ジェーン・オースティン『高慢と偏見』のあらすじ

 ジェーン・オースティン作『高慢と偏見』(または『自負と偏見』、Pride and Prejudice)のあらすじです。

『高慢と偏見』の登場人物はこちら

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※ネタバレです。

ジェーンとエリザベスのネザーフィールド滞在

 ロングボーンにあるベネット家の近所のネザーフィールドに、イングランド北部の金持ちの青年であるビングリーという独身の青年が引っ越してきました。
 ベネット夫人は、五人の娘のうちの誰かが、ビングリーと結婚することになるかもしれないと期待しました。
 ベネット氏がビングリーに挨拶に行き、姉妹は彼の参加する舞踏会へと招待されました。
 舞踏会でビングリーは、快活で愛想よく振る舞い、たちまち人気者になります。彼はベネット家の長女であるジェーンに好意を寄せ、ジェーンもまたビングリーに惹かれます。
 舞踏会には、ダーシーという男がビングリーに連れられて来ていました。ダーシーはビングリーの親友で、共にネザーフィールドに滞在しています。容姿が良く、金持ちでしたが、高慢で不愉快な態度を取っていたため、ベネット家の姉妹からの不興を買いました。彼は舞踏会には自分の興味を引く女が一人もいないと言って、あまり踊ろうとはしませんでした。しかし、ビングリーとの付き合いの影響でベネット家と近づくと、徐々に才気のある次女のエリザベスに興味を持つようになります。しかしエリザベスは、皮肉な目で自分を見ている高慢でそっけない男としかダーシーを思っていませんでした。

 ベネット家には長女のジェーン、次女のエリザベスの他にメアリ、キャサリン、リディアという姉妹がいました。
 三女のメアリは五人の中でも唯一不器量で、本と芸術に熱中しています。
 四女のキャサリンと五女のリディアは、退屈を紛らわせるために、一マイルの距離にあるメリトンの叔父叔母のフィリップス夫妻の家によく出かけ、その近所に滞在している士官たちと知り合いになり、彼らの噂をするようになりました。

 ジェーンはビングリーの姉のルイザや妹のキャロラインからも気に入られ、自宅への招待を受けました。
 ベネット夫人は雨が降りそうな中、馬車ではなく馬でジェーンをビングリーの家までやりました。案の定、雨が降り出したので、ジェーンとビングリーを近づけたいと思っているベネット夫人の思惑通り、ジェーンはビングリーの家から帰れなくなり、泊まることとなりました。しかし雨に打たれたジェーンは、風邪をひいてしまいました。

 翌日、エリザベスはジェーンのことが気がかりになり、道が悪い中をビングリーの家へと向かい、足元を汚しながら到着しました。その様子を見たルイザとキャロラインは、エリザベスのことを軽蔑しました。ダーシーは、一人でエリザベスがここまで来た理由を考えずにはいられませんでした。ジェーンの風邪は予想よりも重く、心細がったので、ビングリーは、エリザベスも家に泊めることとなりました。
 エリザベスは夕飯に呼ばれました。キャロラインとルイザは、風邪を引いているジェーンのことを気にかけるそぶりがなく、エリザベスはこの二人を嫌いました。キャロラインとルイザの二人もまた、エリザベスの態度を高慢と無遠慮だと陰で非難しました。ビングリーは、エリザベスが姉を心配してきたのだと二人をなだめ、エリザベスに親切に接しました。

 翌朝、ジェーンは少し持ち直しましたが、エリザベスは母を呼んで容態を判断してもらうことにしました。ベネット夫人はキャサリンとリディアを連れてきました。ベネット夫人は、ジェーンをビングリーと近づけるために、もう少し家に置いておきたがりました。リディアは、舞踏会を催すと言う約束をビングリーに取り付けました。
 キャロラインとルイザが歌っている時に、エリザベスが楽譜をめくっていると、自分にダーシーの目が注がれるのが感じられました。ダーシーはリールを踊ろうとエリザベスを誘いましたが、エリザベスは、彼に恥をかかせるために断りました。ダーシーは自分のことをこれほどまでに惑わす女ははじめてだと思いました。
 キャロラインはダーシーに惹かれていたため、ダーシーがエリザベスに興味を持っているのに気づき、嫉妬を起こしました。
 ジェーンの病気が完全に良くなると、エリザベスは真っ先に帰りたがり、ビングリーに馬車を手配してもらって自宅へと戻りました。

