フローベール『ボヴァリー夫人』の詳しい登場人物紹介

フローベール作『ボヴァリー夫人』の登場人物を詳しく紹介するページです。ネタバレ内容を含みます。


ボヴァリー夫人 (河出文庫)

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※『ボヴァリー夫人』の詳しいあらすじはこちら

主な登場人物

エマ・ボヴァリー
茶褐色の美しい瞳を持つ。十三歳の時から父親によってユルシュール派修道院の塾に入り、立派な教育を受けていた。母の死を経験するも、それほど心を痛めることはなく、小説を読んだり音楽を聞くことで、まだ見ぬ恋に想いを馳せる生活を送る。そのうちに修道院の規律にいら立ちを感じるようになり、その教育から逃れようとする。
父親の元へと連れ戻されると、世の中に幻滅している人間のつもりになっていたが、父親の骨折を診察する医者としてシャルルを知ると、自分が恋をしているのだという錯覚に陥る。しかしシャルルとの新しい結婚生活が始まると、本で読んだような陶酔が訪れることがなく、結婚の選択を誤ったのだと思い始める。
夫と共にダンデルヴィリエ侯爵の舞踏会に招かれ、そこである子爵と夜通し踊り、それ以来その子爵がいるパリに想いを馳せ、流行を追うようになる。しかし再び舞踏会に招待されることがないとわかると、無気力な状態になり、夫に引っ越しを決意させる。
ヨンヴィルに着くと間もなくベルトを産む。レオンと文学について語り合い親交を深めると、次第に恋心を抱くようになるが、敢えて貞淑な女を装ううちに孤独を深める。張り合いのない恋に疲れたレオンが旅立ちを決意すると、悲しみに浸り、たまにヒステリックな発作を起こしてシャルルを心配させる。
その後自分の農場の男を診察させにやってきたロドルフと知り合い、誘惑されて関係を結び、お互いの家で逢瀬を重ねる生活を始める。一度はシャルルを再び愛すように努めるも、イポリットの手術に失敗したことで幻滅し、不倫の恋にのめりこんでいく。
イポリットの義足を注文したことをきっかけに、ルウルーの訪問を頻繁に受け、そのたびに婦人用の珍しい品を買い、膨大な借金を抱える。
シャルルの母親との言い争いにより、ロドルフとの駆け落ちを決心すると、一度は大人しくなるが、駆け落ちを嫌がったロドルフが逃亡すると混乱して気を失い、脳炎となる。
病に伏せている間にブールニジアンから聖体拝領を受けたことがきっかけとなり、信仰にすがり、極端な慈善活動を行い、ベルトを乳母から呼び戻すが、そのうちにいっさいのことに無関心となる。
そのような状態を心配したオメーによって勧められた芝居をルーアンへと見に行き、三年ぶりにレオンと偶然再会する。自分への情熱を示してくるレオンに対し、一度は貞節を守ろうとする振りをするが、間もなく体を許すと、ピアノ教師によるレッスン料の受領書を偽造し、毎週木曜日にホテルで密会を行う。それと共にルウルーを頻繁に呼ぶようになり、借金が膨らんでいく。
レオンがオメーとの付き合いを優先し、自分と会わなかったことをきっかけに、情熱を冷ましていくが、別れる勇気を持つことができず、却って貪婪になり、欲望の虜となってまだ見ぬ男との逢引きを思い浮かべるようになる。
ある程度まで借金が膨らむと、ルウルーが手形を譲渡した銀行業者によって取り立てられ、土地を売り払い、シャルルの患者に請求書を書き、ひどい駆け引きをして家の品を売り払い、誰彼かまわず借金をして金を作る。
それでも借金を返しきることができず、差し押さえの手紙を受け取ったため、シャルルに知られないように外出させ、知っている金貸し業者を片端から訪ね歩き、レオンには事務所で不正を働いて金を作る様に強要する。しかし結局十分な金を作ることができず、残っていた五フランを全て瘰癧(るいれき)の盲人の乞食に与える。
その後、村の公証人ギヨーマンに相談するも、体を求められて逃げ出し、ビネに言い寄って逃げられ、ロドルフには体を売るつもりで家を訪れるが、金の工面を断られる。
半狂乱になってオメーの薬品倉庫の砒素を食べ、シャルルに手紙を残してベッドに横たわる。
体に毒が廻ると、カニヴェ医師やラリヴィエール博士の看病むなしく回復を望むことができない状況になり、いったんはブールニジアンの差し出したキリスト像と塗油によって安らかな顔になるが、オメーの薬を求めてやってきた乞食の歌声を聴き、その醜悪な顔が地獄の永遠の闇に立っているかのような気がして、絶望的に笑い、痙攣して息絶える。

