニコフは、母親から送金されて残っている金を全て渡しました。

 マルメラードフの家を出たラスコーリニコフが、引っ越し祝いを行っていたラズミーヒンを訪れてから家に帰ると、プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナとドゥーニャが会いに来ていました。三年ぶりの思いがけない訪問に、ラスコーリニコフは気を失いました。

第三部

 三年ぶりに会った妹に対し、ラスコーリニコフは結婚をやめさせようとして、言い争いになりました。プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナとドゥーニャが家に帰ると、ドゥーニャの美しさに魅了されたラズミーヒンが、ラスコーリニコフの容態を伝える役目を引き受けました。

 母娘はルージンからの手紙をラズミーヒンに見せました。ルージンは今日の夜に来るということでしたが、その席にラスコーリニコフを絶対に同席させないように書いていました。さらに、ルージンは、ラスコーリニコフと母娘の仲を裂くために、母親から送られた金を、実際にはカテリーナ・イワーノヴナに渡したにも関わらず、「醜業で生きている」ソーニャに下心から渡してしまったとも書いてきました。ドゥーニャは、敢えてラスコーリニコフをルージンに会わせるようにした方がいいと言いました。

 彼らはラスコーリニコフのところへと向かいました。ラスコーリニコフは前日よりもしっかりした様子でしたが、話がドゥーニャの結婚のことになると、もしルージンと結婚するのであれば、妹と思うことをやめると言いました。それに対しドゥーニャは結婚するという意思を変えるつもりはないと主張しました。しかし、ラスコーリニコフは、ルージンからの手紙の、自分と母妹の関係を引き裂く意図を見抜き、ルージンの卑劣な人間性を母と妹に示すことに成功します。

 そこへソーニャが訪れてきました。彼女はカテリーナ・イワーノヴナの使いで、明日の葬式に是非出席してくれるようラスコーリニコフに頼みに来たのでした。プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナとドゥーニャは、彼女のことを、「醜業で生きている」とルージンからの手紙で知っていたので、始め不審そうに彼女を見ていましたが、やがて好意をもつようになりました。

 ラスコーリニコフは、アリョーナ・イワーノヴナに預けていた父親のかたみを取り戻したいとラズミーヒンに言って、事件を担当している人物で、ラズミーヒンの知り合いであるポルフィーリイ・ペトローヴィチを紹介してもらうことにします。

 ポルフィーリイの家にはザミョートフも来ていました。ポルフィーリイは、父親のかたみを取り戻すためには警察に届けを出すべきだと忠告しました。ザミョートフは、ラスコーリニコフが病気で朦朧としていたと言う頃に飲食店で会ったが、その時は巧妙なくらいに理性的であったと言いました。ポルフィーリイはラスコーリニコフの論文を読んでいました。その論文には、この世の中には人類全体の進歩のために犯罪を行うことができる非凡な人々が存在する、と書かれていました。ポルフィーリイはこの意見に対し、平凡な人間が、自分のことを非凡な人間だと思い込んで、他の人間を排除し始める可能性について言及し、さらに、その論文を書いているときに自身が非凡人であるとは考えなかったのかとラスコーリニコフに聞きました。これらの言葉を受けて、ラスコーリニコフは自分が疑われていることを確信します。

 ラスコーリニコフは家に帰り、再び外出すると見知らぬ町人から、「人殺し」と言われました。その言葉を聞いたラスコーリニコフは、殺人という行為のあまりの小ささに、自分のことを虱だと感じました。

 ラスコーリニコフが悪夢を見て目を覚ますと、見知らぬ男が訪れ、スヴィドリガイロフだと名乗りました。

第四部

 スヴィドリガイロフは、新しく婚約したようですが、未だにドゥーニャのことを忘れられずにいました。彼は、ルージンとドゥーニャの結婚を阻止するため、ドゥーニャに一万ルーブリを与えようとしており、会わせてほしいとラスコーリニコフに頼みました。ラスコーリニコフはその申し出を断りました。すると、スヴィドリガイロフは、マルファ・ペトローヴナもまた三千ルーブリをドゥーニャに送る遺言状を書いていたことを伝え、このことだけでもドゥーニャに伝えるように頼みました。

