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日本文学

夏目漱石『坑夫』の登場人物、あらすじ、感想

 『坑夫』は、1908年(明治41年)に、朝日新聞に連載された夏目漱石の長編小説です。 その年に朝日新聞に載る予定だった島崎藤村の小説の執筆が滞り、急遽、漱石がその空白を埋めるために依頼されて書いた作品です。 その前年、以前坑夫として働いていたある青年が、漱石の元をひょっこりと訪れ、坑夫になるより前の心の葛藤を小説の材料にしてくれないかと頼みました。その時漱石は、その青年の語る「個人の事情」は書き […]

坂口安吾『続戦争と一人の女』の登場人物、あらすじ、感想

 『続戦争と一人の女』は1946年11月に雑誌「サロン」に発表された坂口安吾の短編小説です。 同年10月に発表された、『戦争と一人の女』の姉妹編とも言うべき作品で、三人称作品であった前作と同時期の話が、主人公の女の視点から語られる一人称小説となっています。ちなみに、坂口安吾による女性の一人称作品は、この『続戦争と一人の女』を含めて三作品のみとなっており、無頼派と呼ばれる同時代の作家の中で、数多くの […]

坂口安吾『戦争と一人の女』の登場人物、あらすじ、感想

 『戦争と一人の女』は、1946年10月に、雑誌「新生」に発表された坂口安吾の短編小説です。 同年11月に、坂口安吾は、『続戦争と一人と女』という姉妹編を、雑誌「サロン」に発表しており、こちらの『続‥』の方は、作品集「いづこへ」に収録される際、『戦争と一人の女』と改題されました。そのため、同じ題名の作品が二つ存在することとなり、例えば新潮文庫では「サロン」収録版が、岩波文庫では「新生」収録版が『戦 […]

森鴎外『雁』の登場人物、あらすじ、感想

 『雁』は、1911年から雑誌「スバル」に連載された森鴎外の小説です。 高利貸しの妾であるお玉が、東京大学の学生である岡田に儚い恋をするも、ある偶然によって結ばれることのできなかった物語を通して、不幸な境遇の中で自立していく彼女の姿や、一度の偶然が運命を左右する様を描いた作品です。 東京大学から上野不忍池にいたる一帯や、神田、秋葉原界隈が舞台になっており、ビジネス街となってしまったこの辺りの情景を […]

夏目漱石『坑夫』の詳しいあらすじ

夏目漱石作『坑夫』の詳しいあらすじを紹介するページです。ネタバレ内容を含みます。 リンク ※簡単なあらすじ、登場人物紹介、管理人の感想はこちら(『坑夫』トップページ) 長蔵に声をかけられる  許嫁がいる身でありながら、ほかの娘と惹かれあってしまった「自分」は、自殺も駆け落ちもすることができないまま、許嫁や親に申し訳が立たなくなり、生家を飛び出しました。東京から夜通し北へ向かい、泊まる宿も金もなかっ […]

森鴎外『雁』の詳しいあらすじ

森鴎外作『雁』の詳しいあらすじを紹介するページです。ネタバレ内容を含みます。 リンク ※もっと簡単なあらすじ、登場人物紹介、感想はこちら(『雁』トップページ) 岡田とお玉の出会い  明治十三年、東京大学の学生であった「僕」は、鉄門の真向かいにあった上条という下宿屋に住んでいました。「僕」の部屋の隣の下宿人は、一学年下の岡田という男でした。 岡田は体格のよい美男で、競漕(ボートレース)の選手でした。 […]

谷崎潤一郎『卍』の登場人物、あらすじ、感想

 『卍』は、1928年から1930年にかけて連載された谷崎潤一郎の長篇小説です。常に他者からの崇拝を求め続ける令嬢・徳光光子を中心に、その光子に翻弄される三人の男女の、「卍」型の人間模様が描かれた作品です。 大阪、神戸を中心とする関西を舞台に、光子に愛情を捧げる既婚女性・柿内園子によって語られる一人称形式の小説です。己れの欲望を成就させるため、時に騙し合い、時に共謀しながら複雑に絡み合う四者の関係 […]

谷崎重一郎『卍』の詳しいあらすじ

谷崎潤一郎作『卍』の詳しいあらすじを紹介するページです。ネタバレ内容を含みます。 リンク ※もっと簡単なあらすじ、登場人物紹介、感想はこちら(『卍』トップページ) 園子と光子の出会い  未亡人の柿内園子は、自分が関わった新聞沙汰にもなったある事件について、「先生」と呼ばれる人物に語り始めます。  以前、夫の他に恋人を持っていた園子は、その恋人について「先生」に相談し、非常な心配をかけていました。 […]

森鴎外『寒山拾得』の登場人物、詳しいあらすじ、感想

 『寒山拾得』(かんざんじっとく)は、一九一六年に発表された森鴎外の短編小説です。 寒山と拾得は、七、八世紀ごろに、中国浙江省東部に位置する霊山・天台山の国清寺に出入りしていたと言われる二人の僧です。彼らはいつもみすぼらしい格好で、奇声を発しながら寺の廊下を歩くといった奇行の持ち主であった一方で、仏教の教理に深く根ざした詩を、山林の石、竹、民家の壁などに書き連ねていました。 伝説では、寒山が文殊菩 […]

森鴎外『じいさんばあさん』の登場人物、詳しいあらすじ、感想

 『じいさんばあさん』は、一九一五年に発表された森鴎外の短編です。江戸、天明期における文人、大田南畝(おおたなんぽ)が記した随筆『一話一言』に収録されている史料をもとに書かれた歴史小説で、麻布竜土町に隠居してきたひと組の老夫婦が経た、三十七年間にも及ぶ苦難の過去が描かれます。あまり知られていない作品ですが、高校国語の材料として使われることも多いようです。 このページでは、『じいさんばあさん』の登場 […]