シャルル・ボヴァリー
司祭の教育を経て、十五歳の頃にルーアンの学校に入る。おどおどした性格であったが真面目に勉強し、医学の道へ進み、母親の手引きによってトストで開業し、執達吏の未亡人エロイーズと結婚する。結婚後はエロイーズと母親に小言を言われ、生活を支配される。
裕福な百姓ルオーの骨折を診たことがきっかけで、その娘のエマを知ることとなり、心を惹かれる。エロイーズの嫉妬にあい、一度はエマに会うことを諦めるが、エロイーズの死後再び会うようになり、結婚を申し込む。
自身はエマとの生活を幸福に感じており、妻も幸福だと思い込んでいたが、その愚鈍な性格や野心のなさが結婚直後からエマから疎んじられることとなる。
ダンデルヴィリエ侯爵の舞踏会では、ルールのわからないホイストを五時間も立ったまま見続ける。舞踏会の後、エマが無気力な状態になると、場所を変えるためにヨンヴィルへと引っ越して開業する。
ヨンヴィルでは、薬剤師のオメーと親交を深めながら、エマと新しい娘ベルトを養う生活を始める。レオンとエマがプラトニックな愛を育んでいたことや、ロドルフがエマに近づこうとしていることに気づかず、エマとロドルフが逢引きをするために使う馬を購入する。
オメーによって足の歪曲を治す手術を取り入れるように勧められ、イポリットに施術を行うが、失敗し、以降義足となったイポリットが通りかかるたびに道をわきによけるようになる。
ロドルフとの恋愛によって変わっていったエマが、自分の母親と対立することに手を焼くが、その後エマが駆け落ちを決心して女としての美しさを取り戻すと、すっかり満足し、将来の娘の姿を重ね合わせて楽しみに耽る。
エマがロドルフとの恋に敗れ、脳炎で倒れると、自分の患者を診ずに必死の看病を行い、回復させる。
オメーの勧めによって出かけた芝居見物でレオンと再会し、途中退席した芝居の続きを一人残って見てもよいという許可をエマに与え、レオンとエマが関係を持つきっかけを与える。エマがレオンとの恋愛に疲れて苛々しているのを見ても、神経症のせいだと思い、深く干渉するのをやめる。
エマの借金にも全く気付くことはなかったが、差し押さえに会うと、あらゆる方面にエマを探しに行き、砒素を飲んで家に戻っていたエマからの手紙を読む。エマの体に毒がまわり、苦しみ始めると、混乱しながらカニヴェ医師とラリヴィエール博士に手紙を書き、ジュスタンとイポリットを走らせる。
エマが死ぬと、その上に自分の身を投げかけて泣き、妻を自分のそばに置いておきたいと言って、葬式を一度拒否し、ブールニジアンに説得される。
弔問でブールニジアンが神の偉大さを説くと、大声で神を罵倒する。過去のエマを思い出し、不気味な好奇心に駆られてヴェールをはがし、恐ろしくなって叫び声をあげる。その後部屋に引きこもり、エマの髪をオメーに切ってもらう。
葬儀では、自分も墓に埋まろうと穴へ這い寄り、参列者によって連れ帰られる。
請求を再開したルウルーに、妻のものを売り払わないまま支払いを約束するが、エマが好きだったものを買い、エマが喜ぶような服装を着て過ごし、借金が払えなくなる。
オメーと共にエマの墓石を購入し、「この下にあるはいとしわが妻」という碑文を作らせる。
借金が払えなくなると、母に泣きついて財産を抵当に出してもらい、ベルトも預ける予定であったが、母が欲しがったエマの肩掛けを譲らず、ベルトを譲ることも当日になって拒否したため、親子喧嘩となって完全に仲違いをし、それ以来ベルトを可愛がることに執着する。
ロドルフからエマへの手紙を見つけ、始めは二人の仲がプラトニックなものと信じていたが、ある日エマが使っていた紫檀机の扉を空け、レオンやロドルフの全ての手紙を見つけ、一切を知る。それ以来みすぼらしい狂人のようになり、外出せず、客にも会わず、診察も断り、歩きながら声を上げて泣いている姿が目撃されるようになる。
最後の金策で馬を売りに行ったところで偶然ロドルフに出会い、誘われるがまま食事をする。ロドルフへの怒りの表情を一度表すものの、すぐに悲し気な表情に戻り、「あなたを恨んではいません。」「運命の罪です」と話す。その翌日、ベンチに腰掛けて死んでいるところをベルトに発見される。カニヴェによって解剖されたが、死因となるものは見つからなかった。