 ラスコーリニコフはラズミーヒンと連れ立って、ドゥーニャとプリヘーリヤ・アレクサンドロヴナの家に入りました。ルージンも同じ部屋を訪れました。ドゥーニャは、ラスコーリニコフとルージンに仲直りするように頼みました。しかし、ルージンは受けた侮辱を忘れることができないとそれを拒否しました。するとラスコーリニコフは、ルージンの自分と母妹の仲を引き裂こうとするルージンの手紙のことを非難しました。ルージンはそれに反論しますが、自分たちが金銭的に無力であることを利用して、支配しようとしていたルージンの思惑をドゥーニャは感じ、怒りをあらわにしました。結局母娘とルージンは喧嘩別れをしてしまいました。

 ルージンは、貧しくて身寄りのないが、美しくて教養のある女性を娶って、生涯自分への恩を感じさせながら、家庭を支配することを夢見ていました。ドゥーニャはその条件にうってつけの娘であったため、ルージンは彼女を諦められず、状況を立て直すことを考え、そのためにはラスコーリニコフとラズミーヒンを排除しなければならないと考えました。

 ルージンを追い出したプリヘーリヤ・アレクサンドロヴナとドゥーニャは、晴れ晴れとした気分になっていました。ラスコーリニコフは、スヴィドリガイロフがドゥーニャに一万ルーブリをやりたいと言っていたことを話しました。ドゥーニャはスヴィドリガイロフが何かを企んでいるのではないかと恐れます。ドゥーニャに惹かれていたラズミーヒンは、ルージンを追い出して有頂天になりました。一同が浮き浮きした気分の中、ラスコーリニコフは、これが最後になるかもしれないと三人に言い残し、部屋から出ていきました。

 ラスコーリニコフはソーニャの家に入り、カテリーナ・イワーノヴナが肺病のため長くはないだろうこと、もしソーニャが病院に収容されるようなことがあれば、カテリーナ・イワーノヴナは物乞いになったあげくに倒れ、子供たちも悲惨な運命を辿るだろうと言いました。ソーニャは以前からそのことを自分でもわかっており、神に祈りながら生活することで、自殺にも淫蕩にも陥らずにいられるのでした。彼女はリザヴェータと知り合いで、聖書をもらっていました。ラスコーリニコフはソーニャに聖書を読ませました。ソーニャは、何かに苦しんでいるラスコーリニコフのために読んでやりたいという欲望を感じ、「ラザロの奇跡」を感激しながら読み終わります。それを聞き終わったラスコーリニコフは、母と娘を捨ててきたことを伝え、これから自分と同じ道を歩いて辿ってほしいとソーニャに頼みました。

 ソーニャの家の隣の空き家には、スヴィドリガイロフが潜んでいて、この会話の一部始終を聞いていました。

 翌朝、ラスコーリニコフは警察署に出向き、ポルフィーリイと対面し、尋問することがあるなら早くしてほしいと頼みました。ポルフィーリイは、ラスコーリニコフを疑っていることを否定しながらも、ある場合には犯人を急いで拘留せずに、泳がせておく場合もあると語りました。
 自分を明らかに疑っているポルフィーリイに対し、ラスコーリニコフは怒りをあらわにしました。ポルフィーリイは、ラスコーリニコフをなだめながら、扉の外に「思いがけない贈り物」があると言いました。しかし扉には鍵がかかっていたため、ラスコーリニコフはさらに激昂しました。
 そこへミコライが入ってきて、自分がアリョーナ・イワーノヴナとリザヴェータを殺したと主張しました。ラスコーリニコフは落ち着きを取り戻し、その場を去りました。

 マルメラードフの葬式に行こうとすると、一人の町人が突然訪れてきました。その男は、ラスコーリニコフが殺人現場で庭番におかしなことを言って追い出された時に、それを見ている観衆の内の一人でした。彼はそのことをポルフィーリイに報告しに行っていたのす。その後、すぐに報告しなかったことで叱責を受けたその男は、その直後でラスコーリニコフが現れたため、扉の向こうの部屋に閉じ込められていました。彼がポルフィーリイの言う「思いがけない贈り物」だったのです。彼は先ほどのポルフィーリイとラスコーリニコフのやりとり、さらにはミコライが自首してきたことを扉の向こうで聞いていて、ラスコーリニコフが犯人ではないと思いこみ、謝りに来たのでした。ラスコーリニコフは、先程ポルフィーリイは自分のことを調べ上げているのではと恐れていましたが、それはこの男が直前に知らせていたに過ぎないことがわかり、安堵し、さらに自分の小心に嫌悪を感じながら部屋を出ました。

