文学ブログ

作品紹介、ときどき詳しいあらすじ、ときどき感想

谷崎潤一郎『魔術師』の登場人物、あらすじ、感想

 『魔術師』は、1917年1月、雑誌『新思潮』に発表された谷崎潤一郎の短編小説です。人間の心を意のままに操る魔術師に魅了される男の姿が描かれ、耽美主義と言われる谷崎潤一郎の初期から中期における作品の特徴が顕著に現れた作品です。過激ともいえる修辞上の技巧を凝らした文章で書かれた作品で、谷崎潤一郎自身はこの作品について、「作者が真に縷骨彫骨の苦しみをもって書いたもの」という言葉を残しています。このペー […]

モリエール『ドン・ジュアン』の登場人物、あらすじ、感想

 『ドン・ジュアン』は、17世紀のフランスの劇作家モリエールによる、放蕩者の騎士「ドン・ファン」の物語を下敷きに書かれた戯曲です。 作品の起源である「ドン・ファン」は、スペインの伝説的な人物で、1630年に同国の作家による『セビリアの色事師と石の逆』の主人公として戯曲化されていました。これがイタリアに伝わり、イタリア人の劇団によってフランスに紹介され、大ヒットとなりました。 俳優としても活躍してい […]

ドストエフスキー『悪霊』(第一部)の詳しいあらすじ

ドストエフスキー作『悪霊』第一部の詳しいあらすじを紹介するページです。ネタバレ内容を含みます。 リンク 第一章 序に代えて―ステパン・ヴェルホーヴェンスキー氏外伝  一八四〇年代の末に外国からロシアに帰った知識人ステパン・トロフィーモヴィチ・ヴェルホーヴェンスキーは、帰国後、大学の教壇に上がった他、数編の論文を書きました。西洋から持ち帰った自由主義的な主張、農奴解放の推進といった理想主義的な思想に […]

モリエール『ドン・ジュアン』の詳しいあらすじ

モリエール作『ドン・ジュアン』のあらすじを詳しく紹介するページです。ネタバレ内容を含みます。 リンク ※簡単なあらすじ、登場人物紹介、管理人の感想はこちら(『ドン・ジュアン』トップページ) 第一幕 第一景  ある宮殿の庭で、スガナレルとギュスマンという従僕の男が語り合っています。 ギュスマンの主人であるエルヴィールは、スガナレルの主人であるドン・ジュアンのことを忘れられず、あとを追ってきたようでし […]

小林多喜二『一九二八・三・十五』の登場人物、あらすじ、感想

 『一九二八・三・十五』は、1928年に発表された小林多喜二の代表作です。小林多喜二は、小作農の父と、日雇いの母の間に秋田県で生まれ、四歳の頃に小樽に渡りました。学業に優れていたため、金持ちの親類に学資を出してもらいながら高校に通っていたものの、生活は貧しく、パン工場での手伝いをしていたようです。やがて小樽の銀行に勤務するようになると、生活の安定を得ながらも、インテリゲンチャとして革命運動に身を投 […]

谷崎潤一郎『人魚の嘆き』の登場人物、あらすじ、感想

 『人魚の嘆き』は1917年に「中央公論」に発表された谷崎潤一郎の短編小説です。清王朝の最盛期と言われる第六代皇帝の乾隆帝の頃の南京を舞台に、富、名声、美貌を持ち、放蕩のかぎりを尽くした青年が、他国の商人から手に入れた人魚に魅惑される物語です。このページでは、登場人物、あらすじ、感想を紹介します。 リンク 『人魚の嘆き』の登場人物 孟世燾清王朝時代の南京に住む貴公子。類稀な美貌と才知の持ち主で、幼 […]

太宰治『新ハムレット』の詳しいあらすじ

太宰治作『新ハムレット』の詳しいあらすじを紹介します。ネタバレ内容を含みます。 リンク はしがき  この作品は『ハムレット』の注釈書でも新解釈でもなく、作者の創造の遊戯に過ぎないということ、戯曲のつもりで書いたのではなく、あくまで小説だと思ってもらいたいこと、坪内博士の「ハムレット」と、浦口文治の新評註ハムレットを一通り読み、四ヶ月かけてこれを書き上げたことが、作者からの注釈として書かれています。 […]

シェイクスピア『オセロー』の登場人物、詳しいあらすじ、感想

 『オセロー』は、1602年ごろに書かれた、全五幕から成るシェイクスピアの戯曲です。 1564年にイングランド中部の町に生まれたウィリアム・シェイクスピアは、裕福な家庭で育ち、十八歳の頃に八歳歳上の女性と結婚したことなどが明らかにされていますが、若い頃の記録は断片的で、どこでどのような活動をしていたのかが不明瞭な時期もあるようです。二十代でロンドンに進出して劇作家としての活動を始め、三十歳の頃には […]

小林多喜二『一九二八年三月十五日』の詳しいあらすじ

小林多喜二作『一九二八年三月十五日』(または『一九二八・三・一五』)の詳しいあらすじを紹介するページです。ネタバレ内容を含みます。 リンク ※簡単なあらすじはこちら(『一九二八・三・一五』トップページ) 一  小樽の合同労働組合の組合員であった小川竜吉の家には、工藤、坂西、鈴本といった同志たちが集まり、しばしば活発な論議が行われていました。 レーニンやマルクスの名前しか知らない竜吉の妻お恵は、はじ […]

レーモン・ラディゲ『肉体の悪魔』の登場人物、詳しいあらすじ、感想

 『肉体の悪魔』は、二十歳の若さで夭折したフランスの天才作家レーモン・ラディゲの代表作です。 ラディゲは、『肉体の悪魔』の作中にも描かれるマルヌ川のほとりにあるパリ近郊のヴァル=ド=マルヌ県のサン=モールで、1903年に風刺画家の息子として生まれました。 十一歳のころにパリのリセ シャルルマーニュ(日本の高等教育にあたる学校)に入学するも、ランボーやボードレールといった詩人や、スタンダール、ラ・フ […]