レオン・デュピュイ
金髪の青年。もともと公証人ギョーマンの事務所の書記で、オメーの家の二階に下宿していた。ビネに次ぐ「金獅子」の常連で、法律の勉強にパリに行く予定であった。水彩画を描き、楽譜が読め、文学に没頭する教養ある青年。もともと女性相手に文学について語り合ったことがなかったが、初めて会ったエマに対しては饒舌に話すことのできる自分に驚く。
里子に出している娘に会いに行くエマにばったりと出会い、同行したことで、エマのことを愛していることを自覚する。
それ以来エマの家を頻繁に訪ね、シャルルが寝静まった後でエマと語り合い、流行りのサボテンを送って距離を近づけていく。しかしエマが家事に専念する貞淑な女として自分を偽っていたため、張り合いのない恋に疲れ、自分の想いを伝えることなく、握手を交わしただけでパリへと旅立っていく。
その後、ノルマンディーで扱う仕事に慣れるため、二年ほど滞在する予定でルーアンに住み着き、大きな法律事務所で勉強を始める。ロドルフとの恋に破れたエマと三年ぶりに劇場で偶然再会すると、昔の情熱を取り戻し、以前から愛していたことを告げる。
その後エマと不倫関係を結ぶが、仕事中に呼び出されたり、一人の時に何をしていたのかを報告させられたりと、エマの言いなりのような生活を送るようになる。
そのうちに自分を質屋に出入りさせるエマに飽き始め、家庭を持つ女のために息子が身を持ち崩しかけているという匿名の手紙が母親に届いたことも手伝い、手を切ることを決意する。
差し押さえにあったエマに、事務所で不正を働いて金を作るようにと言われ、それ以来一切の連絡を絶つ。
エマの死をしばらくは知らされず、他の娘と結婚する。

