マーク・トウェイン『トム・ソーヤの冒険』の登場人物、あらすじ、感想

 『トム・ソーヤの冒険』は、1876年に発表されたマーク・トウェインの代表作です。開拓時代のアメリカを舞台にした、いたずら好きの腕白少年トム・ソーヤが繰り広げる冒険譚で、発表から百五十年ほど経った現代でも、世界中で愛される作品です。子供向け文学として捉えられている向きがありますが、ユーモアに満ちた語り口と、スリリングなストーリーは、大人も楽しめる内容となっています。
 このページでは、『トム・ソーヤの冒険』の登場人物、あらすじ、感想を紹介していきます。


トム・ソーヤーの冒険 (新潮文庫)

※ネタバレ内容を含みます。

『トム・ソーヤの冒険』の登場人物

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トム・ソーヤ
ミシシッピ川沿いのセント・ピーターズバーグ村に住むいたずら盛りの少年。両親がおらず、弟のシッドと共に、母親の姉にあたるポリー伯母さんに養育されている。

ポリー伯母さん
死んだ母親の代わりにトムを養育している。いたずら好きなトムにいつも手を焼いている。

ハックルベリー・フィン
村の浮浪児。大酒飲みの父親が失踪中で、学校にも行かず、気ままな生活を送っている。トムの親友。

ジョー・ハーパー
トムと同じクラスの親友。

ベッキー・サッチャー
金髪で青い目をした、可愛らしい少女。叔父にあたるサッチャー弁護士の家に引っ越してくる。トムの恋の相手。

シッド
トムの腹違いの弟。冒険に興味がない優等生。

メアリ
トムの従姉。ポリー伯母さんの娘。

インジャン・ジョー
村に住み着くならず者のインディアン。

マフ・ポッター
村の酔っ払いの老人。

エミー・ロレンス
トムがベッキーに一目惚れするまで、恋に落ちていた少女。

ダグラス未亡人
丘の上の豪華な邸宅に住む四十歳の美しくて裕福な未亡人。

ジョーンズ
ダグラス未亡人の家の近くに住む、ウェールズ人の老人。

『トム・ソーヤの冒険』のあらすじ

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 ミシシッピ川沿いのセント・ピーターズバーグ村に住む少年トム・ソーヤは、早くに両親を亡くし、優等生の弟シッド、従姉のメアリと共に、母の姉にあたるポリー伯母さんに養育されていました。ポリー伯母さんは、いたずら好きのトムにいつも手を焼き、教育のためとはいえ、お仕置きをしなければならないことに心を痛めていました。

 ある日、トムは、友人の家の庭に、見慣れない可愛らしい少女がいるのを見つけ、一目で恋に落ちました。その少女はベッキー・サッチャーという名前で、両親の元を離れて従兄弟の家にやってきており、トムと同じクラスに編入しました。トムはさっそくベッキーの隣の席に座り、昼休みに会う約束を取り付け、二人きりになると婚約を申し込みました。ベッキーは喜びましたが、トムが他の少女とも結婚の約束をしていたことを知ると怒りだし、トムはその理由を理解できないまま、物別れとなりました。

 トムは村の浮浪児ハックルベリー・フィンと往来で会いました。ハックルベリーは、大酒飲みのせがれで、父親が失踪していたため、学校にも教会にも行かず、決まった家も持たずに気ままに暮らしていました。下品で乱暴な怠け者だったため、大人たちからは疎んじられていましたが、子供たちは彼の自由な生活を羨み、尊敬していました。トムとハックルベリーは親友でした。
 ハックルベリーは、今夜、墓場に現れる悪魔に猫の死体を引き渡すという、疣をとるためのまじないをするつもりだとトムに言いました。トムはそれに同行すること決めました。
 夜になると、トムとハックルベリーは墓場へと向かいました。すると三人の人影が暗闇の中を近づいてきました。それは村の医師ロビンスン、インディアンのインジャン・ジョー、そして酒飲みのマフ・ポッターでした。ロビンスンは、インジャン・ジョーとマフ・ポッターを雇って死体を暴こうとしていたのでした。ところが死体を掘り起こした後、インジャン・ジョーが予定よりも高く料金をふっかけたため諍いが起こり、マフ・ポッターは頭を叩かれて気絶しました。その間にインジャン・ジョーがロビンスンを殺し、気絶しているマフ・ポッターに凶器のナイフを持たせ、ロビンスンを無意識の間に殺してしまったのだと思い込ませました。
 この様子を隠れながら見ていたトムとハックルベリーは震え上がり、このことを誰にも言わないと誓い合いました。
 翌日マフ・ポッターは捕らえられ、インジャン・ジョーは嘘の証言をして、ポッターに罪を着せました。

