レフ・トルストイ『アンナ・カレーニナ』の詳しい登場人物紹介

トルストイ作『アンナ・カレーニナ』の主な登場人物を紹介します。とても長大な小説で、全ての登場人物を網羅することはできないので、覚えておくとストーリーを理解しやすいという人だけに絞って紹介していきます。ネタバレ内容を含みますので、確認用としてお読みください。

※簡単な登場人物紹介はこちら(『アンナ・カレーニナ』トップ)

※『アンナ・カレーニナ』の詳しいあらすじはこちら

主な登場人物

アンナ・カレーニナ
八歳になる息子セリョージャをペテルブルクに残し、兄のオブロンスキーの家に滞在するためにモスクワにやってくる。モスクワに到着すると、列車に同乗していた婦人の息子であるヴロンスキーと初めて出会うが、線路番の轢死に遭遇することとなり、それを不吉な報せだと恐れる。
浮気をしたオブロンスキーに、妻ドリーとの和解に一役買ってくれと頼まれ、ドリーの惨めな心の内を聞き、心から同情して慰める。ヴロンスキーとの結婚が決まりそうなキティを祝福するが、舞踏会でヴロンスキーと再会すると、思いがけなく惹かれ合ってしまう。ヴロンスキーと会わないようにするために、予定を早めてペテルブルクへと帰るが、同じ列車に乗り込んできたヴロンスキーに愛の告白を受け、歓喜と恐怖に包まれる。
家に帰ると、夫のカレーニンや息子のセリョージャに対して幻滅に近い感情を抱き、ヴロンスキーのいる華やかな社交界への出入りを頻繁にするようになり、やがてヴロンスキーとの子を妊娠する。障害物競馬に出場して落馬するヴロンスキーを見て取り乱し、自分の不貞をカレーニンに打ち明ける。
ヴロンスキーが外国の王子の付き添いを命じられると、二人が行った歓楽に激しく嫉妬し、お産が近づくと自分が死ぬという予感に襲われる。娘を産み落とすと、瀕死の状態になり、人事不肖になってカレーニンを呼び出し、自分の罪に対する許しを懇願する。
体調が回復し、ヴロンスキーと会わないことを決心するが、カレーニンが離婚に同意したことを知ったヴロンスキーが訪れて来ると、息子と夫を置いて外国へと旅立つ。
カレーニンの寛容さにすがるのを避けるため、離婚の許しに応じないままイタリアの小さな街に落ち着き、ロシアの画家であるミハイロフに自分の肖像画を描いてもらう。
ペテルブルクに戻り、セリョージャに会いたいという手紙がカレーニンとリディア伯爵夫人によって拒否されると、セリョージャの誕生日の早朝に内密に会いに行くが、カレーニンが入ってくると逃げるようにその部屋を出る。
自分の束縛を逃れようとするヴロンスキーを愛しながら、敵意も感じるようになり、社交界で身を亡ぼすことを知りながら劇場へと向かい、侮辱の言葉を受けてヴロンスキーを激しく責め立てる。
社交界での居場所を完全に失うと、ヴロンスキーの田舎の領地のヴォズドヴィジェンスコエ村に移り、つかの間の幸福な時を過ごす。しかしヴロンスキーが会議や競馬などの付き合いに顔を出すようになると、再び諍いが絶えないようになる。ドリーから離婚を勧められるが、セリョージャとの仲が引き裂かれることを恐れ、離婚に踏み込むことができずに葛藤する。
選挙に出かけたまま約束の日に帰らないヴロンスキーに、娘の軽い病を口実に帰りを催促する手紙を書く。このような行為により、ヴロンスキーが自分への愛情を冷ましていくと、ようやくカレーニンとの離婚を望むようになる。
モスクワに移り、酒飲みのイギリス人調教師の娘ハンナを引き取って可愛がるが、ヴロンスキーとの口論はさらに頻繁になり、ヴロンスキーの母親が息子の結婚相手にと望んでいるソローキン公爵令嬢に激しく嫉妬する。
このような生活に耐えかねて、田舎で再び生活することを切望するようになるが、ソローキン公爵令嬢と笑顔で話をするヴロンスキーを見て嫉妬が頂点に達し、田舎行きを拒否して外へ飛び出し、ドリーの家に向かう。そこでキティと久々の再会をするが、二人が自分を軽蔑しているような気がして帰途に就く。ヴロンスキーが帰らないことに怒りを覚えて混乱し、自らヴロンスキーに会いに行くために停車場へと向かう。混乱しながら停車場に着くと、全ての人々に憎しみを感じ、この世の人びとは皆が憎しみあっているのだと考え始める。プラットフォームで以前遭遇した轢死人のことを思い出すと、自分が死ぬべきなのだと悟り、列車と列車の間に身を横たえて自殺を遂げる。