ロドルフ・ブーランジュ
ヨンヴィル近くのラ・ユシェットに所有地と屋敷を買い込み、耕作を行っていた裕福で女の経験が豊富な男。三十四歳の頃、農場の男を瀉血させるためにシャルルを訪れエマを知る。その美貌に惹かれ、彼女が退屈な夫に飽き飽きしていることを見抜き、自分のものにすることを決めると、豊富な女性経験を生かし、農業共進会でエマと近づく。
気持ちを焦らすために六週間経ってから再びエマを訪れ、シャルルの前でエマに乗馬を勧める。シャルルが喜んでそれに賛同したため、エマを乗馬に連れ出して森の中で誘惑し、その翌日、小屋の中で愛を誓いあう。
しばらくはエマを自宅に招き、逢引きを行っていたが、そのうちに度々やってくるエマの不用心に苦言を呈するようになる。シャルルの母親と揉めたエマから駆け落ちを持ち出されて同意するが、国を飛び出して子供の面倒を見ながら生活することなどできないと考え、別れの手紙を書いてルーアンへと逃亡する。
その後不倫関係に陥ったエマとレオンが二人で乗った屋形船の船頭により、陽気にはしゃいでいた客として伝えられる。
借金で首が回らなくなり、体を売る覚悟で自宅を訪ねてきたエマに一時愛情を取り戻すが、金のことを切り出されると、その愛情を一気に冷まし、金はないと言い放つ。
エマの死を知ると、慰みに森を狩り歩く。
その後、馬を売りに出かけていたシャルルと偶然出会って青くなるが、すぐに大胆な厚かましさを取り戻し、シャルルを飲みに誘う。「あなたを恨んではいません。」「運命の罪です」と言うシャルルの言葉を卑屈に感じる。

オメー
ヨンヴィルの薬剤師。免許がないのに医業を行なって密告され取り調べを受けたことがあり、最近になって再び始めた診察を密告されないようにするため、新しくやってきたシャルルとエマに親切に接する。いつも夕食の時にやって来て、新聞のネタを逐一話す。自身も新聞に寄稿している。
足の歪みの治療に関する記事を読み、シャルルにその手術を取り入れるように勧め、イポリットにその最初の手術を受けさせる。
反宗教主義者で、農業共進会に僧侶の出席がなかったことを批判する記事を書き、ロドルフに捨てられて宗教に専心しようとするエマに芝居を勧め、司祭としての立場上芝居に反対するブールニジアンと対立する。
エマとの不倫関係にあるレオンを、無理やりルーアンでの昼食に誘い、これがエマとレオンの争いの原因となる。
エマの臨終の際には、エマが砒素と砂糖を間違えたという嘘をヨンヴィル中の人に話し、死の真相をくらます。以前自分の調合した薬で瘰癧を治してやると約束した乞食が自分を訪れると、冷たくあしらって出直すようにと言う。
反宗教主義ではあったが、死者には敬意を払って通夜に参加し、弔問では、ブールニジアンと議論を交わしながら眠り込む。また、シャルルの要望により、エマの髪の毛をひと房切り取る。
約束を反故にされた盲人の乞食が、自分の薬は効かないと吹聴を始めたため、新聞に盲人が居合わせたために起こった事件をでっち上げ、盲人を拘留させる。これをきっかけにして反宗教主義者として過激で危険な人物となり、様々な著作を残し、事業にのめり込む。
その後は野心に苦しめられ、コレラの予防に献身的奉仕し、公益に寄与する著作を自費出版し、権力者に接近し、勲章を欲しがる。
シャルルの死後、ヨンヴィルで開業した医師を不成功に導き、多くの顧客を持ち、世論にも味方され、レジオン・ドヌール勲章を貰う。

ルウルー
服地屋。商人。エマとシャルルがヨンヴィルに最初にやって来た馬車に同乗していた。ガスコーニュ生まれで、フランス南部人特有の抜け目のなさを持っており、ヨンヴィル中の商売を一手に引き受ける目論みを抱いている。ヨンヴィルにある「カフェ・フランセー」の経営者テリエに、借金の証文を突き付けて店を潰し、共進会では、商売のためにエマとロドルフにつきまとう。
イポリットの義足の注文を受けたことがきっかけとなり、エマのもとに頻繁に出入りし、婦人物の珍しい品を売りつけ、エマがロドルフとの駆け落ちに使おうとした旅行鞄やマントの請求をシャルルにしつこく請求する。
エマが病気から回復し、レオンと関係を持ったことを嗅ぎつけると、以前エマが注文した旅行トランクについて、手形を誰かに譲った方がよいとシャルルに勧め、その相談相手としてレオンが適任であると考えさせ、エマがレオンと会うための片棒を担ぐ。
エマの借金がある程度まで膨らむと、自分の村内での評判を落とさないために、友人の銀行業者ヴァンサールに手形を譲渡して借金を取り立ててもらう。エマがどうにかしてほしいと懇願すると、売った土地の残金が手に入り次第払うという約束を取り付け、さらにその場でレースを後払いで売りつける。その後、エマが借金を返済する気配を見せないと、ヴァンサールの名を借りてエマを相手に訴訟を起こし、家を差し押さえる。
エマの葬儀には参加するが、そのうちにシャルルへ支払い請求を再開し、手形の書き換えも拒否する。結末では乗合馬車屋を始める。