コリンズの訪問

 翌朝、ベネット氏は、従弟のコリンズ氏からの手紙を皆の前で読み上げました。コリンズは限定相続という制度によって、男児のいないベネット氏の財産を継ぐこととなっていましたが、キャサリン・ダ・バーグという令夫人の恩顧により教区の牧師になることが決まったようでした。そして自分の父とベネット氏が不仲であったこと、自分が制度によりロングボーンを相続することを心苦しく思い、償いをさせてほしいと申し出ていました。
 コリンズが訪れてきました。コリンズは謙遜な態度でお世辞を振りまき、なんでもないことを大仰に話しました。自分がロングボーンを相続するための罪滅ぼしは、この一家と仲直りして、娘のうちの一人を娶ることにあると彼は考えていました。まず彼は器量の良いジェーンに目を付けましたが、ジェーンの婚約が決まりそうなことを知ると、エリザベスに目をつけるようになりました。

 五人の姉妹とコリンズは、メリトンにある叔父のフィリップスの家に出かけました。
 道中、リディアが以前から知っていた、ロンドンから帰ってきたデニー氏と出会いました。デニーはウィカムという友人を連れていました。ウィカムは非常に美しい顔立ちの青年で、軍団の将校に任命された男だったため、五人の姉妹の気を引きました。そこへビングリーとダーシーが偶然通りがかりました。ダーシーとウィカムは、お互いのことを認めると、顔色を変えました。
 フィリップス夫人は、姪たちがウィカムを気に入ったのを見て、彼を招待することにしました。

 コリンズと五人の姉妹は、メリトンの叔父の家に着き、ウィカム氏やその他の士官と対面しました。エリザベスはウィカムと話す機会を得て、ダーシーとの因縁を聞きました。
 ウィカムは、ダーシーの父とは良い付き合いをしていました。ウィカムの父はダーシーの土地のペムバリーの財産管理を行い、ダーシーの父に高く買われていました。ウィカムとダーシーは同じ教区の同じ荘園で生まれ、少年時代は一緒に住んでいました。ダーシーの父は、ウィカムの父が死ぬ前に、ウィカムの面倒を見ると言い、贈与権内にある教会財産を譲り受ける権利をウィカムに遺言していました。しかし、ダーシーの父の死後、遺言状の文面に形式上の不備を利用し、ダーシーが他の誰かの手に教会財産を渡してしまったようです。ダーシーの父が自分を可愛がっていたので、おそらくは嫉妬のためにダーシーは財産を渡さなかったのだろうとウィカムは言いました。ダーシーは身分の高い人々には愛想よく振る舞うとウィカムは言い、悪い印象をエリザベスに吹き込みました。エリザベスはその言葉を信じ、ダーシーに反感を持つようになりました。
 コリンズは自分の後見人であるキャサリン・ダ・バーグ夫人の話を始めました。その話を聞いたウィカムは、キャサリン夫人が、ダーシーの叔母にあたることを伝えました。キャサリン夫人の娘は、従兄弟であるダーシーと結婚して、財産を一緒にするという世間のもっぱらの噂だということでした。コリンズは自分の恩人であるキャサリン・ダ・バーグを褒めそやしていましたが、ウィカムによると、実際のキャサリン・ダ・バーグは高慢な人間のようです。エリザベスはその説明を理にかなったものだと思って納得すると共に、ウィカムに惹かれるようになりました。

 翌日、エリザベスはウィカムに聞いたことをジェーンに話しました。ジェーンは、どちらのことも悪く思うことができずに、さまざまな誤解によってウィカムとダーシーの間にすれ違いが起きているのではないかと言いました。
 ビングリーとその姉妹が、ネザーフィールドの招待状を持ってやってきました。三人はジェーンとの再会を喜びましたが、二人の姉妹はエリザベスとはあまり話さず、ベネット夫人のことも避けるように帰っていきました。
 エリザベスは、コリンズに最初に踊ってほしいと言われ、嫌な気分になりました。

 ビングリーの舞踏会にはウィカムは来ませんでした。デニーによると、ロンドンに用事があると言っていたようですが、ダーシーがいるために来ないのは明らかでした。エリザベスは不機嫌になり、ダーシーに冷たく当たりました。
 コリンズは踊りが下手で、エリザベスを惨めな気分にさせました。その後、ダーシーが踊りの相手になってくれと、不意に頼んできたので、エリザベスはそれを承知してしまいました。二人はしばらく黙っていましたが、エリザベスは自分がウィカムと近づきになったことを話し、彼を苦しめたという噂を持ち出してダーシーを非難しました。さらに人の悪徳を忘れられないというダーシーに、人に対する判断力がきちんと備わってから、そのような性格を身につけた方がいいと忠告しました。ダーシーとエリザベスは、お互いに不満を抱きながら踊りを終えました。
 キャロラインはダーシーの肩を持ち、本当はウィカムの方がダーシーにひどいことをしたにもかかわらず、ダーシーは親切にしてやっているのだと主張しました。ウィカムの家柄が低いために、そのように言われるのだと思ったエリザベスは、キャロラインに対し怒りをあらわにしました。
 ジェーンは、ビングリーと共に過ごし、ダーシーとウィカムの関係を聞きました。ビングリーも彼らの関係については、何一つわかりませんでしたが、ダーシーの人格については保証するとジェーンに受け合いました。しかし、それだけではエリザベスはダーシーへの反感を取り下げることはできませんでした。
 エリザベスは、ジェーンとビングリーが幸福な様子を見て、もしその縁組が決まれば他の妹たちも良縁に恵まれるだろうと思い、幸福を感じました。しかし、ベネットまだ決まっていない結婚の話ばかりし、メアリは頼まれもしないのに下手な歌を歌い始めたため、ダーシーとビングリーの姉妹が、軽蔑と嘲笑の目で自分たちの一家を見ているのを感じ、恥ずかしさと腹立たしさを覚えました。
 ベネット夫人は、ジェーンとビングリー、エリザベスとコリンズの縁組がまとまると確信して、大いに満足の様子でした。