第五部

 マルメラードフの葬儀は、盛大に行われるようで、同じアパートに住んでいるレベジャートニコフと、その同居者であるルージンも招待されていました。ルージンは、招待されている中にラスコーリニコフが入っていたことを知りました。

 ルージンは田舎にいたときに、レベジャートニコフの世話をしてました。レベジャートニコフは、前衛的な青年進歩主義者で、自分が指導しているサークルで、男女が平等に生活するコンミューンの建設を目指し、好意を抱いているソーニャをそこに誘おうとしていました。

 ルージンはレベジャートニコフに頼んで、ソーニャを呼び、カテリーナ・イワーノヴナに同情した様子を見せ、ソーニャに援助を申し出ました。彼はカテリーナ・イワーノヴナに秘密でという約束で、ソーニャに十ルーブリを渡しました。レベジャートニコフはその行為に感動しましたが、この時はルージンが何かを企んでいることには気がつかなきませんでした。

 マルメラードフの葬儀では、家主のアマリヤ・イワーノヴナが世話を引き受けましたが、自分の仕事ぶりに得意になっているアマリヤの態度に、カテリーナ・イワーノヴナは反感を感じ、さらにろくな連中が参加しないので彼女の苛々は更に募りました。ラスコーリニコフが現れると、カテリーナ・イワーノヴナは喜び、アマリヤ・イワーノヴナやその他の住人たちへの悪口を散々に話しました。
 アマリヤ・イワーノヴナは、カテリーナ・イワーノヴナに悪口を言われ、腹を立てて反撃し、二人の間に口論が起きました。アマリヤ・イワーノヴナがソーニャのことを暗に指して、黄色い鑑札(売春宿の鑑札のこと)と言い出したので、カテリーナ・イワーノヴナは怒り狂ってアマリヤ・イワーノヴナに突進しました。

 その時、ルージンとレベジャートニコフがやってきました。ルージンはソーニャが訪ねてきた直後、自分の机の上から百ルーブリ紙幣が紛失したので、正直にそのありかを教えれば、この事件は不問にすると言いました。ソーニャは何も知らないと言いましたが、彼女のポケットから、先程ルージンがこっそりと忍ばせた百ルーブリが出てきました。カテリーナ・イワーノヴナはソーニャを抱きしめ、証拠の百ルーブリが出てきたのにも関わらず、彼女が盗んだのではないと涙ながらに主張しました。ルージンは可哀想になったのか、ソーニャを不問にすると言いました。

 そこに、怒りに震えたレベジャートニコフが、先ほどルージンがソーニャに百ルーブリをソーニャのポケットに忍ばせたのを見たと証言しました。
 これを聞いたラスコーリニコフは、ルージンが一昨日、自分とその家族と諍いを起こしたこと、その場でソーニャのことを擁護するような発言を自分がしたことを話しました。ルージンがもしソーニャのことを貶められれば、再び自分と母娘に亀裂を生じさせることができ、自分に復讐するとともに、ドゥーニャとの結婚のチャンスが再び巡ってくるだろうという策略のためにこのような卑劣なことをしたのだとラスコーリニコフは説明しました。引っ込みがつかなくなったルージンは、ラスコーリニコフとレベジャートニコフが自分を個人的な恨みから陥れようとしていると主張し、この建物から出て行きました。

 ソーニャは泣きながら帰って行きました。混乱したカテリーナ・イワーノヴナもまた、世の中の裁きと真実を探すためと言って出ていきました。

 ラスコーリニコフは、ソーニャの家に行き、もし自分やレベジャートニコフがいなかったら、ソーニャは監獄に入れられていたかもしれないと話しました。もしそうなれば、前日に伝えたように、カテリーナ・イワーノヴナや子供たちは露頭に迷うことになります。ルージンが生きて忌まわしい行為をすべきか、カテリーナ・イワーノヴナが死ぬべきか、どちらを選ぶのかと、ラスコーリニコフは問い詰めました。その選択を迫られて苦しむソーニャを見て、ラスコーリニコフは自分自身が彼女に許しを請うているのだと悟りました。ラスコーリニコフは、誰がリザヴェータを殺したのかを教えると約束した通り、その殺人犯を当てるようにソーニャに言いました。ラスコーリニコフと見つめあったソーニャは、真実に気がついて衝撃を受けましたが、自分で自分を苦しめることをしているラスコーリニコフを固く抱きしめ、どこまでもついていくと言いました。