シャルルとエマの生い立ちに関連する人物

シャルル・ドニ・バルトロメ・ボヴァリー
シャルルの父。退職した旧軍医補。美男子で快活であった。結婚後二、三年は妻の財産で暮らし、放蕩を繰り返した。妻の父が何も残さなかったので、製造業や経営を行って失敗し、ある村に家を借りて四十五歳の頃には世間と縁を断つ。
シャルルとエマの結婚式では、田舎娘のご機嫌をとって過ごす。
シャルルがヨンヴィルに引っ越すと、ひと月ほど滞在する。
エマがレオンと再会した頃に五十八歳で脳溢血で死ぬ。

シャルルの母
メリヤス雑貨商の娘。多大な持参金をもってシャルルの父と結婚する。
シャルルが生まれると一度里子に出すも、甘やかして偏愛し、司祭に教育を受けさせ、ルーアンの学校に通わせ、医学の大学に入れ、トストで開業させる。さらに、妻エロイーズを見つけてやり、その妻と一緒になってシャルルに小言や意見を言って過ごす。エロイーズが財産がないことを隠していたことを知ると、口論となり、エロイーズが倒れる原因となる。
シャルルとエマの結婚式では、式についての相談を一言も受けなかったため、早くから部屋に引っ込む。息子が前妻の時と比べ、自分の方を愛していないことが気に入らず、始めからエマには好意を持っていなかった。
シャルルがヨンヴィルに引っ越すと、ひと月ほど滞在し、自分の夫がエマを口説かないかを心配する。
レオンとエマのプラトニックな恋愛が終わり、エマがヒステリックになることが増えると、宗教をおろそかにしていることが原因だと判断し、小説を読ませないようにすることをシャルルに提言する。
ロドルフとの不倫の末に態度を一変させたエマが読書をやめないことや、フェリシテが男と会っていることに対して小言を言い、エマと言い争いになるが、ロドルフと別れたエマが大人しくなると、息子夫婦の家に居心地の良さを感じるようになり、長逗留する。
エマの死を知ると、葬儀にやってきて、息子の元を離れまいと決心するが、妻の物を売り払わないまま借金を払おうとするシャルルに腹を立てて家を出ていく。
借金で首が回らなくなったシャルルに泣きつかれると、自分の財産を抵当に出し、ベルトを預かることになったが、シャルルがエマの肩掛けを自分に譲らず、ベルトを譲ることを直前になって拒否したため、親子喧嘩となり、完全に仲違いをする。
シャルルの死後、ベルトを引き取るが、その翌年に死ぬ。

エロイーズ
シャルルの最初の妻。四十五歳の執達吏の未亡人。結婚するとシャルルを愛しながらも支配し、シャルルがエマの家に出入りするようになると嫉妬する。自分の財産管理をしている男が金を盗って逃げたことがきっかけで、財産がないことを隠していた事が露呈し、シャルルの両親と口論になり、これが原因で倒れ、命を落とす。

ナスタジー
シャルルの最初の患者であり、トストの古馴染であった女中。エロイーズが死んだときに相手をしてやったシャルルには気に入られていたが、舞踏会帰りのボヴァリー夫妻に夕食を準備していなかったため、エマから暇を言い渡される。