 コリンズは、エリザベスに正式の結婚を申し込み、エリザベスはそれを断りました。コリンズは、自分が断られると思っていなかったようで、心の中では受け入れても、それを拒絶するのが女性の習慣であると言って、それを信じませんでした。
 ベネット夫人は、なんとか説き伏せて、コリンズからの申し込みを承諾させようとしましたが、エリザベスは決して首を縦に振りませんでした。コリンズはもともとエリザベスに愛情があるわけではなかったので、あっさりと引き下がりました。
 ロングボーンの近所に住むウィリアム・ルーカス卿の娘で、ジェーンと親しく交際しているシャーロット・ルーカスが訪ねていて、この話に興味を持ち、聞こえないふりをしていました。そのうちにコリンズはエリザベスを相手にしなくなり、シャーロットに話しかけるようになりました。二十七歳の不器量なシャーロットは、夫婦生活がどのようなものになるかには重きを置かず、ただ結婚だけが目的であったため、条件の良いコリンズの目を自分へと向けさせようとして誘いをかけました。その目論見は成功し、シャーロットはコリンズからの求婚を受けました。
 エリザベスは、コリンズが自分に結婚の申し込みをした三日後に、シャーロットに求婚したことに驚きましたが、世間的な利益のために本心を犠牲にするシャーロットの身を案じ、彼女がこの結婚によって幸せになれないだろうと思い苦しみました。
 ベネット夫人は、コリンズが自分の娘ではないシャーロットと婚約したことを知り、その元凶であったエリザベスのことを怒りの目で見るようになりました。

 ジェーンにキャロラインから手紙が届き、一家がロンドンに引き上げることが知らされました。ビングリーは三、四日の予定でロンドンで用事を済ます予定でしたが、どうやらキャロラインとルイザは、ロンドンにいるダーシーの妹とビングリーを結婚させたがっているようで、ロンドンに引き止めたものと思われました。
 やがて、ビングリーがネザーフィールドに帰ってこないことが決定的になると、エリザベスは腹を立て、姉のことを心配しました。
 ジェーンは心を痛めていましたが、ビングリーだけでなく、キャロラインやダーシーに対しても責めることはしませんでした。

 ベネット夫人の弟夫婦のガードナー夫妻が、クリスマスを送るためにやってきました。ガードナー氏は商売を営んでいる男で、教養のある紳士でした。
 ガードナー夫人は聡明な感じのいい女で、ジェーンとエリザベスと仲良しでした。
 エリザベスとガードナー夫人が、ジェーンの恋が終わったことを話していると、ガードナー夫人は、ジェーンを自分たちと一緒にロンドンに行かせる提案をしてきました。彼女によると、ビングリーとは違う地域に住んでいるので、ロンドンでジェーンとビングリーが鉢合わせる心配はないとのことでした。ジェーンはこの申し出を喜んで受け入れました。
 ガードナー夫人の滞在の間、フィリップス家、ルーカス家や、その他の士官を招待しました。その中には毎日のようにウィカムが入っていました。ガードナー夫人は、十年から十二年前の独身時代、ダービシアのウィカムの家の近くに住んでいたため、共通の知り合いを多く持っていました。彼女はペムバリーも知っており、ウィカムの話を聞いているうちに、ダーシーが高慢で意地の悪い子だと言われていたことを思い出しました。
 エリザベスとウィカムはまじめに愛し合っているわけではなさそうなのに、お互いに好きな人にしていることを見抜き、ガードナー夫人は、財産がないウィカムとの恋愛に、自分からはまり込んで行くことのないようにエリザベスに注意しました。エリザベスはウィカムを愛していないことを認めましたが、もしウィカムが自分を愛するようになったら受け入れるかもしれないと言いました。彼女は、ただ急がないとだけ言って、叔母を安心させました。
 コリンズとシャーロットは結婚式を挙げました。ガードナー夫妻とジェーンは、ロンドンに発ちました。ジェーンは、キャロラインには一度だけ会ったようでしたが、その後の交際は続かず、ビングリーに会わせてもらうことはできませんでした。自分が欺かれていたことを悟ったようでしたが、自分とビングリーが遠ざかるのも、キャロラインが兄のことを心配するあまりの行動だと言って諦めました。
 ウィカムは、エリザベスとは違う財力のある女のことを追い始めました。エリザベスは、心から恋した相手ではなかったため、ウィカムの幸福を心から望み、最善だと思われる別れを選択しました。