アレクセイ・ヴロンスキー
伯爵の一人息子で、金持ちで美男子の侍従武官、ペテルブルクで青年士官として働き、社交界の貴公子連の中でも選り抜きの青年だった。母親は社交界の花形だったため、あまり家庭生活を味わうことなく成長した。その母親に対してはうやうやしい態度を取るが、全く敬愛の念を感じていない。莫大な財産を抱え、素晴らしい教養と才能があるにも関わらず、それらを軽視して、連隊の友人達のことを大切にしている。
モスクワに来ると、キティに惹かれるが、全く結婚というところまでは考えていなかった。
母親を迎えに訪れた駅でアンナと初めて出会い、そこで線路番が轢死したところを目撃する。
舞踏会でアンナと再会して惹かれ合うと、ドリーの家から自宅へ戻るアンナと同じ列車に乗り込み、再びペテルブルクでの生活を始める。青年士官として働いていた頃の友人と交友しながらも、アンナが出入りする社交界に自らも赴き、アンナと関係を持ち始める。
自らも騎手を務める競馬に熱中し、フル・フルという血統の良いイギリスの雌馬を買って障害物競走に出場するが、落馬して馬の背骨を折る。
カレーニンに離婚を拒否されたアンナとの駆け落ちを考えていたが、アンナとの関係を快く思わない母からの仕送りが途絶え、少年時代の友人であるセルプホフスコイが将官になって中央アジアから帰ってきたことで出世欲が掻き立てられ、ペテルブルクへと残ることにする。
大佐に昇進し、連隊を出て一人暮らしを始めると、ある外国の王子の接待役を命じられ、ロシアの歓楽を経験したいと考えるその王子に辟易する。その接待で王子と共に回った歓楽に対し、アンナから激しい嫉妬を受ける。
アンナがお産によって瀕死の状態になり、駆け付けてきたカレーニンが自分たちの全てを許したことで、屈辱を感じてピストル自殺を図り、生死の境をさまよう。
回復すると、アンナと別れるためにタシケントへの赴任を決心するが、アンナに対する愛惜の気持ちをぬぐい取ることができず、最後に一目会いたいという願いをベッツィに取り次いでもらうが、その願いは拒絶される。しかしその翌日にカレーニンが離婚に同意したという知らせを受けると、タシケント行きを断り、退官してアンナを連れ出し、外国の旅へと出かける。
イタリアの小さな町に落ち着くと、貴族幼年学校時代の友人であるゴレニーシチェフに再会する。退屈を持て余して絵画に手を出すが、同じ町に滞在している画家ミハイロフの技術を目の当たりにし、絵画の道を断念する。
イタリアの生活に退屈を感じてペテルブルクに戻ると、ヤーシュヴィンらの仲間との交際を復活させ、アンナの束縛を重荷に感じるようになる。
アンナのことを社交界に復帰させるのが難しいと悟り、ペテルブルクを去って田舎の領地のヴォズドヴィジェンスコエ村に引っ越す。そこで豪勢な邸を建て、使用人達の住居、工場、病院などを作り、荒れ果てた場所を改良して農場の経営に打ち込み、黒字を産む。しかし会議や競馬で出かけるたびにアンナとの諍いが起き、さらに愛情を冷ましていく。自分の領地があるカシン県の選挙に出席して夢中になり、うまく立ち回って勝利した新派の晩餐を開くが、アンナから娘の体調が悪くなったという知らせを受け、不愉快な気分になって帰途に就く。
その後アンナとともにモスクワに移るが、自分の愛情が冷めたことを責め立てるアンナとの口論はさらに激しくなり、嫉妬の感情から田舎行きを拒否したアンナに耐えることができなくなり、外に出る。
アンナの自殺の報せが入ると、現場へ飛んでいき、死人のように運ばれて、虚脱状態の後、狂乱状態に陥る。
その後、賭博で破産したヤーシュヴィンの付き添いで露土戦争に参加し、自分を武器として使うことを決意し、自費で中隊を編成し列車に乗り込む。