 ラスコーリニコフは自分がアリョーナ・イワーノヴナを殺した理由を説明しました。頭脳と精神が強固な者、そして多くのことを実行することのできるものだけが、他の馬鹿な人間の上に立つ支配者であり、そのような人間こそが常に正しいのだと、彼は思うようになりました。自分がそのような権力を持つものではないことはわかっていましたが、それを踏み越えることができるのか試すために殺人を犯したと言います。

 ラスコーリニコフはこれから自分がどうすればいいのかを聞きました。ソーニャは今すぐ十字架の前に跪いて、自分がやったとことを告白すべきだと言いました。ラスコーリニコフはそれに反対して、近々自分は逮捕されるだろうが、それまでは降伏しないと言います。逮捕されても証拠不十分ですぐに出てくるはずなので、それまで待っていてほしいとソーニャに頼みました。

 ラスコーリニコフはソーニャからの愛を感じましたが、それは重荷でもありました。ソーニャは自分の十字架を渡し、一緒に苦しもうとしましたが、ラスコーリニコフは受け取りませんでした。

 そのときレベージャドニコフがソーニャを訪れ、カテリーナ・イワーノヴナが発狂したことを知らせました。彼女は「官吏を父に持つ上品な子供たちが物乞いをする」さまを見せつけるため、子供たちに踊りを教え、芸人の服をつけさせて長官の家の前で踊らせるなどと言っているようです。
 ソーニャは急いでカテリーナ・イワーノヴナのもとへ向かいました。

 ラスコーリニコフは家に戻り、自分がソーニャを苦しめるだけであったことを思い、一人になろうと考えました。
 ドゥーニャが部屋に入ってきました。彼女は、ラスコーリニコフが嫌疑をかけられて苦しんでいるとラズミーヒンから聞いていました。彼女はラスコーリニコフを優しくなだめ、母親のことも考えてほしいと頼みました。
 ラスコーリニコフはラズミーヒンはいい男だとドゥーニャに言いました。もう会わないことを示しているかのようなその言葉に、ドゥーニャは不安を覚えました。

 ラスコーリニコフは家を出て、あてもなくさまよいました。レベージャドニコフが彼に追いつき、カテリーナ・イワーノヴナが完全に発狂し、泣いている子供たちを人々の前で躍らせていると言います。
 ラスコーリニコフがカテリーナ・イワーノヴナのところへ行くと、狂女のようになり、幼い子供のポーレチカ、レーニャ、コーリャをどなりつけて踊らせようとし、群衆をののしり、身なりのいい人を見ると、自分たちがどうしてこのような事態になったのかをくどくどと説明しています。子供たちは怯え、ソーニャは泣きながら、家に戻るように母親に頼んでいました。レーニャとコーリャが逃げ出しました。カテリーナ・イワーノヴナがそれを追うと、血を吐いて倒れました。ソーニャの家に運び込むと、カテリーナ・イワーノヴナはソーニャに同情の言葉をかけ、そのまま死んでしまいました。

 見物人の中にはいつのまにかスヴィドリガイロフがいたようで、彼はラスコーリニコフに、ドゥーニャにやるつもりだった一万ルーブリを、孤児となった兄弟に与えると言いました。ポーレチカ、レーニャ、コーリャには、小綺麗な孤児院を見つけてやり、ソーニャもこの泥沼の生活から引き上げてやろうと言うのです。これらのことはラスコーリニコフにとっては不気味な提案でした。しかも、スヴィドリガイロフはソーニャの隣に潜んで、ラスコーリニコフとソーニャの会話をすべて聞いていたと言います。彼はその会話を聞いて、飽きれるほどにラスコーリニコフに興味を持ったと、にやにやと笑いながら言うのでした。

第六部

 ラスコーリニコフは意識がときどき薄れたようになって数日間を過ごしました。彼は恐らく自分が殺人を犯したことを知っているスヴィドリガイロフを恐れていました。カテリーナ・イワーノヴナが死んで二、三日の間、彼はソーニャの部屋で二度ほど会いましたが、スヴィドリガイロフは一、二分で立ち去り、核心をついた話をすることはありませんでした。

