谷崎潤一郎『痴人の愛』ってどんな話?作品の内容を詳しく解説

 1924年から1925年にかけて発表された谷崎潤一郎の長編、『痴人の愛』を紹介します。真面目なサラリーマンであった「私」(河合譲二)は、十五歳の女給だったナオミを引き取り、自分の理想の女に育てようとします。しかしナオミの淫蕩な本性が徐々に姿を現すにつれ、「私」はナオミの性的な魅力に支配されていきます。発表当時、このような奔放な女性(あるいはその生き方)をさす、「ナオミズム」という流行語が生みだされました。
 衝撃的な内容ですが、流れるように読める文章で書かれているので、谷崎潤一郎の入門書としてもおススメです。

痴人の愛 (新潮文庫)

『痴人の愛』のネタバレ登場人物

私(河合譲二)
この物語の語り手。宇都宮生まれ。電機会社の技師。

ナオミ
「私」の妻。十五歳のときに浅草のカフエから「私」に引き取られる。

ハリソン嬢
ナオミの英語の先生。

杉崎春枝女史
ナオミの音楽の先生。

浜田
慶應義塾の学生。ソシアル・ダンスの倶楽部にナオミを誘う。

アレキサンドラ・シュレムスカヤ
ダンスの先生。ロシア人。革命で夫も子供も行方知らずになり、身一つで日本に来た。

熊谷政太郎
浜田の仲間。まあちゃんと呼ばれている。


浜田や熊谷の仲間。

中村
浜田や熊谷の仲間。

春野綺羅子
ダンス会場に訪れていた女優。

井上菊子
ダンス会場に訪れていた、西洋かぶれの実業家の娘。

ウィリアム・マッカネル
「私」とナオミが参加したダンス会場に訪れていた西洋人。

『痴人の愛』のネタバレあらすじ

章ごとの詳しいあらすじはこちら

 私(河合譲二)は電機会社に勤める技師でした。芝口の下宿に生活しており、会社では「君子」とよばれるほどの真面目なサラリーマンでした。

 二十八歳のころ、私はカフエで給仕をしていた十五歳のナオミを引き取り、大森にある洋館のような家に引っ越して籍を入れました。

 当初私はナオミにしっかりとした教育を受けさせるつもりでしたが、まったく素質のないことが次第にわかってきました。しかしそれと同時に、私はナオミの肉体に徐々に魅了されていきました。

 ナオミが十八歳の頃、ダンスを習いたいと言いだしました。私たちはロシア人の先生のもとでダンスを習い始め、その教室に通っていた浜田や熊谷などの男と知り合いになりました。

 鎌倉に行きたいというナオミの希望により、私たちは鎌倉に借り暮らしを始めました。海水浴をしていると、浜田や熊谷たちと遭遇しました。私たちは彼らと鎌倉でも付き合うようになりますが、実はナオミは彼らのほとんどと関係を持っていて、ナオミが提案した鎌倉行きも、熊谷が手配したものでした。

 私はもう熊谷と会わないよう、ナオミに約束させました。しかし再び熊谷と密会しているのが露見したので、私はナオミを家から追い出しました。

 ナオミがいなくなると、途端に私は後悔し始めました。私は浜田にナオミの消息を尋ねました。するとナオミは西洋人と行動を共にし、ダンスホールに顔をだしているようでした。今やナオミは皆のなぐさみものになっているようでした。

 ​私はナオミとの関係を断つことを決心しました。しばらく休んでいた職も辞し、ナオミが寄り付きそうな場所には行かないように生活しました。しかしある日突然、ナオミが荷物を取りに訪ねてきました。それ以来度々ナオミは姿を現し、私を露骨に誘惑するようになりました。私は抵抗を試みるも、ついにその誘惑に負けました。飛びついてきた私に対し、何でも言うことを聞くこと、お金をいくらでも出すこと、一切の干渉をしないことをナオミは約束させました。

 今では私はナオミに完全に服従する生活を送っています。