コンスタンチン・リョーヴィン
田舎のカジランスキー群に三千ヘクタールの土地を持つ青年。あご髭を生やした体格のいい男。神を信じず、遊蕩生活にふけった過去を持つ。田舎の地方自治体で郡会議員として働いていたが、喧嘩をして辞めた。全ロシアに名を知られる作家であるコズヌイシェフが異父兄。オブロンスキーとは若い頃からの親友で、お互いの仕事を認め合いながらも軽蔑している。
もともと貴族同志の付き合いのあったシチェルバツキー家の長男と一緒に大学に入学した。その三人の妹に若いころから憧れており、ドリーとナタリーが結婚した後、キティに恋心を抱くようになる。しばらくはキティのもとに足しげく通っていたが、恋を成就させることが不可能なように思われて、田舎の領地に帰る。しかし二ヶ月たっても一向に恋心が静まらず、キティに結婚を申し込みにモスクワを訪れる。
キティに結婚を申し込み、断られると、ライバルと目されるヴロンスキーと自分とを比較して惨めな気持ちになる。
数々の問題を起こしている実の兄ニコライと三年ぶりの再会を果たし、いつでも助けの手を差し伸べられるようにすることを決める。田舎の家に帰り、百姓や女中に囲まれて生活をするうちに、ふさいでいた気持ちを元に戻す。
百姓や土地の支配人を自ら指導し、労働者の性質もその気候や土壌と同じように絶対的試料であるという意見を持ち、農村経営に関する著述を始める。
キティが結婚するという報せによって慰められるのを期待していたが、自分の森を売るために訪れてきたオブロンスキーにより、キティが結婚せず海外の温泉地へ療養しているということを知る。オブロンスキーが騙されてかなりの安値で自分の森を売ってしまったのを見破り、貴族たちが零落していくのを憂慮する。
オブロンスキーからの手紙により、ドリーが滞在しているエルグショーヴォ村を訪れ、キティとの結婚を再考するようにドリーに頼まれるが、もう終わったことだと言って断る。
姉の領地で百姓たちが行っていた不正を正しに行くと、農民たちの健康的で陽気な様子が羨ましくなり、百姓の嫁をもらうことを考え始めるが、箱馬車の中にいるキティを偶然見かけ、彼女のことを愛していたことを再確認する。
キティのことを愛していながら、彼女のいるエルグショーヴォ村を訪れない自分のことが嫌になり、友人のスヴィヤジュスキーのもとを訪れ、農事経営が上手くいっている裕福な農民の家を見たり、地元の地主も交えて討論を行うと、百姓たちが仕事の成功に興味をかきたてられる方法の必要性と、収益のうちの半分を労働力にあてるという農事経営のやり方を思いつく。生産性を上げるために利益を配分する方法が共産主義と同じだとニコライからの批判を受けるが、その農事経営が軌道に乗り出すと、著述を仕上げるために海外へ行き、実地で何が行われているかを観察する。
ドイツ、プロシア、フランス、イギリスを回り、死期の近いニコライからの影響で死について深く考え、人間の営みは死について考えることをしたくないためのちっぽけな行いに過ぎないという境地に達する。
帰国してオブロンスキーの晩餐に招かれ、キティと久々の再会を果たすと、再び結婚を申し込み、受け入れられる。しかし結婚後も自分に価値がないと思い込み、ヴロンスキーへの嫉妬に悩まされ続けたため、キティの愛にしばしば不安を感じる。
ニコライが死に瀕していることを知ると、キティをしぶしぶ同行させて訪れる。苦しみながら死んでいったニコライを見て衝撃を受け、死が不可避であることをより強く感じ、恐怖を感じる。
田舎にある領地に帰り、ドリー、シチェルバツキー公爵夫人、ワーレンカ、コズヌイシェフらの訪問を受ける。また、オブロンスキー、ヴェスロフスキーと共に猟に出かけ、親交を深めるが、ヴェスロフスキーの妻に対する態度に不純なものが見られたため、家から追い出す。
キティのお産のためにモスクワに戻り、その後コズヌイシェフの勧めで選挙に参加するが、無意味な議論を続ける選挙が何のために行われるのか理解できずに終わる。
モスクワのクラブに行き、恋敵であったヴロンスキーと会うと、自分がヴロンスキーに対して敵意を抱いていないことに気づく。その後オブロンスキーの口添えでアンナに会いにいくと、その美しさと知性と誠実さに魅了される。
キティのお産が始まると、産婆や医者の家を奔走するが、生れてきた男の子を見ても、それが何者なのかを考えこみ、その傷つきやすいものに嫌悪と哀れみの感情を起こすばかりとなる。しかし、キティとミーチャが雷の脅威にさらされると、その身の上を心配し、二人の無事を確認すると、自分がこの子供をどれだけ愛しているかを理解するようになる。
長い間信仰を持たず、自分が何のために生きているのかを考え続けて悩み、自殺を考えた時期もあった。しかし、キティーのお産時や、キティとミーチャが雷に襲われている時に無意識に神に祈っている自分に気づく。また農民との会話により、善とは理性的に考えて理解できるものではなく、自分の中にもともと存在しているもので、それが教会での教えと一致していることに気づき、自分がもともと信仰を持っていたということを認識し、神に感謝するようになる。

キティ(エカテリーナ・アレクサンドロヴナ)
ドリーの妹。十八歳で初めて社交界に出て大成功を収め、モスクワの舞踏会にいる青年たちのほとんどを虜にした。亡き兄と固い友情で結ばれていたリョーヴィンを慕っていたが、モスクワの社交界に出入りするようになったヴロンスキーに惹かれ、リョーヴィンからの求婚を断る。
ペテルブルクから自宅を訪れてきたアンナの美しさに魅了されるが、舞踏会で自分と踊ることになっていたヴロンスキーが、アンナに急激に惹かれていることに気づき、打ちひしがれる。
そのうちに皆が自分のことを誰かの嫁に行くものとして品評しているように感じて病気になる。ドイツの温泉場で療養を始めると、敬虔主義者のマダム・シュタールと、その付き添いのワーレンカと知り合う。ワーレンカが療養地で過ごす人々の世話を献身的にする様子や、敬虔なキリスト教徒であるマダム・シュタールの話に心打たれ、他人を愛しむことで自分も幸福になれるということを悟り、自らも病める人々の世話をするようになる。しかし世話をするようになった画家のペトロフが、自分に好意を寄せることになったことで妻と不和になったことを知り、自らの行いが全て自己欺瞞から来ていることに気づき、この温泉地を離れたいと思うようになる。
温泉地を離れたあと、オブロンスキー家の晩餐で久々にリョーヴィンと再会して惹かれ合うと、結婚の申し込みをされ、それを受け入れる。
結婚後は主婦業に精を出し、結婚生活を愛の享楽と考えていたリョーヴィンを驚かせる。また、リョーヴィンが遊蕩生活を送っていた過去を知り苦しみながらもそれを許す。
ニコライの死期が近いことを知ると、リョーヴィンの反対を押し切って訪れ、献身的に看護し、聖餐を受けさせる。また、ニコライを診ていた医者によって妊娠を知る。
結婚式を行うと、すぐにリョーヴィンの田舎の領地に移り、ドリー、シチェルバツキー公爵夫人、ワーレンカ、コズヌイシェフらの訪問を受ける。
お産のためにモスクワに戻り、男の子(ミーチャ)を産む。長らくアンナに対して敵意を抱いていたが、自殺する直前のアンナの訪問を受け、その美しさに魅了され気の毒に思うようになる。
産後まもなくミーチャとの強い絆で結ばれ、無信仰でも誰よりも優しいリョーヴィンのように子供が育つことを願う。