 ベッキーと仲直りできずに傷心のトムは、同じクラスの親友ジョー・ハーパーに出会いました。ジョーはクリームを舐めたという無実の罪を母親に着せられ、鞭打たれたようでした。トムとジョーは世間から立ち去り、海賊になる決心をしました。彼らはハックルベリーを仲間に引き込み、ミシシッピ川の中にある無人島へと渡りました。
 三人の少年は、島の浅瀬で泳ぎ、釣りや探険を楽しみ、火を焚いて調理し、無人島での生活を満喫しました。しかし夜になると食料を持ち出した罪の呵責や、寂しさに不安を感じました。
 数日後、ハックルベリーとジョーが眠りにつくと、トムはそっと抜け出して村に帰り、家に忍び込みました。そして家を訪れていたジョーの母親とポリー伯母さんの会話を盗み聞きし、自分たちが死んだと思われており、日曜に葬儀が行われることを知りました。
 ジョーとハックルベリーのもとに戻ったトムは、家に帰りたいという二人に、自分たちの葬儀に飛び入りで参加するという悪戯の計画を披露しました。ジョーとハックルベリーは、その計画に魅了され、島に残りました。
 日曜になると彼らは村に戻り、自分たちの葬儀が行われている教会の二階の会堂から姿を現しました。悲しみに沈んでいた村は一転、喜びの讃美歌に包まれました。
 トムが無人島で生活をしたことで学校中の英雄になったため、ベッキーは仲直りを望むようになりました。トムもまたベッキーへの恋心を消してはいませんでした。二人はお互いの嫉妬心を煽ろうとして、他の子供と仲良くして再び喧嘩となりましたが、先生の本を誤って破ってしまったベッキーの罪をトムがかぶったことで、ようやく仲直りを果たしました。

 ロビンスン殺害事件の公判が始まると、無実の罪を着せられたマフ・ポッターに対して良心の痛みを覚えたトムは、弁護士に相談し、事件の日に墓場で見たことを公判の場で発表しました。真犯人であることが明るみになったインジャン・ジョーは逃げだし、マフ・ポッターは釈放されました。
 トムは皆から称賛され、得意になりましたが、逃げ出したインジャン・ジョーの復讐を恐れました。しかし時が経つにつれ、次第にその恐怖を忘れて行きました。彼はある日突然、宝を掘り出したいという欲望に駆られ、ハックルベリーと共に、幽霊屋敷といわれる廃屋に乗り込みました。家の中を捜索していると、二人の男がその廃屋に入ってきました。トムとハックルベリーは二階に隠れて男たちの会話に耳をすませ、その二人のうちの、最近村に現れるようになった聾唖のスペイン人と思われていた男が、変装したインジャン・ジョーであることに気づきました。
 インジャン・ジョーとその相棒が、村からくすねてきた金を隠すため幽霊屋敷の床を掘り出すと、そこから宝が出てきました。二人はその宝を、「二号の十字架の下」と呼ばれる場所に隠しておこうと話し合い、どこかへ持っていってしまいました。
 翌日、トムとハックルベリーは、インジャン・ジョーの言っていた「二号」の場所がどこなのかを考え、村にある旅館の二号室に目星をつけました。トムはその旅館に忍び込み、そこにインジャン・ジョーがいることを確認しました。そこに宝があると思った二人は、毎晩その旅館を見張り、インジャン・ジョーが出かけたのを見届けてから、部屋の中に忍び込むことを決めました。

 夏休みを利用して両親の元へ行っていたベッキーが帰ってきて、ピクニックを催しました。少年たちは蒸気船で川を下り、谷間でお弁当を食べ、洞窟を探検しました。少年たちが引き上げる中、トムとベッキーは、洞窟の中の鍾乳石や水晶に魅せられながら、奥深くへと入り込み、そのまま迷い込んでしまいました。

 その夜もハックルベリーは見張りにつき、旅館から出てきたインジャン・ジョーとその相棒の後をつけました。二人の悪党は、町の裕福な未亡人ダグラスの家の戸口までやってきました。ハックルベリーは二人の話を盗み聞きし、インジャン・ジョーが判事の故ダグラス氏に不労罪で捕まったことを恨んでおり、その妻であったダグラス未亡人に復讐しようとしていることを知りました。震え上がったハックルベリーは、近くに住むウェールズ人の老人ジョーンズに助けを求めました。事情を聞いたジョーンズとその息子は銃で武装し、インジャン・ジョーたちを追い払いました。

 洞窟に迷い込んだトムは、それ以上歩けなくなったベッキーを見失わないように、凧糸を伸ばして歩き回り、出口を探そうとしました。トムが脇道を探っていると、蝋燭を持ったインジャン・ジョーが現れました。インジャン・ジョーは、鉢合わせたのがトムだとは分からず、身を翻して隠れました。トムは恐ろしくなってベッキーのところへ帰りましたが、空腹に耐えかね、再び洞窟の中を歩き回りました。
 洞窟に迷いこんでから四日目、ようやくトムはミシシッピ河岸の岩の上につながる出口を見つけ、ベッキーを勇気づけて這い出し、村へと帰りました。