ルオー
エマの父。妻と息子を失っている。ベルトーの裕福な百姓。足の骨折を診てもらったことによりシャルルを知り、治療費を支払う際にエロイーズを失ったシャルルを慰め、自分の家に出入りするように勧める。シャルルからのエマを嫁に欲しいという相談を受けいれ、エマの結婚後は一人で生活する。
結婚後、まだ見ぬ孫に会うのを楽しみにしているという手紙をエマに送り、ロドルフとの不倫に苦しむエマに若く楽しかった頃を回顧させる。
エマの死後三十六時間が経ってオメーから報せを受け、ヨンヴィルに到着すると卒倒し、気が付くとシャルルの腕の中で泣き崩れる。葬式後、会うと余計に悲しくなると言って、ベルトに会うのをやめて家に帰って行く。
シャルルの死後も中気(脳卒中)を患っていたため、ベルトを預かることはできなかった。

ダンデルヴィリエ侯爵の舞踏会の登場人物

ダンデルヴィリエ侯爵
王政復古の頃に国務大臣を務めたことがあり、政界に乗り出そうとしている。シャルルにより口のできものの切開を受けた。その手術料を支払うためによこした家臣により、シャルルの家の庭に見事な桜桃がなっていることを知り、刺し木を分けてくれと頼む。その礼に来たときに、エマの美しさに目を止め、シャルルを舞踏会に招く。

ダンデルヴィリエ侯爵夫人
四十歳くらいの、かぎ鼻でのっそりした声の女性。

ラヴェルディエール老公爵
ダンデルヴィリエ侯爵の義父。飛び出した目をしている。マリー・アントワネットの恋人と噂されたこともある。

子爵
ダンデルヴィリエ侯爵の舞踏会でエマと踊り、エマの心に忘れられない記憶として残される。
終盤では、馬車に乗っているところを、差し押さえで悲嘆に暮れているエマとすれ違う(エマがすれ違ったように思っただけで、その真偽は不明)。

ヨンヴィル・ラベーの登場人物

フェリシテ
ナスタジーの代わりに、エマとシャルルが十四歳で雇い入れた女中。おっとりした孤児で、エマがレオンに恋し始めたころに泣いているのを見て、なぜそれをシャルルに相談しないのか疑問に思う。
エマがロドルフのために衣類に金を使うようになると、洗濯にかかりきりになり、エマの借金が膨らむと、金を貸すようになる。
差し押さえの手紙をエマに渡し、調書作成の日にはシャルルが帰ってこないように見張りに立たされる。
ギヨーマンの下男テオドールと通じており、エマが差し押さえに会うと、ギヨーマンに相談するよう勧める。
葬儀では、エマのことを気の毒がって泣く。その後はエマの服を着るようになり、テオドールにそそのかされて駆け落ちし、衣装戸棚に残っていたものを盗んで姿を消す。

オメー夫人
三十歳の、善良だが退屈で容姿に品がないノルマンディー女。

オメーの子供たち
ナポレオン、アタリー、イルマ、フランクリンの四人。物語の終盤で、ナポレオンは薬局で手伝いを行い、アタリーは父親のトルコ帽に縫取りを施し、イルマはジャムの鉢にかぶせるまるい紙を切り、フランクリンは九九を暗記する。

ルフランソワ
ヨンヴィルの旅館「金獅子」のおかみ。農業共進会では準備の忙しさに苛立つ。足の壊疽を起こしたイポリットに懸命な看病を行い、この原因をつくったオメーを非難する。
エマに先立たれ傷心のシャルルの訪問を度々受けるが、ルウルーが乗合馬車屋を始め、これまで使っていた馭者イヴェールが給料を上げるように言ってきたため、上の空でしかシャルルの話を聞かなかった。

