ウィリアム・シェイクスピア『ロミオとジュリエット』の登場人物、あらすじ、感想

 『ロミオとジュリエット』は、1594年ごろに発表されたウィリアム・シェイクスピアの戯曲です。イタリア北部の都市ヴェローナを舞台に、モンタギューとキャピュレットという、二つの敵対する名家出身の男女の悲恋を描いた作品です。

 ヴェローナでは、教皇派のモンテッキ家と皇帝派のカプレーティ家という名家が実在し、両家には確執があったそうです。その両家に属するロミオとジュリエットの悲劇は、空想から出来上がった物語のようですが、それがあたかも史実であるかのように、イタリア人作家たちによって何度も作品化されていました。

 1562年、イギリス人のアーサー・ブルックという人が、イタリアで出版されていたロミオとジュリエットの物語を(フランス語からの重訳として)英語に翻訳し、『非話ロミュスとジュリエット』という題名で自身の英訳小説集の中に収録しました。シェイクスピアはこの話から着想を得て、それを大幅に改編し、戯曲『ロミオとジュリエット』を作り上げたと言われています。
 それまで習作程度の作品しか発表していなかったシェイクスピアでしたが、この作品以降『夏の夜の夢』、『ヴェニスの商人』といった佳作を次々と発表し、一躍人気作家となりました。

 現在、ロミオとジュリエットの物語は、結ばれることのなかった男女の悲恋物語の定番として、非常に知名度の高いものとなっています。

 このページでは『ロミオとジュリエット』の登場人物、あらすじ、感想を紹介します。

※ネタバレ内容を含みます。

『ロミオとジュリエット』の登場人物

※詳しい登場人物紹介はこちら

ロミオ
ヴェローナの名家モンタギュー家の息子。十六歳くらい。

ジュリエット
ヴェローナの名家で、モンタギュー家と敵対するキャピュレット家の娘。十四歳。

モンタギュー
モンタギュー家の家長。ロミオの父。

モンタギュー夫人
モンタギューの妻。ロミオの母。

キャピュレット
キャピュレット家の家長。ジュリエットの父。

キャピュレット夫人
キャピュレットの妻。ジュリエットの母。

エスカラス
ヴェローナの太守。公爵。モンタギュー、キャピュレット両家のいさかいに苦慮している。

ベンヴォーリオ
モンタギューの甥。ロミオの友人。

マキューシオ
太守の遠縁。ロミオの友人。

ティボルト
キャピュレット夫人の甥。モンタギュー家に強い敵対心を持っている。

パリス
太守の親戚の貴族。ジュリエットとの結婚を望んでいる。

ジュリエットの乳母
幼い頃からジュリエットを育て上げ、身の回りの世話をする。

ピーター
ジュリエットの乳母の召使。

ロレンス
ヴェローナの修道院に住む僧。

ジョン
ヴェローナの修道僧。

サムソングレゴリ
キャピュレット家の召使。

エイブラハムバルサザー
モンタギュー家の召使。

『ロミオとジュリエット』のあらすじ

※幕ごと、場ごとの詳しいあらすじはこちら

 イタリア北部の町ヴェローナでは、モンタギュー家とキャピュレット家という二つの名家が対立しており、町の太守は、たびたび起こる両家のいさかいに苦慮していました。

 モンタギュー家の息子ロミオは、一切の恋を断ち切った女性ロザラインへの叶わぬ恋に苦しんでいました。ロミオの従兄弟であるベンヴェーリオと、太守の親戚でロミオの友人のマキューシオは、恋に苦しむロミオの目を他の女性に向けさせるため、キャピュレット家の宴会に忍び込む計画を立てました。ロミオは、ロザラインの美しさを再確認するため、ベンヴェーリオとマキューシオについて行くことを決めました。

 一方、キャピュレット家の娘ジュリエットは、両親から太守の親戚であるパリスとの結婚を望まれていました。彼女はその日に行われる宴会で、美男子との呼び声高いパリスの顔を見てみることにします。

 キャピュレット家の宴会に忍び込んだロミオは、ジュリエットの姿を見るなり、その美しさに一目惚れし、ロザラインのことを忘れました。彼はジュリエットに話しかけ、その唇を奪いました。