 ラスコーリニコフがソーニャの家に入ると、司祭が来ていました。供養の祈禱が始まると、ソーニャは一心に祈り、それが終わるとラスコーリニコフの肩に顔を埋めました。
 ラスコーリニコフはソーニャの手を握りしめると、そのまま出て行きました。彼は苦しみを感じ、孤独になりたがり、森や茂みで過ごすことが増えました。カテリーナ・イワーノヴナの葬儀のことは忘れており、参列できませんでしたが、むしろそれを彼は喜びました。

 ラズミーヒンが部屋に入ってきました。彼は怒っている様子で、ラスコーリニコフが母と妹を捨てたことを咎めました。母親は息子のことを心配して熱を出し、ソーニャのところへ行っているのだろうと言い出したので、ラズミーヒンはそちらへも行き、カテリーナ・イワーノヴナの葬儀が行われていたことを知りました。この状況で家にもおらず、女のところにもいないとなると、もはや狂人と思うしかありませんが、ラスコーリニコフを見ると狂人ではないのは明らかです。そのため、ラズミーヒンは彼が政治的な秘密結社に属しているのでは、と思いました。
 ラスコーリニコフは、ラズミーヒンに妹と母親のことを任せると言いました。
 ラズミーヒンは、アリョーナ・イワーノヴナ殺しの犯人として、ミコライが証拠を述べ、逮捕されたとラスコーリニコフに伝えました。彼はそれをポルフィーリイから聞いたようです。
 ポルフィーリイがミコライのことを疑うはずがないと考えていたラスコーリニコフは、ラズミーヒンにミコライを逮捕したと伝えたことも、自分に向けた策略だと考えました。
 ラスコーリニコフはスヴィドリガイロフも恐れていました。彼はポルフィーリイとスヴィドリガイロフを殺したいほどに憎み、そのどちらかと決着をつけようと家を出ました。そして入口のドアをあけると、当のポルフィーリイとばったり会いました。

 ポルフィーリイはミコライが逮捕されたことを受け、ラスコーリニコフに嫌疑をかけていたことを認め、詫びに来たのでした。
 彼は、ラスコーリニコフが病気で寝ていたときも、名乗らずに来て家を捜索しており、またラズミーヒンをけしかけて、ラスコーリニコフが犯人だという噂があることを吹聴したりして、罠にかかるのを待っていましたが、ミコライが来て答弁を始めたため、それが覆されたと言います。
 ところがその直後になって、ポルフィーリイは今までの発言とは矛盾したことを言い始めます。ミコライが狂信的な分離派に属していて、苦難を受けるために供述しているのではないかと彼は言い始めました。そのためその供述には曖昧なところがあり、ミコライが犯人ではないと言うのです。それでは誰が犯人なのかをラスコーリニコフが聞くと、ポルフィーリイは、あなたです、と答えました。ポルフィーリイは、第一にまだラスコーリニコフを逮捕する証拠がなく、第二にラスコーリニコフに心から好意を持っているので、釈明することを自分の義務と考え、第三に自首を勧めるために、まだ逮捕はしないと言います。今、自首をすれば、ラスコーリニコフに対する嫌疑はもともとなかったものとして処理するとも約束し、刑を受け、生活を立て直すように忠告しましたが、ラスコーリニコフは自白まで至りませんでした。

 ラスコーリニコフはスヴィドリガイロフのところへ行こうとしました。彼はスヴィドリガイロフのことを恐れていましたが、それと同時に何かの指針を与えてくれるような期待もしていました。一方、スヴィドリガイロフは、ラスコーリニコフが犯人であるという弱みを利用して、ドゥーニャに近づこうとしているのかもしれませんでした。その時はラスコーリニコフは、スヴィドリガイロフを殺そうと決意しました。
 ラスコーリニコフは居酒屋ばかりが入っている建物の二階を見ると、窓際にいるスヴィドリガイロフを見かけました。
 ラスコーリニコフは、もしスヴィドリガイロフが、もし自分の罪を種にドゥーニャを脅迫しようとしているなら、殺すつもりだと宣言しました。
 ラスコーリニコフは一体何のためにスヴィドリガイロフがペテルブルクに来たのかを聞きました。スヴィドリガイロフはこれまでの経緯を語り始めました。