アルテミーズ
「金獅子」の使用人。

ビネ
税吏。頰髯をきれいに揃え、目が小さくまがりっ鼻。カルタ遊びや狩猟が得意。ろくろを持ち、ナプキンリングをつくる芸術家。かつてナポレオン戦争に参加し、レジオン・ドヌール勲章をもらいかけた男。瓶の栓抜きの名人。「金獅子」の一番の常連で、いつも六時にやってきて、あいさつもせず、黙り込んでいる。樽の中に隠れて、禁止されている猟を行っている時に、ロドルフとの逢引きから帰るエマと遭遇する。
破産したエマに助けを求められるが、色目を使われて後ずさりする。エマの葬儀には参加しなかった。

イヴェール
ヨンヴィルの御者。馬車「つばめ」を運転する。終盤ではルウルーが乗合馬車屋を始め、商売敵になったため、ルフランソワに給料を上げるように要求する。

テュヴァッシュ
ヨンヴィルの村長。金持ちで気難しい二人の息子を持つ。エマの葬儀には参加したものの、すぐに辞した。

テュヴァッシュ夫人
差し押さえにあったエマがビネに色目を使って金を工面しようとするのを、ビネの隣家に住むカロン夫人の家に忍び込んで盗み聞きしようとする。

ジュスタン
オメーの遠縁で、薬局の見習い。ロドルフが連れてきた農場の男の瀉血を見て気絶し、シャルルの手を煩わせる。いつも六歳年上のフェリシテのところへ遊びに来てうろうろしている。
オメーに頼まれた鍋を取りに行くのが面倒で、薬品倉庫の砒素の隣にある鍋を取ろうとして叱られる。
エマに無言の好意を抱くようになり、召使にしてほしいと頼む。
差し押さえにあって半狂乱のようになったエマに、薬倉庫の鍵を持ってくるように命令され、その中にあった砒素をエマが食べ始めると、止めようとする。エマが苦しみ始めると、カニヴェ先生とラリヴィエール博士を呼びに遣られる。
エマの葬儀では、青ざめて店に引っ込み、夜中にモミ林の墓穴の上で跪いて泣いているのをレスチブードワに見られ、塀をよじ登って逃げ出す。
その後、ルーアンに逃げて、雑貨屋の小僧になる。

ベルト
シャルルとエマの娘。幼い頃は、エマからの気まぐれな愛情しか受けることができず、乳母のロレーと自宅との間を往復する生活を送る。エマの面影を持っていたため、シャルルからは溺愛される。
エマの葬儀の後、母親に会いたがるが、そのうちに忘れていき、シャルルに溺愛されながら育つ。
夕食に呼んだシャルルがベンチに腰かけながら死んでいるのを発見し、その後は祖母に引き取られ、祖母の死後は貧乏な叔母の一人に引き取られ、綿糸工場へと働きに出される。

ロレー
ベルトの乳母。エマが死ぬと、手紙つかいの駄賃をシャルルに請求する。

ギヨーマン
公証人。事務所でレオンを書記として使っていた。仕事に余念なく、イギリス紳士を気取っているが、知的なことは何もわからない。テオドールを下男として使っている。エマと交渉を持つことはなかったが、破産した経緯を知っており、エマが訪ねてきて助けを求めると、その見返りとして身体を要求し、逃げられる。

テリエ
カフェ・フランセーの主人で、シャルルが診察を行なっていた。ルウルーにしていた借金が膨らみ、その証文をつきつけられたため店を潰された。
その後店を売り払い、小さな乾物屋を買い受けたが、持病のカタルで死にかける。

レスチブードワ
教会堂の鐘つき。自分の儲け仕事を半端にしないために、教会堂の勤めの方は気ままにし、お告げの鐘を自分の都合で早く鳴らす。
エマの葬儀では墓穴を彫り、忘れていた鋤を取りに来た時に逃げ出したジュスタンを見かけ、自分のジャガイモを盗むのが彼であるという検討をつける。