エリザベスのハンスフォード滞在

 三月になり、エリザベスはウィリアム・ルーカス卿とその次女のマリアと共に、コリンズとシャーロットに会いに、ハンスフォードへ向かいました。道中、ガードナー氏の家に寄り、ジェーンに会いました。ジェーンは相変わらず健康で美しいことにエリザベスは安心しました。しかし、ガードナー夫人によると、ジェーンは元気にしているように努めていても、時々沈み込むことがあるようでした。このことを聞き、エリザベスは悲しくなりました。別れ際にガードナー夫妻はこの夏の湖水地方への旅行にエリザベスを誘いました。
 ハンスフォードの牧師館へ着くと、コリンズとシャーロットが出迎えました。コリンズは邸宅と、自ら栽培に当たっている庭園を案内しました。翌日、コリンズの後見人で、ローズウィングスに住むキャサリン・ダ・バーグが、晩餐に招待してきました。
 シャーロット、コリンズ、エリザベス、マリア、ルーカス卿が、おそるおそるローズウィングスの屋敷に着くと、キャサリン夫人、その娘のアン・ダ・バーグ令嬢と、一緒に暮らしているジェンキンソン夫人が迎えました。キャサリン夫人は尊大な態度で、エリザベスの姉妹が、音楽や絵にあまり親しまず、家庭教師をもつけていないことに驚いた様子を示しました。また、自分ほど音楽を楽しんでいる人間はいないと自負し、エリザベスにピアノの弾き方について説教をしました。

 ローズウィングスの邸にダーシーとその従兄であるフィッツウィリアム大佐がやってきました。エリザベスとダーシーは久々の再会となりましたが、二人はいつも二、三言形式的なことを話し、会話は続きませんでした。しかしそれでもダーシーはコリンズの荘園を頻繁に訪れ、エリザベスによく会いました。シャーロットは、ダーシーがエリザベスのことを好きなのではないかと言いましたが、エリザベスはそれをまるで信じませんでした。
 ある日荘園でエリザベスはフィッツウィリアム大佐に会いました。彼の話によると、フィッツウィリアム大佐もまた、ダーシーと同じように、ダーシーの妹の後見人であると言います。フィッツウィリアム大佐とエリザベスはビングリーについて話しました。彼によると、ダーシーは、名前こそ出さなかったものの、最近、ある友人が軽率な結婚をしようとしているのを救ってやったと言って、喜んでいたようです。それがビングリーとジェーンのことだということは明らかだったため、エリザベスは怒りに駆られました。おそらくエリザベスたちの叔父が田舎で弁護士をしていたり、ロンドンで商売をしていることが原因であり、何の非もないであろうジェーンを思い、エリザベスは涙を流しました。

 エリザベスは頭が痛くなり、キャサリン夫人の家に行かずに一人でいると、出し抜けにダーシーが訪ねてきて、エリザベスに愛を告白しました。しかし、ダーシーが身分違いのために自分の品位を落とすかもしれないという気持ちまで正直に話したことが気に障った上に、自分が断られるとは思っていないようなそぶりを示したため、エリザベスは怒りにかられました。姉の結婚を妨げたこと、ウィカムのものになるはずだった財産を他の者へ譲渡してしまったこと、そして、そもそも初めから、尊大な自負と、他人の感情を無視するわがままな心が見られたために、あなたとだけは結婚したくないとエリザベスは答えました。ダーシーは、エリザベスの気持ちはよくわかったと言い残して、去って行きました。
エリザベスは心を乱されました。