 唇を奪われたジュリエットもまた、ロミオに熱烈な恋をするようになりました。彼女は、ロミオがモンタギュー家の息子であることを知り、自室のバルコニーから顔を出して、愛してはならない人を愛してしまった悲運を嘆きます。
 ジュリエットが自分への想いを口にするのを、キャピュレット家の庭園に忍び込んでいたロミオは聞きました。彼は幸福を感じながら姿を現し、ジュリエットへの愛を誓いました。一方のジュリエットもロミオの愛を受け入れ、二人は結婚の約束をします。そして夜明けが迫ると、ロミオはその足で町の修道院の神父ロレンスの庵室を訪ね、ジュリエットとの結婚の相談を始めました。
 ロレンスは、二人の結婚が、長い間続くモンタギュー、キャピュレット両家の確執を癒すことになるかもしれないと考え、結婚式を執り行うことを約束しました。

 ロレンス神父の約束を取り付けたロミオは、ジュリエットの遣いでやってきた乳母に、その日の午後に結婚式を行う予定であると伝えました。その知らせを受け取ったジュリエットは喜び、ロレンスのもとへと急ぎました。
 ロミオとジュリエットは、ロレンスの立ち合いのもと、夫婦となりました。

 その頃、キャピュレットの家長の甥で、モンタギューに強い敵対心を燃やすティボルトは、ロミオがキャピュレット家の宴会に忍び込んだことに腹を立て、モンタギュー家に挑戦状を叩きつけていました。
 マキューシオとベンヴェーリオの前にティボルトが姿を現し、一触即発の雰囲気になったところへロミオが現れました。ティボルトに剣を抜くように促されたロミオでしたが、ジュリエットの従兄であるティボルトにも愛を感じ、剣を抜こうとはしませんでした。そのロミオの態度に苛々としたマキューシオは剣を抜き、ティボルトに刺されて息を引き取りました。
 友人を失ったロミオは、怒りに駆られてティボルトを刺し殺し、ベンヴェーリオに急かされて逃亡しました。町の皆がその現場に現れ、太守はロミオにヴェローナ追放の刑を与えました。
 この知らせを聞いたジュリエットは嘆き悲しみ、乳母に指輪を託してロミオの元へと遣り、お別れに来てほしいと頼むように命じました。

 ロレンスの庵室で追放の宣告を知ったロミオは、ジュリエットとの別れを嘆き、自殺を図ろうとしました。ロレンスは、気を落とすロミオを叱責し、しばらくマントヴァへ行って身を隠していれば、二人の結婚が歓迎されるようになった時を見計らって呼び寄せると約束しました。ジュリエットの乳母は、預かった指輪をロミオに渡し、お別れに来てほしいというジュリエットからの願いを伝えました。ロミオは、ロレンスと乳母に感謝し、庵室を出て行きました。

 その翌日の夜、ロミオはジュリエットの部屋を訪れました。二人は別れを惜しみながら、夜明けが来るのを悲痛な気持ちで待ちました。夜明けになり、乳母がやってくると、ロミオはジュリエットに接吻して二階から飛び降り、マントヴァへと旅立って行きました。

 その頃、キャピュレットの両親によってジュリエットとパリスの縁談話が進められていました。その話を聞いたジュリエットが、パリスとの結婚を拒否すると、両親は親子としての縁を切ると宣言しました。ジュリエットは、ロレンスのもとに助けを求めて駆けつけました。
 相談を受けたロレンスは、二十四時間脈拍を止めることのできる薬をジュリエットに渡し、これを飲んで埋葬された後、手紙で呼び寄せたロミオとともに遁走するという計画を伝えました。これを聞いたジュリエットは、喜んでその計画を実行に移すことを決めました。
 パリスとの結婚を表向き承諾したジュリエットは、予定されていた結婚式の前日の夜、ロレンスからもらった薬を飲み、寝台に倒れました。

 その翌朝、脈拍が止まっているジュリエットを発見した両親、乳母、パリスは、悲しみに暮れながら、ジュリエットをキャピュレット家の墓地に埋葬しました。
 ロレンスは、マンチュアにいるロミオに手紙を書き、修道院の僧ジョンにその手紙を託しました。しかしジョンは、ヴェローナに来た病人見舞いの僧と会っていたため、検疫官に外出を制限され、ロミオにその手紙が渡されることはありませんでした。そのことを知ったロレンスは、慌ててジュリエットの墓所へと向かいました。

 一方、ロミオの召使いバルサザーは、ジュリエットが死んだと思い込み、これをロミオに伝えに行きました。その話を聞いたロミオは、横たわるジュリエットの隣りで死ぬことを決意し、薬屋から毒薬を買い、キャピュレット家の墓へと向かいました。
 墓地に着いたロミオが、暗闇の中でジュリエットの墓を掘り起こしていると、物陰から見ていたパリスが現れ、重罪人として捕らえようとしました。ロミオはしかたなくパリスと戦って刺し殺し、墓の中に入り、横たわるジュリエットに接吻し、毒薬を飲んで息絶えました。
 その直後、ジュリエットは目を覚まし、ロミオが自分の胸の上で死んでいることに気づきました。彼女はロミオの遺体に口づけし、短剣で自分の胸を刺して息絶えました。