アレクセイ・カレーニン
オブロンスキーの役所の所属する某省の幹部。もともとは孤児。父親の顔を知らず、母は十歳の時に死んだ。政府の高官であった伯父のカレーニンに養育され、大学を優等で卒業して高官になる。指を鳴らす癖がある。一分ごとに仕事が割り振られ、毎日規律正しく生活している。長らく仕事のことしか考えない生活を送っていたため、アンナとヴロンスキーが近づくのを見て注意を与えても黙殺され、どうすることもできないまま苦しむ。ヴロンスキーとの関係を打ち明けられると、アンナのことを堕落した人間だと考え、家族への一切の感情を棄て、自分が世間体よく生活を続けられるようにすることだけを考えるようになる。アンナに対して嫉妬の念を抱くことはなくなっても、自分を裏切った罪に対する報いを受けさせようとして、ヴロンスキーと会うのを禁じ、社交界で非難されないような行動をとることを要求し、離婚を拒否する。しかしアンナが自分との約束を破り、ヴロンスキーを自宅に招いたため、激しい怒りを感じ、息子を渡さずに離婚の手続きを取る方法を弁護士と相談する。
委員会の定例会議で異民族統治問題について演説して成功を収めるが、政敵のストリョーモフが、自分の政策の本思想を歪めるほどに熱心に実行するという術策を弄し、周囲からの攻撃にさらされる。そのため官界での立場が不安定になり、自分から現地へ実地検分を行うことを決心する。
その道中のモスクワで、偶然会ったオブロンスキーの晩餐に招かれ、その帰りのホテルで、お産によって死にかかっているアンナからの手紙を受け取り、世間から後ろ指をさされないためにアンナのもとへ駆けつける。
瀕死の状態で許しを乞うアンナを見ると、急に崇高な気持ちになり、涙を流しながらアンナとヴロンスキーのことを許す。妻と一緒にいることが自分の義務であると考え、息子のセリョージャや、アンナとヴロンスキーの娘のことも可愛がるようになる。
しかし、体調が回復したアンナが自分のことを恐れているのを感じ、世間からも嘲笑を受けるようになり、更にオブロンスキーからも離婚を勧められたため、離婚の許しを与える決断をする。
ヴロンスキーによってアンナが連れ出されると、自分のために家政を行ってくれるリディア伯爵夫人が精神的な支柱となり、やがて彼女の信仰する新しい解釈の宗教にすがりつくようになる。アレクサンドル・ネフスキー勲章を手にするが、昇進が滞るようになる。
アンナから、セリョージャに会わせてほしいという手紙を受け取るが、リディア伯爵夫人の言いつけに従い、その願いを拒絶する。
その後、フランスで奇妙な療法を行っていたランドーという男の信仰する宗教に狂信的になり、オブロンスキーに再度離婚を勧められるが、ランドーが夢うつつの時に口にした言葉により、アンナとの離婚を拒否する。

オブロンスキー(ステバン・アルカージッチ・オブロンスキー)
登場時三十四歳。アンナの兄。アンナの夫であるアレクセイ・カレーニンの世話で、三年前からモスクワで役所の長官という地位を占めていた。もともとモスクワとペテルブルク中で顔が効き、美しい顔立ちで、善良で快活で寛大な性格から数多くの人々の尊敬を勝ち得ている。結婚生活から満足を得られず、信心深くもない自分の生活様式に合っているという理由で、結婚は時代遅れの制度で、宗教が国民の中の一部の野蛮な人たちのための轡にすぎないという自由党の支持者になっている。
かつての家庭教師であったフランス人と関係を持ったことが妻ドリーに知られるが、アンナがドリーを慰めたことによって関係の悪化を食い止める。
リョーヴィンとは若いころからの親友であったが、彼の田舎生活を認めながらも軽蔑している。キティに結婚を申し込みにモスクワへ来たリョーヴィンに、ヴロンスキーが恋のライバルであることを告げる。
自分の土地の森を売るために、リョーヴィンの家に寄り、そのついでに狩を楽しむが、買い手のリャビーニンに騙されてかなりの安値で森を売り払ってしまう。
異民族統治問題について検分を行うためにモスクワに寄ったカレーニンを呼んで晩餐を開き、その場でキティとリョーヴィンを再び引き合わせ、二人が結婚するきっかけを作る。
アンナとカレーニンが別居を始めると、双方に離婚を勧め、カレーニンが離婚の許しを与えるきっかけを作る。
ヴェスロフスキーを連れてリョーヴィンを訪れ、三人で狩を行う。自分たちが働かないでも裕福に過ごしていけるのに、農民は働かなくても生きていけないということが不当なことであると感じていたリョーヴィンに対し、その社会制度を正しいと認めて自分の権利を擁護するか、自分が不当な特権を利用していることを認めて、それを喜んで利用するかしかないと答える。
自宅の財政が厳しくなると、ペテルブルクの南部鉄道と銀行の合併による相互信用代理委員会の一員という地位につこうとして、その口添えを頼むためにカレーニンを訪れる。そのついでにアンナとの離婚を勧めるが、ランドーというフランス人宗教家に狂信的になっているカレーニンとリディア伯爵夫人の異様な雰囲気を恐れて逃げ帰る。
アンナの死後、リョーヴィンの家に向かうコズヌイシェフとカタワーソフを送りに停車場を訪れ、同じ列車で戦場に向かうヴロンスキーの後ろ姿を見送る。