ブールニジアン
さばけていて好人物の司祭。
レオンとのプラトニックな恋の苦しみから逃れようと訪れてきたエマの悩みの本質に気づかず、的外れな忠告をする。シャルルの手術によって足が壊疽してしまったイポリットには信心が足りないと説教する。ロドルフと別れ、病に伏したエマの家を頻繁に訪れ、聖体拝領を行う。
立場上芝居を悪いものとしてみなさなければならず、エマに芝居を勧める反宗教主義者のオメーと対立する。
エマの臨終の際には、キリスト像を渡し、塗油を施し、その死後、妻を自分の手元に置いておきたいシャルルに、式を執り行うように説得する。葬式では、俗世の儚さと、神の偉大さを説き、シャルルに罵られる。弔問では、反宗教主義者のオメーと議論を交わしながら眠り込む。
その後、何度かシャルルを訪ねるが、やがて見限って来なくなる。

イポリット・トータン
金獅子の馬丁。足が不自由であったため、シャルルの手術の最初の患者になることをオメーらに勧められる。エマが手術代を無料にすると言ったため、その手術を受ける事に同意するが、シャルルが誤ったため、足が壊疽を起こし、カニヴェ先生によって足を切断される。
その後エマとシャルルによって高価な義足を送られるも、立派な義足を普段使うのはもったいないと言い、夫婦はもう一つ安価なものを買うはめになる。その後、いつものような仕事に復帰する。
エマが砒素を飲んで死にかけると、シャルルの命でカニヴェ先生とラリヴィエール博士を呼びに遣られる。

テオドール
ギヨーマンの召使。エマの葬儀では、黒服を用意せず青服で参加する。その後、以前から色目を使っていたフェリシテをそそのかし、駆け落ちする。

農業共進会の登場人物

ドロズレー・ド・ラ・パンヴィル
共進会の審査委員長。リュヴァンの後に演説を行う。

リュヴァン
参事官。共進会で農民を奮い立たせる演説を行う。

カトリーヌ
五十四年間勤続で農業共進会で表彰され、銀牌、二十五フランを手に入れる。

その他の登場人物

ヴァンサール
ルウルーの友人の銀行業者。村内で不利益な噂を流されたくないルウルーに自分の名前を貸し、エマの借金に対して訴訟を起こす。

カニヴェ
イポリットの足が壊疽を起こしたときにヌーシャテルから呼び出された五十歳ほどの有名な医学博士。手術を勧めたオメーらの人々を罵倒し、イポリットの足の切断を行う。
エマが砒素を飲んで倒れると、シャルルからの手紙を読んで駆け付けて吐剤を与え、ラリヴィエール博士に怒られて大人しくなる。
ベンチに腰かけたまま死んでいたシャルルを解剖するが、死因となるものは見つけられなかった。

アラン
エマの差し押さえ調書作成に訪れた執達吏。

ラリヴィエール博士
偉大な外科学派に属している。四十年にわたる勤勉な努力と、鋭い知性によって、親しみやすい威厳を備え、多くの弟子に敬愛されている。エマが砒素を飲むと、シャルルに呼び出され、診察を行う。

盲人の乞食
白痴で瘰癧を持っている。馬車に乗り込もうとするオメー氏に話しかけ、瘰癧の薬を与えることを約束される。エマの臨終の際に、その消炎軟膏をあてにして、人々にオメーの家を聞き、歌いながらやってくる。忙しくしていたオメーに冷たくあしらわれると、自分の住処に帰り、オメーの薬は効かないと吹聴を始める。しかしそのためにオメーによって近所で起きた事件の罪を着せられ、拘留後、貧民救済所に終身監禁される。

ランプルール
ルーアンのピアノ教師。一度もレッスンを施したことのないエマと結託し、授業を行った受領書を作ってシャルルを騙すことに協力するが、エマの死後、その領収書を持って六か月分の授業料を請求する。

ヴォーフリラール
シャルルとオメーがエマの墓石を注文した画家。