 スヴィドリガイロフは、マルファ・ペトローヴナに借金を肩代わりしてもらい、その代わりに結婚してやりました。しかしマルファ・ペトローヴナはかなりの年上だったため、スヴィドリガイロフは遊蕩をすると宣言し、いくつかの条件のもと、それを了承させました。
 ドゥーニャは本能的にスヴィドリガイロフを嫌悪していましたが、マルファ・ペトローヴナに夫の遊蕩の話を打ち明けられ、スヴィドリガイロフに憐れみを持つようになり、彼を正しい道へと救ってやりたいと思うようになりました。スヴィドリガイロフは、ドゥーニャの前で、これまでの自分の行い反省するように見せかけて、今度はドゥーニャを褒めたたえる事で誘惑しようとしました。しかし、その試みは失敗し、ドゥーニャは再びスヴィドリガイロフに嫌悪を催すようになりました。スヴィドリガイロフの方はドゥーニャのことを狂うほどに好きになってしまい、マルファ・ペトローヴナが、ルージンとの結婚話を持ち出した時は、狂憤にかられました。
 しかし今では、今の借家を間借りしている婦人が、十六になる末娘を差し出そうとしているので、結婚するつもりだと言います。彼は年齢の差に情欲を感じる罪深い人間だったのです。

 二人は店を出て別れましたが、ラスコーリニコフはスヴィドリガイロフに何か怪しいところがあると考え、跡をつけることにしました。
 スヴィドリガイロフは、ラスコーリニコフについてこられるのを嫌がるようで、一晩外出すると言いました。ラスコーリニコフは、スヴィドリガイロフが馬車に乗り込むのを見て、嘘を言っているのではないと判断し、その場を去りましたが、スヴィドリガイロフはそこから百歩も行かない場所で御者に金を払って馬車を降りました。

 スヴィドリガイロフがドゥーニャを家に呼びました。彼は、事前にドゥーニャにラスコーリニコフの秘密を握っているという手紙を出しており、その秘密を話すと言っていたのです。ドゥーニャはひどく怯えていましたが、ラスコーリニコフの秘密を知るために、家に行くことにしました。
 スヴィドリガイロフはソーニャの家に壁を隔てた部屋へとドゥーニャを案内しました。そしてその部屋で、ラスコーリニコフがソーニャに懺悔していたことを盗み聞きしたとドゥーニャに言いました。スヴィドリガイロフは、ドゥーニャが一言でも頼んでくれれば、金と人脈を使ってラスコーリニコフをここから逃がし、自分とドゥーニャとプリヘーリヤ・アレクサンドロヴナにもパスポートを貰う約束をしました。それはつまり、四人でペテルブルクから逃げ、ドゥーニャがスヴィドリガイロフのものになることを意味していました。ドゥーニャは恐れ、部屋から逃げ出そうとしましたが、鍵がかけられていました。彼女は隠し持っていた拳銃を取り出しました。その拳銃はもともとスヴィドリガイロフのもので、マルファ・ペトローヴナが隠したていたものでした。ドゥーニャが発砲しましたが、弾は逸れました。スヴィドリガイロフは、ドゥーニャから二歩のところまで近づき、撃たれるのを待っていましたが、ドゥーニャは拳銃を捨ててしまいました。スヴィドリガイロフはドゥーニャの近くにより、片手を胴に廻しました。ドゥーニャは悲痛な様子で、帰してほしいと言いました。それに胸を打たれたスヴィドリガイロフが、自分のことを愛してくれないのかと聞くと、ドゥーニャは愛さないという意味で頭を振りました。絶望したスヴィドリガイロフは、ドゥーニャを外に出し、彼女が残した拳銃を手に取ると、部屋を出ました。

 スヴィドリガイロフは、居酒屋を飲み歩き、そのあとでソーニャの家に行きました。彼はソーニャに三千ルーブリの債券を渡し、それが入りようになるまでラズミーヒンに預けるように言いました。ソーニャはそれを断りましたが、いずれラスコーリニコフが収容された時に、ソーニャがついていくための金だと言ってその金を受け取らせました。その後、スヴィドリガイロフは許嫁の家に行き、一万五千ルーブリを渡し、重大な要件のためにペテルブルクを去らなければいけなくなったと言って彼女のもとを去りました。