ドリー(ダーリヤ・アレクサンドロヴナ)
オブロンスキーの一歳違いの妻。五人の子供を抱え、家の雑事に追われながらモスクワで生活していた。自分しか知らないと思っていたオブロンスキーの浮気の証拠を見つけ、家を出ていくと宣言するが、五人の子供を連れて里に帰ることができずに断念する。ペテルブルクから訪れてきたアンナに慰められると、オブロンスキーとの和解を成立させ、六人目の子供を産む。
経費を節約するために、子供を連れて結婚のときに持参した田舎の土地に移る。そこでリョーヴィンの訪問を受けると、病気になったキティを救うために、もう一度結婚を考えてほしいと頼む。
リョーヴィンなどを招いた自宅での晩餐で、離婚を踏みとどまるようにカレーニンを説得する。
キティとリョーヴィンが結婚すると、子供たちを連れて彼らの田舎にある領地を訪れる。その後アンナとヴロンスキーの領地を訪れ、もはや家庭に戻ることはないであろうアンナにカレーニンとの離婚を勧め、これ以上不幸な子供を産まないことを決心したアンナに衝撃を受ける。
オブロンスキーが借金で首が回らなくなり自分の土地を売ることにすると、途方に暮れて夫を憎むが、リョーヴィンからの同情を受け、土地を分けてもらう。

コズヌイシェフ
全ロシアに名の知れた作家。リョーヴィンの異父兄。恋していた娘が死んだ過去を持つ。モスクワの都会生活に疲れるとリョーヴィンのいる田舎を訪れる。農民を愛し、万人への福祉を推奨し、リョーヴィンが地方自治体の仕事を辞めたことを非難する。しかしそれらは都会生活者から見た意見でしかないため、実際に農民たちの特質を熟知しているリョーヴィンと意見を異にする。
カレーニン、リョーヴィン、キティらが出席したオブロンスキー家での晩餐に顔を出し、他国民の同化、古典教育、女性の教育について語り合う。
結婚したリョーヴィンとキティの領地を訪れ、そこで出会ったワーレンカに惹かれるが、結婚の申し込みの機会を逃す。
六年かけて仕上げた著書「ヨーロッパならびにロシアにおける国家機構の基礎および形態の概要」が批評家からは酷評され、世間から黙殺される。しかし新たに持ち上がったスラヴ問題に全身を傾け、再び仕事に忙殺されるようになる。仕事がひと段落するとカタワーソフとともにリョーヴィンを訪れる。その旅の途中で、戦争に向かうことにしたヴロンスキーに敬意を表すために話しかける。

ニコライ
リョーヴィンの実の兄。遺産を使い果たして悪党の仲間入りをして、兄弟と喧嘩別れをしている。
大学を卒業して一年間は、修道僧のように宗教上のしきたりを厳重に守り、女を遠ざけて生活し、リョーヴィンもふくめた周りの人々に笑われていた。しかし急に忌まわしい人々に近づき、遊蕩生活に入り数々の問題を起こすようになると、誰にも相手にされなくなった。母の遺産の分け前を払わなかったコズヌイシェフとは訴訟沙汰になった。世の中のことは何もかも悪く、汚らわしいと思っている。二年前からマーシャを伴侶にして生活し、社会主義に傾倒し、錠前屋の生産協同組合を作ろうとしている。リョーヴィンと三年ぶりの再会を果たし、この計画について語るが、すぐに酒に酔って寝てしまう。
病気になると、ニコライの勧めでドイツの温泉場を訪れて治療を行う。その後マーシャと喧嘩別れし、モスクワに就職の道を見つけるが、病状が悪化し、財産の分け前をもらいに、しばしばリョーヴィンを訪れる。農民に利益を配分するという農事方法を考え出したリョーヴィンの意見を聞くと、共産主義と同じだと批判する。
死期が近づくと、キティからの厚い看病を受け、彼女の勧めに従って聖餐を受けるが、数日間苦しみ、息を引き取る。

セリョージャ
アンナの子。八歳の子供として登場する。長らくアンナの愛を一身に受けていた。九歳の時にアンナがヴロンスキーと海外へ逃亡すると、リディア伯爵夫人から母は死んだと聞かされる。しかし死という存在を信じることができなかったため、常に愛していた母の姿を探し続ける生活を送る。
誕生日に突然アンナの訪問を受け、幸福なひと時を過ごすが、カレーニンの登場によりアンナが逃げ出すと、悲しみにくれて病気になり、命も危ぶまれる状況になる。その後学校に入り、友人を愛するようになるが、心の奥ではアンナのことを忘れられずにいる。