 騒ぎを聞きつけてやってきた人々は、ロレンスらの証言により事件の真相を知りました。太守は、モンタギュー、キャピュレット両家の確執がこの悲劇を生んだのだと語り、両家の家長を非難しました。
 モンタギュー、キャピュレット両家の家長は、この悲劇を教訓にするため、ロミオとジュリエットの像を建立することを約束しました。

管理人の感想

 『ロミオとジュリエット』は、運命に弄ばれ、ついに結ばれることのなく命を落とすこととなった男女の悲劇として、文学や演技の世界のみならず、多くの芸術作品で扱われてきた作品です。
 しかし、一般的なイメージと、実際に書かれている表現のギャップが激しい作品でもあり、運命によって引き裂かれたひと組の男女の悲恋物語という前情報のみで読み始めると、面食らう人も多いと思います。

 まず冒頭から驚かされるのは、ロミオがロザラインという他の女性に、叶わぬ恋をしていることです。ロザラインは話に登るだけで登場はしませんが、一切の恋を断ち切った女性で、ロミオはこの女性への想いを募らせ、憂鬱な時を過ごしています。そんなロミオに、友人のベンヴェーリオとマキューシオは、他の女性にも目を向けるよう勧めます。ロミオは彼らの言葉には一切耳を貸さず、ただロザラインの美しさを再認識するためにキャピュレット家の晩餐会に出かけ、そこで初めて見かけたジュリエットに一目惚れし、ロザラインのことを瞬時に忘れます。

 一方のジュリエットもまた、かなりツッコミどころの多い女性です。自宅で開かれた晩餐会で、一度口づけを受けただけでロミオに惚れ込んだジュリエットは、部屋のバルコニーから、ロミオがモンタギューの名を持っていることを嘆きます。そこから「おおロミオ、あなたはなぜロミオなの?」という名セリフが生まれるわけですが、その告白を聞かれ、恥ずかしがるのも束の間、ロミオからの愛を受け取ると舞い上がり、さっそく結婚式の日時を決めて欲しいとせがみます。

 最終的に二人はすれ違い、ともに自殺するという悲劇となるわけですが、どちらかというと、涙を誘うような恋物語というよりは、軽薄な男女による、街中を巻き込んだ壮大なる若気の至りと形容した方が適しているような気がします。
 そのような手前勝手な彼らに、なかなか感情移入するのが難しいという人も多いのではないでしょうか。しかし、五百年近くも前に作られたこの作品が、今日まで世界中の人々に愛されているのは、ロミオとジュリエットが、未熟で、自分勝手な男女として描かれているためだと思います。彼らは出会った瞬間から熱烈に恋焦がれ、お互いのこと以外のすべてを眼中から消し去り、他の誰かが自分たちに対してどのように思うかとか、誰かの迷惑になるだろうかとかを考えることは一切ありません。文学においては(ある男女が恋愛に落ち入るまでのプロセスが重要視されるためだと思うのですが)、そのようないわゆる一目惚れを描いた文学作品は意外と少ないです。文学と戯曲を一緒くたにして語るのはナンセンスなのかもしれませんが、この『ロミオとジュリエット』においては、二人が若くて未熟なために、他の文学作品で多く見られる「自分はあの人のことを好きなのだろうか?」などという自問に落ち入ることのない、迷いなく恋に向かって一直線に進み続ける生き生きとした男女の姿を、読者は楽しむことができるのではないかと思います。

 ティボルト、ベンヴェーリオ、マキューシオ、ジュリエットの乳母といったその他の登場人物たちも、ロミオとジュリエットに負けず劣らず魅力的です。彼らの多くは自分勝手で、俗物的で、卑猥な台詞ばかりを口にします。そのような登場人物たちの言動に、眉を顰める人も多いかもしれませんが、それはこの作品の登場人物が生き生きと描かれていることの裏返しであるとも思います。

 そしてこの悲劇は、どちらかというとモンタギュー、キャピュレット両家の確執というよりは、若くて未熟な彼らの行動が原因の多くを占めているのではないかとも思います。もしロミオかジュリエットのどちらかに、あと一握りの思慮深さ、忍耐強さ、したたかさがあれば、彼らの運命は変わっていたかもしれません。
 そのように考えると、この悲劇は回避することのできたものであり、だからこそ、若い彼らが悲しい最期を遂げてしまったことが、なんとも口惜しい結果として感じられるのかもしれません。