 翌日、ダーシーがやってきて、エリザベスに手紙を渡しました。
 その手紙にはビングリーとジェーンを引き話したことと、ウィカムの財産を奪ったことへの弁解がなされていました。ダーシーは、ビングリーがジェーンをこれまでの恋愛には見られなかったほどに愛しているのを感じていましたが、その愛を受け取るべきジェーンは、快活ではありましたが、ビングリーを心の底から愛していないように見えたといいます。また、ベネット夫人と三人の娘に礼を欠いた態度が見られ、それらがビングリーの姉妹と意見の一致を見たために、ダーシーは結婚を阻止しようとしたようでした。ジェーンがロンドンを訪れていることをダーシーは未だにビングリーに隠していましたが、このことに関しては弁解のしようがないと考えているようでした。
 またウィカムの問題に関しても手紙には書かれていました。ウィカムの父はペムバリーの土地の管理という任務をしっかりと行っていたため、ウィカムもダーシーの父から寵愛を受け、牧師に任命するつもりでケンブリッジに入れられました。しかしその頃から、ダーシーはウィカムから不良の傾向を見て取っていました。双方の父親が死ぬと、ウィカムは牧師にはならないことにしたので、もっと直接に金銭上の利益になることを望んでいると言い始めました。ウィカムは法律を勉強したいと言い、ダーシーから金を受け取りましたが、怠惰に過ごし、浪費をするばかりでした。そして自分が与えられるはずだった教会の在職者が死ぬと、ウィカムは再びダーシーにその職への推薦を依頼してきたのでした。それを断ると、ウィカムはダーシーの悪い噂を撒き始めました。そして、ダーシーとフィッツウィリアム大佐が後見を務めることになったダーシーの妹が、学校を下がってロンドンで一軒かまえることにし、夏休みに家政を見る夫人とラムズゲートに行くと、ウィカムもそちらへ行き、十五歳のダーシーの妹を誘惑しました。ダーシーの妹は、幼い頃にウィカムに親切にしてもらった記憶もあり、駆け落ちということに危うくなりそうでしたが、その直前に罪悪感からダーシーに全てを打ち明けたことで、それを免れました。これらのことはフィッツウィリアム大佐が全て知っており、証人ともなれると宣言し、その手紙は締めくくられました。

 エリザベスは始めダーシーの文章の中に高慢を見てとり、怒りに駆られながらそれを読みましたが、ウィカムに関するところになると、心の動揺を抑えられなくなりました。ダーシーの手紙の内容が嘘を言っているとはまるで思えなくなり、反対に自分が尊敬していたウィカムの言葉は嘘ばかりであったとしか思えなくなりました。そして手紙を二回三回と読むうちに、手紙の始めの方に書かれていた、自分の家族への非難の言葉も、尤もだと思うようになり、これまで自分の分別があるのを鼻にかけていたことを恥ずかしく思うようになっていきました。
 ダーシーとフィッツウィリアム大佐はローズィングズを去りました。
 エリザベスはダーシーのことばかり考えるようになりましたが、まだ彼のことを是認することはできず、彼を拒絶したことを後悔するまでには至りませんでした。

エリザベスとガードナー夫妻のダービシアへの旅

 ローズィングズの滞在を終えたエリザベスは、ガードナー夫妻の家に寄ってジェーンを迎えに行き、家に帰りました。キッティとリディアは相変わらず士官たちを追いかけまわしていました。リディアによると、士官たちはあと二週間でメリトンを去ってブライトンの近くに行くことになっており、自分たちも夏にブライトンを旅する計画を立てていると言うことでした。ウィカムは追いかけていた金持ちの娘がリヴァプールに行ったことにより、結婚話がなくなったようでした。ウィカムに会うのを避けたいと思っていたエリザベスは、二週間たてば彼がメリトンから去ることに安堵しました。
 エリザベスは、ダーシーから愛の告白を受けたことを黙っていられなくなり、ジェーンに話しました。ウィカムが悪人だったことを伝えると、ジェーンは衝撃を受けた様子を見せました。ジェーンがまだビングリーに愛情を抱き、彼との思い出を大切にしているようだったので、ビングリーが去って行った本当の理由を話すことはしませんでした。

 士官たちの連隊がメリトンからブライトンへ引き上げる最後の週になり、大佐の妻のフォースター夫人が、リディアに一緒にブライトンに来るように誘ってきました。リディアと母親は有頂天になり、キッティはそれに嫉妬して悔し涙を流しました。エリザベスは、リディアのような軽はずみな娘が、士官たちのいる海辺の街ブライトンへ行けばどのようになるか危惧し、父親に止めるよう進言しました。しかしベネット氏は、リディアは公に恥さらしを一度しなければ気が済まないのようだが、自分の家の暮らしむきを考えれば、そう悪いことはできないはずだと言って、それを止めませんでした。

 ガードナー氏からの手紙が届き、エリザベスは彼らと三週間のダービシアへの旅に出ることになりました。ダービシアはペムバリーのある場所なので、エリザベスはその所有者であるダーシーのことを考えずにはいられませんでした。
 ガードナー夫妻の幼い子供達は、ジェーンが面倒を見ることになり、エリザベスは夫妻と共に旅立ちました。旅の途中、ガードナー夫妻はペムバリーを見たいと言い出しました。エリザベスはダーシーに会わないか心配しましたが、宿の女中から、ペムバリーの屋敷の人々はロンドンから帰ってきていないという返答を得たので、夫妻に同意しました。