シチェルバツキー公爵
ドリー、ナタリイ、キティの父親。リョーヴィンのことを気に入り、キティの結婚相手について、これ以上の良縁はないと主張する。キティとヴロンスキーとの結婚の話がなくなると、ヴロンスキーのことを非難し、病気になったキティをドイツの温泉場へ行かせる。自らもその温泉場を訪れると、マダム・シュタールに心酔するようになったキティのことを面白おかしい目で眺める。
キティとリョーヴィンの結婚に喜び、リョーヴィンと親しく接する。

シチェルバツキー公爵夫人
三十年前にシチェルバツキー公爵と結婚する。ドリーとナタリーが結婚した後、キティの結婚相手について心配し、金持ちで家柄が良いヴロンスキーのことを気に入り、田舎で百姓相手に生活するリョーヴィンとの結婚に反対していた。
キティがヴロンスキーとの恋に破れて病に伏すと、ドイツの温泉場での療養に同行し、キティがワーレンカとの交際を始めるきっかけを作る。キティとリョーヴィンの結婚に喜ぶ。

ヴロンスカヤ伯爵夫人
ヴロンスキーの母。結婚後も未亡人になってからも社交界の花型で、数々のロマンスでその名を知られている。ヴロンスキーから遅れる形でモスクワへ到着する。同じ列車に乗りこんだアンナのことを気に入り、息子とアンナの関係に喜んでいた。しかしヴロンスキーが、アンナに会える今の連隊にとどまりたいために、連隊の中で重要な地位に就くのを断ったと聞いて意見を改め、モスクワに戻るように伝える。
モスクワの郊外で一緒に住むソローキン公爵令嬢と息子の結婚を望んでいた。アンナの死後、絶望して露土戦争に向かう息子を送るために共に列車に乗り込む。

リディア・イワーノヴナ伯爵夫人
ペテルブルクでのアンナの友人。信心深い篤志家。病身らしい黄色い顔をしているが、背の高いよく太った婦人。夢見るような美しい黒い瞳を持つ。年中何かに気を揉んで熱くなるので、サモワールというあだ名が付いている。裕福な名門に嫁いだが、二ヶ月で夫に捨てられ、別居生活をしている。夫に捨てられて以来、誰かに惚れ込むことが多くなり、アンナに捨てられたカレーニンに惚れ込むようになる。カレーニンの家政とセリョージャの世話を行い、やがてカレーニンの精神的な支えとなり、自分の信仰する新しい解釈のキリスト教を信じ込ませる。アンナのことを汚らわしい存在と思うようになり、セリョージャと会わせてほしいという手紙を拒否するよう、カレーニンに忠告を与える。その後フランスで奇妙な療法を行っていたランドーという男の信仰する宗教を狂信的に信じる。

ベッツィ・トヴェルスコイ公爵夫人
ペテルブルクでのアンナの従兄の妻。年二十万ルーブルもの収入があり、華やかな舞踏会や晩餐会を催す。自分の開いた会で、アンナとヴロンスキーが近づくと、二人の関係に協力的な姿勢を見せる。アンナとともに障害物競馬を見学し、落馬したヴロンスキーの容態をアンナに伝える。
お産を経て瀕死の状態になったアンナを心配し、いつまでも自分のところに妻を引き止めておくカレーニンを陰で非難する。タシケントへ赴任する決心をしたヴロンスキーに協力し、アンナと会わせようとする。
しかし、身を持ち崩したアンナの社交界での居場所がなくなると、付き合いを拒否するようになる。

その他の登場人物

アガーフィア
リョーヴィンの家のばあや兼家政婦。キティに結婚を断られてふさいでいるリョーヴィンを慰める。リョーヴィン結婚後はミーチャの面倒を見る。

アニー
アンナの娘。カレーニン家の娘ということになっているので、名字がない。

アンヌシカ
アンナの小間使い。

アリョーシャ
ドリーとオブロンスキーの子。

アレクサンドル
ヴロンスキーの兄。一文の財産もない十二月党員の令嬢ワーリヤと結婚する。放縦な酒浸りの生活を送っている。
ヴロンスキーがアンナとの恋に熱中していることに注意するが、自分に干渉しないでほしいと言われてしまう。

アンナ・パーヴロヴナ
ペトロフの妻。夫とともにドイツの温泉場を訪れていたが、キティの訪問に夫が感動している様子を見て、夫とキティが近づくのを嫌がるようになる。

ヴェスロフスキー(ワーセンカ・ヴェスロフスキー)
シチェルバツキーの又従兄。陽気な性格の社交界の若手の花形。オブロンスキーに連れられてリョーヴィンの田舎の領地を訪れる。オブロンスキー、リョーヴィンと共に、猟に出かけるが、斬鉄を締め忘れて銃を発車させたり、馬をぬかるみにはめたりしてリョーヴィンを苛々させる。猟の途中で農民たちからウォッカを振舞われて上機嫌になり、リョーヴィンからも親しみを受けるようになる。しかし、キティへの態度に不純なものが見られたため、それに嫉妬したリョーヴィンから家を追い出され、アンナとヴロンスキーのいるヴォズドヴィジェンスコエ村に滞在する。

エゴールシカ・コルスンスキー
舞踏会の指導者をつとめる式部官。舞踏会でヴロンスキーからの誘いを受けられなかったキティの踊りの相手役を務める。

カタワーソフ
大学時代のリョーヴィンの友達。今は自然科学の教授をしている。コズヌイシェフとともに、キティと結婚したリョーヴィンの領地を訪れ、戦争について語り合う。