 しばらく寝込んだあと、トムはベッキーの叔父にあたるサッチャー弁護士に会い、洞窟の入り口の扉に鍵が下ろされたことを知りました。トムは驚いて、洞窟の中にインジャン・ジョーがいることを伝えました。その噂はたちまち広まり、人々が洞窟の扉を開けると、その扉に顔を押し当てながら死んでいるインジャン・ジョーが見つかりました。

 その翌朝、トムは、宝のありかが分かったと言ってハックルベリーを連れ出し、川下の崖の上の穴から洞窟の中に入りました。その中の岩には、インジャン・ジョーたちが蝋燭の油煙で描いたと思われる大きな十字架がありました。二人はその岩の下に自然にできた狭い道を見つけ、その奥にある宝の山を発見しました。
 二人はその宝の山を半分に分け、一日一ドルずつ貰いながら裕福な生活を送りました。

 ハックルベリーはダグラス未亡人のもとで新しい服を着て学校に通うようになりましたが、その窮屈な生活に耐えきれなくなり、逃げ出して元の自由な生活に戻りました。トムは空樽の中に隠れているハックルベリーを見つけ、本物の山賊は身分が高いので、そのままの生活をしているのなら、今度結団する山賊団に入れてやることはできないと言いました。ハックルベリーは、トムの仲間になれることを条件に、ダグラス未亡人のところに帰ることを決意しました。二人は皆を集め、山賊の結団式を行う約束をしました。

管理人の感想

 「トム・ソーヤ」と聞いて皆さんが連想するのは、日本で放送されていたアニメでしょうか?それとも某テーマパークにあるアトラクションでしょうか?

 ためしに「トム・ソーヤ」で検索してみると、原作について書かれているものの他に、あまり原作には関係のなさそうな施設、飲食店、企業名が結果に名を連ねます。このページを読んでくれている方はもちろん『トム・ソーヤの冒険』が文学作品であったことを知っているでしょうが、一般的に、この作品が文学作品であったことを知っている人は、知名度の割にかなり少ないのではないかと思います。それは裏を返せば、トム・ソーヤというキャラクターが、文学の枠を超えて愛され、世界共通の腕白少年として認知されているということでしょう。

 発表から百五十年が経とうとしてもなお、「トム・ソーヤ」という名前がクラシカルスタンダードとして定着しているのは、やはり原作が面白いからに他ならないと思います。村の腕白少年であったトムが、凶悪な殺人犯が隠した財宝のありかを見つけ出すストーリー展開は痛快そのもので、この本筋とは別に、ユーモアに富んだ挿話がいくつか挟まれており、それらもとても魅力的です。

 村の浮浪児ハックルベリー・フィン、こころ優しいポリー伯母さん、可憐な少女ベッキーなど、トムの脇を固める脇役たちも非常に魅力的で、特にこの作品中でキーとなる役割を果たすハックルベリー・フィンは、トムと匹敵するほどの人気を誇ります。

 このように『トム・ソーヤの冒険』の魅力をあげればきりがありませんが、最大の魅力はやはり主人公トム・ソーヤにあると思います。

 いたずら好きで手のかかる子供でありながら、常に楽しいことや冒険を探し回り、時には女の子をしっかりと守ってやるトムは、誰もが憧れた少年少女時代のヒーローのイメージとぴったりと合致します。彼のいたずらは、時にやり過ぎだと感じてしまうものもありますが、機転がきいていて、思わず感心させられてしまうものばかりです。
 一方で、聖書を暗唱するともらえるカード、ハサミムシと呼ばれる甲虫、果ては自分の歯やダニを宝物として持ち歩いたり、ベッキーの気を引こうとして叫びまわったりと、彼は歳相応の可愛らしさも持ち合わせています。
 もし主人公がトムよりも幼い少年であったなら、マフ・ポッターを救って宝を見つけ出すことなどできなかったでしょう。もし主人公がもう少し大きな少年であったなら、インジャン・ジョーの悪事を見たとしても、しかるべき大人に相談し、すぐに事件を解決に導いてしまったでしょう。宝を見つけたとしても、寄付や分配のことに頭を配らなければならなかったかもしれません。優等生の少年であったなら、ハックルベリーと夜の墓場に行くことなど言語道断の行いと考えたでしょう。もう少し臆病な少年であったなら、無人島に出かけることもなかったでしょうし、インジャン・ジョーを告発することもなかったでしょう。

 つまり、トム・ソーヤがトム・ソーヤであったからこそ、この魅力的な物語は生まれたのです。本筋とは関係のないように見える挿話も、トムの人となり(さまざまな冒険を行なうポテンシャル、好奇心、大胆さがあり、なおかつその冒険を味気ないものにしてしまうほどの頭はない)を伝える上で、とても重要なのだと思います。

 次作『ハックルベリー・フィンの冒険』では、ハックが大冒険をします。こちらの方は娯楽小説にとどまらず、人種差別問題に踏み込み、痛烈に社会批判を行った、アメリカ文学史上最高の小説とも言われている作品です。是非読んでみてください。