 ペムバリーは、美しい自然が残っている場所でした。屋敷に入り、豪華な装飾を見ると、エリザベスは、この屋敷が自分のものになっていたかもしれないのだと思わずにはいられませんでした。家政婦のレノルズ夫人によると、ダーシーとその妹は、翌日に帰ってくるということだったので、エリザベスは安心して邸内を見ることができました。屋敷には、ダーシーとウィカムの肖像画が飾ってあり、レノルズ夫人は、ダーシーの容姿や人柄をしきり褒め、彼が妹のことをとても大事にしていることを語りました。エリザベスは、この地の主人として、彼が多くの人々の幸福に寄与していることを感じました。
 エリザベスが屋敷を出ると、出し抜けにダーシーに出会いました。二人は驚いて真っ赤になりました。ダーシーは落ち着いて話すことができず、エリザベスは見られてしまったばつの悪さから、恥ずかしさでいっぱいになりました。
 二人は挨拶もそこそこに別れましたが、ガードナー夫人の足が丈夫でなく、引き返すことにしたので、エリザベスは再びダーシーに鉢合わせなければなりませんでした。ダーシーは執事に帰る用事ができ、一足早く帰ってきたようで、明日になれば、ビングリーや妹も帰ってくるとのことでした。彼は叔父夫婦にも慇懃に接し、エリザベスはそれを見て嬉しく思いました。ダーシーはエリザベスに、妹を紹介したいと申し出ました。ガードナー夫妻は、ダーシーがウィカムを陥れたことをまだ信じていましたが、その日に二人が抱いた彼への印象は、かなりのものでした。エリザベスは、ダーシーがウィカムを欺いたわけではないことを、二人に教えました。

 ダーシーとその妹のジョージアナーは翌朝やってきました。エリザベスは緊張した様子を見せました。ジョージアナーは、まだ十六歳ほどの、内気でものわかりがよく気取りがないおだやかな娘でした。ガードナー夫妻は、ダーシーがエリザベスを愛していることをはっきりと感じました。エリザベスはビングリーとその姉妹にも久し振りに再会しました。ジェーンの話こそしなかったものの、家族のことを聞いてくるビングリーから、エリザベスは、彼がまだ姉のことを想っているのではないかという印象を受けました。ダーシーは、ひどい別れ方をしたにも関わらず、以前のような高慢な態度は見られないばかりか、エリザベス一行に丁寧に接し、交際を求めてきました。ダーシーが今なお、自分に好意を抱いているのを感じ、エリザベスは憎む気持ちは消え失せ、感謝と尊敬の念を持つようになりました。
 ダーシーはジョージアナーに、エリザベスたちを招待するように頼みました。それにより、エリザベスとガードナー夫妻は再びペムバリーの屋敷へと行きました。ジョージアナーは、丁寧に接待を行なっていました。キャロラインとルイザは相変わらず高慢な態度でエリザベスを迎えました。ダーシーが入ってくると、キャロラインはエリザベスに対してあからさまな嫉妬を見せ、士官たちがメリトンを去ることを残念に思っているだろうとエリザベスに当てつけました。ダーシーとジョージアナーは困惑する表情を見せましたが、エリザベスがその挑発には乗らなかったので、皆は落ち着いて話をすることができました。キャロラインは、エリザベスの日焼けしたことや、外見の細かい欠点をならべ立てましたが、ダーシーは不快を感じ、自分がエリザベスのことを美しいと思っていることを打ち明けました。

リディアとウィカムの出奔

 エリザベスたちが屋敷をでて宿に戻ると、ジェーンから手紙を受け取り、リディアがウィカムとスコットランドに出奔したことを知りました。フォースター大佐は、二人を探しながらロングボーンまで来たようです。ジェーンは二人の結婚を望みましたが、フォースター大佐によると、ウィカムは信用するに値しない人物だということでした。ベネット夫人は病気になって寝込んでしまいました。ベネット氏とフォースター大佐は、リディアを探しにロンドンへ行くといいます。ジェーンは叔父夫婦とともに戻ってきてほしいとエリザベスに頼んできました。
 エリザベスが外出中だったガードナー氏を探しに行こうとすると、出し抜けにダーシーが現れました。エリザベスは泣きながら、末の妹がウィカムと駆け落ちしたことを話しました。皮肉なことに、妹の駆け落ちという弱点が自分の家に生じた今になってみると、エリザベスはダーシーのことを深く愛することができるという自分の気持ちをはっきりと理解しました。ダーシーはエリザベスに深い同情を示しました。
 エリザベスはガードナー夫妻に事情を話し、ロングボーンへ帰ることにしました。