カルジュスキー公爵
リーザ・メルカローヴァの愛人。

クジマー
リョーヴィンの老僕。リョーヴィンとキティの結婚式で、リョーヴィンの着る予定だったワイシャツをシチェルバツキー家に置いてある荷物の中に入れてしまい、多くの参列者を待たせることになった。

グリーシャ
ドリーとオブロンスキーの子。

ゴレニーシチェフ
ヴロンスキーの貴族幼年学校時代の友人。学生時代にはいつも首席であった。現在は自由主義者の党に属し、イタリアに住む。アンナを連れ出したヴロンスキーに偶然出会い、共にミハイロフを訪問する。自分の芸術論を語ってミハイロフをうんざりさせる。

サフォ・シュトルツ
社交界の新星。すらりとしててきぱきとした身のこなしをしている。

ジュール・ランドー(ベズーホフ伯爵
もとはパリのある店の番頭だったが、病人に奇妙な療法を始め、ロシアに連れて来られる。ベズーボフ伯爵夫人の養子になり、リディア伯爵夫人にも気に入られ、狂信的な支持を受ける。

スヴィヤジュスキー
スロフスキー群にいるリョーヴィンの親友。郡の貴族団長を勤める地方自治体の活動家。自由主義者。百姓たちの声に耳を傾け、合理的な農事経営には百姓たちの教養がいると考えている。婦人の労働権拡張に対する賛成論者。子供はいない。自分の妹をリョーヴィンに嫁がせたいと思っている。
キティとの結婚に踏み出せずに自分に嫌気がさして訪れてきたリョーヴィンと、この土地の地主と討論を行い、進歩的な農事経営を行うヒントをリョーヴィンに与える。
ヴロンスキーとアンナが住み始めたヴォズドヴィジェンスコエ村に滞在する。選挙では新しい貴族団長の候補になり、旧貴族団長のスネトコフらと対立する。選挙には敗れるが、同じ派に属するネヴェドフスキーの勝利を喜ぶ。

ストリョーモフ
五十がらみの白髪頭の聡明な社交家。カレーニンとは政敵でありながら、アンナに愛想よく接する。異民族統治問題の政策の本思想を歪めるほどに熱心に実行するという術策を弄し、その政策を論じたカレーニンのことを追い詰め、自分は有力な地位に就くことに成功する。

スネトコフ
カシン県の貴族団長。古いタイプの貴族で、国民教育の普及に反対し、地方自治体に階級的な性格を与えようとしていた。選挙では新派のネヴェドフスキーに敗れ、涙を流す。

セルプホフスコイ
ヴロンスキーの幼いころからの友人。将官となり、中央アジアから戻って来て、出世が進んでいないヴロンスキーの名誉心に刺激を与える。アンナと関係を続けるヴロンスキーに、結婚せずに女に明け暮れるのは出世への遠回りだと伝え、自分たちの連隊に来るように勧める。
ピストル自殺から回復したヴロンスキーにタシケントへの赴任を勧める。

ソローキン公爵令嬢
ヴロンスキーの母親と、自分の母親とともにモスクワの郊外に住む。ワーリヤと共にパッチイを見ていた。ヴロンスキーの母が、息子の結婚相手に望んでいる令嬢。

ターニャ
ドリーとオブロンスキーの子。

トゥシュケーヴィチ
ベッツィの以前の不倫相手。見放されてアンナとヴロンスキーがいるヴォズドヴィジェンスコエ村に来る。

トゥロフツィン
オブロンスキーの友人。人の良い遊蕩児。ドリーに惚れこんでいた時期があった。カレーニン、リョーヴィン、キティらが出席したオブロンスキー家での晩餐に顔を出し、ある男が妻の不貞から決闘をして、相手を殺したという話をする。ドリーの子供が猩紅熱にかかった時に看病をする。

ナタリー
ドリーの妹、キティの姉。外交官のリヴォフと結婚する。

ネヴェドフスキー
コズヌイシェフの親友。もと大学教授の聡明な人物。選挙では旧貴族団長のスネトコフらと対立し、新しい貴族団長に任命される。

ノルドストン伯爵夫人
キティの友達。リョーヴィンがキティに最初の告白をする前年の冬に結婚。神経質で、粗野なものを軽蔑しているため、田舎で百姓を相手にしているリョーヴィンと相いれない。リョーヴィンをからかって楽しむことが多い。舞踏会でヴロンスキーからの踊りの誘いをうけることができずに絶望にくれるキティを見て、コルンスキーにキティを踊りに誘わせる。
キティとリョーヴィンの結婚式に参列する。

ハンナ
アンナが面倒を見ることになったイギリスの娘。

ペスツォフ
音楽家、歴史家、自由主義者。変わり者で感激屋の五十歳。カレーニン、リョーヴィン、キティらが出席したオブロンスキー家での晩餐に顔を出し、夫婦間における不貞は不平等に罰せられるということについて、カレーニンに語る。モスクワでの音楽界でリョーヴィンと顔を合せる。

ペトリツキー
ヴロンスキーの親友の同僚。借金で首が回らない生活を送っているが、夜になるといつも酔っぱらって事件を引き起こす。同僚や上官からは可愛がられている。若い女を口説こうとして、その夫に苦情を訴えられ、ヴロンスキーがその事件をもみけそうとする。