 彼は郊外の宿屋に入りました。熱にうかされているようでした。先ほど手に入れるチャンスを逃したドゥーニャのことを思い出したながら眠りにつきましたが、悪夢にうなされて叫び、目を覚ましました。部屋を出ると、望楼のある大きな家の門の前にいる兵隊外套を着た男に話しかけられました。スヴィドリガイロフは男にアメリカに行くと言って、自分の右のこめかみに拳銃を当て、引鉄を引きました。

 同じ日の夕方、ラズミーヒンが世話をした母と妹のいるアパートに、ラスコーリニコフは入りました。彼は一晩中雨に打たれて、ぼろぼろになっていました。ドゥーニャは留守にしていて、プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナが彼を出迎えました。母親はラスコーリニコフの論文を読み、自分たちが彼の思想の邪魔をしていたことを詫びました。さらにラスコーリニコフが自分を愛してくれ、たまに家に寄ってくれるだけで十分だと言って涙を流します。ラスコーリニコフは母親に、何が起きても自分のことを愛してくれるかを聞き、自分はいつまでも母のことを愛し続けると言いました。二人は抱き合って泣きました。ラスコーリニコフは遠いところへ行くと言って、不安がる母親と別れました。

 家に帰るとドゥーニャがいました。ラスコーリニコフは、貧乏人から搾取していた老婆を殺したことを罪だと思ってはいないと語ります。しかし、この一件で、自分の小心な卑劣と無能さがはっきりとわかったので、恥辱を受けるために自首をすると言いました。ラスコーリニコフは母と妹を不幸にしたことを感じ、母親のそばにいてやるようにドゥーニャに頼みました。彼は、厚い本に挟んでおいた、婚約していた下宿の娘の肖像を取り出し、ドゥーニャに渡しました。

 薄暗くなって、ラスコーリニコフはソーニャの部屋に入りました。そこにはドゥーニャがいました。スヴィドリガイロフにソーニャのことを聞いてから、ドゥーニャはソーニャと親しい仲になっていました。ラスコーリニコフの行くところがどこであろうと、ソーニャはついていくだろうという確信がドゥーニャにはありました。二人はラスコーリニコフが自殺をしないかと気を揉んでいたため、ラスコーリニコフが入ってきたときは喜びました。ドゥーニャが出ていくと、ラスコーリニコフは自首するつもりだということを支離滅裂な言葉でソーニャに話しました。ソーニャは十字架を彼の首にかけてやりました。ソーニャが自分と一緒に行こうとしているのを見て、ラスコーリニコフは一人で行くと言って、別れの言葉もかけずに外に出ました。彼はソーニャのことを愛しているのか自問し、愛しているのではなく、何かにすがることが必要だっただけであり、ソーニャの涙を見る事だけが目的だったのだ考え、自分のことを卑怯者だと思いました。

 しかし、彼は人ごみに入ると、不意にソーニャの「十字路に行って、皆にお辞儀をして、大地に接吻し、世間の人々に私は人殺しですと言いなさい」という言葉を思い出し、その言葉に自分の肉体と意識を捉えられて、涙を流しながら地面に倒れました。彼は幸福感に満ち溢れて汚れた地面に接吻しました。

 署の方に歩き出すと、彼は木造のバラックに隠れるソーニャの姿を見ました。彼は、自分が運命によって導かれるところがどこへでも、ソーニャがついてきてくれることを悟り、胸が熱くなりました。

 ラスコーリニコフは署に入り、イリヤ・ペトローヴィチに会いました。イリヤ・ペトローヴィチは、ラスコーリニコフが青年文学者であることを知り、以前自分が怒鳴ってしまったことを詫びました。彼はスヴィドリガイロフが拳銃自殺をしたことをラスコーリニコフに伝えました。それを聞いたラスコーリニコフは衝撃を受け、部屋を出ました。階段を降りて庭へ出ると、絶望の表情を浮かべたソーニャが彼を見ていました。ラスコーリニコフはしばらく立っていましたが、自嘲の笑いを残すと再び警察署に入り、イリヤ・ペトローヴィチに向かって、アリョーナ・イワーノヴナとリザヴェータを殺したのは自分だという自供を始めました。