 三人は、ウィカムが財産のないリディアと駆け落ちする理由を考えながらロングボーンへの帰途につきました。
 家に着くとエリザベスとジェーンは泣きながら抱擁をかわしました。ベネット氏はリディアを探しにロンドンへ行っていました。ベネット夫人はくやし涙を流しながら、愚痴を言い、これからロンドンへ向かうガードナー氏に、二人を見つけ次第結婚させるように頼みました。
 キッティは二人の仲を知っているようでしたが、それを秘密にしていたため、皆から叱責を受けていました。
 ガードナー氏はベネット氏にロンドンで合流しました。しかしウィカムはメリトンで莫大な借金をしていたようで、近親のものもいないため、容易に消息をつかむことはできませんでした。
 ロングボーンで家族の世話をしていたガードナー夫人は、子供達を連れてロンドンに戻っていきました。ベネット氏は何の手がかりも得られまいまま帰ってきました。

 しかしそのうちに、二人の消息がつかめたという手紙がガードナー氏から届きました。二人はロンドンで一緒にいましたが、ウィカムに結婚する気はないということでした。ただし、父親の生存中に年百ポンド、死後五千ポンドを支払うことを条件に、結婚すると言っているようです。それは一生分の金額としては安く、ベネット氏は、ガードナー氏がウィカムにかなりの額を積んだのではないかと予想しました。ベネット夫人は二人を結婚させられるとあって、嬉しさを隠そうとはしませんでした。ウィカムとの結婚が決まったことにより、リディアの前途は、それほどいいものではないことが決まりましたが、最悪の結果だけは脱することができました。
 ウィカムは国民軍を去り、北方に屯営中の常備隊に入ることになりました。ウィカムがメリトンやブライトンで作った借金は、ガードナー氏とベネット氏が肩代わりしました。ベネット氏は、リディアに自分の家に入ることを禁じ、結婚式の着物の代金も出さないと宣言しましたが、ジェーンとエリザベスが説き伏せ、北部へ行く前にロングボーンで結婚式を挙げることが決まりました。
 リディアは、相変わらず図々しく、恐れを知らない様子で家に帰り、皆に祝いの言葉を言わせました。ウィカムもまたいつもと変わらない態度だったため、エリザベスは彼の厚かましさを実感しました。二人は十日ほど滞在していきました。
 リディアの婚礼にはダーシーが来たようでした。そのことは秘密になっているようでしたが、リディアは口を滑らしてエリザベスに話したのです。ダーシーがわざわざ自分からウィカムの結婚式に赴くとは思われず、エリザベスはその話を聞いて、ガードナー夫人にその訳を聞く手紙を書きました。
 ガードナー夫人から届いた返事によると、ウィカムとリディアを探し出したのはダーシーであったということでした。ダーシーはリディアの駆け落ちの話をエリザベスから聞くと、自らロンドンに出向き、もともと妹の家庭教師をしていたヤング夫人とウィカムが懇意にしていたのを知っていたので、その筋をあたり、二人の居場所を突き止めたのでした。ウィカムがロンドンに住み始めたのは、賭博でつくった借金のため、連隊を去らなければならない必要に迫られてのことであり、リディアと結婚するつもりは全くなかったといいます。一方リディアはウィカムを愛しており、帰るつもりはないと言い張りました。そこでダーシーは、二人と話し合い、ウィカムの借金を払ってやり、将校の役も手に入れ、リディアの持参金を水増しすることで、二人を結婚させたのでした。このことはガードナー氏に伝えられ、ダーシーは二人の婚礼の式に出席する運びとなりました。しかも、ダーシーは、ウィカムの性格の欠点を知りながら、駆け落ちを止められなかった責任は自分にあると言ったそうです。その手紙の中で、ガードナー夫人は、エリザベスとダーシーの結婚を、大いに期待している様子でした。
 エリザベスは、ダーシーが行ってくれた処置は、自分に多少の未練があればこそ行ってくれたことだ感じ、喜びを感じるとともに、悔恨を感じました。そしてその恩義に、お返しをできないことを心苦しく感じました。

ビングリーとダーシーのネザーフィールド滞在

 リディアとウィカムが出発すると、ネザーフィールドにビングリーが帰ってくるという知らせを一家は受け取りました。
 ジェーンは気持ちを乱されている様子でした。
 ビングリーはダーシーとともに来ました。ダーシーは以前の態度に戻ったような、無愛想な様子でした。
 ダーシーのことを嫌っているベネット夫人は、リディアのために尽力をしてくれたことを知らず、ウィカムのことを褒め、ダーシーにあてつけるようなことを言いました。彼女はビングリーにばかり話しかけ、ダーシーに話そうとはしませんでした。エリザベスは恥ずかしくて顔を上げられませんでした。
 二人が帰ると、エリザベスはダーシーの無愛想な様子に腹を立て、わざわざ自分たちのところへ何のために来たのだろうと考えました。