ペトロフ
ドイツの温泉場で治療を行っていた画家。キティの訪問を受けるようになると、温泉場から離れたがらなくなり、妻のアンナ・パーヴロヴナと喧嘩になる。

マーシャ
ニコライの二年前からの伴侶の娼婦。ニコライとともにドイツの温泉場を訪れる。
一度はニコライと別れたが、その後関係を修復し、ニコライの死期が近いことをリョーヴィンに伝える。

マダム・シュタール
ドイツの温泉場を訪れていた病身のロシアの貴婦人。敬虔主義者。夫と別れた後で初めての子供を産んだが、その赤ん坊はすぐに死ぬ。いつも病身で、すぐ感激する性質であったため、この知らせが生命に関わると思った周りの人々は、宮廷のコックであったワーレンカをもらい、死んだ子供の代わりにした。ワーレンカが自分の子ではないと知った後も養育を続け、今ではドイツの温泉場で身の回りの世話を焼いてもらっている。
あらゆる信仰の最高代表者と極めて親しい関係にあるが、シチェルバツキー公爵からは嘲笑されている。

マドモワゼル・リノン
白髪のフランスの老婦人。結婚前のキティの家庭教師。

マドモアゼル・ローラン
フランス人。オブロンスキーの家のかつての家庭教師。貧しく身寄りがないにもかかわらず、全てを捨ててオブロンスキーと関係を持つ。

マトリョーナ
オブロンスキー家の婆や。ドリーが子供たちを連れてエルグショーヴォ村を訪れると、その土地の支配人の女房や村長や帳場の男と懇意になり、一週間ほどで家の修繕や食料の調達を行う。

マリア・ボリーソヴナ労公爵夫人
キティの名付け親。自宅で妊娠したキティとヴロンスキーが再会を果たす。

マリヤ・ルチーシチェルヴァ
ドイツの温泉場でシェルバツキー家と親しく交流した婦人。

ミーチャ
リョーヴィンとキティの子。

ミハイロフ
ロシアの画家。自由主義者。ヴロンスキーとアンナの逃亡先のイタリアの町に住む。自分の絵は自分にしか聞けないものだと思っており、貴族が趣味で絵を描くことを侮辱だと思っている。絵画の才能はあるが、教養がないために、その才能を伸ばすことができずにいる。ヴロンスキーやアンナらのロシアの貴族の訪問に興奮するが、不愛想に振る舞って不興を買う。ヴロンスキーに依頼されてアンナの肖像を描く。

メートロフ
ペテルブルクの有名な学者。リョーヴィンが気に入った論文の著者。

ヤーシュヴィン
ヴロンスキーの親友。背が高く、並外れた体力を持つ。第一級のトランプ遊びの道楽者。あらゆる愛情を軽蔑しているにも関わらず、アンナとのことを聞くことなしにヴロンスキーの事情を理解する。
賭博で全財産をすったため、露土戦争に向かうことにし、アンナに死なれて失意のヴロンスキーを誘う。

リーザ・メルカーロヴァ
東洋風の物憂げな顔立ちをした痩せぎすのブリュネット。美しい瞳で有名。地味な衣装を好む。無知で退廃的だが、アンナはその愛すべき従順さに惹かれる。

リヴォフ(アルセーニー)
ナタリーの夫。モスクワ、ペテルブルクと外国で外交官として暮らしていた。外交官の職を辞したあと、二人の男の子を育てるためにモスクワの宮内庁に勤務する。キティのお産のためにモスクワにやってきたリョーヴィンと意気投合する。

リャビーニン
背の高い痩せぎすの中年の男。自分の森を売ろうとしているオブロンスキーを騙し、かなりの安値でそれを手に入れる。

リリー
ドリーとオブロンスキーの子。

ワーニャ
ドリーとオブロンスキーの子。

ワーリヤ
ヴロンスキーの兄の妻。一文の財産もないまま、ヴロンスキーの兄と結婚する。財産を夫に渡したヴロンスキーに感謝している。

ワーレンカ
十九くらいにも、三十くらいに見える。不釣り合いに頭が大きいことを除けば、スタイルもよく美人だが、自分の魅力に対する自信がない。歌が上手い。もともと宮廷のコックの娘として生まれたが、マダム・シュタールの死んだ赤ん坊の代わりにするために引き渡される。病身のマダム・シュタールの外国暮らしに付き添い、身の回りの世話をする。昔愛し合った男がいたが、その男の母親に結婚を反対され、離れ離れになった過去がある。ドイツの温泉場でキティと出会う。温泉地の人びとを献身的に介護し、その様子がキティを惹きつける。
キティがリョーヴィンと結婚すると、彼らの領地を訪れ、コズヌイシェフからの愛情を受け、自分も受け入れることを決心するが、結婚の申し込みを受けることができずに別れる。

ワルワーラ
公爵令嬢。オブロンスキーの叔母。金持ちの親戚の居候として過ごしてきた。海外から戻ってきて社交界での居場所がなくなったアンナを愛し、アンナを助けてやるのが務めだと思い、田舎の領地で一緒に暮らす。しかし、アンナたちがモスクワに引っ越すと、世間体を気にしてアンナのもとを離れる。