エピローグ

 ラスコーリニコフは、細かい点まで自供し、犯行が証明されました。彼は生活の苦しさから老婆を殺して金を奪ったと供述しましたが、自分で盗んだ品をよく覚えておらず、財布を一度も開けずに隠していました。このことは審査の争点となり、結局、一時的な精神錯乱により犯行が行われたという結論になりました。それに加え、ラスコーリニコフが大学在学時に多くの善行を行っていたことが明らかになり、わずか八年の刑期となりました。

 プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナは、息子が殺人を犯したことを知らされませんでしたが、裁判の始めの頃に病気になりました。ドゥーニャやラズミーヒンにより、ラスコーリニコフはやがて富と名声をもたらす仕事を遠方で行うことになったと聞かされてからは、息子のことを何一つ聞こうとはしなくなりましたが、そのうちに頭がおかしくなっていきました。

 自首してから五ヶ月後にラスコーリニコフがシベリアに行くことになりました。その時にドゥーニャとラズミーヒンは、この三、四年の間に資金を貯めて、自分たちもシベリアに行くことを誓って結婚しました。

 母はますます憂鬱になり、不安は頂点に達し、ある日息子が間もなく戻るはずだと言いだし、部屋の飾り付けをして待ちましたが、その翌日からひどい熱を出し、その三週間後に死んでしまいました。うわ言により、彼女が息子のおそろしい運命を察知していたことがわかりました。

 ソーニャは、スヴィドリガイロフが残した金で囚人の護送班についてシベリアへ行き、町にいる人々に助けられて仕立ての仕事で生計を立てていました。ラズミーヒンとドゥーニャはソーニャと連絡を取り合っていましたが、シベリアから送られてくる手紙によると、ラスコーリニコフはいつも気難しく、母親の死を聞いても応えない様子を見せたようです。彼の生活は酷いものでしたが、ソーニャが訪れると始めのうちは苛々する様子さえ見せました。しかし面会が習慣になると、ソーニャが来ないと寂しがるようになっていきました。彼は皆を避けるので、囚人たちから嫌われ、黙り込むようになり、重い病気にかかりました。

ラスコーリニコフは長い間病院に収容されました。彼は自分の罪に悔恨を認めませんでしたが、自分が判決に身を屈しなければならないということに自尊心をくじかれたのが原因で、病臥に伏したのでした。自分の力で権力を握った選ばれた人々は、その第一歩においては、ラスコーリニコフと同じように処刑されるはずのことを行なっていました。しかし彼らはそれに堪えることができたので、偉大な事業を成し遂げたのです。しかしラスコーリニコフ自身はそれに堪えることができずに自首してしまいました。彼はそれこそが自分の罪だと思っていました。彼はこの信念の中に心の奥では虚偽を感じていたため、自殺を踏みとどまりましたが、自分ではそのことにまだ気づかず、自殺できなかったのが自分の非力のせいだと思いました。監獄の中では他の囚人たちを軽蔑し、それが火種の元になりそうになることもありました。
 ソーニャは許可をもらうのが難しく、あまり見舞いには来れませんでした。ラスコーリニコフは、自分がソーニャを待っていることに気づきました。ラスコーリニコフが退院するとソーニャが病気になりました。ラスコーリニコフはひどく心配しました。

 ある温かい日の早朝、ラスコーリニコフが河岸の作業場へ出かけると、ソーニャがそこを訪れました。彼女は病気は治っていましたが、まだやつれていました。彼女はラスコーリニコフに微笑み、手を差し出しました。いつもならラスコーリニコフは嫌そうにその手を取るか、手を出さないこともありました。しかし今は二人の手は解けませんでした。ラスコーリニコフは泣きながら彼女の膝を抱きしめました。ソーニャは驚きましたが、彼が自分を限りなく愛していることを悟り、計り知れない幸福に包まれました。二人は何も言いませんでしたが、新しい生活へ向けての更生を決意しました。ラスコーリニコフは、今は自分がどれほどの愛で彼女に与えた苦しみを償おうとしているかを知っていました。その夜、彼はソーニャが持ってきた福音書を手に取り、彼女の信念が自分の信念であることを感じました。

 ソーニャは幸福のあまり熱をぶり返しました。そのうちに、ラスコーリニコフは自分たちの新しい生活が無償で得られるものではなく、残り七年にわたる献身的行為によって、価値あるものになることに気づきました。

罪と罰 (まんが学術文庫)