 ビングリーとジェーンの結婚に再び期待を寄せるようになったベネット夫人は、二人を招待しました。ビングリーはジェーンに対して愛想よく振る舞いましたが、ダーシーとエリザベスは相変わらず気まずい雰囲気でした。
 それからビングリーは一人で訪ねてくるようになり、とうとうジェーンは婚約の申し出を受けました。その結婚は本人のみならず、家族の皆も祝福するものであり、ベネット家は、世界中で最も幸福な家族だと言われるようになりました。ビングリーは、ロンドンにいた時、自分のことをジェーンが想っていないと説き付ける人がいたために、一度ジェーンを諦めていたと言いました。その人物ががダーシーだとエリザベスは知っていましたが、そのことはジェーンには話さないでおきました。

 それから一週間ほど経ち、一家はキャサリン・ダ・バーグの訪問を受けました。キャサリン夫人は、ダーシーとエリザベスが婚約したという噂を聞いて駆けつけたのでした。彼女は、自分の娘とダーシーを結婚させることは、二人が生まれた時から決定していることであり、ダーシーとエリザベスが結婚することは許されることではないと主張しました。エリザベスには噂の出どころはわかりませんでしたが、もしダーシーが自分のことを愛し、婚約の申し出をしてきたら、それを断る理由はないと言い返しました。二人はかんかんに腹を立てて別れました。
 キャサリン夫人が帰ったあと、コリンズからベネット氏に手紙が届き、ダーシーとエリザベスの軽率な結婚を辞めるように警告を与えました。エリザベスがダーシーのことを嫌っていると思っていたベネット氏は、この手紙を読み一笑に付しました。

 ビングリーがダーシーを連れてきました。エリザベスはダーシーと二人になる機会を得たので、リディアの結婚をまとめてくれたことに対して、深い感謝の意を述べました。ダーシーはエリザベスを幸福にしたい一心で、このような行為を行ったと言い、以前に告白した時と自分の気持ちは変わらないと述べました。エリザベスは、その言葉を喜んで受け入れ、ダーシーの愛の深さに改めて感謝しました。
 エリザベスと出会う前のダーシーは、両親から家柄の高さを示すような態度をとるようにしつけられてたと言います。しかしエリザベスと出会い、告白を退けられたことで、それを教訓として受け入れ、高慢を抜け出すことができたようです。そしてまた、ジェーンのビングリーを想う気持ちが本物であると知り、ビングリーがジェーンに再び近づけるようにしたのもダーシーだったのでした。彼自身も、エリザベスに愛してもらえる見込みがあるかどうかを確かめるために、ネザーフィールドを訪れたのでした。
 ダーシーはベネット氏に、エリザベスはジェーンとベネット夫人にこの話を打ち明けました。三人とも、エリザベスがダーシーのことを嫌っていると思っていたので、エリザベスはそれに対する釈明をしなければならなくなりましたが、最終的には皆が納得し、二人の婚約を喜びました。

その後

 ベネット氏は、エリザベスがいなくなって寂しく感じましたが、ペムバリーに住み始めたエリザベスたちを度々出し抜けに訪れるようになりました。
 ベネット夫人はジェーンとエリザベスの結婚に大喜びしました。
 ビングリーとジェーンは、ネザーフィールドに一年滞在しただけで、ペムバリーから三十マイル以内の、ダービシアの隣の州に地所を買いました。
 キッティはジェーンかエリザベスのところで大半を過ごしました。リディアほど軽率ではなかったので、賢明な娘になりました。リディアからの舞踏会の誘いに行くことは父親が許しませんでした。
 メアリはただ一人家に残りました。姉妹がいなくなり、世間と接触しなくてはならなくなりましたが、客人相手に得意のお説教をして過ごしました。
 リディアは不安定な生活を送り、時々送られるエリザベスやジェーンからの救助の金を頼りに生活しました。間もなく夫婦間の愛情を冷ますようになりましたが、妻としての名を辱めることはせず、夫がいないときにしばしばペムバリーを訪れました。
 シャーロットは、エリザベスとダーシーの縁組に喜び、腹を立てたキャサリン夫人の機嫌が収まるまでルーカス邸に帰ってきました。
 キャロラインはダーシーが結婚して悔しがりましたが、ペムバリーを訪れる権利を保留するために、その遺恨を捨てました。
 ジョージアナーはペムバリーに住み、エリザベスと仲睦まじく暮らしました。
 キャサリン令夫人は、ダーシーの結婚にひどく腹を立て、両家の交渉はしばらく途絶えましたが、そのうちに和解を求められ、しぶしぶそれを受け入れ、恨みを捨ててペムバリーを訪れるようになりました。
 ガードナー夫妻は、エリザベスとダーシーの夫婦を大変に気に入り、二人からも深い感謝を受け、両家は大変親しくしました。

自負と偏見 (新潮文庫)